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特別編
第4話『如月姉妹』
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「お邪魔します、玲人君」
「お邪魔します! 玲人さん!」
青いノースリーブのワンピースというペアルックで、如月姉妹が僕の家にやってきた。服装のためなのか沙奈会長はもちろんのこと、真奈ちゃんも大人っぽく見えて。
「沙奈会長、とても似合っていますよ」
「ありがとう、玲人君」
「真奈ちゃんも似合ってるね」
「ありがとうございます。嬉しいな……」
年下なのもあってか、自然と真奈ちゃんの頭を撫でてしまう。嬉しそうにしているのがまた可愛らしい。
「琴葉と姉さんは僕の部屋にいますので、さっそく行きましょう」
僕は沙奈会長と真奈ちゃんを自分の部屋と連れて行く。
「沙奈会長と真奈ちゃんが来たよ」
「いらっしゃい」
姉さんは爽やかな笑みで迎えるけど、琴葉は緊張した様子で正座をしている。
「ペアルックのワンピース可愛いね。ええと、ミディアムヘアのあなたが?」
「はい。初めまして、如月真奈といいます。中学2年生です」
「真奈ちゃんね。お姉さんに似て可愛いなぁ。初めまして、あたしは逢坂麻実といいます。大学2年生。お姉さんの恋人のお姉さんだよ。これからよろしくね」
「よろしくお願いします」
お姉さんの恋人のお姉さん……間違ってはいないけど、何だかおかしく思えてしまうな。
そんな自己紹介をした姉さんは琴葉のすぐ後ろまで行き、両肩をそっと掴む。琴葉が振り返ると姉さんはにこっと笑った。
すると、勇気が出たのか琴葉はゆっくりと立ち上がって、真奈ちゃんのすぐ目の前まで向かう。
「は、初めまして! 恩田琴葉です! 色々とあって高校には行っていないんけど……レイ君と同じ学年です。……あっ、レイ君っていうのはお姉さんの恋人のことです」
「ふふっ、そうですか。よろしくお願いします、琴葉さん」
「よ、よろしく!」
琴葉の方から真奈ちゃんと握手をした。未だに落ち着かない琴葉を見て、真奈ちゃんは落ち着いた笑みを浮かべている。まったく、どっちが年上なのか。
「それじゃ、俺は沙奈会長と真奈ちゃんの分の紅茶も淹れてきますね。琴葉と姉さんは紅茶のおかわりする?」
「お願いしようかな、レイ君」
「あたしもお願い、玲人」
「分かった。じゃあ、みんなの分の紅茶を淹れてきますね。沙奈会長と真奈ちゃんも好きな場所でくつろいでいてください」
僕は……コーヒーにしようかな。
僕は再び1階に降りて、キッチンで4人分の紅茶と自分のコーヒーを作る。まだまだ盛り上がっているのか、リビングからうちの両親と琴葉の両親による談笑が聞こえてくる。気兼ねなく話せるのはおよそ2年ぶりだから、話したいことは山ほどあるのだろう。
紅茶とコーヒーを持って部屋に戻る。可愛らしい女の子達の声が聞こえてくるな。
「お待たせしま――」
「ひゃあっ」
部屋の扉を開けると、そこには琴葉と姉さんに真奈ちゃんが胸を鷲掴みされているという光景が。さっき、2人は胸の話をしていたからなぁ。
すると、真奈ちゃんは恥ずかしがりながらも僕のことを見つめて、
「……こんなところを見られてしまったのですから、もう玲人さん以外のお嫁さんにはなれません。ただ、玲人さんにはお姉ちゃんという結婚前提で付き合っている恋人がいますから、あたしは愛人ということでお願いできますか?」
そんなことを言ってきたのだ。何というか、沙奈会長の妹さんであると強く印象づける言葉だ。沙奈会長も同じようなことを言いそうだ。
「れ、玲人さんもあたしの胸を揉んでみますか?」
「……遠慮しておくよ」
真奈ちゃんからの誘いであっても実際に彼女の胸を揉んでしまったら、沙奈会長に最悪殺されそうだ。少なくとも、明日からの旅行は健康に過ごすことはできず、温泉に入って療養する羽目になるだろう。
「不可抗力じゃない限り、玲人君が揉んでいい女性の胸は私の胸だけだよ。その代わり、玲人君の胸を揉んでいいのも私だけだよ!」
揉めるほどの胸を僕は持っていないけれど、沙奈会長が楽しそうな様子なのでここでツッコミは入れないでおこう。
4人の紅茶をテーブルの上に置いて、僕は勉強机の椅子に腰を下ろし温かいコーヒーを飲む。
「琴葉も姉さんも真奈ちゃんの胸から手を離しな」
「あっ、いいんですよ。お二人があたしの胸に興味があって、触ってみたいということでしたから。そうしたら、意外と気持ち良くてあんな声を挙げてしまったんです。そのとき、玲人さんが戻ってきたんです」
「……な、なるほどね」
悪いタイミングで戻ってきてしまったようだ。もう少し、うちの両親と琴葉の両親の会話に聞き耳を立てていれば良かったかな。
「ただ、いくら真奈でも玲人君の愛人になるのは聞き捨てならないなぁ」
「愛人については冗談だよ、お姉ちゃん。でも、漫画とかではあるじゃない。恥ずかしいところを見られたからお嫁に行けないっていうセリフ。玲人さんに見られて恥ずかしくなったから言ってみたんだ」
「それならいいけど、本気で玲人君の愛人になるって思ったよ」
「ふふっ、お姉ちゃんって玲人さんが絡むことだと勘違いとか早とちりするよね。でも、お姉ちゃんのためなら何だってするよ、あたしは」
「……今はその気持ちを受け取っておくよ、真奈」
真奈ちゃん自身の優しさもあるんだろうけど、きっと沙奈会長が僕とのことをたくさん話していたんだと思う。
「そういえば、お姉様や琴葉ちゃんはどこか行きたい場所はありますか?」
「あたしは午前中から玲人と一緒にガイドブックを見ながら色々と見ているんだけど、場所とかを考えるとキツいところばかりで。行き当たりばったりでもいいし、みんなの行きたいところも気になるから、あたしは運転係に徹しようかなとも思ってる。温泉や料理はホテルでもたっぷりと楽しめるし、必ず行きたい河乃湖ハイランドは2日目に行くって決まっているからね」
「そうですか。分かりました。じゃあ、琴葉ちゃんは?」
「あたしもスマホで調べて……いちご狩りをしたいなと思って。家からホテルまでのルートにいくつかあって、予約しなくても行けるところもあるみたいです」
「いちご狩りかぁ。いちごは今がシーズンラストだもんね。じゃあ、いちご狩りは行こうか」
そういえば、山梨じゃないけど、僕が小学校低学年くらいのゴールデンウィークに家族で旅行に行ったときに旅先でいちご狩りをしたなぁ。父さんに負けないくらいに姉さんがたくさん食べていたのを覚えている。
「いちご狩りかぁ。懐かしいね、玲人」
「そうだね、姉さん。昔に比べたらたくさん食べられそうだ。僕もいちご狩りをしたくなってきたよ。沙奈会長や真奈ちゃんはどこか行きたい場所はありますか?」
「あたしは麻実さんと同じです。ホテルで温泉やお料理を楽しんで、河乃湖ハイランドでたくさん遊びたいなって。でも、どこかでご当地スイーツを食べたいですね。お姉ちゃんは確か……行きたい神社があるんだよね?」
「うん。桜乃庭神社。恋愛や結婚に関して御利益のある神社みたいで。ホテルから近いし行ってみたいなって」
「いいですね! 神社やお寺っていうと修学旅行みたいですよね」
「琴葉ちゃんもそう思う? まあ、今回の旅行は琴葉ちゃんと玲人君が行けなかった修学旅行と、生徒会としての旅行と、玲人君と私の婚前旅行を兼ねているからね。あとは事件解決と琴葉ちゃんの退院祝いかな」
「意外と重みのある旅行になりそうですね」
「まあ、それは名目であって、旅行を通じて6人で楽しい思い出を作れればいいなって思ってるよ」
楽しくなることに越したことはないからな。ハメを外すことなく、6人で楽しい3日間を過ごせればいいなと思っている。
「あと、樹里先輩から鍾乳洞に行きたいって言われたんだ。私も行きたいなって思ってる」
鍾乳洞か。副会長さんが行きたいって言うのは何だか意外だ。
「鍾乳洞ですか、いいですね。あの独特な空間がいいですよね」
鍾乳洞は夏休みの旅行とかで何回か言ったことがある。涼しいから特に夏の旅行にはいい観光スポットだよね。
「へえ、玲人君、穴が好きなんだ」
「穴と言っても間違いじゃないですけど、味気ない感じがしますね」
「ふうん。でも、玲人君が穴に入るのが好きなのはイメージ通りかも」
