霧開けて、明暗

小島秋人

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前書

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 「女の好みは幅が広いが男の好みには五月蠅い」と公言している。理想は自分よりも高身長で適度に筋肉質であると良い。部屋の隅に追い立てられる被捕食の側で隆起する二の腕の肉に恍惚としたいと言うのが秘めた願望として在った。

 かと言って根っから受け身で交渉する性質でもない。手技舌技で手練手管で相手を解いて行くのも其れは其れ、愉しみは尽きない。なればこそ女性にも世間一般の雄以上に好奇心が盛って仕様の無い時も間々有る。

 老若男女は時々の気分で相手を変えている。無論毎度都合良く当てられてくれるのが居るでも無し。こんな女は良いね、こんな男は駄目だよね等と管を巻く相手だけは事欠かない程度に知己は持っているので其処で鬱憤は晴らして次の心変わりまでの間を繋ぐ事も屡々。寧ろ二十歳の峠を越してから食傷のきらいに罹ったか決まった遊び以上の模索も頭打ちとなっていった。

 雄めいた自分と牝ぶった自分とが同居する事に違和感を覚える事は無かった様に思う。周りは多分に振り回されたやも知れないが、まぁ付き合いが長じれば慣れてくれるか離れてくれるので良しとしている。類は友を呼ぶでもないのだろうが、深い仲になった相手も劣らず捻者曲者の割合は多かった。覚えている限り文字に起こしてみても良かろうと思う。
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