161 / 166
愛の守護りは君にこそ
41-1
しおりを挟む
~41-1~
「…見ていて気分の良い代物ではないですね」
事務所に着くや応接室に通された私は義父が投げ寄越した写真の束を一頻り眺めて顔をしかめた。恐らく地元当局からの横流しだろう検死体の記録写真には件の警護に就いた構成員らしき面々が写っていた。
「切創が多いですね、こっちなんて下顎が無い」
「言ったろう、並の手練れではこうはいかん」
確かに相当鋭利な、尚且つそれなりの質量を持った刃物で正確に切りつけなければ不可能な所業だろう。しかし、それにしては…
「気付いたか?」
「…胸糞の悪い相手だろう、と言う事であれば」
「うむ、腕前に反して相当に下衆だ」
刃物の扱いに然程自信の無い私でも人体の急所はそれなりに心得が有る。その観点に沿って言えば、明らかに即殺を意図とした物ではない傷が目立った。
「どの遺体も初手で手首、次に脚の何処かに深傷を負わされている」
「…この、矢鱈背中に傷が多いのは?」
「其れが一番酷い、叫べん様に喉を切られた後這いずって逃げようとしたらしい」
「放っとけば死ぬ相手までこうも執拗に、ですか」
「息絶えるまで…な、腸が煮える気分だろう?」
義父は口角を上げながら明るく言い放つ。余裕ぶって見せたいのだろうが青筋を浮かべ引き攣らせた笑顔では何とも痛々しい。
「だが、繰り返すが腕前だけは間違いないプロフェッショナルだ」
腹立たしいが頷くしかない。
「…正直、断って貰えんかと思っておる」
「…そう仰ると思いましたよ」
二人揃って頭を抱える。
「…策が有ると言っておったな?」
先に顔を上げた義父が思い出した様に言った。
「聞かせて貰えんか、別段お前さんを加えんでも良い方法なのであれば部下に其れを実行させたい」
無論コンサルト料は払うと付け加えた義父は身を乗り出すようにして私の言葉を待った。
「…見ていて気分の良い代物ではないですね」
事務所に着くや応接室に通された私は義父が投げ寄越した写真の束を一頻り眺めて顔をしかめた。恐らく地元当局からの横流しだろう検死体の記録写真には件の警護に就いた構成員らしき面々が写っていた。
「切創が多いですね、こっちなんて下顎が無い」
「言ったろう、並の手練れではこうはいかん」
確かに相当鋭利な、尚且つそれなりの質量を持った刃物で正確に切りつけなければ不可能な所業だろう。しかし、それにしては…
「気付いたか?」
「…胸糞の悪い相手だろう、と言う事であれば」
「うむ、腕前に反して相当に下衆だ」
刃物の扱いに然程自信の無い私でも人体の急所はそれなりに心得が有る。その観点に沿って言えば、明らかに即殺を意図とした物ではない傷が目立った。
「どの遺体も初手で手首、次に脚の何処かに深傷を負わされている」
「…この、矢鱈背中に傷が多いのは?」
「其れが一番酷い、叫べん様に喉を切られた後這いずって逃げようとしたらしい」
「放っとけば死ぬ相手までこうも執拗に、ですか」
「息絶えるまで…な、腸が煮える気分だろう?」
義父は口角を上げながら明るく言い放つ。余裕ぶって見せたいのだろうが青筋を浮かべ引き攣らせた笑顔では何とも痛々しい。
「だが、繰り返すが腕前だけは間違いないプロフェッショナルだ」
腹立たしいが頷くしかない。
「…正直、断って貰えんかと思っておる」
「…そう仰ると思いましたよ」
二人揃って頭を抱える。
「…策が有ると言っておったな?」
先に顔を上げた義父が思い出した様に言った。
「聞かせて貰えんか、別段お前さんを加えんでも良い方法なのであれば部下に其れを実行させたい」
無論コンサルト料は払うと付け加えた義父は身を乗り出すようにして私の言葉を待った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説


守護霊は吸血鬼❤
凪子
BL
ごく普通の男子高校生・楠木聖(くすのき・ひじり)は、紅い月の夜に不思議な声に導かれ、祠(ほこら)の封印を解いてしまう。
目の前に現れた青年は、驚く聖にこう告げた。「自分は吸血鬼だ」――と。
冷酷な美貌の吸血鬼はヴァンと名乗り、二百年前の「血の契約」に基づき、いかなるときも好きなだけ聖の血を吸うことができると宣言した。
憑りつかれたままでは、殺されてしまう……!何とかして、この恐ろしい吸血鬼を祓ってしまわないと。
クラスメイトの笹倉由宇(ささくら・ゆう)、除霊師の月代遥(つきしろ・はるか)の協力を得て、聖はヴァンを追い払おうとするが……?
ツンデレ男子高校生と、ドS吸血鬼の物語。

ホストの彼氏ってどうなんですかね?
はな
BL
南美晴人には彼氏がいる。彼は『人気No.1ホステス ハジメ』である。
迎えに行った時に見たのは店から出てきて愛想良く女の子に笑いかけているのは俺の彼氏だったーーー
攻め 浅見肇
受け 南美晴人
ホストクラブについて間違っているところもあるかもしれないので、指摘してもらえたらありがたいです。

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。

王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる