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続々編-蒼き薔薇と不協和音-
第12話『集合』
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「仁実ちゃん。それに、智也……くん?」
午前9時過ぎ。
有紗さん、明美ちゃん、結菜ちゃん、詩織ちゃんが姿を現して、鏡原駅の改札口を出てくる。しかし、有紗さんだけは何か疑問を抱いた様子だ。もしかして、僕がこの帽子を被っているからかな。
有紗さんは僕の目の前に立つと、覗き込むようにして僕のことを見てくる。
「あっ、やっぱり智也君だった」
「おはようございます、有紗さん。普段はこういう格好もしなければ、帽子も被らないですからね」
「そうね。ただ、いつもよりもかっこいいし、美来ちゃんっていう恋人がいなければ、ぎゅっと抱きしめて、そのまま押し倒していたかも」
「……褒め言葉として受け取っておきます。有紗さんもそのワンピース似合っていますよ」
「ありがとう」
嬉しいのか、有紗さんは笑顔でクルッと一回転。そうする彼女は妹の明美ちゃんよりも少女のように見えた。本当に可愛らしい人だ。あと、勢いが良くて危うく下着が見えそうでしたよ。
「おはようございます、智也お兄ちゃん」
「おはよう、結菜ちゃん。ひさしぶりだね」
「はい。お姉ちゃんとも会うのは夏休み以来なので楽しみです! 毎日、メッセージとか電話とかして話してはいるのですが」
「美来から結菜ちゃんの話は聞いているよ。今日は僕らと一緒に文化祭を楽しもうね」
「はい!」
美来の妹だけあって、本当に笑顔の可愛らしい子だ。結菜ちゃんと会うのは3ヶ月ぶりくらいだけど、背が伸びたような気がする。小学生にとっての3ヶ月って大きいからなぁ。俺は結菜ちゃんの頭を撫でる。
「ところでお兄ちゃん。そちらのかっこいい女性の方は?」
「結城仁実ちゃんっていうんだ。大学生で、僕の従妹の恋人なんだ」
「そうだよ。だから、トモ君の恋人じゃないから安心してね。そうだ、せっかくだから自己紹介しようか。初めまして、結城仁実といいます。紅花女子大学文学部の1年生です。よろしくね。トモ君のお母さんの実家が、あたしの実家の近くにあってね。あたしが小さいとき、お正月やお盆にトモ君と遊んでたの」
「そうだったんですか。初めまして、朝比奈結菜といいます。小学4年生です。智也お兄ちゃんとは……将来的に義理の妹になります。よろしくお願いします」
将来的に義理の妹になる……か。間違ってはいないんだけど、小学4年生の唯ちゃんだからか、何だか僕が言わせているように思えてしまう。
「次は私が自己紹介しようかな。初めまして、月村明美です。こちらの月村有紗の妹で、月が丘高校の2年生です」
「初めまして、絢瀬詩織と申します。月が丘高校の1年生で、美来ちゃんが天羽女子に転入する前まではクラスメイトでした」
「結菜ちゃんに明美ちゃんに詩織ちゃんね。美来ちゃんから前の高校については話を聞いているよ。色々あったそうだけれど、前の高校にも仲のいい友達や先輩がいるのはいいね。みんなよろしくね」
仁実ちゃんは爽やかな笑みを浮かべて、結菜ちゃん、明美ちゃん、詩織ちゃんと握手を交わす。
あと、美来は仁実ちゃんと桃花ちゃんに月が丘高校のことについて話していたんだ。きっと、2人になら話しても大丈夫だと思ったのだろう。
僕は羽賀に鏡原駅で6人揃ったので、これから天羽女子に高校に向かうというメッセージを送る。羽賀も最近SNSを始めたので、メールではなくSNSのメッセージ機能でやり取りすることが多くなった。
すると、すぐに『既読』というマークがついて、
『分かった。私達3人は天羽女子の前にいる。ついさっき、天羽祭の開会が宣言されスタートした。急がなくていいので、気を付けて来てくれ』
という返信が届いた。天羽祭は無事に始まったのか。
