例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

小島秋人

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愛の守護りは君にこそ

41-1

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 ~41-1~

 「…見ていて気分の良い代物ではないですね」
 事務所に着くや応接室に通された私は義父が投げ寄越した写真の束を一頻り眺めて顔をしかめた。恐らく地元当局からの横流しだろう検死体の記録写真には件の警護に就いた構成員らしき面々が写っていた。

 「切創が多いですね、こっちなんて下顎が無い」
 「言ったろう、並の手練れではこうはいかん」
 確かに相当鋭利な、尚且つそれなりの質量を持った刃物で正確に切りつけなければ不可能な所業だろう。しかし、それにしては…

 「気付いたか?」
 「…胸糞の悪い相手だろう、と言う事であれば」
 「うむ、腕前に反して相当に下衆だ」
 刃物の扱いに然程自信の無い私でも人体の急所はそれなりに心得が有る。その観点に沿って言えば、明らかに即殺を意図とした物ではない傷が目立った。

 「どの遺体も初手で手首、次に脚の何処かに深傷を負わされている」
 「…この、矢鱈背中に傷が多いのは?」
 「其れが一番酷い、叫べん様に喉を切られた後這いずって逃げようとしたらしい」
 「放っとけば死ぬ相手までこうも執拗に、ですか」
 「息絶えるまで…な、腸が煮える気分だろう?」
 義父は口角を上げながら明るく言い放つ。余裕ぶって見せたいのだろうが青筋を浮かべ引き攣らせた笑顔では何とも痛々しい。
 
 「だが、繰り返すが腕前だけは間違いないプロフェッショナルだ」
 腹立たしいが頷くしかない。

 「…正直、断って貰えんかと思っておる」
 「…そう仰ると思いましたよ」
 二人揃って頭を抱える。

 「…策が有ると言っておったな?」
  先に顔を上げた義父が思い出した様に言った。
 「聞かせて貰えんか、別段お前さんを加えんでも良い方法なのであれば部下に其れを実行させたい」
 無論コンサルト料は払うと付け加えた義父は身を乗り出すようにして私の言葉を待った。
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