例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

小島秋人

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例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

29-4-4

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~29-4-4~

 外の連中、要は件の外部組織と老紳士の一党との関係は今少し複雑だった。連中は未だこの街を手中に収める事に執着がある。老紳士と義父殿は過去の清算と、叶うなら連中をすら一掃して嘗ての仲間と共にこの街の在り様を取り返したい。諸々の障害を取り除いた後何方が奇襲の先を取って相手を街から排除するか。表面上協力を敷きながら双方が紙一重の騙し合いの上に事を運んでいた。とは言え、力関係は多分に押され気味の感が強い。

 「断っておくが、お前さんの道中に横槍を入れたのは連中だ」
 其れも私個人を狙った訳ではなく、秘密裏に組合事務所周辺の封じ込めを行っていた煽りを食らっての事だったらしい。

 「儂らが張った罠の裏で本当に守旧派に渡りを付けたらしい、従兄弟殿の身柄を抑えられちまった」
 義父殿はあからさまに舌を打ち不機嫌を露にしている。此れから移動する先にも見当がついた。

 「守旧派を片付けた後で儂らが掌返すのも織り込み済みだった訳だ…思えば最初から無茶が過ぎた計画だわなぁ」
 事務所に詰めていた急進派をも虜囚とした連中は残った老紳士の一党に出頭するよう触を出したとの事だ。猶予は三時間弱、違えれば想像の通り。まぁ、現状では従った所で結果は同じなのだろうが。

 「そう言う訳だ、儂らはこれから一暴れして来る。機を見付け次第に街を出るようにな」
 席を立った義父殿は手近な配下に召集を命じ数歩離れ、思い出した様に振り返り口を開いた。

 「あの子に預けた肩掛けは其の儘持って帰らせれば良いわい…無くすなと言っとけ」

 そう言って浮かべた笑顔に、親子三代の面影を見ては其の儘見送る気など毛頭起きようが無い。
 
 この日最も素早く目粉しく思考を回転させ引き留める一語を絞り出さんとした。
 御供させて下さい―殴られて終わりだ―諸共に死ぬだけ―老紳士を見殺しにして逃げる―出来るわけがない―救い出して逃げる―如何やって―何処から―正面から―有り得ない―有り得ない場所―秘密の進入路―そんな物何処に―――――あ。

 裏口に続く通路に消えかけた背に飛び付く様な勢いで駆け寄る。怪訝な顔で振り返る義父殿の腕を取り口を開いた。

 「暗い所はお得意ですか」
 一か八かに賭ける時、自棄っぱちを吐いた口角は自然と吊り上がるのだなと初めて知った。
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