「羽賀達は天羽女子の前にいるみたいです。一緒に行きましょうか」
「そうね」
僕らは天羽女子高校へと向かい始める。その際、結菜ちゃんと手を繋ぐことに。もし、もっと早く美来と再会していたら、こういう感じだったのかな。
美来から、鏡原駅を出たらすぐに見える白くて高い建物を目印に行けば大丈夫とのこと。その建物が校舎とのこと。彼女の言うように、鏡原駅を出るとはっきりと校舎が見えている。私立だし立派なところなんだろうな。
桜花駅の周りほどじゃないけれど、鏡原駅の周りにも色々とお店があるんだな。ただ、桜花駅よりも落ち着いた感じがする。
文化祭があるからか、僕らのように天羽女子の方向に歩いている人が多い。女子校ということもあってか、若い女性が多い気がする。
「ねえ、智也お兄ちゃん」
「うん?」
「智也お兄ちゃんは、どこに行こうと思っているんですか?」
「美来のメイド喫茶と、声楽部のコンサートには行こうと思ってるよ。あとは美来がお世話になっている先輩のクラスの屋台とか、茶道部でお抹茶飲んだりとか。結菜ちゃんはどこか行きたいところはある?」
「私もお姉ちゃんのメイド喫茶や声楽コンサートには絶対に行きたいです! あとは……行ってみないと分からないかも。でも、色々なものを食べたいです」
「ははっ、そっか。喫茶店や屋台がたくさんあるから、色々と回ってみようか」
「はい!」
「……今の2人のやり取りを、昔のトモ君を思い出すなぁ。あと、大学で茶道サークルを入っている身としては、茶道部のお抹茶はとても興味があるな」
仁実ちゃんは大学で茶道サークルに入っているのか。お茶を点てる姿とか、所作とか美しそうだ。それで、学生を多くサークルに引き入れそう。
「美来ちゃんのメイド服姿楽しみだなぁ。お家ではメイド服姿で氷室さんにたくさんご奉仕していると聞いてますが」
「まあ……そうだね、詩織ちゃん。美来はとてもしっかりした子だよ。もちろん、家とは違うメイド服を着ているから、僕も楽しみだよ」
「私も一度だけ見たことあるけど、朝比奈さんのメイド服姿は楽しみ」
「あたしも楽しみだよ、明美。美来ちゃん、凄く人気が出そう。人気投票なんてあったら必ず五本指には入りそう」
これは最初に行くのは1年2組のメイド喫茶に決まりだな。美来のクラスだと言えば、羽賀も岡村も浅野さんもいいと言ってくれるだろう。
天羽女子の立派な校舎がより大きく見えてきた。もうすぐかな。
「おっ、月村さん達だ! おーい!」
前方から岡村のそんな声が聞こえたので、正面を見てみると岡村、羽賀、浅野さんがこちらに向かって手を振っていた。あと、僕じゃなくて有紗さんの名前を呼ぶのは、女好きだからなのか。それとも、いつもと違った雰囲気の服装をしているからなのか。あと、私服姿の浅野さんは新鮮だな。
「普段と雰囲気の違う服装だが、やはり氷室だったか」
「ああ。天羽女子に来るのは今回が初めてだし、6月の事件があったから……気持ち的にハードルがあってさ。それで、ハットを被ってきた」
「そういうことか。一つ、誤認逮捕の重大さを学んだ」
「そうですね、羽賀さん。でも、その服装はとても似合っていますよ、氷室さん! 普段は優しい感じですが、今はとてもクールでかっこいいです!」
「浅野さんの言うとおりだな! 今の氷室は羽賀よりもかっこいいぜ! 羽賀、残念だったな!」
「どうして、貴様はそこで私のことを残念だと言うのだ。しかも、自分ではなく氷室と比べて。ただ、氷室の服装が似合っていることは私も同感だ」
ふっ、と羽賀は落ち着いた笑みを見せる。本当に羽賀は昔と変わらないな。もちろん、これから女子校に行くからかテンションの高い岡村もそうだけど。そういう人間が幼なじみであり、親友であって良かったと思う。
「今、とてつもなくBLの波動を感じました」
「今はまだしも、天羽女子の敷地に入ったら慎んでくださいね、浅野さん」
「分かってますって! ところで、そちらの茶髪の長身の女性はお初ですね。あと、氷室さんと手を繋いでいる金髪の子も。……まさか、朝比奈美来さんとのお子さんですか?」
「違いますって!」
「妹です。朝比奈結菜といいます。小学4年生です」
「それで、あたしは結城仁実といいます、初めまして。大学1年生です。トモ君の従妹と付き合っていて。トモ君とは、その従妹の子と昔から遊んだりして」
「朝比奈結菜さんと結城仁実さんですか。結菜さんとは6月の事件の捜査では会わなかったですね。確かに朝比奈美来さんには妹さんがいましたね。なるほどなるほど。あっ、自己紹介しないと。私、浅野千尋と言います。警察官やっています。こちらの羽賀さんの部下ですが、私の方が2歳年上です」
「相変わらずの自己紹介の仕方ですね、浅野さんは。私も自己紹介しておくか。羽賀尊と言います。警視庁に勤めています。氷室やこの男とは小学校の頃からの付き合いです。どうぞよろしく。君も自己紹介しておけ、岡村」
「岡村大貴です! 家を作る仕事をしてます! 氷室や羽賀は俺の小学校時代からの大親友です! よろしく! ……えっと、月村さんと似ている赤髪の子は?」
「月村有紗の妹の明美です。高校2年生です」
「……美人の妹は美人なんだな、月村ちゃん。氷室、お前って凄いな。魅力的な女の子を引き寄せる。それに、氷室のおかげで女子校に行けるんだ。今日以上に氷室が親友で良かったと思った日はない!」
そう言うと、岡村は僕の両肩をガッと掴んだ。
「……何とも言えないけれど、非常にお前らしいとは思ったよ。ただ、迷惑を掛けたり、嫌な想いをさせたりしないよう気を付けてくれ」
「悪質であれば、私や浅野さんがその場で現行犯逮捕してやるからな」
「もちろん気を付けるさ! 何せ、この天羽女子には氷室の婚約者の朝比奈ちゃんが通っているんだからな!」
そう言うと、岡村はなぜかドヤ顔になって仁王立ち。テンションが上がりすぎて多少は騒ぐかもしれないけど、女の子を傷つけるような人間ではないとは信じている。信じていいんだよな。
さてと、初めて会った人は自己紹介が終わったし、そろそろ天羽女子の中に入ることにしよう。
午前9時過ぎ。
有紗さん、明美ちゃん、結菜ちゃん、詩織ちゃんが姿を現して、鏡原駅の改札口を出てくる。しかし、有紗さんだけは何か疑問を抱いた様子だ。もしかして、僕がこの帽子を被っているからかな。
有紗さんは僕の目の前に立つと、覗き込むようにして僕のことを見てくる。
「あっ、やっぱり智也君だった」
「おはようございます、有紗さん。普段はこういう格好もしなければ、帽子も被らないですからね」
「そうね。ただ、いつもよりもかっこいいし、美来ちゃんっていう恋人がいなければ、ぎゅっと抱きしめて、そのまま押し倒していたかも」
「……褒め言葉として受け取っておきます。有紗さんもそのワンピース似合っていますよ」
「ありがとう」
嬉しいのか、有紗さんは笑顔でクルッと一回転。そうする彼女は妹の明美ちゃんよりも少女のように見えた。本当に可愛らしい人だ。あと、勢いが良くて危うく下着が見えそうでしたよ。
「おはようございます、智也お兄ちゃん」
「おはよう、結菜ちゃん。ひさしぶりだね」
「はい。お姉ちゃんとも会うのは夏休み以来なので楽しみです! 毎日、メッセージとか電話とかして話してはいるのですが」
「美来から結菜ちゃんの話は聞いているよ。今日は僕らと一緒に文化祭を楽しもうね」
「はい!」
美来の妹だけあって、本当に笑顔の可愛らしい子だ。結菜ちゃんと会うのは3ヶ月ぶりくらいだけど、背が伸びたような気がする。小学生にとっての3ヶ月って大きいからなぁ。俺は結菜ちゃんの頭を撫でる。
「ところでお兄ちゃん。そちらのかっこいい女性の方は?」
「結城仁実ちゃんっていうんだ。大学生で、僕の従妹の恋人なんだ」
