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続編-螺旋百合-
第39話『決意の朝』
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9月7日、水曜日。
玲奈先輩に向けてだけれど、私への想いを智也さんがたくさん話してくれたこともあってか、昨日はとてもいい夢を見られた。
亜依ちゃんや玲奈先輩もよく眠れたようで、特に玲奈先輩は昨日までとは打って変わって爽やかな笑みを浮かべている。
「玲奈ちゃん、何だかいい表情になっているね」
「そうですね。近いうちに今回のことが解決するんじゃないかと思います」
「美来にとって、どうすれば解決するのか分かったみたいだね」
「はい。智也さんのおかげです。昨晩、あんなに素敵なことを言っていましたので」
「……覚えていたんだね」
智也さんははにかんでいる。本当に可愛いな。
もちろん、昨日のことは覚えている。智也さん、あんなに強い口調で私への想いを口にすることはほとんどないから。本当にかっこよくて……一生、智也さんについていこうと思えたの。
「近いうちに、イチャイチャしてもいいですか?」
智也さんの耳元でそう囁いた。結局、昨日の夜は智也さんにキスすることくらいしかできなかったから。
「……考えておくよ」
「はい。お願いしますね」
私は智也さんの頬にキスをした。きっと、智也さんなら遅くても週末には……してくれるはず。ふふっ。
私の作った朝食を4人で食べる。まさか、智也さんや学校のお友達と一緒に朝ご飯を食べる日が来るなんて。月が丘にいたときは想像ができなかったな。
家に一度、今日の教科書とノートを取りに戻るため、亜依ちゃんは1人だけで先に出発した。桜花駅で待ち合わせをすることに。ちなみに、玲奈先輩は他のクラスの生徒から借りるつもりなので、家には戻らないそうだ。
亜依ちゃんが家を出てから15分後くらいに、私達は3人で桜花駅へと向かう。今日も晴れていて、朝から厳しい残暑。朝晩だけでいいから、早く涼しくなってくれないかな。
「氷室さんに朝比奈さん。昨日は突然だったのに泊めてくれてありがとうございました」
「いえいえ。それに、昨日は楽しかったですよ。ね、智也さん」
「そうだね。また遊びにおいで」
「ありがとうございます。今度は妹と一緒に遊びに来ようと思います」
妹と一緒に、か。どうやら、一晩で玲奈先輩は気持ちの整理ができたみたい。きっと、私と亜依ちゃんが一緒にお風呂に入っている間に、智也さんが玲奈先輩に何かいい言葉を言ったのだろう。
そんなことを思い出していると、私達は桜花駅に到着する。すると、既に亜依ちゃんが改札前に立っていた。
「亜依ちゃん、早いね」
「駅から家まで近いですし、今日の授業に必要なものを入れてきただけですから。早歩きをしましたけど」
早歩きをした割には普段通りの落ち着いた様子だ。
「亜依ちゃんもまた遊びに来てね」
「ありがとうございます。今回のお泊まりはとても楽しかったです。また遊びに行きますね」
ふふっ、と亜依ちゃんは楽しそうに笑う。昨日の夜、一緒にお風呂に入ったときお互いに体を洗い合ったりして楽しかったな。智也さんと一緒に入るときよりもちょっと湯船が広く感じて。
「それじゃ、僕は反対側のホームだからここでお別れ。学校まで気を付けていくんだよ」
「分かりました、智也さん」
「昨日はありがとうございました、氷室さん。その……頑張ります」
「いい結果になるといいね、玲奈ちゃん」
何だか、智也さんと玲奈先輩がいい雰囲気になっている気がするんですけど。昨日、2人きりの時間もあったし。智也さん曰く、乃愛ちゃんのことで色々と話したそうだけど。きっと、玲奈先輩が頑張ろうとしていることって乃愛ちゃんのことだよね。
「あっ、僕の方……もうすぐ急行列車が来るから行くね」
それじゃ、と智也さんは改札を通って、駆け足で私達とは反対側の上り線のホームへと向かっていった。今日も智也さんの後ろ姿がかっこいい。
「私達も行きましょう。玲奈先輩は初めてですよね」
「うん、こういったこと全然ないから。佐々木さんと朝比奈さんについていくよ」
「私も桜花市に引っ越してきて間もないから亜依ちゃんについていくね」
「ふふっ、では2人ともついてきてください」
私と玲奈先輩は亜依ちゃんについていく形で下り線のホームに。いつものように少しでも混んでいる車両を避けるため、先頭車両の方に向かう。
「朝比奈さん、佐々木さん。その……乃愛から何か連絡来てる?」
「いえ、乃愛ちゃんの方からは特にないですね。きつく叱ってしまったので一度、謝罪のメッセージを送って、それは既読になりました」
「私も亜依ちゃんと同じような感じです。乃愛ちゃんからの連絡はないんですけど、いつでも連絡していいよっていう私のメッセージは既読に」
「そうなんだ。一応、2人からのメッセージは見ているんだね。良かった、誰からの言葉も見ていない状態じゃなくて」
玲奈先輩はちょっとだけ安堵の表情を見せる。
既読のマークが付いたのは、乃愛ちゃんのスマートフォンに私達の送ったメッセージが表示されたというだけで、乃愛ちゃんが言葉を受け取ったかどうかは分からない。ただ、今はポジティブに考えよう。
「金曜日に告白してくれてから、乃愛とは全然顔を合わせてなくて。直接顔を合わせるのはハードルが高いから、まずは乃愛に電話したり、メッセージを送ったりしようと思ったんだけれど勇気が出なくて結局できなかった」
「私達でも時間を置いてようやくメッセージを送ることができたんです。玲奈先輩ができないのは仕方ないと思いますよ」
乃愛ちゃんも玲奈先輩と同じように、電話したり、メッセージを送ったりしようとしているのかな。
今日こそ学校で乃愛ちゃんに会いたいけど、お休みの可能性が高そう。
そんなことを考えていると、下り方面の急行列車が到着した。私達はその列車に乗り、乗換駅である畑町駅へと向かう。
「これが朝の通勤・通学列車なんだね。徒歩通学だからか、こうして体が触れることに違和感があるよ。昨日は座れなかったけれど、空いていたし」
「確かに、徒歩通学ですとこういうことはないですよね。あと、端の車両なのでまだこの程度で済んでいますが、真ん中の車両では圧力や痛みを感じるときもありますよ」
「そうなんだ。……家から近くて良かった」
玲奈先輩は苦笑い。私もようやくこの満員電車に慣れ始めてきたけれど、今の亜依ちゃんの話を聞いて真ん中の車両には間違ってでも乗りたくないな。
「きゃっ」
車両が揺れたことで、玲奈先輩は私の方によろめいてくる。
「ごめんね、朝比奈さん」
「いえ、気にしないでください」
こういうことってあるよね。特に電車に乗り慣れていないときだと。
すると、玲奈先輩は頬を赤くして、
「柔らかくて温かいね、美来ちゃん。そういえば、昔は乃愛のことをよく抱きしめていたけれど、乃愛はこういう感覚だったのかな」
「昔から乃愛ちゃんと仲がいいのですね。私には姉妹がいないので、そういった話を聞くと羨ましくなります」
そういえば、亜依ちゃんは一人っ子なんだっけ。だから、昨日……一緒にお風呂に入ったときもあんなに楽しそうだったのかな。
「朝比奈さん、佐々木さん。私、決めたことがあるの」
すると、さっきまでの照れた表情から一転して真剣な表情に変わって、
「今日、乃愛に告白する」
電車の中だからか、普段よりも声が小さいけれど、玲奈先輩の言葉がはっきりと聞こえた。
「勇気が出たんですね、玲奈先輩」
「うん。みんなのおかげだよ。上手くいくかどうか分からないけれど、乃愛に告白してみるね」
玲奈先輩はそう言うけど、きっと告白は上手くいくと思う。先週の金曜日、玲奈先輩が乃愛ちゃんを振ったときに怒ってはいたけれど、玲奈先輩が嫌いになったようには見えなかった。むしろ、私の方が嫌いになった確率が高そうだ。
「頑張ってください。応援しています。あと、乃愛ちゃんを一番の笑顔にできるのは玲奈先輩だと思いますから」
「ありがとう、朝比奈さん。……お願いなんだけど、朝比奈さんと佐々木さん。告白するときに一緒についていてくれないかな」
「あのときも美来ちゃんと私が乃愛ちゃんの側についていましたからね。私はかまいませんが、美来ちゃんはどうします?」
「……もちろん、見守りたいと思います」
今度こそは、玲奈先輩と乃愛ちゃんが幸せになれるような結果になると信じて。亜依ちゃんと一緒に玲奈先輩の側で見守ることにしよう。
玲奈先輩に向けてだけれど、私への想いを智也さんがたくさん話してくれたこともあってか、昨日はとてもいい夢を見られた。
亜依ちゃんや玲奈先輩もよく眠れたようで、特に玲奈先輩は昨日までとは打って変わって爽やかな笑みを浮かべている。
「玲奈ちゃん、何だかいい表情になっているね」
「そうですね。近いうちに今回のことが解決するんじゃないかと思います」
「美来にとって、どうすれば解決するのか分かったみたいだね」
「はい。智也さんのおかげです。昨晩、あんなに素敵なことを言っていましたので」
「……覚えていたんだね」
智也さんははにかんでいる。本当に可愛いな。
もちろん、昨日のことは覚えている。智也さん、あんなに強い口調で私への想いを口にすることはほとんどないから。本当にかっこよくて……一生、智也さんについていこうと思えたの。
「近いうちに、イチャイチャしてもいいですか?」
