128 / 190
特別編4
第5話『日焼け止めを塗ってほしい』
しおりを挟む
夏休みシーズンの日曜日なのもあり、海水浴場は多くの人で賑わっている。俺達は砂浜を歩いていく。
ただ、海水浴場の端が見え始めたところで、ようやく人の数がまばらに。なので、ここに俺と和男が持ってきたビーチパラソルを立てる。また、2本のパラソルによってできた日陰に、氷織と清水さんが持ってきたレジャーシートを広げた。
ビーチパラソルは結構大きめで、レジャーシートもなかなか大きい。なので、結構広い日陰の空間が完成した。
「よーし! 俺達の拠点の完成だぜ!」
「そうだね!」
「結構広いッスね!」
「そうね、沙綾。端の方だけど、お手洗いとか海の家も見えるから、いい場所を確保できたわね」
「そうですね、恭子さん。広いですから6人でいてもゆっくりできそうですね」
「そうだな。ビーチパラソルとレジャーシートを2つずつ持ってきて正解だったな」
今日はよく晴れて、気温が結構上がる予報になっていた。なので、みんな一緒に日陰に入れるように、ビーチパラソルを2本持ってくることにしたのだ。この広さなら、氷織の言うようにみんなでゆっくりとできそうだ。
俺達は荷物を置いて、レジャーシートの中に入る。
氷織と隣同士で腰を下ろす。両脚を伸ばすと体が休まるなぁ。冷房はかかっていたけど電車で1時間半ほど移動して、そこからはついさっきまでほとんど炎天下にいたからかな。日陰に入るだけでもなかなか涼しい。氷織達もまったりとした様子になっている。
火村さんがスマホを取り出し、水着姿になった俺達の写真をたくさん撮った。それらの写真は俺達のグループトークのアルバムに送ってくれることに。
写真を撮った後、俺はバッグからスポーツドリンクの入ったワンタッチ水筒を取り出す。スポーツドリンクを一口飲むと、凄く美味しく感じる。
「冷たくて美味しい」
「今日は暑いですからね。海で遊ぶとはいえ、熱中症には気をつけないといけないですね」
「そうだな。氷織も一口飲むか?」
「ありがとうございます。いただきます」
氷織は俺から水筒を受け取ると、スポーツドリンクを一口飲む。スポーツドリンクが結構冷たいからか、氷織は爽やかな笑みを浮かべて、
「美味しいですっ」
俺に向かってそう言ってくれた。
氷織から水筒を返してもらい、もう一口スポーツドリンクを飲む。氷織が飲んだ直後だからか、さっきよりも甘味が強く感じられて美味しくなっていた。
氷織は自分の大きなトートバッグから、水色の小さなボトルを取り出す。
「あの、明斗さん。背中と腰、お尻、脚にこの日焼け止めを塗ってくれませんか?」
「うん、いいよ。じゃあ、その後に俺にも日焼け止めを塗ってくれるかな。俺も持ってきたんだ」
「分かりました」
氷織は優しい笑顔でそう言ってくれる。
遊ぶ前に日焼け止めを塗るのは、海ならではかもしれないな。この前のプールデートでは屋内プールだったから、日焼け止めを塗る必要がなかったし。
「少しだけでもいいから、あたしも氷織に日焼け止めを塗りたいわっ!」
火村さんが右手でピシッと手を挙げながらそう言ってきた。火村さんなら名乗り出ると思っていたよ。
「分かった。じゃあ、火村さんは両方の膝から足元まで塗ってくれるかな。氷織、いいかな?」
「ええ、かまいませんよ」
「ありがとう! あと、紙透の後でいいから、あたしに日焼け止めを塗ってくれるかしら」
「分かりました」
「ありがとうっ!」
とっても嬉しそうにお礼を言う火村さん。海へ行くと決まったときから、氷織に日焼け止めを塗ってもらおうと考えていたのかもしれない。まあ、女の子同士だし、日焼け止めを塗るくらいなら、彼氏として何も言うことはない。
「ひおりんの脚に塗り終わったら、あたしに塗ってもらっていいッスか? ヒム子」
「いいわよ。任せなさい、沙綾」
火村さんは上機嫌な様子で葉月さんに言っていた。
まずは氷織に日焼け止めを塗ることに。背中から両膝までは俺が担当し、両膝から足元までを火村さんが担当することに。
