10 / 226
Fragrance 1-コイノカオリ-
第9話『コクルカドウカ?』
しおりを挟む
教室に戻ると、絢ちゃんはいつものようにたくさんの女子に囲まれていた。私が絢ちゃんの方を見ると、彼女ははっきりと私の目を見て微笑んでくれた。
そんなことに優越感を覚えながら、私は自分の席に戻る。
「ハル、どうだった?」
「何か進展はありましたか?」
杏ちゃんと美咲ちゃんは私が戻ってくるや否や、私の所までやってきてそんなことを訊いてくる。
明日、絢ちゃんと2人で潮浜シャンサインランドに行くこと……彼女自身が杏ちゃんと美咲ちゃんになら話してもいいって言ってたから、遠慮なく話そう。
「実は……」
2人に屋上であったことを、額にキスされたことだけを省いて簡単に話した。
「それって、原田さんが遥香ちゃんのことが気になっているってことじゃないですか?」
「サキの言う通りかも。これは絶対にハルに気があるよ」
「そ、そうかなぁ……」
絶対にニヤけているなぁ、今。
確かに、絢ちゃんと話したことで、距離はかなり縮まったと思うけど……未だに私には絢ちゃんが高嶺の花のようにしか思えないときがある。そんな人が私のことを……って思うと何だか信じられない気持ちになる。
2人きりでいるときは普通の女の子に見えるんだけど、どうして今みたいにたくさんの女子に囲まれていると、王子様のように見えてしまうんだろう。絢ちゃんが意図的にそう見せているのか。それとも、周りの環境が絢ちゃんを変えてしまうのか。私にはその理由がよく分からない。
「明日にでもコクっちゃえば?」
「へっ?」
杏ちゃんの唐突な一言に私は思わず甲高い声を上げてしまう。
「原田さんと1日中2人きりでいられるなんて、千載一遇のチャンスじゃん。コクるにはちょうどいいと思うよ?」
「そ、そうかなぁ……」
杏ちゃんの言う通り、告白するにはちょうどいいかもしれないけど、まだ不安は残っている。
絢ちゃんは私を気にしているようだったけど、それが好きだという気持ちからきているのか、入学式の日に迷子になっていた私を助けたからなのか分からないし。
「サキもそう思うよね?」
「えっ? そ、そうですね……」
突然振られたからか、美咲ちゃんは驚く。しかし、すぐに落ち着いた笑みを見せ、
「原田さんに対する想いが確かなものなら……告白してもいいんじゃないでしょうか。結果はどうであれ、好きだという気持ちを伝えることが大事だと思います」
というアドバイスを言ってくれる。
「気持ちを伝える、か……」
「まあ、早く告白しないと他の子に取られちゃって後悔すると思うけどね。原田さん、今や構内一の人気者だし」
「この前もそんなことを言ってたね。もしかして、杏ちゃんって肉食系女子?」
「あははっ、そうかもしれないね。まあ、もし原田さんに振られても、そのときはあたしがハルを彼女にするからさ。ハルはすっごく可愛いし、彼女として文句なしだから」
「そ、それは聞き捨てなりません! 万が一原田さんに振られたら、そのときは私が遥香ちゃんの彼女になりますから! 私達は小学校の時からの付き合いですし、杏ちゃんよりも遥香ちゃんを幸せにできると思います!」
「もうやめてよ! 私、まだ絢ちゃんに告白してないし、振られてもないんだから!」
まったく、酷いよ。まるで私が絢ちゃんに振られることを前提に話してる。杏ちゃんと美咲ちゃんがそこまで私のことを考えてくれているのは嬉しいけど。絢ちゃんが凄く人気のある人でも、絢ちゃんの彼女になりたい気持ちは強いんだから。
「でも、私なりに頑張ってみる。振られた後のことは、振られたときに考えるよ」
「……そうですね。それが一番だと思います」
「じゃあ、遥香の勇姿を見守るために、明日……サキと一緒に潮浜シャンサインランドにでも行ってみようか?」
「あっ、いいですね! それ」
「別にいいよっ! 明日告白するかどうか分からないんだから!」
もう、杏ちゃんも美咲ちゃんも、私の恋の行方を単に面白がっているだけなんじゃないのかなぁ。
「もう、そんなに怒らないでよ。冗談だって。あたしもサキもハルの恋が上手くいくように願っているんだから」
「……願っててね?」
「明日、原田さんと楽しんできてくださいね」
「そうだね。まずは一緒に楽しむことが大切だよね」
そうだ、明日は絢ちゃんと2人で遊園地に行けるんだ。告白とかも大切だけど、まずは絢ちゃんとの時間を楽しまないと損だよね。
気づけば、昼休みも残り10分となっていた。私は急いでお弁当を食べるのであった。
そんなことに優越感を覚えながら、私は自分の席に戻る。
「ハル、どうだった?」
「何か進展はありましたか?」
杏ちゃんと美咲ちゃんは私が戻ってくるや否や、私の所までやってきてそんなことを訊いてくる。
明日、絢ちゃんと2人で潮浜シャンサインランドに行くこと……彼女自身が杏ちゃんと美咲ちゃんになら話してもいいって言ってたから、遠慮なく話そう。
「実は……」
2人に屋上であったことを、額にキスされたことだけを省いて簡単に話した。
「それって、原田さんが遥香ちゃんのことが気になっているってことじゃないですか?」
「サキの言う通りかも。これは絶対にハルに気があるよ」
「そ、そうかなぁ……」
絶対にニヤけているなぁ、今。
確かに、絢ちゃんと話したことで、距離はかなり縮まったと思うけど……未だに私には絢ちゃんが高嶺の花のようにしか思えないときがある。そんな人が私のことを……って思うと何だか信じられない気持ちになる。
2人きりでいるときは普通の女の子に見えるんだけど、どうして今みたいにたくさんの女子に囲まれていると、王子様のように見えてしまうんだろう。絢ちゃんが意図的にそう見せているのか。それとも、周りの環境が絢ちゃんを変えてしまうのか。私にはその理由がよく分からない。
「明日にでもコクっちゃえば?」
「へっ?」
杏ちゃんの唐突な一言に私は思わず甲高い声を上げてしまう。
「原田さんと1日中2人きりでいられるなんて、千載一遇のチャンスじゃん。コクるにはちょうどいいと思うよ?」
「そ、そうかなぁ……」
杏ちゃんの言う通り、告白するにはちょうどいいかもしれないけど、まだ不安は残っている。
絢ちゃんは私を気にしているようだったけど、それが好きだという気持ちからきているのか、入学式の日に迷子になっていた私を助けたからなのか分からないし。
「サキもそう思うよね?」
「えっ? そ、そうですね……」
突然振られたからか、美咲ちゃんは驚く。しかし、すぐに落ち着いた笑みを見せ、
「原田さんに対する想いが確かなものなら……告白してもいいんじゃないでしょうか。結果はどうであれ、好きだという気持ちを伝えることが大事だと思います」
というアドバイスを言ってくれる。
「気持ちを伝える、か……」
「まあ、早く告白しないと他の子に取られちゃって後悔すると思うけどね。原田さん、今や構内一の人気者だし」
「この前もそんなことを言ってたね。もしかして、杏ちゃんって肉食系女子?」
「あははっ、そうかもしれないね。まあ、もし原田さんに振られても、そのときはあたしがハルを彼女にするからさ。ハルはすっごく可愛いし、彼女として文句なしだから」
「そ、それは聞き捨てなりません! 万が一原田さんに振られたら、そのときは私が遥香ちゃんの彼女になりますから! 私達は小学校の時からの付き合いですし、杏ちゃんよりも遥香ちゃんを幸せにできると思います!」
「もうやめてよ! 私、まだ絢ちゃんに告白してないし、振られてもないんだから!」
まったく、酷いよ。まるで私が絢ちゃんに振られることを前提に話してる。杏ちゃんと美咲ちゃんがそこまで私のことを考えてくれているのは嬉しいけど。絢ちゃんが凄く人気のある人でも、絢ちゃんの彼女になりたい気持ちは強いんだから。
「でも、私なりに頑張ってみる。振られた後のことは、振られたときに考えるよ」
「……そうですね。それが一番だと思います」
「じゃあ、遥香の勇姿を見守るために、明日……サキと一緒に潮浜シャンサインランドにでも行ってみようか?」
「あっ、いいですね! それ」
「別にいいよっ! 明日告白するかどうか分からないんだから!」
もう、杏ちゃんも美咲ちゃんも、私の恋の行方を単に面白がっているだけなんじゃないのかなぁ。
「もう、そんなに怒らないでよ。冗談だって。あたしもサキもハルの恋が上手くいくように願っているんだから」
「……願っててね?」
「明日、原田さんと楽しんできてくださいね」
「そうだね。まずは一緒に楽しむことが大切だよね」
そうだ、明日は絢ちゃんと2人で遊園地に行けるんだ。告白とかも大切だけど、まずは絢ちゃんとの時間を楽しまないと損だよね。
気づけば、昼休みも残り10分となっていた。私は急いでお弁当を食べるのであった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
ここはあなたの家ではありません
風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」
婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。
わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。
実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。
そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり――
そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね?
