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桜庭かなめ

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特別編4

第14話『最初に見せたくて』

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「美優先輩。英語で分からない問題があるのですが、質問してもいいですか?」
「もちろんだよ。どの問題かな?」
「この和訳の問題なんですけど」
「どれどれ……」

 夕食後。
 俺は寝室で美優先輩の隣で、明後日提出する英語の課題プリントを取り組んでいた。担当教師が難しめの問題もあると言っていただけあって、今までの課題よりもやり応えのある内容だ。
 英語は得意なので、これまでは自力で解くことができ、風花に教えることもあったくらいだ。しかし、今回のプリントの最後の問題だけはどうしても解けなかった。なので、美優先輩に訊いてみた次第である。
 美優先輩に勉強について質問することはそんなに多くない。なので、質問すると先輩はいつも凄く嬉しそうに教えてくれる。もちろん、今回も。あと、勉強を教えてくれるとき、先輩はとても大人っぽい雰囲気になるなぁ。そんな先輩も素敵だ。
 ちなみに、美優先輩は数学Ⅱの課題プリントを取り組んでいたけど、既に終わっていた。

「それで、この答えになるんだよ」
「……なるほど。そういう意味でしたか」
「慣用句は知っていても、上手く和訳するのが難しい問題ってあるよね」
「ええ。先輩のおかげで理解できました。ありがとうございました。これで英語の課題が終わりました」
「いえいえ。これで、由弦君も課題は終わりかな?」
「はい。明後日までに出す課題は全部終わりました。今日はこのくらいにしようかなと」
「そうなんだね、お疲れ様」

 よしよし、と美優先輩は優しい笑みを浮かべながら、俺の頭を撫でてくれる。分からないところは分かりやすく教えてくれて。課題が終わったら褒めてくれて。そんな先輩と同棲している自分は幸せ者だなと思う。

「課題を終わらせた由弦君にご褒美をあげよう。……でも、これってご褒美って言えるのかなぁ」
「きっと、ご褒美になると思います。いったい、何なんですか?」

 俺がそう問いかけると、美優先輩の頬がほんのり赤くなる。俺にどんなご褒美をあげようと考えているんだ?

「準備したいから、由弦君はリビングで待ってくれるかな。出来たらスマホにメッセージ入れるから。それまで、覗いちゃダメだよ」
「分かりました。では、リビングで待っていますね」

 俺はスマホとコーヒーの入ったマグカップを持って、寝室を後にする。
 リビングに行き、ソファーに腰掛ける。美優先輩の残り香が感じられて、今日の疲れがちょっとだけ取れるなぁ。そんなことを想いながらコーヒーを一口。

「……美味い」

 何かをやった後のコーヒーは美味しいな。
 それにしても、美優先輩は俺にどんなご褒美を用意してくれるんだろう? 寝室でご褒美を準備して、自分がいいと言うまで覗かないでって言っていたから……何かにコスプレしたりして。前に俺が風邪を引いたとき、花柳先輩が演劇部から借りてきてくれたナース服を着てくれたし。あれは可愛かったなぁ。猫耳カチューシャを付けてくれたときもあったか。
 美優先輩は可愛くて美人だから、色々なコスプレ衣装が似合いそう。メイドさんや巫女さんは王道だけど見てみたい。陽出学院の制服はブレザーだから、セーラー服姿の先輩も見てみたいなぁ。スタイルもいいからバニーガールとか。……どんどん妄想しちゃうな。これならいくらでも待てるぞ。
 ――プルルッ。
 おっ、スマートフォンが鳴った。ご褒美が準備できたのかとワクワクしながら確認すると、美優先輩からメッセージが1件届いていた。

『準備できたよ。寝室に来て』

 おっ、用意できたのか。もうすぐご褒美が何なのか分かると思うと、ワクワクと同時にドキドキもしてきた。
 リビングを出て、寝室の前まで行く。

 ――コンコン。
「は、はい! どうぞ!」

 中から美優先輩の声が聞こえてきた。その声から緊張しい気持ちが伝わってくる。
 寝室の扉をゆっくり開けると、ベッドの側には、黒いスクール水着姿の美優先輩が立っていた。先輩ははにかみながら俺を見る。

「どうかな? この前買った新しい水着なんだけど」
「……とてもよく似合っていますよ」
「ありがとう、由弦君」

 確か、新しいベッドを買った後に、美優先輩は新しいスクール水着を買ったんだよな。胸がキツくなって、去年着ていた水着が着られなくなってしまったから。
 こうして見てみると、美優先輩ってスタイルがいいな。あと、肌が露出している部分にキスマークなどがないことに一安心。

「確か、由弦君は瑠衣ちゃんの送った写真でこの水着姿を見たよね。どの水着を買うか決めてもらうために」
「そうでしたね」
「……明日から、うちのクラスは毎週火曜日に水泳の授業があるの。男の子から見えるところで。だから、由弦君には最初に水着姿を見てほしくて。前に写真で水着姿は見てもらったけど、実際にも見てほしかったの。男の子の中では最初に。そんな私の願望もあるから、由弦君へのご褒美になるのかなって……」
「そういうことでしたか。……俺が美優先輩の水着姿を見る初めての男子で嬉しいです。凄くいいご褒美になってます。学年もクラスも違いますから、一緒に水泳の授業は受けられませんからね。ありがとうございます。それに、美優先輩は数学の課題を頑張ったじゃないですか。だから、男子の中では俺に最初に見てもらうのは、そのご褒美ということでいいんじゃないでしょうか」
「……そうだね。ありがとう」

 お礼の言葉を口にすると、美優先輩は嬉しそうな笑顔を見せる。そんな先輩がとても――。

「可愛いですよ」

 俺は美優先輩をぎゅっと抱きしめる。先輩が水着姿だからか、いつもよりも彼女の温もりが強めに伝わってくる。あと、水着越しでも先輩の胸の柔らかさがはっきりと分かる。
 両手を美優先輩の背中に回しているけれど、この肌触りは先輩の地肌だ。そういえば、今着ている水着がいいと俺が選んだ理由の一つは、背中の露出が少し多めであることだったな。

「もう、由弦君ったら。抱きしめたら水着姿が見えないでしょう?」
「美優先輩からのご褒美がとても嬉しくて、つい抱きしめてしまいました。他の男子には見せたくないくらいに似合ってます」
「由弦君……」

 俺の名前を呟くと、美優先輩の頬だけに出ていた赤みが顔全体に広がっていく。そんな顔にうっとりとした表情を浮かべ、先輩は俺にキスをしてきた。
 寝室で新しいスクール水着姿を披露してくれるというご褒美でさえドキドキしているのに、キスされたら更にドキドキしてしまう。興奮のあまり、キスをしながらベッドの上に倒れ込んだ。

「本当に美優先輩は可愛い人ですよ。スタイルもいいですから、スクール水着姿の先輩にとてもそそられます。きっと、多くの男子生徒が美優先輩を見てしまうんじゃないでしょうか。だから、花柳先輩には美優先輩を守ってもらわないと」
「クラスに女の子の友達は何人もいるし、瑠衣ちゃんがいれば絶対に大丈夫だと思う」
「……同感です」

 かつては美優先輩のことで、花柳先輩から何度もお仕置きされた経験がある。クラスメイトの男子が授業中に何か変なことをすれば、花柳先輩がきっとお仕置きをしてくれることだろう。花柳先輩が近くにいるのは心強い。

「それにしても、スクール水着姿でベッドに横になっていると、結構……い、厭らしい感じがしますね。何も身につけていないときと同じ……いや、それ以上かもしれません。も、もちろん厭らしいというのは褒め言葉ですよ!」
「ふふっ、分かってるよ。スクール水着姿で横になること、普通はないもんね」
「……普通にはない組み合わせだと、凄くそそられることってありますよね。写真撮っていいですか」
「うん、いいよ! でも、他の人には見せないようにね。せいぜい、瑠衣ちゃんや風花ちゃんくらいで……」
「分かりました。では、写真を撮りますね」
「うんっ」

 美優先輩は枕に頭を乗せて仰向けになる。そんな美優先輩の姿をスマートフォンで撮影する。俺が注文してうつ伏せになって、顔だけ俺の方を向いている写真も。
 仰向けになっている写真を美優先輩に見せる。

「……何だか、これからイチャイチャするようにしか見えないね。普段とは違う雰囲気にしたいから、水着姿になった感じがする」
「そう言われると……そう見えてしまいますね。それでも、俺はとてもいいなって思いますけど」
「……そう言ってくれるなら、週末にでもこの水着姿の私とイチャイチャする? うちのクラスの授業は火曜日だから、水着が汚れても大丈夫だし」

 優しい笑顔でそう言ってくれる美優先輩がとても可愛らしい。
 スクール水着姿の美優先輩とイチャイチャか。目の前に水着姿の先輩がいるからか、どんな感じなのかはっきりと妄想できるな。冬服納めといい、美優先輩はとても魅力的なお誘いをしてくれる。お誘いの内容を一言で言うなら『スクール水着初め』だろうか。

「凄く興味があります。一度してみたいです」
「うん、分かったよ」
「……今週の楽しみが増えました。約束ですよ」

 俺は仰向けになっている美優先輩に覆い被さるような体勢になり、先輩に約束のキスをする。
 唇を離すと、ニッコリと笑って俺を見つめる美優先輩の姿があった。ヤバい、スクール水着姿が可愛くて、しかも夜のベッドで2人きりだから、色々としたくなってきた。

「色々としたいって顔をしてるよ?」
「よく分かりますね」
「ふふっ、一緒に住み始めてから2ヶ月以上経っているんだよ? 恋人になってからも1ヶ月以上経つし。ちょっとは分かるよ」
「……さすがですね、美優先輩は。明日は水泳の授業がありますから、支障のない程度に今の美優先輩と触れ合いたいです」
「……いいよ」

 美優先輩は俺を抱き寄せ、軽く唇を重ねてきた。
 その後、首筋や腋、太もも、背中など、肌の露出している部分にキスをして、スクール水着姿の美優先輩と触れ合うのであった。
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