沙奈会長はニヤニヤしながらそう言う。そんな彼女を見て何を考えているのかおおよその想像がついた。こうなったら、客室のベッドで沙奈会長のことをたくさん悶えさせた方がいいな。
「鍾乳洞ってワクワクするよね、麻実ちゃん」
「そうだね、琴葉ちゃん。中は涼しくて気持ちいいんだよね。たまに凄く寒いところもあるけれど」
「前に旅行で鍾乳洞に行ったとき、凄く寒くてお姉ちゃんとずっとくっついていたことがありますね。それでも楽しかったなぁ」
「じゃあ、鍾乳洞も決定ってことで。樹里先輩に鍾乳洞といちご狩り、桜乃庭神社には行くって連絡しておきますね」
2日目はずっと河乃湖ハイランドで遊ぶ予定だから、行きたい場所はこのくらいでいいかもしれないな。これらの他にもお昼ご飯を食べたり、スイーツ店に行ったりする予定もあるし。
「そうだ、沙奈さん。アルバムとホームビデオを持ってきたので見ますか?」
「うん、見たい!」
沙奈会長、昨日以上に興奮した様子。ううっ、嫌な予感しかしないので、ここから逃げようかな。
「僕、ちょっとコンビニにでも行ってお菓子を……」
「お菓子ならあたしの部屋にあるから大丈夫だよ、玲人」
「じゃあ、旅行中にあったら良さそうなものを……」
「別に海外に行くわけじゃないし、欲しいものがあったらコンビニとかに寄ればいいんじゃないかな、玲人君」
「沙奈ちゃんの言うとおりだよ。車で行くんだからさ。みんなも旅行中は遠慮なく言ってね」
「お姉様のそう言っているんだし。……ね?」
沙奈会長は可愛らしい笑みを浮かべながら、僕の手をぎゅっと握ってくる。まあ、会長や姉さんの言うことはごもっともだけどさ。
「小さい頃の写真やビデオなんだから大丈夫だって、レイ君」
「……琴葉は大丈夫かもしれないけど、僕は結構ドキドキするんだよ」
小学生くらいまでは琴葉や姉さん、姉さんの友達に色々なことをされてきたからな。
「玲人君のことをからかったりしないから、一緒に見ようよ」
「……しょうがないですね」
ここで逃げても沙奈会長達がアルバムやホームビデオを見ることに変わりはない。それなら、その場で何か言われた方がマシだろう。
ざわつく気持ちを落ち着かせるためにコーヒーを飲むのであった。
「お邪魔します! 玲人さん!」
青いノースリーブのワンピースというペアルックで、如月姉妹が僕の家にやってきた。服装のためなのか沙奈会長はもちろんのこと、真奈ちゃんも大人っぽく見えて。
「沙奈会長、とても似合っていますよ」
「ありがとう、玲人君」
「真奈ちゃんも似合ってるね」
「ありがとうございます。嬉しいな……」
年下なのもあってか、自然と真奈ちゃんの頭を撫でてしまう。嬉しそうにしているのがまた可愛らしい。
「琴葉と姉さんは僕の部屋にいますので、さっそく行きましょう」
僕は沙奈会長と真奈ちゃんを自分の部屋と連れて行く。
「沙奈会長と真奈ちゃんが来たよ」
「いらっしゃい」
姉さんは爽やかな笑みで迎えるけど、琴葉は緊張した様子で正座をしている。
「ペアルックのワンピース可愛いね。ええと、ミディアムヘアのあなたが?」
「はい。初めまして、如月真奈といいます。中学2年生です」
「真奈ちゃんね。お姉さんに似て可愛いなぁ。初めまして、あたしは逢坂麻実といいます。大学2年生。お姉さんの恋人のお姉さんだよ。これからよろしくね」
「よろしくお願いします」
お姉さんの恋人のお姉さん……間違ってはいないけど、何だかおかしく思えてしまうな。
そんな自己紹介をした姉さんは琴葉のすぐ後ろまで行き、両肩をそっと掴む。琴葉が振り返ると姉さんはにこっと笑った。
すると、勇気が出たのか琴葉はゆっくりと立ち上がって、真奈ちゃんのすぐ目の前まで向かう。
「は、初めまして! 恩田琴葉です! 色々とあって高校には行っていないんけど……レイ君と同じ学年です。……あっ、レイ君っていうのはお姉さんの恋人のことです」
「ふふっ、そうですか。よろしくお願いします、琴葉さん」
「よ、よろしく!」
琴葉の方から真奈ちゃんと握手をした。未だに落ち着かない琴葉を見て、真奈ちゃんは落ち着いた笑みを浮かべている。まったく、どっちが年上なのか。
「それじゃ、俺は沙奈会長と真奈ちゃんの分の紅茶も淹れてきますね。琴葉と姉さんは紅茶のおかわりする?」