「そうだよ。だから、トモ君の恋人じゃないから安心してね。そうだ、せっかくだから自己紹介しようか。初めまして、結城仁実といいます。紅花女子大学文学部の1年生です。よろしくね。トモ君のお母さんの実家が、あたしの実家の近くにあってね。あたしが小さいとき、お正月やお盆にトモ君と遊んでたの」
「そうだったんですか。初めまして、朝比奈結菜といいます。小学4年生です。智也お兄ちゃんとは……将来的に義理の妹になります。よろしくお願いします」
将来的に義理の妹になる……か。間違ってはいないんだけど、小学4年生の唯ちゃんだからか、何だか僕が言わせているように思えてしまう。
「次は私が自己紹介しようかな。初めまして、月村明美です。こちらの月村有紗の妹で、月が丘高校の2年生です」
「初めまして、絢瀬詩織と申します。月が丘高校の1年生で、美来ちゃんが天羽女子に転入する前まではクラスメイトでした」
「結菜ちゃんに明美ちゃんに詩織ちゃんね。美来ちゃんから前の高校については話を聞いているよ。色々あったそうだけれど、前の高校にも仲のいい友達や先輩がいるのはいいね。みんなよろしくね」
仁実ちゃんは爽やかな笑みを浮かべて、結菜ちゃん、明美ちゃん、詩織ちゃんと握手を交わす。
あと、美来は仁実ちゃんと桃花ちゃんに月が丘高校のことについて話していたんだ。きっと、2人になら話しても大丈夫だと思ったのだろう。
僕は羽賀に鏡原駅で6人揃ったので、これから天羽女子に高校に向かうというメッセージを送る。羽賀も最近SNSを始めたので、メールではなくSNSのメッセージ機能でやり取りすることが多くなった。
すると、すぐに『既読』というマークがついて、
『分かった。私達3人は天羽女子の前にいる。ついさっき、天羽祭の開会が宣言されスタートした。急がなくていいので、気を付けて来てくれ』
という返信が届いた。天羽祭は無事に始まったのか。
「羽賀達は天羽女子の前にいるみたいです。一緒に行きましょうか」
「そうね」
僕らは天羽女子高校へと向かい始める。その際、結菜ちゃんと手を繋ぐことに。もし、もっと早く美来と再会していたら、こういう感じだったのかな。
美来から、鏡原駅を出たらすぐに見える白くて高い建物を目印に行けば大丈夫とのこと。その建物が校舎とのこと。彼女の言うように、鏡原駅を出るとはっきりと校舎が見えている。私立だし立派なところなんだろうな。
桜花駅の周りほどじゃないけれど、鏡原駅の周りにも色々とお店があるんだな。ただ、桜花駅よりも落ち着いた感じがする。
文化祭があるからか、僕らのように天羽女子の方向に歩いている人が多い。女子校ということもあってか、若い女性が多い気がする。
「ねえ、智也お兄ちゃん」
「うん?」
「智也お兄ちゃんは、どこに行こうと思っているんですか?」
「美来のメイド喫茶と、声楽部のコンサートには行こうと思ってるよ。あとは美来がお世話になっている先輩のクラスの屋台とか、茶道部でお抹茶飲んだりとか。結菜ちゃんはどこか行きたいところはある?」
「私もお姉ちゃんのメイド喫茶や声楽コンサートには絶対に行きたいです! あとは……行ってみないと分からないかも。でも、色々なものを食べたいです」
「ははっ、そっか。喫茶店や屋台がたくさんあるから、色々と回ってみようか」
「はい!」
「……今の2人のやり取りを、昔のトモ君を思い出すなぁ。あと、大学で茶道サークルを入っている身としては、茶道部のお抹茶はとても興味があるな」
仁実ちゃんは大学で茶道サークルに入っているのか。お茶を点てる姿とか、所作とか美しそうだ。それで、学生を多くサークルに引き入れそう。
「美来ちゃんのメイド服姿楽しみだなぁ。お家ではメイド服姿で氷室さんにたくさんご奉仕していると聞いてますが」
「まあ……そうだね、詩織ちゃん。美来はとてもしっかりした子だよ。もちろん、家とは違うメイド服を着ているから、僕も楽しみだよ」
「私も一度だけ見たことあるけど、朝比奈さんのメイド服姿は楽しみ」
「あたしも楽しみだよ、明美。美来ちゃん、凄く人気が出そう。人気投票なんてあったら必ず五本指には入りそう」
