天使は誰

真白 雪和

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些細なはじまり

ー優大ー君の大切なブレスレット 2

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『何考えてるんだよ優大。俺を怒らせて楽しいか』

何考えてるんだよ、はこっちの台詞なんですけど。
なんで死んだ人間なのに、恋しちゃってんの。
本当に笑える。 

死んだら何にも残らないんだよ。1つとしてね。
それに得るものだってない。
失う他ないんだよ、それが死というものだ。

滑稽すぎるでしょ。
叶わない恋なんかしなければ良いのにね。
悲しくなるだけ。それなら、恋愛なんてしなければいい。

なのに彼は手にいれようとしてるんだから、ずる過ぎるよ。

あっくんの為にも、真希ちゃんは奪わなきゃならないね。
このままだと不幸になる、きっと。 

絶対に結ばれてはいけないんだよ。


2人の幸せの為に、別れさせるんだ。
あれ? 僕、結構優しくない?
性格悪いのに、って自分で言うのもなんだけど。

「怒ってるあっくんも、中々良いね。やっぱりあっくんは、かっこよくなくっちゃね」

うわあ、今凄く悪い顔してるな。自分で分かる。
楽しくてしょうがない。彼をおちょくるのが。
このまま僕の玩具おもちゃになってもらおう。

『馬鹿にすんなよ! どんな形でも真希の傍に居る! 俺が彼女を護らなかったら誰が護るんだよ! 』

自分の存在な真希ちゃんにとって必要だって、本気で思ってんの?
そんなの甘すぎるよ。相手のことを全く考えてないんだね。

護りたいとか言っておきながら、自分のためなんじゃないの。
必要とされるために、その立場でありたいんだよね、きっと。

それって何もかも間違ってるよ。
 
真希ちゃんが大好きで仕方ないんだね。

本当に彼女のためを思うなら、死んでる自分は要らないって思うでしょ。

それをいい気になって、真希ちゃんを困らせようとしてるんだからしょうもないよ。

邪魔でしかないんだ。あっくんって存在が、真希ちゃんにとっては。だって幽霊なんだから。

生きていれば話は別だけどね。生き返るなんて出来ないし。


「だから、僕が居るんじゃないの。第一さあ、気味悪くない? 幽霊が自分を好きだったら。僕だったら怖すぎて震えちゃうな、本当に気持ち悪い。嫌すぎるでしょ」

真希は俺の存在を受け入れてくれてる。
それに、彼女は俺だけのものだ。そう言ってみせるあっくんに言い返す。

「受け入れられてると、思い込みたいんだ。あっくんは、真希ちゃんにとって必要ないと思うけどな」

『そんな事ない』

あっくんは強く否定してきた。
表情が暗い。
なんだか可愛そうにも思えてくる。だって、実らない恋だって全く分かってないから。

真希ちゃんは彼の気持ちがここまで強いのを、知ってるんだろうか?

独占欲が強いことさえ、きっと知らないだろうな。

化けの皮、剥がしてやりたいな。彼女の前であっくんの本性を教えてやりたい。

真希ちゃん、怯えるかな。悲しむかな。
いずれにせよ僕は真希ちゃんを手に入れるんだ。

あっくんには嫌われてもらう。
彼女はあっくんの本性なんてきっと知らないし、大好きだろうからズタズタに引き裂いてやらなくては。


自分の大切にしてる関係なんてね、簡単に壊れるから。僕はそれを沢山経験してきた。

どんなにお互い、心地よくたって必ず終わりは来る。
本当の自分を見せただけですぐに嫌われるよ。
だから、人間はみんな仮面を被るんだ。


本音で居続けるなんて、正しいはずがない。

『真希が俺を必要としなくなったら、もう1度死んだって良い』

あのさあ、馬鹿も大概にしてほしいんだけど。
本当に情熱的ですこと。
熱すぎてこっちが恥ずかしくなってくる。
そんなに本気になるような相手なんだね。


というかさ、2度も死なれたら大迷惑だよ。
ただでさえ1度死んでしまって、それによってバンドが活動出来なくなってしまったのに。

あっくんが死んでから、バンドの時間は止まったままだ。活動なんて、とても出来ない。

彼がボーカルじゃなきゃ、意味が無いから。
ジグソーパズルと同じ。ひとつなくなったら、もう完成しない。

4人で咲き誇って群青なんだから。
あっくんの居ない咲き誇って群青なんて、活動しないままで良いんだ。

ねえ。自分の気持ちが本気であればあるほど、後悔するんだよ。

止めれば良いのにね、何故分からないかな。
彼は、自分で自分の首を絞めてるよ。凄く苦しいはずだ。

あっくん。本当は気づいてるんでしょう?自分の存在が要らないって。

気づかない振りしてないでさ、僕が教えてあげようか?


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