「お願いしようかな、レイ君」
「あたしもお願い、玲人」
「分かった。じゃあ、みんなの分の紅茶を淹れてきますね。沙奈会長と真奈ちゃんも好きな場所でくつろいでいてください」
僕は……コーヒーにしようかな。
僕は再び1階に降りて、キッチンで4人分の紅茶と自分のコーヒーを作る。まだまだ盛り上がっているのか、リビングからうちの両親と琴葉の両親による談笑が聞こえてくる。気兼ねなく話せるのはおよそ2年ぶりだから、話したいことは山ほどあるのだろう。
紅茶とコーヒーを持って部屋に戻る。可愛らしい女の子達の声が聞こえてくるな。
「お待たせしま――」
「ひゃあっ」
部屋の扉を開けると、そこには琴葉と姉さんに真奈ちゃんが胸を鷲掴みされているという光景が。さっき、2人は胸の話をしていたからなぁ。
すると、真奈ちゃんは恥ずかしがりながらも僕のことを見つめて、
「……こんなところを見られてしまったのですから、もう玲人さん以外のお嫁さんにはなれません。ただ、玲人さんにはお姉ちゃんという結婚前提で付き合っている恋人がいますから、あたしは愛人ということでお願いできますか?」
そんなことを言ってきたのだ。何というか、沙奈会長の妹さんであると強く印象づける言葉だ。沙奈会長も同じようなことを言いそうだ。
「れ、玲人さんもあたしの胸を揉んでみますか?」
「……遠慮しておくよ」
真奈ちゃんからの誘いであっても実際に彼女の胸を揉んでしまったら、沙奈会長に最悪殺されそうだ。少なくとも、明日からの旅行は健康に過ごすことはできず、温泉に入って療養する羽目になるだろう。
「不可抗力じゃない限り、玲人君が揉んでいい女性の胸は私の胸だけだよ。その代わり、玲人君の胸を揉んでいいのも私だけだよ!」
揉めるほどの胸を僕は持っていないけれど、沙奈会長が楽しそうな様子なのでここでツッコミは入れないでおこう。
4人の紅茶をテーブルの上に置いて、僕は勉強机の椅子に腰を下ろし温かいコーヒーを飲む。
「琴葉も姉さんも真奈ちゃんの胸から手を離しな」
「あっ、いいんですよ。お二人があたしの胸に興味があって、触ってみたいということでしたから。そうしたら、意外と気持ち良くてあんな声を挙げてしまったんです。そのとき、玲人さんが戻ってきたんです」
「……な、なるほどね」
悪いタイミングで戻ってきてしまったようだ。もう少し、うちの両親と琴葉の両親の会話に聞き耳を立てていれば良かったかな。
「ただ、いくら真奈でも玲人君の愛人になるのは聞き捨てならないなぁ」
「愛人については冗談だよ、お姉ちゃん。でも、漫画とかではあるじゃない。恥ずかしいところを見られたからお嫁に行けないっていうセリフ。玲人さんに見られて恥ずかしくなったから言ってみたんだ」
「それならいいけど、本気で玲人君の愛人になるって思ったよ」
「ふふっ、お姉ちゃんって玲人さんが絡むことだと勘違いとか早とちりするよね。でも、お姉ちゃんのためなら何だってするよ、あたしは」
「……今はその気持ちを受け取っておくよ、真奈」
真奈ちゃん自身の優しさもあるんだろうけど、きっと沙奈会長が僕とのことをたくさん話していたんだと思う。
「そういえば、お姉様や琴葉ちゃんはどこか行きたい場所はありますか?」
「あたしは午前中から玲人と一緒にガイドブックを見ながら色々と見ているんだけど、場所とかを考えるとキツいところばかりで。行き当たりばったりでもいいし、みんなの行きたいところも気になるから、あたしは運転係に徹しようかなとも思ってる。温泉や料理はホテルでもたっぷりと楽しめるし、必ず行きたい河乃湖ハイランドは2日目に行くって決まっているからね」
「そうですか。分かりました。じゃあ、琴葉ちゃんは?」
「あたしもスマホで調べて……いちご狩りをしたいなと思って。家からホテルまでのルートにいくつかあって、予約しなくても行けるところもあるみたいです」
「いちご狩りかぁ。いちごは今がシーズンラストだもんね。じゃあ、いちご狩りは行こうか」
そういえば、山梨じゃないけど、僕が小学校低学年くらいのゴールデンウィークに家族で旅行に行ったときに旅先でいちご狩りをしたなぁ。父さんに負けないくらいに姉さんがたくさん食べていたのを覚えている。