※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
興味はないので、さっさと離婚してくださいね?
hana
恋愛
伯爵令嬢のエレノアは、第二王子オーフェンと結婚を果たした。
しかしオーフェンが男爵令嬢のリリアと関係を持ったことで、事態は急変する。
魔法が使えるリリアの方が正妃に相応しいと判断したオーフェンは、エレノアに冷たい言葉を放ったのだ。
「君はもういらない、リリアに正妃の座を譲ってくれ」
【完結】野垂れ死ねと言われ家を追い出されましたが幸せです
kana
恋愛
伯爵令嬢のフローラは10歳の時に母を亡くした。
悲しむ間もなく父親が連れてきたのは後妻と義姉のエリザベスだった。
その日から虐げられ続けていたフローラは12歳で父親から野垂れ死ねと言われ邸から追い出されてしまう。
さらに死亡届まで出されて⋯⋯
邸を追い出されたフローラには会ったこともない母方の叔父だけだった。
快く受け入れてくれた叔父。
その叔父が連れてきた人が⋯⋯
※毎度のことながら設定はゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字が多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】そんなに妹がいいのですか?では私は悪女となって去りましょう
サラサ
恋愛
タイトル変更しました。旧タイトル「そんなに妹がいいのですか?では私は去りますね」
長年聖女としてボロボロになりながら、この国を支えてきた、スカーレット。
王太子オーエンの婚約者として大変な王妃教育も頑張ってきたのに、彼は裏で妹のシャルロットと浮気をし、大勢の前で婚約破棄を言い渡してきた。
しかもオーエンの子供を身籠っていると言う。
そのうえ王家が出した答えは、私にシャルロットの「影」として仕えろという酷いもの。
誰一人として聖女としての力を認めず、馬鹿にしていたと知った私は決めました!
絶対、みんなを後悔させてみせますわ!
ゆるゆるの世界観です。最初のほうに少し性的描写やセリフがあるので、念のためR15にしてあります
短編から長編に変更になりました。短く読みたかったという読者様、すみません。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
地味な私が恋愛ゲーム世界の攻略者?!
Shell
恋愛
何もかも地味な女子高生 相浦雪 はある日前世の記憶と共に自分が恋愛ゲームの世界に転生してしまったことに気づく。だが、所詮自分はモブキャラだと安心していたところ親友がヒロインだと気づく。ヒロインに集まるはずの攻略対象が何故かモブキャラである私に集まってきて?!転生モブキャラが恋愛ゲームでヒロインにー。
地味系女子がおこす学園ラブコメストーリー。
ひねくれ師匠と偽りの恋人
紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ
恋愛
「お前、これから異性の体液を摂取し続けなければ死ぬぞ」
異世界に落とされた少女ニチカは『魔女』と名乗る男の言葉に絶望する。
体液。つまり涙、唾液、血液、もしくは――いや、キスでお願いします。
そんなこんなで元の世界に戻るため、彼と契約を結び手がかりを求め旅に出ることにする。だが、この師匠と言うのが俺様というか傲慢というかドSと言うか…今日も振り回されっぱなしです。
ツッコミ系女子高生と、ひねくれ師匠のじれじれラブファンタジー
基本ラブコメですが背後に注意だったりシリアスだったりします。ご注意ください
イラスト:八色いんこ様
この話は小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる