天使は誰

真白 雪和

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うごきだす感情

ー優大ーまたね 5

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しばらくして、彼女が帰ってきた。

あまり帰りが遅いと危ないからね。送って行くけど。帰してあげる。凄く楽しかったよ。

22時をちょっと過ぎたから、そろそろ帰る?

そう僕が聞くと、そうですね。お開きにしましょうと真希ちゃんが返事をした。

彼女、3杯飲んだな。話をするのが楽しそうだったから、何気に追加で頼んでた。

僕はお酒に強いけれど、あえて控えめにした。
お持ち帰りすると思われたくないし。

会計をする時、彼女が自分の分を払おうとしたから、止めた。

今日は話に付き合ってくれたんだから僕が払うよ。
そういうと彼女は遠慮をした。
後、僕の分まで払おうとしてたみたい。

一緒に飲みに行く女の子は、僕に払って貰うのが当たり前だと思ってる子が割と多い。

まあ、当たり前だと思ってくれても良いんだけどね。全然気にしないし大丈夫なんだけど、でも彼女みたいに遠慮する人は本当に好感が持てる。
こういう気遣いが出来る女性って凄く素敵だよね。

どうしても僕が払いたいからと言うと、何度もお礼を言ってくれた。凄く優しいな。

当たり前の事だと思わずに、ちゃんとお礼を言ってくれる。やっぱり真面目で良い子だな。

店を出てから、真希ちゃんは僕を見ながら言った。

「私、びっくりしました」

「ん? 何で? 」

「あの、凄い自意識過剰ですが、お持ち帰りされるかと」

「えー? 真希ちゃんが嫌がる事は絶対にしないよ」

「優大さんって凄くいい人ですね。素敵すぎます。私、男性って何を考えてるか分からないから、凄い苦手だったんですが。でも、優大さんは違います。男性として凄く尊敬します」

「そんな風に言われるとは。あ、手、繋ごうよ。危ないから」

「え? 手、繋ぐんですか」

「うん、だって危ないよ。真希ちゃん、転ぶかもだし?」

「私、そこまで酔っ払ってないです」

「でも、ね? 危なくない様にしたいから。姫を安全に送り届けなければ。はい。僕、手が冷たいかもだけど。冷え性だからさ」


「分かりました、照れちゃいますけど。ちゃんと送り届けてくださいね。王子」

「王子様か。あれ? 家来じゃないんだ? いや、守るんだからナイトか」

「優大さんは王子様っぽいです」

「なんか、照れるなあ」

「ふふっ」

僕が手を差し伸べると、真希ちゃんがそっと自分の手を添えてくれた。


「あっ!本当につめたーい。大丈夫ですか?」

「ん。大丈夫だよ。ありがとう」

彼女の顔を見ると、繋いでない方の手で口元を押さえていた。
その口元は微笑んでいる。

街灯に照らされて、わずかに見えた。

真希ちゃんの手が冷たい。夜はやっぱり冷えるな。
12月だもんな、冬は嫌いだ。寒いと物悲しい気持ちにさせられるから。
それにたまらなく人恋しくなってしまう。


帰り道にどうしても、聞かなきゃいけない。次があるかどうか。

「あの、さ。やっぱり、もう会ってくれないのかな」

あんなに強気だったはずなのにもう、会わないって言われるのが怖くなってきた。
凄く怖い。
メッセージアプリでの楽しいやり取りも、もう終わりか。ブロックされちゃうんだろうな。

「パワーストーンの話が出来る人、優大さん以外に居ないから、会わなくなったら凄く寂しいなって思ってしまいました」

え?それって、もしかして?
期待で胸が高なってしまう。
僕の勘違いじゃなかったら、また……


「優大さんさえ良かったら、これからも仲良くしてくれませんか」

「え!? 本当に!? 」

自分でもびっくりするくらい、大きな声をあげていた。

「友達として」

「友達か。彼氏じゃないんだ」

「あはは! 友達ですよ! 」

凄く嬉しいよ、真希ちゃん。
だって、これからも仲良く出来るんでしょう?
友達でも良いかな。今だけね。

「友達なら、敬語止めようよ」

「それは、優大さんのお願いですか」

「そうだね。いつもお願いばっかりで申し訳ない」

「いいですよ。優大さんのお願いは好きです」
 
「好きなのは僕じゃないんかい! お願いの方なんだ」

「あははは! 楽しい! 敬語止めるね! 優大さん」

「優大で良いって」

「それは流石に?……じゃあ、優大君」

「優大君かあ。まあ、それでも良いよ! 」




他にも楽しい会話をしてたらもう、着いてしまった。

居酒屋から駅まで割と近くて良かった。

腕時計を見ると歩いて、20分くらいだった。


真希ちゃんを無事に送り届けたから、ひと安心。


こんな事になるなんて。友達になれるとは、正直想定外だった。

今日は凄く楽しかったよ。本当にありがとう。バイバイ、また後で連絡するね。おやすみ。と言うと彼女はこちらこそありがとう。またね、おやすみなさいと手を振ってくれた。

心の中が彼女でいっぱいになりそうだ。
結構好きになってしまってる自分にびっくりした。

空を見ると月は見えなかったけど星がちらついていた。

息を吸った。恋してる自分が微笑ましいな、なんて思えてきて。笑ってしまった息が白い。


……あの作戦は意味が無くなってしまったような気がする。まあ良いか。


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