管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ

文字の大きさ
130 / 251
続編

第63話『旅行最終日の夜』

しおりを挟む
 あけぼの荘のみなさんにお土産を渡し、俺達は心愛が誕生日プレゼントでくれた新茶を飲んでゆっくりとした。さすがに新茶だけあって、爽やかな香りと、まろやかな甘味も感じられて美味しい。
 お茶をした後、風花とは別れ、美優先輩と俺で花柳先輩の買ったお土産を自宅まで運ぶのを手伝った。花柳先輩の家に行くのはこれが初めてだけど、美優先輩のご実家と負けず劣らずの立派なお宅だったな。
 あと、花柳先輩の御両親と初めて会ったので挨拶した。お父様はとても落ち着いた雰囲気の方で、お母様は先輩より小柄のとても可愛らしい方だった。
 美優先輩と俺は家に帰り、さっそく旅行の荷物やお土産の整理を始める。

「家族やあけぼの荘のみんなには渡したけど、こうして見てみると、私達……結構な量のお土産を買ったね」
「そうですね。友達やクラスメイト、料理部のみなさんにも買いましたからね。あとは、自分達用のお菓子とかも買いましたし」
「そうだね。明日もお休みだから、お土産の整理は後でやっても大丈夫かな。まずは旅行中に着た服や下着を洗濯しちゃおうか」
「そうですね」
「うん。じゃあ、服や下着を洗面所にある洗濯カゴに入れちゃって」
「分かりました」

 俺は美優先輩の言う通りに、旅行中に着た服や下着を洗面所にある洗濯カゴの中に入れる。
 美優先輩と入れ替わるようにして洗面所から出て、俺はリビングで荷物を整理していく。

「にゃ~」

 猫の鳴き声が聞こえたので、カーテンを開けてみると……そこにはサブロウの姿が。

「おっ、サブロウか」
「にゃぉ~ん」

 窓を開けると、サブロウは俺の足元に擦り寄ってくる。3日ぶりに会えて嬉しいのかな。可愛いやつだ。

「由弦君、サブちゃんっぽい鳴き声が聞こえたけど」
「サブロウが遊びに来たんですよ」
「そうなんだ!」

 サブロウの目の前まで駆け寄る美優先輩。
 サブロウはそれに驚いたり、逃げたりすることもなく、美優先輩が目の前に立つと先輩の脚に擦り寄る。

「ふふっ。久しぶりに私達に会うことができて嬉しいのかな」
「そうかもしれませんね。俺達の声が聞こえて遊びに来たのでしょう。俺がエサと水を用意するので、美優先輩はサブロウと戯れていてください」
「はーい」

 俺はキッチンに行き、サブロウのためにキャットフードと水を用意する。

「サブちゃん。相変わらずいい毛並みだねぇ」
「にゃ~ん」
「ふふっ、背中を撫でると気持ちいいね」
「な~う」

 3日ぶりにサブロウと会うからか、普段よりも美優先輩の声が甘くなっている気がする。そういう声を聞くと、一昨日や昨日の夜のことを思い出してドキドキしてしまう。
 エサと水の皿を持って、サブロウのところに戻る。サブロウの奴、美優先輩の膝の上で気持ち良さそうにしている。羨ましい。

「サブロウ、エサとお水だよ。たくさん食べて、たくさん飲むんだぞ」
「にゃん」

 エサの匂いに惹き付けられたのか、サブロウは美優先輩の膝から降り、俺がバルコニーに置いたエサの皿の前に座る。エサをさっそく食べ始めているサブロウの姿を見て安心する。

「3日も会っていなかったから、サブロウがここに来なくなるかもしれないと思ったけれど、ちゃんと来てくれて良かった」
「俺達のことを覚えていてくれたんでしょうかね。まあ、旅行中に佐竹先輩が何度かエサをあげていたそうですから、そのおかげかもしれません」
「ふふっ、そうかもね」

 美優先輩は水を飲んでいるサブロウの頭を優しく撫でている。こういう光景も家に帰ってきたからこそ見られるんだなと思った。日常が少しずつ戻ってきていることをさっそく実感した。


 洗濯物を干し終え、旅行の荷物の整理をある程度済ませた頃にはすっかりと夕食時だったので、俺達は夜ご飯を食べた。一昨日の昼食から今日の昼食までは大勢で食べていたこともあって、2人で食べるのは寂しく思えた。
 美優先輩が洗濯物を洗うときに準備してくれていたおかげもあり、食事の後片付けをし終わるとすぐに先輩と一緒に入浴する。昨日の貸切温泉と同じように、お互いの髪と背中を洗い合った。

「あぁ、家のお風呂も気持ちいいね」
「ですね」
「貸切温泉はもちろんホテルの浴室の湯船よりも狭いけど、家のお風呂だからか安心できるよ。それに、由弦君と一緒に入っているから、このくらいの広さの方がいいなとも思えるの」
「美優先輩……」

