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続々編-蒼き薔薇と不協和音-
第3話『パンフレット』
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羽賀に電話した後も、僕らはテレビを見続ける。青薔薇のことを報じるニュース番組以外では何をやっているのかチャンネルを変えてみると、旅番組やグルメ番組が多い。土曜日の午前中だからかな。
「そうだ、智也さん。昨日、学校で文化祭のパンフレットをもらったんです。学校の特設ページに載っている内容とさほど変わりませんが。見てみますか?」
「うん、見てみたいな」
「分かりました。じゃあ、持ってきますね」
美来はリビングを後にした。
日程を確認するために文化祭の特設ページのトップは見たけど、詳しい内容まではまだ見ていなかった。1年2組はメイド喫茶をやって、声楽部はコンサートを開催することを知っていたし。天羽女子の文化祭がどんな感じでやるのかをちゃんと知るいい機会だろう。
「智也さん、お待たせしました」
「ありがとう」
美来から文化祭のパンフレットを受け取る。女子校の文化祭だからなのか、淡い桃色をベースとしていて可愛らしいな。文化祭でも修学旅行でも、パンフレットを手にするともうすぐなんだなと思う。
「天羽祭って言うのかな」
「そうです。1年生は文化祭って言う生徒も多いですけど、2年生と3年生は天羽祭と言う生徒さんが多いみたいです。実際にうちの声楽部の花音先輩も天羽祭って言ってます」
「そうなんだ。こういう通称みたいなのがあると、文化祭にも愛着が湧きそうだね」
僕は高校の文化祭にもそういった名前があった気がするけれど、文化祭とか学園祭って言い続けていたな。
パンフレットを開き、ページをめくっていくと各クラスの出し物一覧が。
「……出し物の名称に『喫茶』って書いてあるクラスが多いね。1年2組のメイド喫茶もそうだし、執事喫茶、コスプレ喫茶、姉妹喫茶、浴衣喫茶、ナース喫茶、アイドル喫茶……」
「前に話したかもしれませんが、天羽女子高校の文化祭では喫茶店をやりたいクラスが毎年多くて。絞ってしまうのではなく、多種多様な喫茶店を楽しむことができるのも一つの売りにしているみたいです」
「そうなんだね」
ただ、コスプレ喫茶は、他の喫茶店の集合体のように思えるけど。
出し物名称だけでなく、説明や場所も書いてあるのか。ええと、美来のいる1年2組のメイド喫茶については、
『コーヒーや紅茶はもちろんのこと、スイーツも楽しめます! 1年2組の教室でお待ちしています、ご主人様、お嬢様』
メイドさんらしい説明でいいんじゃないだろうか。メイド喫茶は喫茶店として王道の一つだし、結構な人が来そうだな。
「コーヒーや紅茶はもちろんのこと、スイーツも楽しめます。1年2組でお待ちしています、ご主人様」
目線で1年2組のところを読んでいるのが分かったのか、美来が声に出して読んでくれた。ただ、言い方が艶っぽいので、高校生らしかぬ雰囲気が感じられる。
「あと、智也さんには私が特別にあーんなことから、こーんなことまでご奉仕しちゃいます。それはもちろんプライスレスです」
「どんなご奉仕なのかは知らないけれど、それは1年2組の教室じゃなくて家の中でしてくれると嬉しいな。できれば2人きりで」
「どんなことを奉仕すると思ったんですか? でも、お家で2人きりの方が色々なことができますから、特別なご奉仕についてはお家だけでしますね。ご主人様」
そう言うと、美来は頬にキスをしてきた。そんな彼女は頬を赤くしながら可愛らしい笑みを浮かべていた。きっと、僕の想像しているご奉仕と、美来の想像しているご奉仕は結構重なると思う。何せ美来だからな。
「そういえば、乃愛ちゃんのお姉さんの玲奈ちゃんは何組だっけ? 3年生だったことは覚えているんだけど」
「玲奈先輩は3年3組ですね。声楽部の部長の新藤花音先輩も同じクラスです」
「そうなんだね。じゃあ、3年3組にも行ってみよう。ええと、何をやっているのかな。……外でチョコバナナの屋台をやるのか。こういうイベントでの定番だね」
「ふふっ、そうですね。……あと、バナナって甘美な響きですよね」
「それは美来だけじゃないかな」
「そうですかね? あとは、屋台を出店するクラスや部活は多くて、たこ焼きやワッフル、わたがし、焼きそば、りんご飴、焼き鳥など色々とありますよ」
「そうなんだ。じゃあ、当日のお昼ご飯は屋台で買って食べることにしようかな」
「そうしていただけると嬉しいです」
岡村は大食いなところがあるから、屋台を制覇しそうだ。たまに羽賀は奢らされそう。有紗さんも甘いものが大好きだから、スイーツ系のお店を中心に回りそうだな。
食べ物系をやるクラスが多いけれど、お化け屋敷やダーツゲームなど遊びを提供するクラスもある。あと、天羽女子高校の歴史、高校のある鏡原市について調べたものの展示を行なうクラス。1日数回、特設ステージでソーラン節を披露するクラスなど様々だ。
クラスだけじゃなくて、部活の一覧もある。ええと、美来や乃愛ちゃんが入っている声楽部は、
「……あった。声楽部は体育館でコンサートをやるんだね」
「そうです。部員全員で合唱曲もやりますし、私を含め何人かの生徒が独唱も行います。あとは、流行りのJ-POPの曲も何曲か歌う予定ですよ」
「バラエティに富んでいるんだね。楽しみになってきた」
「嬉しいです。タイムスケジュールのページにも書いてありますが、声楽部のコンサートは2日とも、午後2時から1時間の予定になってます。あと、玲奈先輩は茶道部に入っていて、茶道室で点てたお抹茶を和菓子と一緒に提供するそうです」
「そうなんだね」
知っている生徒がいるとそこに行きたくなる。当日は茶道室にも行ってみよう。和菓子が出るなら有紗さんも興味を持ちそうだ。
ページをめくっていくと、校内の地図が書いてあって、どこでクラスや部活が出店しているのかが記載されている。1年2組は教室棟、茶道部は特別棟、声楽部は体育館でやるそうだ。ホームページにも載っていたら、印刷して当日までに行きたいところにチェックしておこう。
さらにページをめくると、アンケート結果発表っていうのがある。
「私が転入する前にアンケートが行なわれたみたいです」
「そうなんだ。僕も高校のときにそんなことやったなぁ」
「企画としてこういうことをやる高校は多いんですね。見てみると面白いですよね。好きな科目や食堂メニューだけじゃなくて、漫画や音楽、男女別で好きな先生は誰かなどもありますから」
「面白いよね。こういうページは文化祭が終わってもふと見るかもね」
そういえば、僕の出身校のパンフレットにはアンケート結果だけじゃなくて、珍回答も載っていたな。一度、岡村の回答が珍回答として載ったことがあって、それを羽賀や僕にやたら自慢していたっけ。
「そういえば、智也さん。天羽女子の文化祭には、生徒や来客の方による投票の結果で、クラスと部活に対して表彰が行なわれるそうです。上位のクラスと部活には豪華景品が渡されるそうなので、どうか……1年2組と声楽部に投票をお願いします!」
「……考えておくよ」
そうは言うけど、他によほどいいクラスや部活がない限りは、1年2組と声楽部に投票するつもりだ。
あと、声楽部は両日コンサートをやるので票が入りそうだけど、1年2組の方は厳しいかもしれないな。喫茶店は多いから票が割れてしまいそうだ。僕からも有紗さんや羽賀達に言っておくか。
「智也さんのことを……信じていますよ」
「そう言ってくれると素直に嬉しいよ」
「……智也さんの返答次第では、私が一肌脱ごうかと思ったんですけどね。正確に言えばメイド服と下着ですけど」
「そういうことをしたら、絶対に投票はしなかったよ。文化祭のことなんだから、文化祭でしっかり頑張らないと。僕は1年2組や声楽部のみんなが、多くの人を楽しませることができるって信じているよ」
そうすれば、きっと投票結果に結びつくんじゃないだろうか。僕はそうであると信じている。
「……素敵です、智也さん。その言葉が力になると思うので、今の言葉をもう一度言ってもらってもいいですか! スマホで動画撮影してみんなに見せたいです!」
「まあ、そのくらいの手助けならかまわないよ」
クラスや部活の子に見せられるのは恥ずかしいけど。
その後、僕は1年2組と声楽部に向けた応援のメッセージを伝える。それをスマホで撮影する美来はとても幸せそうなのであった。
「そうだ、智也さん。昨日、学校で文化祭のパンフレットをもらったんです。学校の特設ページに載っている内容とさほど変わりませんが。見てみますか?」
「うん、見てみたいな」
「分かりました。じゃあ、持ってきますね」
美来はリビングを後にした。
日程を確認するために文化祭の特設ページのトップは見たけど、詳しい内容まではまだ見ていなかった。1年2組はメイド喫茶をやって、声楽部はコンサートを開催することを知っていたし。天羽女子の文化祭がどんな感じでやるのかをちゃんと知るいい機会だろう。
「智也さん、お待たせしました」
「ありがとう」
美来から文化祭のパンフレットを受け取る。女子校の文化祭だからなのか、淡い桃色をベースとしていて可愛らしいな。文化祭でも修学旅行でも、パンフレットを手にするともうすぐなんだなと思う。
「天羽祭って言うのかな」
「そうです。1年生は文化祭って言う生徒も多いですけど、2年生と3年生は天羽祭と言う生徒さんが多いみたいです。実際にうちの声楽部の花音先輩も天羽祭って言ってます」
「そうなんだ。こういう通称みたいなのがあると、文化祭にも愛着が湧きそうだね」
僕は高校の文化祭にもそういった名前があった気がするけれど、文化祭とか学園祭って言い続けていたな。
パンフレットを開き、ページをめくっていくと各クラスの出し物一覧が。
「……出し物の名称に『喫茶』って書いてあるクラスが多いね。1年2組のメイド喫茶もそうだし、執事喫茶、コスプレ喫茶、姉妹喫茶、浴衣喫茶、ナース喫茶、アイドル喫茶……」
「前に話したかもしれませんが、天羽女子高校の文化祭では喫茶店をやりたいクラスが毎年多くて。絞ってしまうのではなく、多種多様な喫茶店を楽しむことができるのも一つの売りにしているみたいです」
「そうなんだね」
ただ、コスプレ喫茶は、他の喫茶店の集合体のように思えるけど。
出し物名称だけでなく、説明や場所も書いてあるのか。ええと、美来のいる1年2組のメイド喫茶については、
『コーヒーや紅茶はもちろんのこと、スイーツも楽しめます! 1年2組の教室でお待ちしています、ご主人様、お嬢様』
メイドさんらしい説明でいいんじゃないだろうか。メイド喫茶は喫茶店として王道の一つだし、結構な人が来そうだな。
「コーヒーや紅茶はもちろんのこと、スイーツも楽しめます。1年2組でお待ちしています、ご主人様」
目線で1年2組のところを読んでいるのが分かったのか、美来が声に出して読んでくれた。ただ、言い方が艶っぽいので、高校生らしかぬ雰囲気が感じられる。
「あと、智也さんには私が特別にあーんなことから、こーんなことまでご奉仕しちゃいます。それはもちろんプライスレスです」
「どんなご奉仕なのかは知らないけれど、それは1年2組の教室じゃなくて家の中でしてくれると嬉しいな。できれば2人きりで」
「どんなことを奉仕すると思ったんですか? でも、お家で2人きりの方が色々なことができますから、特別なご奉仕についてはお家だけでしますね。ご主人様」
そう言うと、美来は頬にキスをしてきた。そんな彼女は頬を赤くしながら可愛らしい笑みを浮かべていた。きっと、僕の想像しているご奉仕と、美来の想像しているご奉仕は結構重なると思う。何せ美来だからな。
「そういえば、乃愛ちゃんのお姉さんの玲奈ちゃんは何組だっけ? 3年生だったことは覚えているんだけど」
「玲奈先輩は3年3組ですね。声楽部の部長の新藤花音先輩も同じクラスです」
「そうなんだね。じゃあ、3年3組にも行ってみよう。ええと、何をやっているのかな。……外でチョコバナナの屋台をやるのか。こういうイベントでの定番だね」
「ふふっ、そうですね。……あと、バナナって甘美な響きですよね」
「それは美来だけじゃないかな」
「そうですかね? あとは、屋台を出店するクラスや部活は多くて、たこ焼きやワッフル、わたがし、焼きそば、りんご飴、焼き鳥など色々とありますよ」
