118 / 166
例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度
28-2
しおりを挟む
~28-2~
「御存分におやりになれば宜しいのでは?あぁいえ、厭味ではなく」
図らずも言い回しが突き放した物になってしまった。慌てて取り繕うが気負いをさせていたら申し訳も無い。
「そう言って貰えるなら、助かるが」
杞憂だったらしい、寧ろ拍子抜けと言った相貌で自分を見詰めている。「全てどうでも良いから一緒に帰りましょう」等と宣うと思われていたのだろうか。斯様な狭量に見られるのは甚だに心外だった。
心の負債について総てが語られた訳ではないにせよ、その桁が自分に計り知れない額面に達しているくらいの事は察しが付いていた。であるなら、その精算に当たる行為は長期的に二人の良好な関係に一助を成すだろうとの楽観を抱くに吝かでない。血で血を洗う無意味を説く自儘な部外者よりは許容する理解者の懐を見せている方が余程正気を保てる。嫉妬に狂うなんて、ね。
「では、一つだけ御願いをしても?」
肩透かしを食らい呆けた様子のあの人はともすればあっさりと凶弾に倒れ兼ねない危うさすら感じさせた。此処等で一つ楔を打っておいてやるのが優秀な伴侶たる自分の役目だろう。
「あぁ、何でも言ってくれ」
それ見た事か、任せろと言わんばかり喜色を浮かべる様が可愛らしくて仕様がない。
「万に一つ、取り返しのつかない深傷を負われたならば這ってでもこの部屋に戻って」
一息を吐く。
「貴方が事切れるその前に、僕の始末も着けて頂けますか」
無論の事、斯様な結末は最悪の一歩手前でしかない。漠然と「お気を付けて」としおらしく告げるよりこの程度のどぎつさが自分の程度に近く、またこの人の耳と脳裏に焼き付くだろうと言う卑近な打算に過ぎなかった。
「御存分におやりになれば宜しいのでは?あぁいえ、厭味ではなく」
図らずも言い回しが突き放した物になってしまった。慌てて取り繕うが気負いをさせていたら申し訳も無い。
「そう言って貰えるなら、助かるが」
杞憂だったらしい、寧ろ拍子抜けと言った相貌で自分を見詰めている。「全てどうでも良いから一緒に帰りましょう」等と宣うと思われていたのだろうか。斯様な狭量に見られるのは甚だに心外だった。
心の負債について総てが語られた訳ではないにせよ、その桁が自分に計り知れない額面に達しているくらいの事は察しが付いていた。であるなら、その精算に当たる行為は長期的に二人の良好な関係に一助を成すだろうとの楽観を抱くに吝かでない。血で血を洗う無意味を説く自儘な部外者よりは許容する理解者の懐を見せている方が余程正気を保てる。嫉妬に狂うなんて、ね。
「では、一つだけ御願いをしても?」
肩透かしを食らい呆けた様子のあの人はともすればあっさりと凶弾に倒れ兼ねない危うさすら感じさせた。此処等で一つ楔を打っておいてやるのが優秀な伴侶たる自分の役目だろう。
「あぁ、何でも言ってくれ」
それ見た事か、任せろと言わんばかり喜色を浮かべる様が可愛らしくて仕様がない。
「万に一つ、取り返しのつかない深傷を負われたならば這ってでもこの部屋に戻って」
一息を吐く。
「貴方が事切れるその前に、僕の始末も着けて頂けますか」
無論の事、斯様な結末は最悪の一歩手前でしかない。漠然と「お気を付けて」としおらしく告げるよりこの程度のどぎつさが自分の程度に近く、またこの人の耳と脳裏に焼き付くだろうと言う卑近な打算に過ぎなかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

ファントムペイン
粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。
理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。
主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。
手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった……
手足を失った恋人との生活。鬱系BL。
※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。


皇帝の立役者
白鳩 唯斗
BL
実の弟に毒を盛られた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。
その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。
目を開けると、数年前に回帰していた。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

【運命】に捨てられ捨てたΩ
雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。

あの日の記憶の隅で、君は笑う。
15
BL
アキラは恋人である公彦の部屋でとある写真を見つけた。
その写真に写っていたのはーーー……俺とそっくりな人。
唐突に始まります。
身代わりの恋大好きか〜と思われるかもしれませんが、大好物です!すみません!
幸せになってくれな!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる