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続編
第16話『妹達がやってきた』
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4月29日、月曜日。
今日は平成最後の昭和の日。そんな日が令和に改元される2日前にあるなんて。何だか凄い日に思えてきた。
そんな今日は美優先輩の妹さん達と俺の姉妹が家にやってきて、3日間滞在する予定だ。楽しい元号越しになればいいなと思う。先輩の妹さん達は午後2時くらい、俺の姉妹は午後3時くらいにここに到着することになっている。
午前中は美優先輩と風花と一緒に家の近くにあるスーパーに行き、今日の夕食である焼肉の材料を中心に買った。平成最後の特大セールをやっていたので、たくさん食材を買ってもそこまでお金はかからなかった。
お昼ご飯を食べた直後に花柳先輩がやってきた。美優先輩の妹さん達はもちろんのこと、俺の姉妹にも会いたいのだそうだ。
花柳先輩が来たすぐ後に、白鳥武彦さん・久美子さん夫婦もあけぼの荘にやってきた。姪である朱莉ちゃんと葵ちゃんが来るので、お正月以来に会いたいという。また、美優先輩にお小遣いをあげていた。
美優先輩の親戚なので、先輩と俺が恋人として付き合っていることを改めて伝えた。すると、夫婦共々「美優ちゃんをよろしく」という言葉をいただいた。
「それにしても、2人はちゃんとここまで来られるだろうか。去年の夏休みは、健二の運転する車で来たから」
健二というのは美優先輩のお父様の名前だ。以前に先輩から教えてもらった。
「きっと大丈夫ですよ、伯父さん。電車の乗り継ぎもそんなにないですし。それに、中学生になった朱莉はとてもしっかりしていますから」
「……そうだね」
雫姉さんと心愛も2人だけで来るけど、朱莉ちゃんと葵ちゃんの方も2人でここまで来ることになっている。こちらは大学生の雫姉さんがいるので安心だけど、向こうは中学生と小学生。中学生の朱莉ちゃんはしっかりしているそうだけど、伯父である白鳥武彦さんが不安になってしまう気持ちは分かる。
ただ、姉である美優先輩が笑顔で大丈夫だと言っているのだから、きっと大丈夫なんだろう。今はその言葉を信じよう。
「そういえば、花柳先輩は朱莉ちゃんと葵ちゃんには会ったことがあるんですか?」
「うん。去年の夏休みにね。美優の妹さん達だけあって、2人ともとても可愛いよ」
えへへっ、と花柳先輩はデレデレした様子。白鳥武彦さんや久美子さんもうんうんと納得した様子で頷いている。
時計を見てみると……もう2時近くか。予定通りならもうすぐ2人が来るけど。
――ピンポーン。
インターホンが鳴ったので、美優先輩がモニターを確認する。
「はーい。あっ、朱莉に葵。ちゃんと来ることができたんだね」
『はい、姉さん。お久しぶりです。電車も混んでいなかったので快適でした。乗り換えもしやすかったですし。葵も姉さん達に会うことができるのが楽しみなのか、ずっと上機嫌で』
『美優お姉ちゃんはもちろんだけど、由弦さんに早く会いたくて!』
「そうなんだ。もちろん、由弦君もいるよ。すぐにそっちに行くね」
そう言うと、美優先輩は玄関の方に向かって行く。
葵ちゃん、俺に会いたいと思っていてくれたのか。嬉しいなぁ。
朱莉ちゃんや葵ちゃんの声を聞けたからか、白鳥武彦さんはとても安心しているようだった。
程なくして、美優先輩と一緒にヘアピンを付けたロングヘアの大人な雰囲気の女の子と、ツーサイドアップの可愛らしい女の子が入ってくる。前にテレビ電話で話したこともあって、ロングヘアの子が朱莉ちゃん、ツーサイドアップの子が葵ちゃんであるとすぐに分かった。
「みなさん、お久しぶりです。桐生さんはテレビ電話でお話ししたことがありますが、そちらの金髪の方は初めましてですね」
「彼女は陽出学院高校1年の姫宮風花ちゃん。102号室に住んでいて、由弦君のクラスメイトなんだよ」
「初めまして、姫宮風花です。2人のことは美優先輩から聞いているよ。これからよろしくね」
「はい。あっ、私は白鳥朱莉といいます。中学1年生です。こちらが妹の葵で小学5年生です。葵、挨拶しましょうか」
「白鳥葵です!よろしくお願いします」