「そうなんだ。じゃあ、当日のお昼ご飯は屋台で買って食べることにしようかな」
「そうしていただけると嬉しいです」
岡村は大食いなところがあるから、屋台を制覇しそうだ。たまに羽賀は奢らされそう。有紗さんも甘いものが大好きだから、スイーツ系のお店を中心に回りそうだな。
食べ物系をやるクラスが多いけれど、お化け屋敷やダーツゲームなど遊びを提供するクラスもある。あと、天羽女子高校の歴史、高校のある鏡原市について調べたものの展示を行なうクラス。1日数回、特設ステージでソーラン節を披露するクラスなど様々だ。
クラスだけじゃなくて、部活の一覧もある。ええと、美来や乃愛ちゃんが入っている声楽部は、
「……あった。声楽部は体育館でコンサートをやるんだね」
「そうです。部員全員で合唱曲もやりますし、私を含め何人かの生徒が独唱も行います。あとは、流行りのJ-POPの曲も何曲か歌う予定ですよ」
「バラエティに富んでいるんだね。楽しみになってきた」
「嬉しいです。タイムスケジュールのページにも書いてありますが、声楽部のコンサートは2日とも、午後2時から1時間の予定になってます。あと、玲奈先輩は茶道部に入っていて、茶道室で点てたお抹茶を和菓子と一緒に提供するそうです」
「そうなんだね」
知っている生徒がいるとそこに行きたくなる。当日は茶道室にも行ってみよう。和菓子が出るなら有紗さんも興味を持ちそうだ。
ページをめくっていくと、校内の地図が書いてあって、どこでクラスや部活が出店しているのかが記載されている。1年2組は教室棟、茶道部は特別棟、声楽部は体育館でやるそうだ。ホームページにも載っていたら、印刷して当日までに行きたいところにチェックしておこう。
さらにページをめくると、アンケート結果発表っていうのがある。
「私が転入する前にアンケートが行なわれたみたいです」
「そうなんだ。僕も高校のときにそんなことやったなぁ」
「企画としてこういうことをやる高校は多いんですね。見てみると面白いですよね。好きな科目や食堂メニューだけじゃなくて、漫画や音楽、男女別で好きな先生は誰かなどもありますから」
「面白いよね。こういうページは文化祭が終わってもふと見るかもね」
そういえば、僕の出身校のパンフレットにはアンケート結果だけじゃなくて、珍回答も載っていたな。一度、岡村の回答が珍回答として載ったことがあって、それを羽賀や僕にやたら自慢していたっけ。
「そういえば、智也さん。天羽女子の文化祭には、生徒や来客の方による投票の結果で、クラスと部活に対して表彰が行なわれるそうです。上位のクラスと部活には豪華景品が渡されるそうなので、どうか……1年2組と声楽部に投票をお願いします!」
「……考えておくよ」
そうは言うけど、他によほどいいクラスや部活がない限りは、1年2組と声楽部に投票するつもりだ。
あと、声楽部は両日コンサートをやるので票が入りそうだけど、1年2組の方は厳しいかもしれないな。喫茶店は多いから票が割れてしまいそうだ。僕からも有紗さんや羽賀達に言っておくか。
「智也さんのことを……信じていますよ」
「そう言ってくれると素直に嬉しいよ」
「……智也さんの返答次第では、私が一肌脱ごうかと思ったんですけどね。正確に言えばメイド服と下着ですけど」
「そういうことをしたら、絶対に投票はしなかったよ。文化祭のことなんだから、文化祭でしっかり頑張らないと。僕は1年2組や声楽部のみんなが、多くの人を楽しませることができるって信じているよ」
そうすれば、きっと投票結果に結びつくんじゃないだろうか。僕はそうであると信じている。
「……素敵です、智也さん。その言葉が力になると思うので、今の言葉をもう一度言ってもらってもいいですか! スマホで動画撮影してみんなに見せたいです!」
「まあ、そのくらいの手助けならかまわないよ」
クラスや部活の子に見せられるのは恥ずかしいけど。
その後、僕は1年2組と声楽部に向けた応援のメッセージを伝える。それをスマホで撮影する美来はとても幸せそうなのであった。
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