2 / 62
二人目の男
しおりを挟む二人目の男
義務教育の時分が最て非行に走った時期だったのではないかと思う、反抗期と言うのとも違った。母が厳格であったので、悪事への憧れを叩き潰される儘伏せていたのが反動になったのだろうと見ている。当時の主観で分からなかった感情を今記憶頼りに客観視した所で真相の明かし様も無いのだが。
何にせよ、その男のお蔭で随分波乱を孕んだ人生に成った事だけは事実だろう。
同性愛者と言う言葉で括って良いものか自身を量り兼ねては居たものの、取り敢えず男性としか交際遍歴が無かった事を理由にコミューンを紹介された。上は二十代半ばまでと言う若年層の集まりで、それでも十人に近い程度に同じ趣味嗜好の男女が忌憚なく言葉を交わす空間は居心地が良かった。
男はコミューンの立ち上げ人で、歳の離れたパートナーが日中を孤独にしている様子を見兼ねて交流の場を作ったと言うのが表向きの設立理由だった。真意については後述するが、当時は未だ一般に受け入れられにくい風潮も有った以上メンバーに他に寄る辺も無かった辺り巧妙な人集めだった。
失踪癖のある相手をパートナーに選んでしまった私は体の空いている時期の方が長い。操立て出来る程度の倫理観が有れば良かったのだろうが、「本気ではないのだから」と囁く不逞の誘いは周囲からでなく己の内から湧いていた。
言い訳にもなるまいが、その日男の家に誘われた折にはそんな気分が露程も有りはしなかった。建築デザインを生業とする男の自宅兼事務所に興味は有ったが、敢えて知人の恋人にモーションを掛ける様な飢餓感は当時未だ持ち合わせが無かった。
男のパートナーは可愛らしい少年だった。私の彼と比較してどうかと問われれば、少々毛色が違った。中性的な要素の強い彼に魅かれていた自分は未だ男性の男性的魅力に陶酔を見出せる程両性愛者としての円熟を経て居らず、闊達な少年に弟分以上の扱いをする気分には成りようも無かった。
其れでもこの犯罪臭の強い歳の差カップルのどちらを同衾の対象に見るかと言えば少年の方だった。先述の通り未だ青い果実の分際で有った事も有るが、何より受けに回っての交渉経験が無かった。それでも気付けば男の意のままに体を開いていたことを考えれば、両刀の上にもマルチプレーヤーの素養は元より在ったのだろう。
肛虐自辱の指南本を表紙の男の娘イラストに釣られて購入した事が有る。その一節に『肛虐の嗜好は排泄時の快感から入門するケースが多い』と言う記載が有ったが、男のリードで度々洗浄・拡張を繰り返される内に納得せざるを得なかった。何事につけ経験者の手解きに勝る上達の道も無いのだろう。そんな悟りを得るには切っ掛けがあまりに品が無い様にも思うが、若い内は何事も経験だろう。いや本当に酷い。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【猫画像あり】島猫たちのエピソード
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
【保護猫リンネの物語】連載中! 2024.4.15~
シャーパン猫の子育てと御世話の日々を、画像を添えて綴っています。
2024年4月15日午前4時。
1匹の老猫が、その命を終えました。
5匹の仔猫が、新たに生を受けました。
同じ時刻に死を迎えた老猫と、生を受けた仔猫。
島猫たちのエピソード、保護猫リンネと子供たちのお話をどうぞ。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
世の中に言いたいことを書いてみました!
砂月ちゃん
エッセイ・ノンフィクション
今日、買い物に行った時の話とか世の中に言いたいことを書いてみた!
XもFもやって無いので、こっちに書いてみましたよ。
猫と特撮とテレ朝の刑事ドラマ、たまに飯テロ。
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
一花の近況報告と独り言
たいよう一花
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでBL小説を投稿している一花の、お知らせや独り言などを書いています。
アルファポリスでは作家からのお知らせ用として「近況ボード」という場を設けていただいてますが、文字制限やその他、使いづらいと感じる点が複数ありましたので、今後一花は近況ボードを極力使わずに、エッセイカテゴリーで一作品として投稿することにしました。
もしお時間ありましたらのぞいていただけますと大変嬉しいです。
五十代独身パート生活田舎のボロ家一人暮らしの女が日常と、小説を考えながら作るべく考える日記(タイトル改)
江戸川ばた散歩
エッセイ・ノンフィクション
タイトル通りなんだけど何とかたのしく生きてるよー、もしくは「このようにしても何とか生きているのだなあ」という生活。
マンガの感想やメルカリ出品やら配信アニメやら好きなお笑いの人とか、どうにもならねえ汚部屋とか昭和30年代に建てた家で根性で住んでいくこととか荒れ果てている裏庭のこととかいろいろ。ちょっと待て自分で書いてて散々じゃねえかと思いつつ。
長短構わずともかく毎日書くのを目標に!
ひだまりカフェ
もとひろ@絵本作家/エッセイスト
エッセイ・ノンフィクション
ぼくが日々、感じたことを、言葉にして、あなたに届けます。
ふっと、肩の力をぬけるような、そんなカフェのような空間です。
ひだまっていきませんか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる