例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

小島秋人

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愛の守護りは君にこそ

36-4

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  ~36-4~

 機嫌が好転して止まないのはバカンスの余韻ばかりが原因ではない。此方に戻ってから今日に至るまで、二人の生活が平穏に過ぎていることが最も深く自分の胸中に安息を齎していた。

 組合からのキナ臭い仕事の類が回ってきていないだろう事は深夜の外出が無いことからも明らかであったし、何より来客の数が極端に減った。一頃に見られた無遠慮な迄の多忙と比ぶれば皆無と言って良い。なればこそ、行き付けの店で管を巻く他にする事もなし。全く尊い余暇を謳歌していると言えた。

 「機嫌が良いのは大変に結構だけどな、寝る時くらいは大人しくしろ?」
 添い寝するあの人が興奮を宥める様に髪を梳いてくる。却って昂りを助長するとは思わないのだろうか。思わず漏れ出す喜色を孕んだ吐息を隠しもせず相手の胸元に向けて吹き掛ける。悪くない気分を得たのだろうか、其の儘背中を掻き抱くように身体が引き寄せられた。

 「…さては寝る気が無いな?」
 「ふふっ…分かっているならお早く、ね?」
 以前ならこんな娼妓の如き淫らさを晒すのは喩え二人きりであっても許容し得なかったろう。我ながら、切欠さえ得れば変じも変ずるものだと思う。

 寝巻の前留めがぷつぷつと音を立てて外される。露になった肌の上で指輪が煌めくのを確めた自分の顔に、再びの喜色が浮かぶのを自覚した。

 「…そうまで喜んで貰えたなら、送り手としては冥利に尽きるな」
 床についた時にだけ響かせる穏やかな声であの人が呟いた。羞恥の色はない、衷心からの満足であると示してくれている。

 「そうですね…本当に、嬉しいです」
 決して口には出せないけれど、自分はあなたが求めた関係の証以上の価値を此れに見出だしているのだもの。
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