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愛の守護りは君にこそ
43-1
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~43-1~
「おい!一体なんなんだありゃあ!」
トランクから引き出し組み上げた防弾シートを二人に被せながら店主ががなり立てる。本来は成人男性一人の身頃が丁度隠せる程度の代物だが、子供二人なら帯に短いと言う事も無さそうで一応の安心を得た。尤も、相手の得物を見るに防『弾』の必要が有るのかは抑々疑問でもあったが。
「こっちは散弾だぞ?まさか躱したってのか!?」
「…牽制くらいにはなる、良いから援護しろ」
飛んで来た『ナイフ』をすんでの所で払った私はワゴンの陰に身を隠しながら周囲を見遣った。
いつの間にか拘束を解いていたらしい女は倒れ伏した組合員の持ち物だったのだろうベレッタを器用に片手撃ちしている。事前に予備の弾倉を咥えているのを見て成る程と感心はしたが、此方も牽制以上のものを期待は出来ないだろう。
何せよ、此方が有り弾を撃ち尽くせば向こうの独壇場に成るのは明白だった。今もって此方の射撃を苦も無く避ける相手に圧倒的な精神的優位が有る事に違いも無いのだが。
だが、地の利は幸いかな私の側に有った。
疎らになる此方の銃声に奴が距離を詰めんとしたその刹那、其れまでと比べ物にならぬ量の銃声が道を埋め尽くした。
―――
「…何だったんだ、ありゃあ」
緊張が切れたのを隠しもせず荒い息をしながら路面に腰を下ろす店主が問いを投げる。
「それは野郎のことか?それとも町衆の方か」
「両方だ!…ったく、こうなると知ってりゃあ」
付いて来なかった、と言いたいのだろう。正直な話私も辟易している。
「話は後だ、取りあえずこの場を離れよう」
「そうね、あれで諦める手合いなら苦労は無いもの」
置き去りにするか否か思案していた辟易たる要因の一翼が後ろから声を掛けてくる。事情を知る者にさえ見られなければそれでも良いのだろうが…
「若さん、網元がお召しです…ご同道を」
気付けば一行の前に躍り出ていた網衆らしき男たちに行く手を塞がれていた。
「ラクイラの親分さんにも繋ぎがついておりやす、どうぞ此方へ」
さてどう言い逃れるかと企む間も無く先手を打たれる。義父殿に連絡がついている理由を考える間も無く連中のエスコートに従わざるをえなかった。
「おい!一体なんなんだありゃあ!」
トランクから引き出し組み上げた防弾シートを二人に被せながら店主ががなり立てる。本来は成人男性一人の身頃が丁度隠せる程度の代物だが、子供二人なら帯に短いと言う事も無さそうで一応の安心を得た。尤も、相手の得物を見るに防『弾』の必要が有るのかは抑々疑問でもあったが。
「こっちは散弾だぞ?まさか躱したってのか!?」
「…牽制くらいにはなる、良いから援護しろ」
飛んで来た『ナイフ』をすんでの所で払った私はワゴンの陰に身を隠しながら周囲を見遣った。
いつの間にか拘束を解いていたらしい女は倒れ伏した組合員の持ち物だったのだろうベレッタを器用に片手撃ちしている。事前に予備の弾倉を咥えているのを見て成る程と感心はしたが、此方も牽制以上のものを期待は出来ないだろう。
何せよ、此方が有り弾を撃ち尽くせば向こうの独壇場に成るのは明白だった。今もって此方の射撃を苦も無く避ける相手に圧倒的な精神的優位が有る事に違いも無いのだが。
だが、地の利は幸いかな私の側に有った。
疎らになる此方の銃声に奴が距離を詰めんとしたその刹那、其れまでと比べ物にならぬ量の銃声が道を埋め尽くした。
―――
「…何だったんだ、ありゃあ」
緊張が切れたのを隠しもせず荒い息をしながら路面に腰を下ろす店主が問いを投げる。
「それは野郎のことか?それとも町衆の方か」
「両方だ!…ったく、こうなると知ってりゃあ」
付いて来なかった、と言いたいのだろう。正直な話私も辟易している。
「話は後だ、取りあえずこの場を離れよう」
「そうね、あれで諦める手合いなら苦労は無いもの」
置き去りにするか否か思案していた辟易たる要因の一翼が後ろから声を掛けてくる。事情を知る者にさえ見られなければそれでも良いのだろうが…
「若さん、網元がお召しです…ご同道を」
気付けば一行の前に躍り出ていた網衆らしき男たちに行く手を塞がれていた。
「ラクイラの親分さんにも繋ぎがついておりやす、どうぞ此方へ」
さてどう言い逃れるかと企む間も無く先手を打たれる。義父殿に連絡がついている理由を考える間も無く連中のエスコートに従わざるをえなかった。
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