「いちご狩りかぁ。懐かしいね、玲人」
「そうだね、姉さん。昔に比べたらたくさん食べられそうだ。僕もいちご狩りをしたくなってきたよ。沙奈会長や真奈ちゃんはどこか行きたい場所はありますか?」
「あたしは麻実さんと同じです。ホテルで温泉やお料理を楽しんで、河乃湖ハイランドでたくさん遊びたいなって。でも、どこかでご当地スイーツを食べたいですね。お姉ちゃんは確か……行きたい神社があるんだよね?」
「うん。桜乃庭神社。恋愛や結婚に関して御利益のある神社みたいで。ホテルから近いし行ってみたいなって」
「いいですね! 神社やお寺っていうと修学旅行みたいですよね」
「琴葉ちゃんもそう思う? まあ、今回の旅行は琴葉ちゃんと玲人君が行けなかった修学旅行と、生徒会としての旅行と、玲人君と私の婚前旅行を兼ねているからね。あとは事件解決と琴葉ちゃんの退院祝いかな」
「意外と重みのある旅行になりそうですね」
「まあ、それは名目であって、旅行を通じて6人で楽しい思い出を作れればいいなって思ってるよ」
楽しくなることに越したことはないからな。ハメを外すことなく、6人で楽しい3日間を過ごせればいいなと思っている。
「あと、樹里先輩から鍾乳洞に行きたいって言われたんだ。私も行きたいなって思ってる」
鍾乳洞か。副会長さんが行きたいって言うのは何だか意外だ。
「鍾乳洞ですか、いいですね。あの独特な空間がいいですよね」
鍾乳洞は夏休みの旅行とかで何回か言ったことがある。涼しいから特に夏の旅行にはいい観光スポットだよね。
「へえ、玲人君、穴が好きなんだ」
「穴と言っても間違いじゃないですけど、味気ない感じがしますね」
「ふうん。でも、玲人君が穴に入るのが好きなのはイメージ通りかも」
沙奈会長はニヤニヤしながらそう言う。そんな彼女を見て何を考えているのかおおよその想像がついた。こうなったら、客室のベッドで沙奈会長のことをたくさん悶えさせた方がいいな。
「鍾乳洞ってワクワクするよね、麻実ちゃん」
「そうだね、琴葉ちゃん。中は涼しくて気持ちいいんだよね。たまに凄く寒いところもあるけれど」
「前に旅行で鍾乳洞に行ったとき、凄く寒くてお姉ちゃんとずっとくっついていたことがありますね。それでも楽しかったなぁ」
「じゃあ、鍾乳洞も決定ってことで。樹里先輩に鍾乳洞といちご狩り、桜乃庭神社には行くって連絡しておきますね」
2日目はずっと河乃湖ハイランドで遊ぶ予定だから、行きたい場所はこのくらいでいいかもしれないな。これらの他にもお昼ご飯を食べたり、スイーツ店に行ったりする予定もあるし。
「そうだ、沙奈さん。アルバムとホームビデオを持ってきたので見ますか?」
「うん、見たい!」
沙奈会長、昨日以上に興奮した様子。ううっ、嫌な予感しかしないので、ここから逃げようかな。
「僕、ちょっとコンビニにでも行ってお菓子を……」
「お菓子ならあたしの部屋にあるから大丈夫だよ、玲人」
「じゃあ、旅行中にあったら良さそうなものを……」
「別に海外に行くわけじゃないし、欲しいものがあったらコンビニとかに寄ればいいんじゃないかな、玲人君」
「沙奈ちゃんの言うとおりだよ。車で行くんだからさ。みんなも旅行中は遠慮なく言ってね」
「お姉様のそう言っているんだし。……ね?」
沙奈会長は可愛らしい笑みを浮かべながら、僕の手をぎゅっと握ってくる。まあ、会長や姉さんの言うことはごもっともだけどさ。
「小さい頃の写真やビデオなんだから大丈夫だって、レイ君」
「……琴葉は大丈夫かもしれないけど、僕は結構ドキドキするんだよ」
小学生くらいまでは琴葉や姉さん、姉さんの友達に色々なことをされてきたからな。
「玲人君のことをからかったりしないから、一緒に見ようよ」
「……しょうがないですね」
ここで逃げても沙奈会長達がアルバムやホームビデオを見ることに変わりはない。それなら、その場で何か言われた方がマシだろう。
ざわつく気持ちを落ち着かせるためにコーヒーを飲むのであった。
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