これは最初に行くのは1年2組のメイド喫茶に決まりだな。美来のクラスだと言えば、羽賀も岡村も浅野さんもいいと言ってくれるだろう。
天羽女子の立派な校舎がより大きく見えてきた。もうすぐかな。
「おっ、月村さん達だ! おーい!」
前方から岡村のそんな声が聞こえたので、正面を見てみると岡村、羽賀、浅野さんがこちらに向かって手を振っていた。あと、僕じゃなくて有紗さんの名前を呼ぶのは、女好きだからなのか。それとも、いつもと違った雰囲気の服装をしているからなのか。あと、私服姿の浅野さんは新鮮だな。
「普段と雰囲気の違う服装だが、やはり氷室だったか」
「ああ。天羽女子に来るのは今回が初めてだし、6月の事件があったから……気持ち的にハードルがあってさ。それで、ハットを被ってきた」
「そういうことか。一つ、誤認逮捕の重大さを学んだ」
「そうですね、羽賀さん。でも、その服装はとても似合っていますよ、氷室さん! 普段は優しい感じですが、今はとてもクールでかっこいいです!」
「浅野さんの言うとおりだな! 今の氷室は羽賀よりもかっこいいぜ! 羽賀、残念だったな!」
「どうして、貴様はそこで私のことを残念だと言うのだ。しかも、自分ではなく氷室と比べて。ただ、氷室の服装が似合っていることは私も同感だ」
ふっ、と羽賀は落ち着いた笑みを見せる。本当に羽賀は昔と変わらないな。もちろん、これから女子校に行くからかテンションの高い岡村もそうだけど。そういう人間が幼なじみであり、親友であって良かったと思う。
「今、とてつもなくBLの波動を感じました」
「今はまだしも、天羽女子の敷地に入ったら慎んでくださいね、浅野さん」
「分かってますって! ところで、そちらの茶髪の長身の女性はお初ですね。あと、氷室さんと手を繋いでいる金髪の子も。……まさか、朝比奈美来さんとのお子さんですか?」
「違いますって!」
「妹です。朝比奈結菜といいます。小学4年生です」
「それで、あたしは結城仁実といいます、初めまして。大学1年生です。トモ君の従妹と付き合っていて。トモ君とは、その従妹の子と昔から遊んだりして」
「朝比奈結菜さんと結城仁実さんですか。結菜さんとは6月の事件の捜査では会わなかったですね。確かに朝比奈美来さんには妹さんがいましたね。なるほどなるほど。あっ、自己紹介しないと。私、浅野千尋と言います。警察官やっています。こちらの羽賀さんの部下ですが、私の方が2歳年上です」
「相変わらずの自己紹介の仕方ですね、浅野さんは。私も自己紹介しておくか。羽賀尊と言います。警視庁に勤めています。氷室やこの男とは小学校の頃からの付き合いです。どうぞよろしく。君も自己紹介しておけ、岡村」
「岡村大貴です! 家を作る仕事をしてます! 氷室や羽賀は俺の小学校時代からの大親友です! よろしく! ……えっと、月村さんと似ている赤髪の子は?」
「月村有紗の妹の明美です。高校2年生です」
「……美人の妹は美人なんだな、月村ちゃん。氷室、お前って凄いな。魅力的な女の子を引き寄せる。それに、氷室のおかげで女子校に行けるんだ。今日以上に氷室が親友で良かったと思った日はない!」
そう言うと、岡村は僕の両肩をガッと掴んだ。
「……何とも言えないけれど、非常にお前らしいとは思ったよ。ただ、迷惑を掛けたり、嫌な想いをさせたりしないよう気を付けてくれ」
「悪質であれば、私や浅野さんがその場で現行犯逮捕してやるからな」
「もちろん気を付けるさ! 何せ、この天羽女子には氷室の婚約者の朝比奈ちゃんが通っているんだからな!」
そう言うと、岡村はなぜかドヤ顔になって仁王立ち。テンションが上がりすぎて多少は騒ぐかもしれないけど、女の子を傷つけるような人間ではないとは信じている。信じていいんだよな。
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