例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

小島秋人

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例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

36-2

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  ~36-2~

 県都の駅迄を車で移動、その後ナポリを経由してニース行きの列車に乗り込んだ。高速鉄道で片道5時間、長旅と言う程ではない。かと言って一等のコンパートメントでなければ快適な旅路と言えたかは疑問である。

 「…っ、あっ…!」
 乗務員の接客もそこそこにあしらったあの人は座席に乗せ変える寸暇も惜しんで貪り付いて来た。

 腰に回された手の感触は道中に自分を運んだ手付きよりも力強く、かつ妖艶に素肌に沿ってくる。首筋に這わせている舌と何方に集中すべきなのか混乱する。

 「まるでっ…獣です、ねっ…人目から離れたら直ぐこれっ…やっ…!」
 尽きぬ軽口も疎ましいが合間に漏れてしまう嬌声は其の比でない。心身の昂りが、隠しきれない悦びが見透かされる。

 「迂遠な遣り取りで神経を削るのも疲れたよ」
 あぁ、耳元に響く重低音が旋毛から背筋まで白雷の抜けるような刺激を齎している。

 「俺は始めての旅行を最高の物にしたい、お前はどうだ?」
 互いの乱れた息が嗅げる程の距離で見つめるあの人が問うてくる。陶酔に細く絞られた目はしかし有無を言わさぬ意思と、少し不安や懇願も混じっていたかしら。

 「…うん、したい………して?」
 最早何に対する返答なのか自分でも不確かだったけれど、御互いの同意に齟齬が無い事だけ分かれば他に何を求める気にはなれなかった。

 答えるが早いか蹂躙される舌の根も、痺れるほど溶かされてしまえば皮肉に回る隙も無いのだから。
 
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