氷織は青いヘアゴムで髪をまとめて、レジャーシートにうつぶせの状態になった。髪をまとめたことで露わになった氷織の後ろ姿は白くてとても美しい。この美しさが保てるように丁寧に塗らないと。
火村さんは「はあっ……はあっ……」と興奮しながら氷織のことを見ている。彼女に担当を割り振るべきじゃなかったかな。
俺と火村さんは氷織が持参した日焼け止めをボトルから手に出す。
「まずは背中からやるよ」
「あたしは右脚ね」
「はい、お願いします」
こちらに振り向きながらそう言うと、氷織は顔を前に向けた。
俺は背中に、火村さんは右脚に触れる。日焼け止めがほんのちょっと冷たいからか、それとも俺達の手が触れてくすぐったいのか、氷織は「ひゃっ」と可愛らしい声を小さく漏らし、体をピクつかせた。
俺は氷織の背中に日焼け止めを丁寧に塗り始める。日焼け止めが結構サラサラしているし、氷織の肌もツヤツヤしているから塗りやすいな。
「氷織に日焼け止めを塗れるなんて。女子で良かった」
火村さんはうっとりとした様子で、氷織の左脚に日焼け止めを塗っている。まあ、火村さんが男子だったら、氷織に日焼け止めを塗らせなかったな。
「ふふっ。背中と脚を同時に塗ってもらっていますし気持ちいいですから、何だか贅沢な時間を過ごしている感じがします。マッサージ店に行くとこういう感じなのかもしれませんね」
あぁっ……と、氷織は気持ち良さそうな声を出していた。火村さんと一緒に塗っているからこそ体験できる感覚なのかも。火村さんをチラッと見ると、右脚に塗っている火村さんと目が合い……彼女は俺に向かってニコッと笑った。
「よし、これでOKね。……氷織。両膝から足元まで塗り終わったわ」
「ありがとうございます、恭子さん」
「さあ。次は沙綾の番ね」
「お願いするッス」
葉月さんは氷織の隣でうつぶせの体勢になる。
また、葉月さんの奥では和男がうつぶせになっており、清水さんに日焼け止めを塗ってもらっている。和男は大柄だし、清水さんの手は小さめだからかなり塗り甲斐がありそうだ。ただ、2人とも楽しそうにしていて微笑ましい。
俺は腰の辺りに日焼け止めを塗っていく。
氷織の横に座っているけど、背面の大部分が肌を露出しており、腰に触れていると……氷織と肌を重ねているときのことを思い出すな。……段々と体が熱くなってきた。せっかく、さっき飲んだスポーツドリンクで体がちょっと冷やされたのに。今は日焼け止め塗りに集中だ。
腰を塗り終わって、次はお尻と太ももだ。
再びボトルから日焼け止めを出して、氷織の右のお尻に触れる。その瞬間、氷織は「ひゃあっ」と可愛い声を漏らした。
「お尻にちょっと冷たいのが触れたので、変な声が出ちゃいました」
氷織はそう言うと、俺の方に向いてはにかむ。
「お尻に塗り始めたから。ビックリさせちゃったかな」
「ちょっとだけですよ。このままお願いします」
「ああ、分かった」
俺は氷織のお尻と太ももに日焼け止めを塗っていく。背中や腰と比べて柔らかさや弾力が感じられる。
それにしても、何か視線を感じるな。そう思って顔を上げると、火村さんが俺に羨望の眼差しを向けていた。俺の顔と手元を交互に見ている。……こ、恋人だからね、俺。氷織にお願いされているし、俺はこのまま日焼け止めを塗り続けるよ。
「……沙綾のお尻は結構いい触り心地ね」
「いきなり何を言っているッスか。褒めてくれるのは嬉しいッスけど」
「いいと思ったから言っただけよ」
「あははっ、そうッスか。ヒム子、可愛いッスね」
ふふっ、と葉月さんは笑う。そんな葉月さんの笑い声につられたのか、氷織も一緒に笑っていた。
俺が氷織のお尻に日焼け止めを塗っているから、自分も葉月さんのお尻に日焼け止めを塗ったのかな。そうしたら、思いの外いい触り心地で感想を口にしたってところか。
今の火村さんと葉月さんの会話を聞いたのもあり、氷織のお尻や太ももの触り心地がよりいいなと思えるようになった。
「……氷織。塗り終わったよ」
「ありがとうございます、明斗さん」
氷織はそうお礼を言うと、ゆっくりと起き上がる。柔らかな笑みを浮かべた氷織は、お礼なのかキスしてくれた。
氷織はヘアゴムを解いた後、自分で体の前面に日焼け止めを塗っていく。普段の落ち着いた笑みを浮かべているし、手つきも鮮やかなので、今の氷織は凄く大人っぽくて艶やかに見えた。
「よし、これでOKですね。明斗さん、お待たせしました。次は明斗さんに日焼け止めを塗りますね」
「うん、お願いするよ」
俺は持参した日焼け止めのミニボトルを氷織に渡して、レジャーシートにうつぶせの状態になる。ついさっきまで氷織がうつぶせになっていたからか、レジャーシートにはまだ温かく、氷織の甘い残り香が感じられて。これだけで何だか幸せな気分に。
「では、塗り始めますね。明斗さん」
「うん、お願いします」
氷織に塗ってもらうのはどんな感じなのか楽しみだ。
その直後、左肩の近くに氷織の優しい温もりと、日焼け止めのほんの少しの冷たさを感じた。人にとっては、体が少しビクついてしまうのは分かる気がする。
氷織に日焼け止めを塗ってもらい始める。
氷織の手から伝わる温もりが心地いいし、塗る手つきがとても優しいから凄く気持ちいい。癒やされる。
「明斗さんの肌はスベスベですから塗りやすいですね。お風呂で背中を洗うときにも思いましたが、いい触り心地ですし」
「そうか。凄く気持ちいいよ。さっき、氷織が贅沢な時間を過ごしているって言ったのが分かるよ」
「ふふっ、そうですか。嬉しいお言葉です。塗ってもらって気持ち良かったですから、明斗さんにもそう思ってもらえるように頑張りますね」
「ありがとう。嬉しいよ」
横に座っている氷織を見ながらお礼を言うと、氷織はニッコリと笑ってくれた。
その後も、氷織に日焼け止めを塗ってもらう。凄く気持ちいいし、たまに氷織のことを見ると氷織は楽しそうに塗っているし。俺は本当に幸せ者だ。
去年は和男に背中を塗ってもらったな。かなり大きな手だからすぐに終わったことを覚えている。あのとき、次の年の海水浴では恋人に背面全部を塗ってもらうことになるとは想像もしなかったよ。
和男の方をチラッと見ると、和男は清水さんの背面に日焼け止めを塗っていた。その手前では、葉月さんが自分で前面に日焼け止めを塗りながら火村さんと談笑していた。
「明斗さん、背面全部を塗り終わりました」
脚を塗り終わって、氷織はそう言う。
「ありがとう、氷織」
俺はゆっくりと起き上がり、さっきの氷織がしてくれたように、俺は氷織にキスした。
唇を離すと、氷織は日陰でも分かるくらいに頬を赤く染めて、口角を上げた。
「明斗さんに日焼け止めを塗れて楽しかったです」
「そう言ってくれて良かった。あとは自分で塗るよ」
「分かりました。では、次は恭子さんですね。お待たせしました」
「楽しみすぎて、全然待ったうちに入らないわ!」
嬉々とした様子でそう言うと、火村さんは素早い動きで俺の隣にうつぶせの状態になる。火村さんの後ろ姿は氷織に負けず劣らずの美しさだ。
「あたしもお礼に塗っていいッスか?」
「いいわよ!」
「では、お尻まで私が担当して、両脚は沙綾さんの担当にしましょうか」
「了解ッス」
氷織のときと同じで、火村さんには2人で日焼け止めを塗るんだな。
体の前面に日焼け止めを塗りながら、火村さんが氷織と葉月さんに塗ってもらう様子を見ることに。
氷織は火村さんの肩を、葉月さんは火村さんの右脚に日焼け止めを塗り始める。その瞬間、火村さんは「はぁぁっ……」と甘い声を漏らす。
「氷織と沙綾にクリームすり込まれてるぅ。すっごく気持ちいい……」
恍惚とした様子でそう言う火村さん。
「気持ち良く思ってもらえて嬉しいです」
「そうッスね。日焼け止めを塗られてこんな反応をする友達は初めてッスよ」
「だって気持ちいいんだもんっ! あぁ、女子で本当に良かったぁ……」
はぅんっ……と、火村さんはさっき以上の甘い声を漏らしている。そんな火村さんは多幸感に満ちた表情になっていて。氷織と葉月さんに日焼け止めを塗ってもらうのが凄く気持ち良くて、そして嬉しいことが窺える。
それから、日焼け止めを塗り終わるまで、火村さんは甘い声を漏らし続けた。
