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例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

33-2

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~33-2~

 人気の無い廊下を足早に進む。応接間に至る廊下、来客向けにその一角だけ特別に誂えられたのだろう絨毯張りに特有の足下から這い上がる起毛の感触は率直に言って好みではない。とは言え、靴音の反響を抑え潜入を容易足らしめると在っては是非もない。

 「…肩の傷は痛みますかい」
 正直返答に窮した。そう尋ねる男の面持ちこそが悲痛に歪む其れで在ったからだ。無論工具を突き立てられた事は業腹に相違ない。とは言え、其れを伝えた所で腹立ちの解消に足るとも思えなかった。徒に相手の罪悪感を煽って意識を散漫にさせて得が有る現状でもなし。となれば

 「少し肉に食い込んだ程度ですから、銃を扱うにも差し障りは有りませんし」
 当たり障りの無い配慮を苦笑いで返すより仕様も無い。自嘲の意を多分に含んだ溜息を漏らしかけ、寸前で飲み下した。

 ~33-1-1~ 

 入室し三歩と進む間も無い内に手際良く拘束された足音の正体を庇い立てすべきかは暫しの逡巡を要する決断だった。今朝方乱暴に引き抜かれた電極の傷が思い出した様に痛み出す。

 「…どうも見知った顔の様ですが」
 声を落として義父殿に伺いを立てる。無言で頷く義父殿は部隊員に合図した 。拘束は解かずにおくようだが銃口は逸らさせて自身は闖入者の前に屈み込んだ。

 33-2-2

 その後男の言によっておおよその現状を把握できた我々は男の先導で老紳士が匿われている一室を目指している。南の方角、事務所玄関付近からは断続的に銃声と喧騒が響いていた。

 「お早く、追い出し損ねた連中が何処ぞに潜んでるとも限りませんよって」
 男の急かす声に形だけ頷いてそれとなく義父殿に目配せする。

 「玄関先から周囲の建物は未だ向こうの手の内らしいのは外に回した部下の確認が取れとる」
 男の耳にも届く声量で憮然と言い放つ。私が抱える程には疑いを持っていないらしい。確かに男の老紳士に対する忠誠は周知の事であるにせよ、間の良すぎる登場を訝しむ私が小心と言う訳でも無い筈なのだが。
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