 美優先輩はゆっくりと俺に近づいてきて、その流れでキスしてくる。そんな先輩の体を優しく抱きしめた。こうしていれば、湯船の広さはあんまり関係ないか。
 そっと唇を離すと、目の前には優しい笑顔になっている美優先輩の姿が。家のお風呂で先輩らしい笑みを見ることができて安心する。こういうことで、いつもの時間を過ごせているのだと思えることに幸せを感じる。

「恋人になってからたくさんキスしているけど、旅行中もたくさんしたよね」
「そうですね。風花達と一緒のときは少なかったですけど、2人きりのときはたくさんしましたね。特に1日目、2日目の夜は数え切れないほどに」
「そうだね。一緒に旅行に行くことができるだけでも楽しくて幸せだったけど、2日とも夜は特に幸せだった。由弦君とより確かな関係を築くことができて。お互いの初めてをあげることもできたし。それに、私のお父さんやお母さんには、私とのこれからについての考えをちゃんと言ってくれて。由弦君という人と出会って、一緒の家で暮らすようになって、恋人になることができて本当に良かったって思えたの」
「……そう言ってくれて嬉しいです」

 美優先輩と目が合うと、それまで赤かった顔の赤みがさらに強くなる。俺も頬を中心に熱くなった気がするので、きっと美優先輩と同じように相当赤くなっているのだろう。

「ねえ、由弦君。……今夜もしよう? 旅行中にしているときも、家のベッドでしたいなって思っていたから。いずれはダブルベッドに買い換えるから、小さい頃から使っていた大好きな今のベッドで、由弦君との思い出を増やしたくて。それに、馴染みのある場所だからドキドキできるかなって」

 美優先輩は俺のことを見つめながらはにかむ。先輩はこういうことの欲の強い人であると旅行中に分かった。そのことにドキドキするだけでなく、可愛らしいと思えるようになったのは、先輩への好意の強さや深さ故なのだろうか。

「もちろんいいですよ。俺も誘おうかなって思っていたんです。明日もまだお休みですし、先輩が凄く疲れていたり、眠たそうにしていたりしていなければ」
「そうだったんだ。優しいね、由弦君は。旅行帰りで疲れはあるし、お風呂に入って眠気もあるけれど大丈夫だよ! なので、今夜もよろしくお願いします」
「……こちらこそよろしくお願いします」

 その気持ちを確かめるかのように、俺達は再びキスを交わした。
 お風呂を出た後は玄関や窓などの鍵が閉まっているかを確認して寝室に向かう。寝室のシャッターも閉まっているな。
 約束通り、ベッドの中で美優先輩とたっぷりと愛し合った。

「旅行最終日の夜も、由弦君と楽しくて愛おしい時間を過ごすことができたな」
「旅行最終日の夜ですか。よく、学校の修学旅行で、家に帰るまでが修学旅行ですよって言われたりはしますが」
「私もその言葉を先生に言われたな。確かに、私達の家には帰ってきたよ。ただ、旅行は一昨日から今日までの3日間だし、入浴中に言ったように楽しくて幸せだったから。だから、少しでも長くあってほしくて」
「確かに、そういう時間は長いに越したことはないですもんね」
「でしょう? 改めて、今回の旅行はとても楽しくて幸せな時間になりました。瑠衣ちゃん達のおかげでもあるけど、特に由弦君という人がすぐ側にいたからです。ありがとう」
「俺も美優先輩達のおかげでとても楽しくて、幸せで、ドキドキもした旅行でした。忘れられない3日間になったと思います。ありがとうございました」
「うん。……今さらだけどさ、風花ちゃん達には聞こえてないよね。私、結構大きめの声が出ちゃったときもあったから」

 美優先輩ははにかみながらそう言う。戸締まりをしたり、カーテンを閉めたりしていることに安心して、俺も全然考えなかったな。

「リビングだったらまずかったかもしれませんが、アパートの外壁側にある寝室ですから、きっと大丈夫ですよ」
「……そうだね」

 夜も遅い時間だし、風花はぐっすりと寝ていることを願おう。これからはそういうことにも気を遣わないといけないな。

「じゃあ、寝るという形で旅行を終わりにしようか」
「そうですね。おやすみなさい、美優先輩」
「うん、おやすみ」

 普段よりも長めのおやすみのキスをした後、美優先輩はそっと目を閉じる。旅行の疲れがあるのか、すぐに先輩は可愛らしい寝息を立て始めて。そんな先輩の額にキスをし、ベッドライトを消して俺も眠りに落ちた。
 こうして、美優先輩達との旅行は静かに幕を下ろすのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2025.12.18)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編5が完結しました!(2025.7.6)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...