ただ、海水浴場の端が見え始めたところで、ようやく人の数がまばらに。なので、ここに俺と和男が持ってきたビーチパラソルを立てる。また、2本のパラソルによってできた日陰に、氷織と清水さんが持ってきたレジャーシートを広げた。
ビーチパラソルは結構大きめで、レジャーシートもなかなか大きい。なので、結構広い日陰の空間が完成した。
「よーし! 俺達の拠点の完成だぜ!」
「そうだね!」
「結構広いッスね!」
「そうね、沙綾。端の方だけど、お手洗いとか海の家も見えるから、いい場所を確保できたわね」
「そうですね、恭子さん。広いですから6人でいてもゆっくりできそうですね」
「そうだな。ビーチパラソルとレジャーシートを2つずつ持ってきて正解だったな」
今日はよく晴れて、気温が結構上がる予報になっていた。なので、みんな一緒に日陰に入れるように、ビーチパラソルを2本持ってくることにしたのだ。この広さなら、氷織の言うようにみんなでゆっくりとできそうだ。
俺達は荷物を置いて、レジャーシートの中に入る。
氷織と隣同士で腰を下ろす。両脚を伸ばすと体が休まるなぁ。冷房はかかっていたけど電車で1時間半ほど移動して、そこからはついさっきまでほとんど炎天下にいたからかな。日陰に入るだけでもなかなか涼しい。氷織達もまったりとした様子になっている。
火村さんがスマホを取り出し、水着姿になった俺達の写真をたくさん撮った。それらの写真は俺達のグループトークのアルバムに送ってくれることに。
写真を撮った後、俺はバッグからスポーツドリンクの入ったワンタッチ水筒を取り出す。スポーツドリンクを一口飲むと、凄く美味しく感じる。
「冷たくて美味しい」
「今日は暑いですからね。海で遊ぶとはいえ、熱中症には気をつけないといけないですね」
「そうだな。氷織も一口飲むか?」
「ありがとうございます。いただきます」
氷織は俺から水筒を受け取ると、スポーツドリンクを一口飲む。スポーツドリンクが結構冷たいからか、氷織は爽やかな笑みを浮かべて、
「美味しいですっ」
俺に向かってそう言ってくれた。
氷織から水筒を返してもらい、もう一口スポーツドリンクを飲む。氷織が飲んだ直後だからか、さっきよりも甘味が強く感じられて美味しくなっていた。
氷織は自分の大きなトートバッグから、水色の小さなボトルを取り出す。
「あの、明斗さん。背中と腰、お尻、脚にこの日焼け止めを塗ってくれませんか?」
「うん、いいよ。じゃあ、その後に俺にも日焼け止めを塗ってくれるかな。俺も持ってきたんだ」
「分かりました」
氷織は優しい笑顔でそう言ってくれる。
遊ぶ前に日焼け止めを塗るのは、海ならではかもしれないな。この前のプールデートでは屋内プールだったから、日焼け止めを塗る必要がなかったし。
「少しだけでもいいから、あたしも氷織に日焼け止めを塗りたいわっ!」
火村さんが右手でピシッと手を挙げながらそう言ってきた。火村さんなら名乗り出ると思っていたよ。
「分かった。じゃあ、火村さんは両方の膝から足元まで塗ってくれるかな。氷織、いいかな?」
「ええ、かまいませんよ」
「ありがとう! あと、紙透の後でいいから、あたしに日焼け止めを塗ってくれるかしら」
「分かりました」
「ありがとうっ!」
とっても嬉しそうにお礼を言う火村さん。海へ行くと決まったときから、氷織に日焼け止めを塗ってもらおうと考えていたのかもしれない。まあ、女の子同士だし、日焼け止めを塗るくらいなら、彼氏として何も言うことはない。
「ひおりんの脚に塗り終わったら、あたしに塗ってもらっていいッスか? ヒム子」
「いいわよ。任せなさい、沙綾」
火村さんは上機嫌な様子で葉月さんに言っていた。
まずは氷織に日焼け止めを塗ることに。背中から両膝までは俺が担当し、両膝から足元までを火村さんが担当することに。
氷織は青いヘアゴムで髪をまとめて、レジャーシートにうつぶせの状態になった。髪をまとめたことで露わになった氷織の後ろ姿は白くてとても美しい。この美しさが保てるように丁寧に塗らないと。
火村さんは「はあっ……はあっ……」と興奮しながら氷織のことを見ている。彼女に担当を割り振るべきじゃなかったかな。
俺と火村さんは氷織が持参した日焼け止めをボトルから手に出す。
「まずは背中からやるよ」
「あたしは右脚ね」
「はい、お願いします」
こちらに振り向きながらそう言うと、氷織は顔を前に向けた。
俺は背中に、火村さんは右脚に触れる。日焼け止めがほんのちょっと冷たいからか、それとも俺達の手が触れてくすぐったいのか、氷織は「ひゃっ」と可愛らしい声を小さく漏らし、体をピクつかせた。
俺は氷織の背中に日焼け止めを丁寧に塗り始める。日焼け止めが結構サラサラしているし、氷織の肌もツヤツヤしているから塗りやすいな。
「氷織に日焼け止めを塗れるなんて。女子で良かった」
火村さんはうっとりとした様子で、氷織の左脚に日焼け止めを塗っている。まあ、火村さんが男子だったら、氷織に日焼け止めを塗らせなかったな。
「ふふっ。背中と脚を同時に塗ってもらっていますし気持ちいいですから、何だか贅沢な時間を過ごしている感じがします。マッサージ店に行くとこういう感じなのかもしれませんね」
あぁっ……と、氷織は気持ち良さそうな声を出していた。火村さんと一緒に塗っているからこそ体験できる感覚なのかも。火村さんをチラッと見ると、右脚に塗っている火村さんと目が合い……彼女は俺に向かってニコッと笑った。
「よし、これでOKね。……氷織。両膝から足元まで塗り終わったわ」
「ありがとうございます、恭子さん」
「さあ。次は沙綾の番ね」
「お願いするッス」
葉月さんは氷織の隣でうつぶせの体勢になる。
また、葉月さんの奥では和男がうつぶせになっており、清水さんに日焼け止めを塗ってもらっている。和男は大柄だし、清水さんの手は小さめだからかなり塗り甲斐がありそうだ。ただ、2人とも楽しそうにしていて微笑ましい。
俺は腰の辺りに日焼け止めを塗っていく。
氷織の横に座っているけど、背面の大部分が肌を露出しており、腰に触れていると……氷織と肌を重ねているときのことを思い出すな。……段々と体が熱くなってきた。せっかく、さっき飲んだスポーツドリンクで体がちょっと冷やされたのに。今は日焼け止め塗りに集中だ。
腰を塗り終わって、次はお尻と太ももだ。
再びボトルから日焼け止めを出して、氷織の右のお尻に触れる。その瞬間、氷織は「ひゃあっ」と可愛い声を漏らした。
「お尻にちょっと冷たいのが触れたので、変な声が出ちゃいました」
氷織はそう言うと、俺の方に向いてはにかむ。
「お尻に塗り始めたから。ビックリさせちゃったかな」
「ちょっとだけですよ。このままお願いします」
「ああ、分かった」
俺は氷織のお尻と太ももに日焼け止めを塗っていく。背中や腰と比べて柔らかさや弾力が感じられる。
それにしても、何か視線を感じるな。そう思って顔を上げると、火村さんが俺に羨望の眼差しを向けていた。俺の顔と手元を交互に見ている。……こ、恋人だからね、俺。氷織にお願いされているし、俺はこのまま日焼け止めを塗り続けるよ。
「……沙綾のお尻は結構いい触り心地ね」
「いきなり何を言っているッスか。褒めてくれるのは嬉しいッスけど」
「いいと思ったから言っただけよ」
「あははっ、そうッスか。ヒム子、可愛いッスね」
ふふっ、と葉月さんは笑う。そんな葉月さんの笑い声につられたのか、氷織も一緒に笑っていた。
俺が氷織のお尻に日焼け止めを塗っているから、自分も葉月さんのお尻に日焼け止めを塗ったのかな。そうしたら、思いの外いい触り心地で感想を口にしたってところか。
今の火村さんと葉月さんの会話を聞いたのもあり、氷織のお尻や太ももの触り心地がよりいいなと思えるようになった。
「……氷織。塗り終わったよ」
「ありがとうございます、明斗さん」
氷織はそうお礼を言うと、ゆっくりと起き上がる。柔らかな笑みを浮かべた氷織は、お礼なのかキスしてくれた。
氷織はヘアゴムを解いた後、自分で体の前面に日焼け止めを塗っていく。普段の落ち着いた笑みを浮かべているし、手つきも鮮やかなので、今の氷織は凄く大人っぽくて艶やかに見えた。
