51 / 166
例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度
11-2
しおりを挟む
~11-2~
「彼からの頼まれ物はどうした?」
気を遣ってか私達から視線を外していた老紳士が傍らの男に問い掛ける。
「此処です、点検組み立てマガジンの装填まで済ましてありますんで」
男は自身の背中とテーブルの合間からケースを取り出し老紳士に手渡す。中身を確認すると今度は私の手元に其れが回される。
中にはグロック18、20連ロングマガジンが4本、ストックとその他細々した附属品が整頓して並べてある。
「断っておくが、組合の規約ではフルオート使用はグレーゾーンだよ」
後方の会議室を見詰めながら老紳士が念を押してくる。
「綱渡りは趣味では有りませんね」
ストックを取り付け本体との噛み合わせを確かめながら答えた。がたつきなどは感じられない、量産品だが言の通り手入れは充分に施されているようだ。その他の細々とした部品は現状では敢えて装着する意味も無いと判断しそのままケースに仕舞い込む。
「とは言え、目撃者が居なければ灰色は白になるのもこの業界の常だ」
悪戯じみた表情で此方を窺う老紳士の言葉に苦笑しつつ頷きを返した私はストックの後部を肩に当て引き金を絞る。テーブルの向こうから響く其れと酷似した発砲音が至近距離で鼓膜を揺らす。対照的に向こう側の銃声が静まる一瞬を聞き漏らさずに安全地帯から飛び出した。
「約束の通りの額を包んでおいたよ…とは言え、今日の御活躍に見合うかは疑問だが」
事務所の応接室で対面に腰掛けた老紳士はシュラック仕上げの光沢あるテーブルに恭しくアタッシュケースを乗せた。応接室の調度品は何れも時代を感じさせるアンティークで揃えられている。聞いた話では組合が未だ街の一角を牛耳るだけの小さな稼業であった頃の品も有るのだとか。一寸した時間遡行でもしたかのような気分に陶酔気味の私は眼前に置かれた大金にも然程と言った表情をしていたらしい。
「いえそんな、寧ろ見合った働きが出来て居たのか疑問な程で」
謙遜ではない、事実攻勢に飛び出して後は盛大な肩透かしを食らったのだから。潤沢な装備に身を包んだ賊ばらはさぞ手練れの集団だろうと覚悟して飛び出したにも関わらずこうして五体満足に歓談が出来ている。数に任せて押し掛けた連中の腕前はと言えばお粗末に尽き、覚悟の程はと言えば此方が押した分だけ引いていくと言った有り様だったのだ。
体勢を建て直し救援に向かおうとしていた玄関の警備と上手く挟撃の形を取れた為大多数の襲撃犯を捕縛することが出来た。身元を割り出し黒幕への手懸かりを得ようとしたが何の事はない、食い積めたチンピラ共が金で雇われただけの事であることしか現状では掴めていないらしかった。
「彼からの頼まれ物はどうした?」
気を遣ってか私達から視線を外していた老紳士が傍らの男に問い掛ける。
「此処です、点検組み立てマガジンの装填まで済ましてありますんで」
男は自身の背中とテーブルの合間からケースを取り出し老紳士に手渡す。中身を確認すると今度は私の手元に其れが回される。
中にはグロック18、20連ロングマガジンが4本、ストックとその他細々した附属品が整頓して並べてある。
「断っておくが、組合の規約ではフルオート使用はグレーゾーンだよ」
後方の会議室を見詰めながら老紳士が念を押してくる。
「綱渡りは趣味では有りませんね」
ストックを取り付け本体との噛み合わせを確かめながら答えた。がたつきなどは感じられない、量産品だが言の通り手入れは充分に施されているようだ。その他の細々とした部品は現状では敢えて装着する意味も無いと判断しそのままケースに仕舞い込む。
「とは言え、目撃者が居なければ灰色は白になるのもこの業界の常だ」
悪戯じみた表情で此方を窺う老紳士の言葉に苦笑しつつ頷きを返した私はストックの後部を肩に当て引き金を絞る。テーブルの向こうから響く其れと酷似した発砲音が至近距離で鼓膜を揺らす。対照的に向こう側の銃声が静まる一瞬を聞き漏らさずに安全地帯から飛び出した。
「約束の通りの額を包んでおいたよ…とは言え、今日の御活躍に見合うかは疑問だが」
事務所の応接室で対面に腰掛けた老紳士はシュラック仕上げの光沢あるテーブルに恭しくアタッシュケースを乗せた。応接室の調度品は何れも時代を感じさせるアンティークで揃えられている。聞いた話では組合が未だ街の一角を牛耳るだけの小さな稼業であった頃の品も有るのだとか。一寸した時間遡行でもしたかのような気分に陶酔気味の私は眼前に置かれた大金にも然程と言った表情をしていたらしい。
「いえそんな、寧ろ見合った働きが出来て居たのか疑問な程で」
謙遜ではない、事実攻勢に飛び出して後は盛大な肩透かしを食らったのだから。潤沢な装備に身を包んだ賊ばらはさぞ手練れの集団だろうと覚悟して飛び出したにも関わらずこうして五体満足に歓談が出来ている。数に任せて押し掛けた連中の腕前はと言えばお粗末に尽き、覚悟の程はと言えば此方が押した分だけ引いていくと言った有り様だったのだ。
体勢を建て直し救援に向かおうとしていた玄関の警備と上手く挟撃の形を取れた為大多数の襲撃犯を捕縛することが出来た。身元を割り出し黒幕への手懸かりを得ようとしたが何の事はない、食い積めたチンピラ共が金で雇われただけの事であることしか現状では掴めていないらしかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

ファントムペイン
粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。
理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。
主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。
手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった……
手足を失った恋人との生活。鬱系BL。
※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。


目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。


皇帝の立役者
白鳩 唯斗
BL
実の弟に毒を盛られた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。
その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。
目を開けると、数年前に回帰していた。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる