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特別編6
第2話『玉子粥とプリンを食べさせてほしい』
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沙綾さんが手伝ったのもあって、お着替えも無事に終わりました。新しい下着と寝間着に着替えたからか、恭子さんは私達が来た直後よりもスッキリとした様子です。
また、私は汗拭きに使ったタオルと今まで着ていた衣類を、洗面所にある洗濯カゴに持っていきました。
そういえば、明斗さんのお見舞いでは、衣類やタオルを洗濯カゴに持っていったとき、明斗さんの汗の匂いが良すぎてインナーシャツを嗅いじゃったんですよね。明斗さんに見つかったときはとても恥ずかしくて、嫌われてしまったのではないかと心配になって。でも、明斗さんが嬉しいと言ってもらえたことに安心したのを覚えています。
恭子さんの汗の匂いもいいですが、衣服やタオルを嗅ぐことはせず、すぐに恭子さんの部屋へ戻りました。
「衣類とタオルを洗濯カゴに入れてきました」
「ありがとう、氷織」
「お疲れッス。……そういえば、ヒム子。ひおりんとここに来る途中で、スポーツドリンクとプリンとレトルトの玉子粥を買ってきたッス」
そう言い、沙綾さんは買ってきたものをドラッグストアのレジ袋から取り出し、ローテーブルに置いていきます。
「買ってきてくれてありがとう。……汗を掻いたから、喉が渇いたわ。スポーツドリンクをちょっと飲もうかしら」
「了解ッス」
「では、私が体を支えますね」
私は恭子さんを横からそっと支えます。
沙綾さんはペットボトルの蓋を外して、恭子さんにスポーツドリンクを渡します。ただ、万が一のときのためか、すぐ側で右手をスタンバイしていますが。
恭子さんはスポーツドリンクを一口飲みます。
「……あぁ、甘くて美味しい。熱があるから、スポドリの冷たさがたまらないわ」
恭子さんはとても柔らかい笑顔でそう言いました。恭子さんの様子に心が癒やされます。沙綾さんも同じ気持ちなのか、穏やかな笑顔になっていて。
「良かったです」
「熱があるときに飲む冷たいものって凄く美味しいッスよね」
「美味しいわよね」
そう言い、恭子さんはスポーツドリンクをもう一口。
「美味しい。汗を拭いてもらって、お着替えしてスッキリしたからか、ちょっとお腹が空いてきたわ。今日になってから口にしたのは、今のスポドリくらいだし」
「では、玉子粥とプリンを食べますか? お粥は」
「……うん。どっちも食べる」
「了解ッス。まずは玉子粥を食べて、その後にデザートでプリンを食べる形にするッスか」
「……うん。あと、食べるときには2人から食べさせてほしいわ」
「もちろんいいですよ」
「甘えてくれて嬉しいッス」
「……ありがとう」
恭子さんは可愛らしい笑顔でお礼を言いました。
汗を拭いてもらって、お着替えを手伝ってもらったからか、すんなりとおねだりしてくれましたね。恭子さんに頼ってもらえて嬉しいです。
私達の買ってきた玉子粥はレンジで温めるタイプです。なので、恭子さんに食器の場所や電子レンジの操作方法を教えてもらいました。
沙綾さんに恭子さんの側にいてもらい、私はレトルトの玉子粥を持ってキッチンに行きます。
恭子さんに教えてもらったので、恭子さんのお茶碗とレンゲはすぐに見つかりました。
恭子さんのお茶碗に玉子粥を入れて、電子レンジで温めます。
――ピピッ。
温めるのが終わり、玉子粥の入ったお茶碗をレンジから取り出します。
袋に書いてあった通りの時間で温めたのですが……湯気が結構出ていますね。なかなか熱そうです。息を吹きかけて冷ましながら恭子さんに食べさせましょう。
湯気に乗って、鰹だしの美味しそうな匂いが香ってきて。私が食べたくなっちゃいます。
お粥を持って、恭子さんの部屋に戻ります。沙綾さんもいるおかげか、恭子さんの表情は柔らかいです。
「お待たせしました。玉子粥を温めてきました」
「おかえりッス、ひおりん」
「ありがとう、氷織。お茶碗の場所とかレンジの使い方、さっきの説明で分かった?」
「恭子さんのおかげで難なくできました。ありがとうございます」
「良かったわ」
「では、私が食べさせますね」
「お願いするわっ」
恭子さんはワクワクとした様子で言います。可愛いですね。
その後、お粥を食べやすくするために、沙綾さんと一緒に恭子さんの体を起こします。恭子さんが楽でいられるように、ベッドボードと恭子さんの間にクッションを挟んで。クッションにもたれると、恭子さんは楽そうにしていました。
「これなら楽だわ」
「良かったです」
「ひおりん。勉強机の椅子に座るのがいいと思うッス」
「高さ的にそれがいいですね」
沙綾さんが勉強机の椅子をベッドの側まで動かしてくれました。私は椅子に座って、恭子さんに玉子粥を食べさせることに。
レンゲで軽くかき混ぜて、一口分掬うと……まだまだ湯気がたくさん出ていますね。熱そうなので、何度か息を吹きかけます。
「はい、恭子さん。あ~ん」
「あ~ん」
恭子さんに玉子粥を食べさせます。何回か息を吹きかけましたが、熱さは大丈夫でしょうか。
恭子さんは玉子粥をモグモグ食べ、ゴクンと飲み込みました。
「……美味しい。玉子の甘味がほんのり感じられて。鰹なのかな。だしも利いているから食べやすいお粥だわ」
「良かったです。あと、だしが鰹なのは正解ですよ」
「ふふっ、やった」
恭子さん、嬉しそうです。正解したご褒美なのか、沙綾さんが恭子さんの頭を撫でていて。そのことで恭子さんは柔らかな笑顔を見せました。
「あと、熱さは大丈夫でしたか? 湯気が結構出ていたので、何度か息を吹きかけましたが」
「ちょうど良かったわよ。氷織が息を吹きかけてくれたから、とても美味しいお粥になったって思っているわ」
「それは良かったです」
それからも、恭子さんに玉子粥を食べさせます。
笑顔でモグモグと食べてくれるので、恭子さんが本当に可愛いです。その姿は妹の七海に似ていて。それを思うと、恭子さんも妹のように思えてきました。
このレトルト玉子粥が美味しいからでしょうか。それとも、私が息を吹きかけて冷ました後に食べさせるからでしょうか。恭子さんは難なく玉子粥を完食できました。
「これで玉子粥は終わりです。完食できましたね」
「お粥を完食できる食欲があって良かったッス」
「美味しい玉子粥だし、氷織が食べさせてくれたおかげよ。ありがとう」
「いえいえ」
私が食べさせたことが、お粥を完食できた一助となったようで嬉しいです。
「玉子粥ごちそうさま」
「ヒム子。プリンも食べるッスか?」
「いただくわ。プリンは大好きだし、玉子粥を食べたら食欲出てきた」
「了解ッス。じゃあ、あたしがプリンを食べさせてあげるッス」
「お願いするわ」
プリンも食べられそうな食欲があって安心です。プリンも食べれば、恭子さんが元気になるのがより早くなることでしょう。
お茶碗とレンゲをキッチンのシンクまで持っていき、棚からスプーンを取り出して恭子さんの部屋に戻りました。
沙綾さんは私からスプーンを受け取ると、蓋を剥がしたプリンのカップを持って勉強机の椅子に座ります。
沙綾さんはスプーンで一口分のプリンを掬い、恭子さんの口元まで持っていきます。
「はい、ヒム子。あ~んッス」
「あ~ん」
沙綾さんは恭子さんにプリンを食べさせます。
プリンが大好きだと言っていただけあって、食べさせてもらった瞬間、恭子さんは柔らかな笑顔になります。可愛いです。
「あぁ……プリン甘くて美味しい。さっきまで温かいお粥を食べていたから、この冷たさがいいわね」
「良かったッス。はい、もう一口。あ~んッス」
「あ~ん」
沙綾さんにプリンをもう一口食べさせてもらうと、恭子さんは幸せそうな笑顔になって。大好きなプリンのパワーは凄いですね。
「美味しいわ」
「このプリン美味しいッスよね。あと、こうしてプリンを食べさせると、紙透君のお見舞いに行ったときのことを思い出すッス」
「あのときは私達3人で明斗さんにプリンを食べさせましたもんね」
「そうだったわね。猫カフェで猫に上手におやつを食べさせる練習台になってもらったのよね」
「そうだったッスね! 懐かしいッス」
「紙透のおかげで、何日か後に行った猫カフェで上手に餌をあげられたわ」
「それは良かったです。今の恭子さんのように、プリンを食べさせたときの明斗さんも可愛かったですね」
あのときの明斗さんを思い出すと、気持ちがほっこりします。
この3人でお見舞いに行ったのもありますが、明斗さんのことで話が盛り上がるのは恋人として嬉しい気持ちになりますね。ちなみに、話題になっている明斗さんはバイトをしています。
その後も、恭子さんは沙綾さんにプリンを食べさせてもらいます。大好きなプリンなだけあって、お粥のときよりもモリモリ食べているように見えますね。そのことを微笑ましく思っていると、
――プルルッ。
スマホの鳴る音が聞こえました。誰のスマホが鳴っているのかは分かりませんが、私は持ってきたショルダーバッグの中に入っている自分のスマホを確認します。
「私のスマホでした」
通知を見ると……あっ、明斗さんからLIMEでメッセージが来ています。さっき、明斗さんの話で盛り上がりましたし、噂をすれば何とやらでしょうか。
通知をタップすると、明斗さんとの個別トーク画面が開き、
『今、休憩に入った。氷織達は課題進んでいるか?』
という明斗さんのメッセージが表示されました。
そういえば……沙綾さんと恭子さんと一緒に課題をする話はしましたが、恭子さんが体調を崩したことは明斗さんに言っていませんでしたね。
『実は恭子さんが体調を崩しまして。なので、予定を変更して、看病をするために沙綾さんと一緒に恭子さんのお見舞いに行っているんです』
と、明斗さんに返信を送りました。
明斗さんもトーク画面を開いているのか、返信した瞬間に『既読』のマークが付きました。
『火村さん、体調を崩したのか。あと、看病お疲れ様』
明斗さんがそんな返信を送ってくれます。恭子さんの看病ではありますけど、明斗さんからお疲れ様って言われるのは嬉しいですね。
『今日は一日バイトあるからなぁ。お大事に、って氷織からも火村さんに伝えてくれるかな』
さらに、明斗さんからそういったメッセージが送られてきます。このメッセージから、明斗さんの優しさがとても感じられますね。そのことに胸が温かくなりつつ、明斗さんに『分かりました』と返信を送りました。
「明斗さんからメッセージが来ていました」
「紙透君からッスか」
「ええ。バイトの休憩中だそうで。恭子さんの体調不良のことは伝えていなかったのもあって、課題は進んでいるかと。現状を伝えたら、明斗さんが恭子さんにお大事にとのことでした」
「……そう」
恭子さんは一言そう言うだけでしたが、柔らかな笑顔を浮かべていました。
――プルルッ。
スマホの鳴る音が聞こえますね。今、私はスマホを手にしていますが、バイブ音は全くしていません。沙綾さんか恭子さんのスマホでしょう。このタイミングで鳴るということは――。
「あたしのスマホだ。振動を感じる」
恭子さんは手を伸ばして枕の横に置いてあるスマホを手に取ります。予想通り、恭子さんのスマホでしたか。
何度かスマホをタップすると、笑顔がさらに柔らかくなっていきました。
「LIMEで紙透から『お大事に』ってメッセージが来た」
「やはり明斗さんからでしたか。明斗さんからのメッセージで『私からも』お大事にって伝えてほしいと言っていたので」
「そうだったの。氷織からだけでも十分なのに。でも、何だか紙透らしいかも」
そう言う恭子さんは嬉しそうで。確かに明斗さんらしいかも。
スマホに表示される文字ではありますが、『お大事に』と言葉をくれると嬉しいですよね。以前、私も体調を崩したとき、明斗さん達からお見舞いのメッセージをもらえて嬉しかったですから。
ありがとう、と恭子さんは独り言のように呟きながら、スマホをタップします。きっと、この言葉を明斗さんに送るのでしょう。
「送信……っと。沙綾、プリンをまた食べさせてくれるかしら」
「了解ッス」
スマホをベッドに置いた恭子さんは、沙綾さんに再びプリンを食べさせてもらいます。笑顔でプリンを食べていますが、明斗さんからお大事にと言われる前よりも嬉しそうな笑顔になっていたのでした。
また、私は汗拭きに使ったタオルと今まで着ていた衣類を、洗面所にある洗濯カゴに持っていきました。
そういえば、明斗さんのお見舞いでは、衣類やタオルを洗濯カゴに持っていったとき、明斗さんの汗の匂いが良すぎてインナーシャツを嗅いじゃったんですよね。明斗さんに見つかったときはとても恥ずかしくて、嫌われてしまったのではないかと心配になって。でも、明斗さんが嬉しいと言ってもらえたことに安心したのを覚えています。
恭子さんの汗の匂いもいいですが、衣服やタオルを嗅ぐことはせず、すぐに恭子さんの部屋へ戻りました。
「衣類とタオルを洗濯カゴに入れてきました」
「ありがとう、氷織」
「お疲れッス。……そういえば、ヒム子。ひおりんとここに来る途中で、スポーツドリンクとプリンとレトルトの玉子粥を買ってきたッス」
そう言い、沙綾さんは買ってきたものをドラッグストアのレジ袋から取り出し、ローテーブルに置いていきます。
「買ってきてくれてありがとう。……汗を掻いたから、喉が渇いたわ。スポーツドリンクをちょっと飲もうかしら」
「了解ッス」
「では、私が体を支えますね」
私は恭子さんを横からそっと支えます。
沙綾さんはペットボトルの蓋を外して、恭子さんにスポーツドリンクを渡します。ただ、万が一のときのためか、すぐ側で右手をスタンバイしていますが。
恭子さんはスポーツドリンクを一口飲みます。
「……あぁ、甘くて美味しい。熱があるから、スポドリの冷たさがたまらないわ」
恭子さんはとても柔らかい笑顔でそう言いました。恭子さんの様子に心が癒やされます。沙綾さんも同じ気持ちなのか、穏やかな笑顔になっていて。
「良かったです」
「熱があるときに飲む冷たいものって凄く美味しいッスよね」
「美味しいわよね」
そう言い、恭子さんはスポーツドリンクをもう一口。
「美味しい。汗を拭いてもらって、お着替えしてスッキリしたからか、ちょっとお腹が空いてきたわ。今日になってから口にしたのは、今のスポドリくらいだし」
「では、玉子粥とプリンを食べますか? お粥は」
「……うん。どっちも食べる」
「了解ッス。まずは玉子粥を食べて、その後にデザートでプリンを食べる形にするッスか」
「……うん。あと、食べるときには2人から食べさせてほしいわ」
「もちろんいいですよ」
「甘えてくれて嬉しいッス」
「……ありがとう」
恭子さんは可愛らしい笑顔でお礼を言いました。
汗を拭いてもらって、お着替えを手伝ってもらったからか、すんなりとおねだりしてくれましたね。恭子さんに頼ってもらえて嬉しいです。
私達の買ってきた玉子粥はレンジで温めるタイプです。なので、恭子さんに食器の場所や電子レンジの操作方法を教えてもらいました。
沙綾さんに恭子さんの側にいてもらい、私はレトルトの玉子粥を持ってキッチンに行きます。
恭子さんに教えてもらったので、恭子さんのお茶碗とレンゲはすぐに見つかりました。
恭子さんのお茶碗に玉子粥を入れて、電子レンジで温めます。
――ピピッ。
温めるのが終わり、玉子粥の入ったお茶碗をレンジから取り出します。
袋に書いてあった通りの時間で温めたのですが……湯気が結構出ていますね。なかなか熱そうです。息を吹きかけて冷ましながら恭子さんに食べさせましょう。
湯気に乗って、鰹だしの美味しそうな匂いが香ってきて。私が食べたくなっちゃいます。
お粥を持って、恭子さんの部屋に戻ります。沙綾さんもいるおかげか、恭子さんの表情は柔らかいです。
「お待たせしました。玉子粥を温めてきました」
「おかえりッス、ひおりん」
「ありがとう、氷織。お茶碗の場所とかレンジの使い方、さっきの説明で分かった?」
「恭子さんのおかげで難なくできました。ありがとうございます」
「良かったわ」
「では、私が食べさせますね」
「お願いするわっ」
恭子さんはワクワクとした様子で言います。可愛いですね。