「よし、これでOKですね。明斗さん、お待たせしました。次は明斗さんに日焼け止めを塗りますね」
「うん、お願いするよ」
俺は持参した日焼け止めのミニボトルを氷織に渡して、レジャーシートにうつぶせの状態になる。ついさっきまで氷織がうつぶせになっていたからか、レジャーシートにはまだ温かく、氷織の甘い残り香が感じられて。これだけで何だか幸せな気分に。
「では、塗り始めますね。明斗さん」
「うん、お願いします」
氷織に塗ってもらうのはどんな感じなのか楽しみだ。
その直後、左肩の近くに氷織の優しい温もりと、日焼け止めのほんの少しの冷たさを感じた。人にとっては、体が少しビクついてしまうのは分かる気がする。
氷織に日焼け止めを塗ってもらい始める。
氷織の手から伝わる温もりが心地いいし、塗る手つきがとても優しいから凄く気持ちいい。癒やされる。
「明斗さんの肌はスベスベですから塗りやすいですね。お風呂で背中を洗うときにも思いましたが、いい触り心地ですし」
「そうか。凄く気持ちいいよ。さっき、氷織が贅沢な時間を過ごしているって言ったのが分かるよ」
「ふふっ、そうですか。嬉しいお言葉です。塗ってもらって気持ち良かったですから、明斗さんにもそう思ってもらえるように頑張りますね」
「ありがとう。嬉しいよ」
横に座っている氷織を見ながらお礼を言うと、氷織はニッコリと笑ってくれた。
その後も、氷織に日焼け止めを塗ってもらう。凄く気持ちいいし、たまに氷織のことを見ると氷織は楽しそうに塗っているし。俺は本当に幸せ者だ。
去年は和男に背中を塗ってもらったな。かなり大きな手だからすぐに終わったことを覚えている。あのとき、次の年の海水浴では恋人に背面全部を塗ってもらうことになるとは想像もしなかったよ。
和男の方をチラッと見ると、和男は清水さんの背面に日焼け止めを塗っていた。その手前では、葉月さんが自分で前面に日焼け止めを塗りながら火村さんと談笑していた。
「明斗さん、背面全部を塗り終わりました」
脚を塗り終わって、氷織はそう言う。
「ありがとう、氷織」
俺はゆっくりと起き上がり、さっきの氷織がしてくれたように、俺は氷織にキスした。
唇を離すと、氷織は日陰でも分かるくらいに頬を赤く染めて、口角を上げた。
「明斗さんに日焼け止めを塗れて楽しかったです」
「そう言ってくれて良かった。あとは自分で塗るよ」
「分かりました。では、次は恭子さんですね。お待たせしました」
「楽しみすぎて、全然待ったうちに入らないわ!」
嬉々とした様子でそう言うと、火村さんは素早い動きで俺の隣にうつぶせの状態になる。火村さんの後ろ姿は氷織に負けず劣らずの美しさだ。
「あたしもお礼に塗っていいッスか?」
「いいわよ!」
「では、お尻まで私が担当して、両脚は沙綾さんの担当にしましょうか」
「了解ッス」
氷織のときと同じで、火村さんには2人で日焼け止めを塗るんだな。
体の前面に日焼け止めを塗りながら、火村さんが氷織と葉月さんに塗ってもらう様子を見ることに。
氷織は火村さんの肩を、葉月さんは火村さんの右脚に日焼け止めを塗り始める。その瞬間、火村さんは「はぁぁっ……」と甘い声を漏らす。
「氷織と沙綾にクリームすり込まれてるぅ。すっごく気持ちいい……」
恍惚とした様子でそう言う火村さん。
「気持ち良く思ってもらえて嬉しいです」
「そうッスね。日焼け止めを塗られてこんな反応をする友達は初めてッスよ」
「だって気持ちいいんだもんっ! あぁ、女子で本当に良かったぁ……」
はぅんっ……と、火村さんはさっき以上の甘い声を漏らしている。そんな火村さんは多幸感に満ちた表情になっていて。氷織と葉月さんに日焼け止めを塗ってもらうのが凄く気持ち良くて、そして嬉しいことが窺える。
それから、日焼け止めを塗り終わるまで、火村さんは甘い声を漏らし続けた。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる