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例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

23-5

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~23ー5~

 「…君が邪に欲目を出す人間ならば良かったのだがね」
 乾いた笑いに乗せて語られた顛末は中々にお粗末な物だった。

 老紳士の言う友人達が持ち掛けた当初の計画では件の見世物小屋に端を発する諸々の事業展開から徐々に縄張りの切り取りを強行していく手筈だったらしい。ハーブの売買もその一貫で、禁制品の取り扱いに及び腰になった組合の隙を縫って市場の独占を狙っていたのだった。

 「連中はあろうことか私の手勢に頭越しに指示を出していてね、市場に流した品物の大半が組合の在庫から抜き取られた盗品だったのだよ」
 後からその事実を知った老紳士が慌てて買い戻しを行ったが、手持ちの資金で及ばぬ分を洗浄資金の一部から流用した痕跡が残ってしまったと言う訳だ。

 「洗浄屋には私の息が掛かっていた、書面上の数値を一時的に誤魔化しておけば発覚までに決着をつけられる筈だったのだがね」
 「利で動く輩は更なる利か保身で簡単に転びます、容易に口を割りましたよ」
 余り得意に語れる事でもない。私自身、その情報を得るに至ったのは全くの偶然に依るものだったのだ。

 「君が姿を隠して後に数点の帳簿とリストを持ち出していた事を知ってからは如何に誘き寄せて始末するか、それしか考える余裕は無かった」
 盲目な復讐者に身を窶そうと決して衷心より非情には成りきれぬ老紳士にとり、その思考はどれだけの苦痛を強いたのやら。私の心中は其れを察するには既に非情に徹しすぎていた。

 「伺いたい事があります」
 質疑応答の立場が先と変わり無い事に気付き話題を切り替える。

 「教会に押し掛けたご友人の中に私の標的の姿が見えない事が気がかりで仕様がないんですよ」
 そう、件の骨董使いは廃工場でもその姿を見せていない。

 「今更正体を問おうとも思いません」
 と言うよりも、あくまで居場所の手掛かりとして身元を洗い出していただけであってそんな事は当初から埒外であったとも言える。

 「ただ、私が彼に対して伸ばされる手の悉くを払い誅する事の証明として、生贄として彼奴は絶対に逃すわけにいきません」
 老紳士に一歩近付き胸元にそっと拳を突き立てる。胸倉を掴み上げる心算だった筈だが、思う様に動かない掌が恨めしい。今更何を躊躇おうと言うのか。

 「手荒な真似は、したくありません」
 斯様な弱音とて、今更吐いた所でどうなると言うのか。恩人の愚行を諌められなかった自身を責める時ではないと言うのに、込み上げる感情の発露を抑える事に精一杯な自身を自覚する苦痛を紛らわす為に押し付ける拳に力を込め直した。
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