その後、お粥を食べやすくするために、沙綾さんと一緒に恭子さんの体を起こします。恭子さんが楽でいられるように、ベッドボードと恭子さんの間にクッションを挟んで。クッションにもたれると、恭子さんは楽そうにしていました。
「これなら楽だわ」
「良かったです」
「ひおりん。勉強机の椅子に座るのがいいと思うッス」
「高さ的にそれがいいですね」
沙綾さんが勉強机の椅子をベッドの側まで動かしてくれました。私は椅子に座って、恭子さんに玉子粥を食べさせることに。
レンゲで軽くかき混ぜて、一口分掬うと……まだまだ湯気がたくさん出ていますね。熱そうなので、何度か息を吹きかけます。
「はい、恭子さん。あ~ん」
「あ~ん」
恭子さんに玉子粥を食べさせます。何回か息を吹きかけましたが、熱さは大丈夫でしょうか。
恭子さんは玉子粥をモグモグ食べ、ゴクンと飲み込みました。
「……美味しい。玉子の甘味がほんのり感じられて。鰹なのかな。だしも利いているから食べやすいお粥だわ」
「良かったです。あと、だしが鰹なのは正解ですよ」
「ふふっ、やった」
恭子さん、嬉しそうです。正解したご褒美なのか、沙綾さんが恭子さんの頭を撫でていて。そのことで恭子さんは柔らかな笑顔を見せました。
「あと、熱さは大丈夫でしたか? 湯気が結構出ていたので、何度か息を吹きかけましたが」
「ちょうど良かったわよ。氷織が息を吹きかけてくれたから、とても美味しいお粥になったって思っているわ」
「それは良かったです」
それからも、恭子さんに玉子粥を食べさせます。
笑顔でモグモグと食べてくれるので、恭子さんが本当に可愛いです。その姿は妹の七海に似ていて。それを思うと、恭子さんも妹のように思えてきました。
このレトルト玉子粥が美味しいからでしょうか。それとも、私が息を吹きかけて冷ました後に食べさせるからでしょうか。恭子さんは難なく玉子粥を完食できました。
「これで玉子粥は終わりです。完食できましたね」
「お粥を完食できる食欲があって良かったッス」
「美味しい玉子粥だし、氷織が食べさせてくれたおかげよ。ありがとう」
「いえいえ」
私が食べさせたことが、お粥を完食できた一助となったようで嬉しいです。
「玉子粥ごちそうさま」
「ヒム子。プリンも食べるッスか?」
「いただくわ。プリンは大好きだし、玉子粥を食べたら食欲出てきた」
「了解ッス。じゃあ、あたしがプリンを食べさせてあげるッス」
「お願いするわ」
プリンも食べられそうな食欲があって安心です。プリンも食べれば、恭子さんが元気になるのがより早くなることでしょう。
お茶碗とレンゲをキッチンのシンクまで持っていき、棚からスプーンを取り出して恭子さんの部屋に戻りました。
沙綾さんは私からスプーンを受け取ると、蓋を剥がしたプリンのカップを持って勉強机の椅子に座ります。
沙綾さんはスプーンで一口分のプリンを掬い、恭子さんの口元まで持っていきます。
「はい、ヒム子。あ~んッス」
「あ~ん」
沙綾さんは恭子さんにプリンを食べさせます。
プリンが大好きだと言っていただけあって、食べさせてもらった瞬間、恭子さんは柔らかな笑顔になります。可愛いです。
「あぁ……プリン甘くて美味しい。さっきまで温かいお粥を食べていたから、この冷たさがいいわね」
「良かったッス。はい、もう一口。あ~んッス」
「あ~ん」
沙綾さんにプリンをもう一口食べさせてもらうと、恭子さんは幸せそうな笑顔になって。大好きなプリンのパワーは凄いですね。
「美味しいわ」
「このプリン美味しいッスよね。あと、こうしてプリンを食べさせると、紙透君のお見舞いに行ったときのことを思い出すッス」
「あのときは私達3人で明斗さんにプリンを食べさせましたもんね」
「そうだったわね。猫カフェで猫に上手におやつを食べさせる練習台になってもらったのよね」
「そうだったッスね! 懐かしいッス」
「紙透のおかげで、何日か後に行った猫カフェで上手に餌をあげられたわ」
「それは良かったです。今の恭子さんのように、プリンを食べさせたときの明斗さんも可愛かったですね」
あのときの明斗さんを思い出すと、気持ちがほっこりします。
この3人でお見舞いに行ったのもありますが、明斗さんのことで話が盛り上がるのは恋人として嬉しい気持ちになりますね。ちなみに、話題になっている明斗さんはバイトをしています。
その後も、恭子さんは沙綾さんにプリンを食べさせてもらいます。大好きなプリンなだけあって、お粥のときよりもモリモリ食べているように見えますね。そのことを微笑ましく思っていると、
――プルルッ。
スマホの鳴る音が聞こえました。誰のスマホが鳴っているのかは分かりませんが、私は持ってきたショルダーバッグの中に入っている自分のスマホを確認します。
「私のスマホでした」
通知を見ると……あっ、明斗さんからLIMEでメッセージが来ています。さっき、明斗さんの話で盛り上がりましたし、噂をすれば何とやらでしょうか。
通知をタップすると、明斗さんとの個別トーク画面が開き、
『今、休憩に入った。氷織達は課題進んでいるか?』
という明斗さんのメッセージが表示されました。
そういえば……沙綾さんと恭子さんと一緒に課題をする話はしましたが、恭子さんが体調を崩したことは明斗さんに言っていませんでしたね。
『実は恭子さんが体調を崩しまして。なので、予定を変更して、看病をするために沙綾さんと一緒に恭子さんのお見舞いに行っているんです』
と、明斗さんに返信を送りました。
明斗さんもトーク画面を開いているのか、返信した瞬間に『既読』のマークが付きました。
『火村さん、体調を崩したのか。あと、看病お疲れ様』
明斗さんがそんな返信を送ってくれます。恭子さんの看病ではありますけど、明斗さんからお疲れ様って言われるのは嬉しいですね。
『今日は一日バイトあるからなぁ。お大事に、って氷織からも火村さんに伝えてくれるかな』
さらに、明斗さんからそういったメッセージが送られてきます。このメッセージから、明斗さんの優しさがとても感じられますね。そのことに胸が温かくなりつつ、明斗さんに『分かりました』と返信を送りました。
「明斗さんからメッセージが来ていました」
「紙透君からッスか」
「ええ。バイトの休憩中だそうで。恭子さんの体調不良のことは伝えていなかったのもあって、課題は進んでいるかと。現状を伝えたら、明斗さんが恭子さんにお大事にとのことでした」
「……そう」
恭子さんは一言そう言うだけでしたが、柔らかな笑顔を浮かべていました。
――プルルッ。
スマホの鳴る音が聞こえますね。今、私はスマホを手にしていますが、バイブ音は全くしていません。沙綾さんか恭子さんのスマホでしょう。このタイミングで鳴るということは――。
「あたしのスマホだ。振動を感じる」
恭子さんは手を伸ばして枕の横に置いてあるスマホを手に取ります。予想通り、恭子さんのスマホでしたか。
何度かスマホをタップすると、笑顔がさらに柔らかくなっていきました。
「LIMEで紙透から『お大事に』ってメッセージが来た」
「やはり明斗さんからでしたか。明斗さんからのメッセージで『私からも』お大事にって伝えてほしいと言っていたので」
「そうだったの。氷織からだけでも十分なのに。でも、何だか紙透らしいかも」
そう言う恭子さんは嬉しそうで。確かに明斗さんらしいかも。
スマホに表示される文字ではありますが、『お大事に』と言葉をくれると嬉しいですよね。以前、私も体調を崩したとき、明斗さん達からお見舞いのメッセージをもらえて嬉しかったですから。
ありがとう、と恭子さんは独り言のように呟きながら、スマホをタップします。きっと、この言葉を明斗さんに送るのでしょう。
「送信……っと。沙綾、プリンをまた食べさせてくれるかしら」
「了解ッス」
スマホをベッドに置いた恭子さんは、沙綾さんに再びプリンを食べさせてもらいます。笑顔でプリンを食べていますが、明斗さんからお大事にと言われる前よりも嬉しそうな笑顔になっていたのでした。
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