例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

小島秋人

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例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

9-1

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~9-1~

 昼下がりの柔らかな陽光が射し込む部屋で目を覚ました。どうやら疲れて眠ってしまっていたらしい。シャツとズボンの皺については疾うに諦めていた。

 あの後食卓の上から客間のソファーを経て寝室のベッドに辿り着いた私達は此れ迄互いに遠慮していたものを晒しぶち撒け合うように求め合った。誘いをかけてくれた当人はと言えば、未だ私の腕の中で穏やかな眠りに就いている。朝っぱらから繰り広げた情交を思うと良くぞ最後まで付き合ってくれたものだとつくづく感心だ。

 思わず寝顔に触れたくなったが、眠りの妨げになってはいけないと思い直し手を止めた。行き場を失った掌を彼の背中に回しゆっくりと撫で下ろすに留めておく。満足げに深い寝息を立てる彼の表情に此方の顔も綻ぶのが分かった。

 暫し目の前の情景を楽しんでいると彼も目を覚ました。寝起きの微睡んだ目元がまた愛らしい。

 「…何時頃でしょうか」
 自分では擦れない眦を私の腕に擦り付けながら問うてくる。時計に目をやると私が目を覚ましてからは既に小一時間が経っていた。

 「もうぞろ14時近いな」
 枕元に置いた洗面器に浸したタオルを片手で軽く絞り彼の目元に当てる。目覚めに彼の顔を拭うこのルーティンをこなせるのがこの世に私一人であると言う事実に細やかな優越感を抱いていた。

 「…お腹が空きました」
 それだけ述べると大きな欠伸を一つ。常ならば手で隠せないからと噛み殺しているのに。珍しいものが見れたと一人ほくそ笑んだ。日々遠慮が減っていく彼の姿は間違いなく私の安心に一役買ってくれている。
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