「うん、よろしくね! 2人とも可愛くていい子だね」
風花はデレデレとした様子で2人の頭を優しく撫でている。その横で、花柳先輩が幸せそうな笑みを浮かべながら見ていた。
「朱莉ちゃんも葵ちゃんも、無事にここまで来ることができて良かった。伯父さん、2人で来るって知ってから心配だったよ」
「葵と2人でこんなにも長く移動するのは初めてだったので、正直、ちょっと不安もありました。ただ、さっきも言ったとおり、電車はあまり混んでいなかったですし、乗り換えもしやすかったので大丈夫でした」
「そうかぁ。伯父さんは安心した。頑張ってここまで来たご褒美も込めて、2人にお小遣いだよ」
「ありがとうございます。大切に使いますね」
「ありがとう! 伯父さん!」
朱莉ちゃんと葵ちゃんが喜んでいるからか、微笑ましい光景になっている。
それにしても、朱莉ちゃんはとてもしっかりしているな。さすがは美優先輩の妹さんというだけある。心愛と同い年だなんて。あと、スタイルの良さもあってか、風花や花柳先輩よりも大人な雰囲気を持っているな。
「今、由弦に失礼なことを想像された気がしましたよね、瑠衣先輩」
「風花ちゃんもそう思った?」
「そんなことないですよ。ただ、朱莉ちゃんは中学1年生にしてはとてもしっかりしていると思ったんですよ」
高校生の風花と花柳先輩よりもしっかりしているかもしれないけど。
朱莉ちゃんと葵ちゃんが無事に来ることが確認できたということで、白鳥武彦さん・久美子さん夫婦は帰っていった。
「そういえば、桐生さんの姉妹の方はいつ来るのですか?」
「3時くらいに到着するとは聞いているよ。あと、俺のことは下の名前で言ってくれていいんだよ、朱莉ちゃん」
「そ、そうですか? では……由弦さん」
朱莉ちゃんははにかみながらそう言う。
俺のことを由弦さんと呼ぶ人が全然いないからか、何だか新鮮でいいな。不覚にもちょっとキュンときてしまった。
「実際に会ってみると、美優お姉ちゃんは本当にかっこいい人と付き合うようになったんだなって思うよ」
「姉さんと付き合っているというのもありますが、今まで告白してきた方の中でも最も素敵に見えますね。男性が苦手な方の姉さんが、由弦さんと一緒に住むと聞いたときは不安もありましたが……今の2人を見て安心しました」
「私が信じた通り、由弦君は誠実な人だよ。素敵な人と付き合っているとも思うよ」
そう言って、美優先輩は俺のことをチラッと見ると、頬を朱色に染め、嬉しそうな笑みを浮かべた。
「俺も素敵な人と付き合っているんだと思いますよ、美優先輩」
「由弦君……」
「美優お姉ちゃんがあんな表情をするなんて。これが恋人ができるってことなのかなぁ? 朱莉お姉ちゃん」
「そうかもしれませんね。姉さんと由弦さんを応援しましょうね、葵」
「うん!」
妹さん達がそう言ってくれるのはとても嬉しいな。
ただ、彼女達と美優先輩は離れたところで暮らしている。朱莉ちゃんは葵ちゃんに応援しようと言ってくれているけれど、美優先輩と俺は付き合い始めて間もないし、きっとまだ不安もあるんじゃないかと思う。この3日の間に、少しでも信頼してもらえるように頑張ろう。
「それにしても、会うのはお正月以来だけれど、朱莉も葵も大きくなったねぇ」
美優先輩は朗らかな笑みを浮かべて、朱莉ちゃんと葵ちゃんの頭を撫でている。小学生の頃に親戚の家に行くと今みたいなこともよくされた。そんなことを考えると、今の美優先輩がおばあちゃんっぽい。
「朱莉の方は、来年の今ごろにはお姉ちゃんの背を越しているんじゃないかな?」
「そうですか? ただ、この前、身体測定があったのですが、この1年間で背も……む、胸も大きくなりました」
「あたしもお姉ちゃん達みたいに大きくなれるかなぁ」
「バランスのいい食事を取って、たっぷりと寝れば大きくなれるよ。あと、適度な運動かな。葵だったら、もしかしたらお姉ちゃん達よりも大きくなれるかも」
「そうだといいな」
葵ちゃんは可愛らしい笑みを浮かべる。これから成長期に突入するだろうし、美優先輩と朱莉ちゃんの妹でもあるから大きくなるんじゃないだろうか。
朱莉ちゃんも中学1年生だし、美優先輩の言う通り、来年になったら先輩の身長を越しているかもしれないな。
「あたしはお菓子をたくさん食べたり、夜更かししたりする日もあるからなぁ……」
「運動はたくさんしていますけど、もう少し背や胸が大きくなりたかった……」
はあっ、と風花と花柳先輩は一緒にため息をつき、お互いの顔を見ながら頷き合っている。今の2人には触れない方が良さそうだ。あと、美優先輩と俺が付き合い始めた頃から、2人がより仲良くなったような気がする。
「そうだ、朱莉お姉ちゃん。さっそく由弦さんに渡そうよ」
「そうですね」
俺に何か渡したいものがあるのか。
朱莉ちゃんは持ってきた大きなバッグから、小さな黒い紙袋を取り出した。すると、葵ちゃんと一緒に明るい笑顔を俺に向けてくる。
「由弦さん! 少し早いですけどお誕生日おめでとう!」
「お誕生日おめでとうございます。ここに来ることが決まってから、姉さんに由弦さんの誕生日が5月7日であることを言われまして。コーヒーがお好きだと聞きましたので、葵とお金を出し合ってスティックタイプのインスタントコーヒーを買いました」
「そうなんだ。どうもありがとう」
朱莉ちゃんと葵ちゃんから黒い紙袋を渡される。
さっそく中身を見てみると……有名な喫茶店から発売されているインスタントコーヒーだった。しかも、3種類のコーヒーを楽しめるなんて。2人から誕生日プレゼント渡されると思わなかったこともあって、かなり嬉しいな。嬉しすぎて涙が出そうだ。
「コーヒーは大好きだから凄く嬉しいよ。美味しくいただくね」
「良かったね、由弦君」
「ええ。まさか、妹さん達からもらえるとは思っていませんでした。とても嬉しいです」
「コーヒー好きの由弦にとっていいプレゼントだね。あたしはまだ考え中だよ」
「あたしも。ただ、旅行もあるし、そのときに買おうかなとも思っているわ」
「私も考えてる。楽しみにしていてね」
「みなさんのお気持ちがとても嬉しいです。ただ、楽しみにしています」
こうして実際にプレゼントをもらうと、俺の誕生日がもうすぐなのだと実感する。
そういえば、まもなく俺の姉妹もここに来るけど、もし誕生日プレゼントがあるなら今日渡してくれるのだろうか。それとも、誕生日に合わせて宅配で送られるのだろうか。実家を離れてから初めての誕生日なので、そういったことを含めて楽しみにしておこう。
雫姉さんと心愛が来るまであと小一時間ほどあるので、俺達は美優先輩の淹れた紅茶を飲みながらゆっくりとするのであった。
今日は平成最後の昭和の日。そんな日が令和に改元される2日前にあるなんて。何だか凄い日に思えてきた。
そんな今日は美優先輩の妹さん達と俺の姉妹が家にやってきて、3日間滞在する予定だ。楽しい元号越しになればいいなと思う。先輩の妹さん達は午後2時くらい、俺の姉妹は午後3時くらいにここに到着することになっている。
午前中は美優先輩と風花と一緒に家の近くにあるスーパーに行き、今日の夕食である焼肉の材料を中心に買った。平成最後の特大セールをやっていたので、たくさん食材を買ってもそこまでお金はかからなかった。
お昼ご飯を食べた直後に花柳先輩がやってきた。美優先輩の妹さん達はもちろんのこと、俺の姉妹にも会いたいのだそうだ。
花柳先輩が来たすぐ後に、白鳥武彦さん・久美子さん夫婦もあけぼの荘にやってきた。姪である朱莉ちゃんと葵ちゃんが来るので、お正月以来に会いたいという。また、美優先輩にお小遣いをあげていた。
美優先輩の親戚なので、先輩と俺が恋人として付き合っていることを改めて伝えた。すると、夫婦共々「美優ちゃんをよろしく」という言葉をいただいた。
「それにしても、2人はちゃんとここまで来られるだろうか。去年の夏休みは、健二の運転する車で来たから」
健二というのは美優先輩のお父様の名前だ。以前に先輩から教えてもらった。
「きっと大丈夫ですよ、伯父さん。電車の乗り継ぎもそんなにないですし。それに、中学生になった朱莉はとてもしっかりしていますから」
「……そうだね」
雫姉さんと心愛も2人だけで来るけど、朱莉ちゃんと葵ちゃんの方も2人でここまで来ることになっている。こちらは大学生の雫姉さんがいるので安心だけど、向こうは中学生と小学生。中学生の朱莉ちゃんはしっかりしているそうだけど、伯父である白鳥武彦さんが不安になってしまう気持ちは分かる。
ただ、姉である美優先輩が笑顔で大丈夫だと言っているのだから、きっと大丈夫なんだろう。今はその言葉を信じよう。
「そういえば、花柳先輩は朱莉ちゃんと葵ちゃんには会ったことがあるんですか?」
「うん。去年の夏休みにね。美優の妹さん達だけあって、2人ともとても可愛いよ」
えへへっ、と花柳先輩はデレデレした様子。白鳥武彦さんや久美子さんもうんうんと納得した様子で頷いている。
時計を見てみると……もう2時近くか。予定通りならもうすぐ2人が来るけど。
――ピンポーン。
インターホンが鳴ったので、美優先輩がモニターを確認する。
「はーい。あっ、朱莉に葵。ちゃんと来ることができたんだね」
『はい、姉さん。お久しぶりです。電車も混んでいなかったので快適でした。乗り換えもしやすかったですし。葵も姉さん達に会うことができるのが楽しみなのか、ずっと上機嫌で』
『美優お姉ちゃんはもちろんだけど、由弦さんに早く会いたくて!』
「そうなんだ。もちろん、由弦君もいるよ。すぐにそっちに行くね」
そう言うと、美優先輩は玄関の方に向かって行く。
葵ちゃん、俺に会いたいと思っていてくれたのか。嬉しいなぁ。
朱莉ちゃんや葵ちゃんの声を聞けたからか、白鳥武彦さんはとても安心しているようだった。
程なくして、美優先輩と一緒にヘアピンを付けたロングヘアの大人な雰囲気の女の子と、ツーサイドアップの可愛らしい女の子が入ってくる。前にテレビ電話で話したこともあって、ロングヘアの子が朱莉ちゃん、ツーサイドアップの子が葵ちゃんであるとすぐに分かった。
「みなさん、お久しぶりです。桐生さんはテレビ電話でお話ししたことがありますが、そちらの金髪の方は初めましてですね」
「彼女は陽出学院高校1年の姫宮風花ちゃん。102号室に住んでいて、由弦君のクラスメイトなんだよ」
「初めまして、姫宮風花です。2人のことは美優先輩から聞いているよ。これからよろしくね」
「はい。あっ、私は白鳥朱莉といいます。中学1年生です。こちらが妹の葵で小学5年生です。葵、挨拶しましょうか」
「白鳥葵です!よろしくお願いします」
「うん、よろしくね! 2人とも可愛くていい子だね」
風花はデレデレとした様子で2人の頭を優しく撫でている。その横で、花柳先輩が幸せそうな笑みを浮かべながら見ていた。
「朱莉ちゃんも葵ちゃんも、無事にここまで来ることができて良かった。伯父さん、2人で来るって知ってから心配だったよ」
「葵と2人でこんなにも長く移動するのは初めてだったので、正直、ちょっと不安もありました。ただ、さっきも言ったとおり、電車はあまり混んでいなかったですし、乗り換えもしやすかったので大丈夫でした」
「そうかぁ。伯父さんは安心した。頑張ってここまで来たご褒美も込めて、2人にお小遣いだよ」
「ありがとうございます。大切に使いますね」
「ありがとう! 伯父さん!」
朱莉ちゃんと葵ちゃんが喜んでいるからか、微笑ましい光景になっている。
それにしても、朱莉ちゃんはとてもしっかりしているな。さすがは美優先輩の妹さんというだけある。心愛と同い年だなんて。あと、スタイルの良さもあってか、風花や花柳先輩よりも大人な雰囲気を持っているな。
「今、由弦に失礼なことを想像された気がしましたよね、瑠衣先輩」
「風花ちゃんもそう思った?」
「そんなことないですよ。ただ、朱莉ちゃんは中学1年生にしてはとてもしっかりしていると思ったんですよ」
高校生の風花と花柳先輩よりもしっかりしているかもしれないけど。
朱莉ちゃんと葵ちゃんが無事に来ることが確認できたということで、白鳥武彦さん・久美子さん夫婦は帰っていった。
「そういえば、桐生さんの姉妹の方はいつ来るのですか?」
「3時くらいに到着するとは聞いているよ。あと、俺のことは下の名前で言ってくれていいんだよ、朱莉ちゃん」
「そ、そうですか? では……由弦さん」
朱莉ちゃんははにかみながらそう言う。
俺のことを由弦さんと呼ぶ人が全然いないからか、何だか新鮮でいいな。不覚にもちょっとキュンときてしまった。
「実際に会ってみると、美優お姉ちゃんは本当にかっこいい人と付き合うようになったんだなって思うよ」
「姉さんと付き合っているというのもありますが、今まで告白してきた方の中でも最も素敵に見えますね。男性が苦手な方の姉さんが、由弦さんと一緒に住むと聞いたときは不安もありましたが……今の2人を見て安心しました」
「私が信じた通り、由弦君は誠実な人だよ。素敵な人と付き合っているとも思うよ」
そう言って、美優先輩は俺のことをチラッと見ると、頬を朱色に染め、嬉しそうな笑みを浮かべた。
「俺も素敵な人と付き合っているんだと思いますよ、美優先輩」
「由弦君……」
「美優お姉ちゃんがあんな表情をするなんて。これが恋人ができるってことなのかなぁ? 朱莉お姉ちゃん」
「そうかもしれませんね。姉さんと由弦さんを応援しましょうね、葵」
「うん!」
妹さん達がそう言ってくれるのはとても嬉しいな。
ただ、彼女達と美優先輩は離れたところで暮らしている。朱莉ちゃんは葵ちゃんに応援しようと言ってくれているけれど、美優先輩と俺は付き合い始めて間もないし、きっとまだ不安もあるんじゃないかと思う。この3日の間に、少しでも信頼してもらえるように頑張ろう。
「それにしても、会うのはお正月以来だけれど、朱莉も葵も大きくなったねぇ」
美優先輩は朗らかな笑みを浮かべて、朱莉ちゃんと葵ちゃんの頭を撫でている。小学生の頃に親戚の家に行くと今みたいなこともよくされた。そんなことを考えると、今の美優先輩がおばあちゃんっぽい。
「朱莉の方は、来年の今ごろにはお姉ちゃんの背を越しているんじゃないかな?」
「そうですか? ただ、この前、身体測定があったのですが、この1年間で背も……む、胸も大きくなりました」
「あたしもお姉ちゃん達みたいに大きくなれるかなぁ」
「バランスのいい食事を取って、たっぷりと寝れば大きくなれるよ。あと、適度な運動かな。葵だったら、もしかしたらお姉ちゃん達よりも大きくなれるかも」
「そうだといいな」
葵ちゃんは可愛らしい笑みを浮かべる。これから成長期に突入するだろうし、美優先輩と朱莉ちゃんの妹でもあるから大きくなるんじゃないだろうか。
朱莉ちゃんも中学1年生だし、美優先輩の言う通り、来年になったら先輩の身長を越しているかもしれないな。
「あたしはお菓子をたくさん食べたり、夜更かししたりする日もあるからなぁ……」
「運動はたくさんしていますけど、もう少し背や胸が大きくなりたかった……」
はあっ、と風花と花柳先輩は一緒にため息をつき、お互いの顔を見ながら頷き合っている。今の2人には触れない方が良さそうだ。あと、美優先輩と俺が付き合い始めた頃から、2人がより仲良くなったような気がする。
「そうだ、朱莉お姉ちゃん。さっそく由弦さんに渡そうよ」
「そうですね」
俺に何か渡したいものがあるのか。
朱莉ちゃんは持ってきた大きなバッグから、小さな黒い紙袋を取り出した。すると、葵ちゃんと一緒に明るい笑顔を俺に向けてくる。
「由弦さん! 少し早いですけどお誕生日おめでとう!」
「お誕生日おめでとうございます。ここに来ることが決まってから、姉さんに由弦さんの誕生日が5月7日であることを言われまして。コーヒーがお好きだと聞きましたので、葵とお金を出し合ってスティックタイプのインスタントコーヒーを買いました」
「そうなんだ。どうもありがとう」
朱莉ちゃんと葵ちゃんから黒い紙袋を渡される。
さっそく中身を見てみると……有名な喫茶店から発売されているインスタントコーヒーだった。しかも、3種類のコーヒーを楽しめるなんて。2人から誕生日プレゼント渡されると思わなかったこともあって、かなり嬉しいな。嬉しすぎて涙が出そうだ。
「コーヒーは大好きだから凄く嬉しいよ。美味しくいただくね」
「良かったね、由弦君」
「ええ。まさか、妹さん達からもらえるとは思っていませんでした。とても嬉しいです」
「コーヒー好きの由弦にとっていいプレゼントだね。あたしはまだ考え中だよ」
「あたしも。ただ、旅行もあるし、そのときに買おうかなとも思っているわ」
「私も考えてる。楽しみにしていてね」
「みなさんのお気持ちがとても嬉しいです。ただ、楽しみにしています」
こうして実際にプレゼントをもらうと、俺の誕生日がもうすぐなのだと実感する。
そういえば、まもなく俺の姉妹もここに来るけど、もし誕生日プレゼントがあるなら今日渡してくれるのだろうか。それとも、誕生日に合わせて宅配で送られるのだろうか。実家を離れてから初めての誕生日なので、そういったことを含めて楽しみにしておこう。
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