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続々編-蒼き薔薇と不協和音-
第4話『あの高校は今』
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今日は近所のスーパーで、野菜やお肉が安売りをしているので美来と一緒に買い物をしたり、DVDやBlu-rayをレンタルし家で観賞したりして過ごした。その間、美来はずっと楽しそうにしていて。今週末はのんびりと過ごして、来週末の文化祭を大いに楽しんでほしいものだ。
また、買い物をしているときに、とても甘いと評判のカフェオレが売っていたので、美来のために試しに買ってみた。
美来は最初の一口こそ苦いと言って微妙な表情をしていたけど、少しずつ慣れてきたようで半分くらい飲んだ。ただ、これが限界らしい。本人はがっかりしていたけど、目標を立てた翌日にここまで凄いことだと思うし、それをしっかり伝えた。
残りの半分は僕が飲んだけど、カフェオレはひさしぶりだったからかかなり甘く感じた。ちなみに、そのときの美来は間接キスをしたからか、とても嬉しそうな表情をしていた。
セールで豚肉が安いこともあって、今日の夕ご飯は豚の生姜焼きだった。学食や社食で何度も食べるけど、美来が作ってくれたものには敵わないな。一人暮らしのときに自分で作ったことがあるけど、ここまで美味しくは作れない。
夕食の片付けをして、美来の淹れてくれたホットコーヒーを飲み始めたときだった。
――プルルッ。
スマートフォンが鳴ったので確認してみると、有紗さんから1件の新着メッセージが届いていた。
『今日、月が丘高校の文化祭に行ってきたんだ』
その文言を見たとき、何とも言えない気持ちに。
私立月が丘高等学校。
それは美来が以前通っていた高校だったからだ。美来は入学した直後からクラスや部活でいじめに遭い、退学した。
ただ、月が丘高校には有紗さんの妹の明美ちゃんが2年生で通っている。きっと、それが理由で月が丘高校の文化祭に行ってきたのだろう。そういえば、有紗さんが今週末のことを全然話題にしなかったのは、美来が体調を崩していただけじゃなくて、月が丘高校の文化祭に行くからだったんだな。
――プルルッ。
引き続き、有紗さんからメッセージが届く。
『明美のクラスはお化け屋敷で。心霊系はあまり得意じゃないんだけど、姉として一度は挑戦しようと思って。凄く怖くて、途中でお化け役として現れた明美を捕まえて、出口まで案内してもらった』
有紗さん、それはかなり苦手と言うんですよ。あと、途中からお化け役の明美ちゃんが出口まで案内した様子が容易に想像できて、何だか笑えてしまう。
――プルルッ。
またまた、有紗さんからメッセージが届く。
『一応、美来ちゃんの元いたクラスのお店に行ってみたら、チュロスっていうお菓子を売ってた。そこで詩織ちゃんに会って話したんだけど、2学期になってようやく平穏になってきたみたい。あと、声楽部のコンサートもあったから見てきたけど、結構上手だった。
このことを美来ちゃんにも伝えようか迷って、とりあえずは智也君に伝えようと思ってメッセージしました。』
有紗さんとは、僕と美来の3人でのグループトークで話すことが多いけれど、月が丘高校のことなので、個別で僕だけにメッセージを送ってくれたんだ。
「どうかしましたか、智也さん。笑ったりもして」
「えっと……有紗さんからメッセージが来てね。今日、月が丘高校の文化祭に行ってきたんだって。妹の明美ちゃんが通っているから」
「そう……なんですか」
今日はずっと明るくて楽しげな笑みを浮かべていたけど、月が丘高校という言葉を口にしたからか、美来は切なげな笑みを見せる。
「有紗さん、明美ちゃんのクラスがやっているお化け屋敷に行ったら、怖すぎて途中で出てきたお化け役の明美ちゃんに、出口まで連れて行ってもらったんって」
「……そうだったんですか。何だか想像できちゃいますね」
ふふっ、と美来は楽しそうに笑っている。さすがに、有紗さんのお化け屋敷話では笑ってくれるか。
「あとは……1年1組の屋台に行ったり、声楽部のコンサートを観たりしたんだって。詩織ちゃんにも会って、2学期になってクラスも落ち着いたそうだ」
「……それなら何よりです。実は、私が天羽女子に転入してから、栞ちゃんや明美先輩、片倉先生からたまに月が丘の状況は聞いていました。今日と明日に月が丘高校の文化祭があることを知っていましたし」
「そうだったんだ」
声楽部の顧問の片倉さんはとてもいい先生だったからな。これからも仲のいい生徒や先生とは個人的に繋がりを持ち続ければいいんじゃないかと思う。
ちなみに、僕も美来の御両親を通じて、月が丘高校関連の情報を教えてもらっている。
美来のいじめの主犯であり、僕のことを誤認逮捕へと導いた諸澄司と佐相柚葉は逮捕されたことを受け、1学期の間に退学処分となった。また、美来のいじめの中心となった数人の生徒が停学処分に。
また、1年1組の担任である後藤隆がいじめの隠蔽をしようとしたことを認め、懲戒解雇となったことで、一時は別の教師が臨時の担任になっていた。ただ、2学期になって正式に担任が決まったとのこと。
「でも、今は天羽女子の生徒ですし、昨日のうちから、この週末は智也さんとゆっくり過ごすと決めていましたから。今日は楽しかったですし、それでいいんです」
「……そうか。僕は今日も楽しかったよ。明日も一緒に過ごそうね」
「はい! そうだ、有紗さんと詩織ちゃんにメッセージを送っておこうっと」
「僕も有紗さんに返信しないと」
僕は有紗さんに、
『月が丘の文化祭を楽しんだようで何よりです。来週末は天羽女子の文化祭を一緒に楽しみましょう。美来の体調も良くなったので、安心してください』
という返信を送った。
すると、すぐにその返信に『既読』マークが表示され、
『元気になって良かった! それなら、来週は天羽女子で美来ちゃんのメイド姿と歌う姿が見られそうだね。それを楽しみに仕事を頑張るよ』
有紗さんからそんな返信が届いた。僕と同じで有紗さんも天羽女子の文化祭を励みに来週の仕事を頑張るのか。
コーヒーを飲みながら美来のことを見ると、彼女は笑みを浮かべながらスマートフォンを触っている。
「有紗さんも詩織ちゃんも明美先輩も、今日の文化祭を楽しめたそうです。……良かった。うん……」
そう呟くと、美来の体は小刻みに震え出す。
「もしかしたら、今日、あの場所にいたかもしれないんですよね。去年の文化祭も見に行きましたから、その『もしも』が想像できてしまうんです。私がいた頃には決まっていませんでしたが、クラスでチュロスを売って、声楽部でコンサートして……」
「美来……」
すると、美来は目に涙を浮かべた。ただ、その涙を彼女の笑みで必死に止めているように見えた。
「でも、今は天羽女子の生徒です。天羽女子の生徒として、1年生から天羽祭に参加することができて良かったと思えるようにしたいです」
「……そうか。応援しているよ、美来」
「……ありがとうございます」
美来は僕をぎゅっと抱きしめてきた。そんな彼女のことをすぐに抱きしめ、頭を優しく撫でる。
僕の胸の中で、美来は何度も体をビクつかせていた。声には出していないけど、泣いているのだろう。彼女の震えを感じたとき、月が丘で受けたいじめの傷が、美来の心にはっきりと残っているのだと思い知る。
月が丘のこと、言わなければ良かったのかなと後悔の念が。もしかしたら、こうなることも考えて、有紗さんは最初に僕だけにメッセージをくれたのかもしれない。
「……智也さんの匂いや温もりはいいですね。本当に落ち着きます」
「そう言ってくれて嬉しいよ。僕も大好きな美来の匂いや温もりを感じると、心が癒されるんだ」
「……嬉しい。智也さん。私から離れないですよね?」
「離れないよ。ずっと離れない。結婚しようって決めたじゃないか。離れたくないくらいに美来のことが好きなんだ。僕に対する美来の好きな気持ちには敵わないかもしれないけれどさ」
「……私も、ずっと智也さんと一緒にいたいと思えるくらいに大好きです」
すると、美来はゆっくりと顔を上げて、僕のことをじっと見つめてくる。目元は赤かったけれど、そこにあるのは彼女の確かな笑みだった。そんな彼女に吸い込まれるようにしてキスした。
「智也さん」
「うん?」
「……今夜も一緒にお風呂に入って、その後に……してくれますか?」
「もちろんいいよ。明日も休みだから、たっぷりとしよう」
「……ありがとうございます」
美来は嬉しそうな笑みを浮かべて、再びキスしてきた。
その後は美来の言うとおり、一緒にお風呂に入って、ベッドの中で愛情を育んだ。2日連続で疲れはあるけれど、美来の可愛らしい笑みをたくさん見ることができたので、嬉しい気持ちになったのであった。
また、買い物をしているときに、とても甘いと評判のカフェオレが売っていたので、美来のために試しに買ってみた。
美来は最初の一口こそ苦いと言って微妙な表情をしていたけど、少しずつ慣れてきたようで半分くらい飲んだ。ただ、これが限界らしい。本人はがっかりしていたけど、目標を立てた翌日にここまで凄いことだと思うし、それをしっかり伝えた。
残りの半分は僕が飲んだけど、カフェオレはひさしぶりだったからかかなり甘く感じた。ちなみに、そのときの美来は間接キスをしたからか、とても嬉しそうな表情をしていた。
セールで豚肉が安いこともあって、今日の夕ご飯は豚の生姜焼きだった。学食や社食で何度も食べるけど、美来が作ってくれたものには敵わないな。一人暮らしのときに自分で作ったことがあるけど、ここまで美味しくは作れない。
夕食の片付けをして、美来の淹れてくれたホットコーヒーを飲み始めたときだった。
――プルルッ。
スマートフォンが鳴ったので確認してみると、有紗さんから1件の新着メッセージが届いていた。
『今日、月が丘高校の文化祭に行ってきたんだ』
その文言を見たとき、何とも言えない気持ちに。
私立月が丘高等学校。
それは美来が以前通っていた高校だったからだ。美来は入学した直後からクラスや部活でいじめに遭い、退学した。
ただ、月が丘高校には有紗さんの妹の明美ちゃんが2年生で通っている。きっと、それが理由で月が丘高校の文化祭に行ってきたのだろう。そういえば、有紗さんが今週末のことを全然話題にしなかったのは、美来が体調を崩していただけじゃなくて、月が丘高校の文化祭に行くからだったんだな。
――プルルッ。
引き続き、有紗さんからメッセージが届く。
『明美のクラスはお化け屋敷で。心霊系はあまり得意じゃないんだけど、姉として一度は挑戦しようと思って。凄く怖くて、途中でお化け役として現れた明美を捕まえて、出口まで案内してもらった』
有紗さん、それはかなり苦手と言うんですよ。あと、途中からお化け役の明美ちゃんが出口まで案内した様子が容易に想像できて、何だか笑えてしまう。
――プルルッ。
またまた、有紗さんからメッセージが届く。
『一応、美来ちゃんの元いたクラスのお店に行ってみたら、チュロスっていうお菓子を売ってた。そこで詩織ちゃんに会って話したんだけど、2学期になってようやく平穏になってきたみたい。あと、声楽部のコンサートもあったから見てきたけど、結構上手だった。
このことを美来ちゃんにも伝えようか迷って、とりあえずは智也君に伝えようと思ってメッセージしました。』
有紗さんとは、僕と美来の3人でのグループトークで話すことが多いけれど、月が丘高校のことなので、個別で僕だけにメッセージを送ってくれたんだ。
「どうかしましたか、智也さん。笑ったりもして」
「えっと……有紗さんからメッセージが来てね。今日、月が丘高校の文化祭に行ってきたんだって。妹の明美ちゃんが通っているから」
「そう……なんですか」
今日はずっと明るくて楽しげな笑みを浮かべていたけど、月が丘高校という言葉を口にしたからか、美来は切なげな笑みを見せる。
「有紗さん、明美ちゃんのクラスがやっているお化け屋敷に行ったら、怖すぎて途中で出てきたお化け役の明美ちゃんに、出口まで連れて行ってもらったんって」
「……そうだったんですか。何だか想像できちゃいますね」
ふふっ、と美来は楽しそうに笑っている。さすがに、有紗さんのお化け屋敷話では笑ってくれるか。
「あとは……1年1組の屋台に行ったり、声楽部のコンサートを観たりしたんだって。詩織ちゃんにも会って、2学期になってクラスも落ち着いたそうだ」
「……それなら何よりです。実は、私が天羽女子に転入してから、栞ちゃんや明美先輩、片倉先生からたまに月が丘の状況は聞いていました。今日と明日に月が丘高校の文化祭があることを知っていましたし」
「そうだったんだ」
声楽部の顧問の片倉さんはとてもいい先生だったからな。これからも仲のいい生徒や先生とは個人的に繋がりを持ち続ければいいんじゃないかと思う。
ちなみに、僕も美来の御両親を通じて、月が丘高校関連の情報を教えてもらっている。
美来のいじめの主犯であり、僕のことを誤認逮捕へと導いた諸澄司と佐相柚葉は逮捕されたことを受け、1学期の間に退学処分となった。また、美来のいじめの中心となった数人の生徒が停学処分に。
また、1年1組の担任である後藤隆がいじめの隠蔽をしようとしたことを認め、懲戒解雇となったことで、一時は別の教師が臨時の担任になっていた。ただ、2学期になって正式に担任が決まったとのこと。
「でも、今は天羽女子の生徒ですし、昨日のうちから、この週末は智也さんとゆっくり過ごすと決めていましたから。今日は楽しかったですし、それでいいんです」
「……そうか。僕は今日も楽しかったよ。明日も一緒に過ごそうね」
「はい! そうだ、有紗さんと詩織ちゃんにメッセージを送っておこうっと」
「僕も有紗さんに返信しないと」
僕は有紗さんに、
『月が丘の文化祭を楽しんだようで何よりです。来週末は天羽女子の文化祭を一緒に楽しみましょう。美来の体調も良くなったので、安心してください』
という返信を送った。
すると、すぐにその返信に『既読』マークが表示され、
『元気になって良かった! それなら、来週は天羽女子で美来ちゃんのメイド姿と歌う姿が見られそうだね。それを楽しみに仕事を頑張るよ』
有紗さんからそんな返信が届いた。僕と同じで有紗さんも天羽女子の文化祭を励みに来週の仕事を頑張るのか。
コーヒーを飲みながら美来のことを見ると、彼女は笑みを浮かべながらスマートフォンを触っている。
「有紗さんも詩織ちゃんも明美先輩も、今日の文化祭を楽しめたそうです。……良かった。うん……」
そう呟くと、美来の体は小刻みに震え出す。
「もしかしたら、今日、あの場所にいたかもしれないんですよね。去年の文化祭も見に行きましたから、その『もしも』が想像できてしまうんです。私がいた頃には決まっていませんでしたが、クラスでチュロスを売って、声楽部でコンサートして……」
「美来……」
すると、美来は目に涙を浮かべた。ただ、その涙を彼女の笑みで必死に止めているように見えた。
「でも、今は天羽女子の生徒です。天羽女子の生徒として、1年生から天羽祭に参加することができて良かったと思えるようにしたいです」
「……そうか。応援しているよ、美来」
「……ありがとうございます」
美来は僕をぎゅっと抱きしめてきた。そんな彼女のことをすぐに抱きしめ、頭を優しく撫でる。
僕の胸の中で、美来は何度も体をビクつかせていた。声には出していないけど、泣いているのだろう。彼女の震えを感じたとき、月が丘で受けたいじめの傷が、美来の心にはっきりと残っているのだと思い知る。
月が丘のこと、言わなければ良かったのかなと後悔の念が。もしかしたら、こうなることも考えて、有紗さんは最初に僕だけにメッセージをくれたのかもしれない。
「……智也さんの匂いや温もりはいいですね。本当に落ち着きます」
「そう言ってくれて嬉しいよ。僕も大好きな美来の匂いや温もりを感じると、心が癒されるんだ」
「……嬉しい。智也さん。私から離れないですよね?」
「離れないよ。ずっと離れない。結婚しようって決めたじゃないか。離れたくないくらいに美来のことが好きなんだ。僕に対する美来の好きな気持ちには敵わないかもしれないけれどさ」
「……私も、ずっと智也さんと一緒にいたいと思えるくらいに大好きです」
すると、美来はゆっくりと顔を上げて、僕のことをじっと見つめてくる。目元は赤かったけれど、そこにあるのは彼女の確かな笑みだった。そんな彼女に吸い込まれるようにしてキスした。
「智也さん」
「うん?」
「……今夜も一緒にお風呂に入って、その後に……してくれますか?」
「もちろんいいよ。明日も休みだから、たっぷりとしよう」
「……ありがとうございます」
美来は嬉しそうな笑みを浮かべて、再びキスしてきた。
その後は美来の言うとおり、一緒にお風呂に入って、ベッドの中で愛情を育んだ。2日連続で疲れはあるけれど、美来の可愛らしい笑みをたくさん見ることができたので、嬉しい気持ちになったのであった。
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