智也さんの耳元でそう囁いた。結局、昨日の夜は智也さんにキスすることくらいしかできなかったから。
「……考えておくよ」
「はい。お願いしますね」
私は智也さんの頬にキスをした。きっと、智也さんなら遅くても週末には……してくれるはず。ふふっ。
私の作った朝食を4人で食べる。まさか、智也さんや学校のお友達と一緒に朝ご飯を食べる日が来るなんて。月が丘にいたときは想像ができなかったな。
家に一度、今日の教科書とノートを取りに戻るため、亜依ちゃんは1人だけで先に出発した。桜花駅で待ち合わせをすることに。ちなみに、玲奈先輩は他のクラスの生徒から借りるつもりなので、家には戻らないそうだ。
亜依ちゃんが家を出てから15分後くらいに、私達は3人で桜花駅へと向かう。今日も晴れていて、朝から厳しい残暑。朝晩だけでいいから、早く涼しくなってくれないかな。
「氷室さんに朝比奈さん。昨日は突然だったのに泊めてくれてありがとうございました」
「いえいえ。それに、昨日は楽しかったですよ。ね、智也さん」
「そうだね。また遊びにおいで」
「ありがとうございます。今度は妹と一緒に遊びに来ようと思います」
妹と一緒に、か。どうやら、一晩で玲奈先輩は気持ちの整理ができたみたい。きっと、私と亜依ちゃんが一緒にお風呂に入っている間に、智也さんが玲奈先輩に何かいい言葉を言ったのだろう。
そんなことを思い出していると、私達は桜花駅に到着する。すると、既に亜依ちゃんが改札前に立っていた。
「亜依ちゃん、早いね」
「駅から家まで近いですし、今日の授業に必要なものを入れてきただけですから。早歩きをしましたけど」
早歩きをした割には普段通りの落ち着いた様子だ。
「亜依ちゃんもまた遊びに来てね」
「ありがとうございます。今回のお泊まりはとても楽しかったです。また遊びに行きますね」
ふふっ、と亜依ちゃんは楽しそうに笑う。昨日の夜、一緒にお風呂に入ったときお互いに体を洗い合ったりして楽しかったな。智也さんと一緒に入るときよりもちょっと湯船が広く感じて。
「それじゃ、僕は反対側のホームだからここでお別れ。学校まで気を付けていくんだよ」
「分かりました、智也さん」
「昨日はありがとうございました、氷室さん。その……頑張ります」
「いい結果になるといいね、玲奈ちゃん」
何だか、智也さんと玲奈先輩がいい雰囲気になっている気がするんですけど。昨日、2人きりの時間もあったし。智也さん曰く、乃愛ちゃんのことで色々と話したそうだけど。きっと、玲奈先輩が頑張ろうとしていることって乃愛ちゃんのことだよね。
「あっ、僕の方……もうすぐ急行列車が来るから行くね」
それじゃ、と智也さんは改札を通って、駆け足で私達とは反対側の上り線のホームへと向かっていった。今日も智也さんの後ろ姿がかっこいい。
「私達も行きましょう。玲奈先輩は初めてですよね」
「うん、こういったこと全然ないから。佐々木さんと朝比奈さんについていくよ」
「私も桜花市に引っ越してきて間もないから亜依ちゃんについていくね」
「ふふっ、では2人ともついてきてください」
私と玲奈先輩は亜依ちゃんについていく形で下り線のホームに。いつものように少しでも混んでいる車両を避けるため、先頭車両の方に向かう。
「朝比奈さん、佐々木さん。その……乃愛から何か連絡来てる?」
「いえ、乃愛ちゃんの方からは特にないですね。きつく叱ってしまったので一度、謝罪のメッセージを送って、それは既読になりました」
「私も亜依ちゃんと同じような感じです。乃愛ちゃんからの連絡はないんですけど、いつでも連絡していいよっていう私のメッセージは既読に」
「そうなんだ。一応、2人からのメッセージは見ているんだね。良かった、誰からの言葉も見ていない状態じゃなくて」
玲奈先輩はちょっとだけ安堵の表情を見せる。
既読のマークが付いたのは、乃愛ちゃんのスマートフォンに私達の送ったメッセージが表示されたというだけで、乃愛ちゃんが言葉を受け取ったかどうかは分からない。ただ、今はポジティブに考えよう。
「金曜日に告白してくれてから、乃愛とは全然顔を合わせてなくて。直接顔を合わせるのはハードルが高いから、まずは乃愛に電話したり、メッセージを送ったりしようと思ったんだけれど勇気が出なくて結局できなかった」
「私達でも時間を置いてようやくメッセージを送ることができたんです。玲奈先輩ができないのは仕方ないと思いますよ」
乃愛ちゃんも玲奈先輩と同じように、電話したり、メッセージを送ったりしようとしているのかな。
今日こそ学校で乃愛ちゃんに会いたいけど、お休みの可能性が高そう。
そんなことを考えていると、下り方面の急行列車が到着した。私達はその列車に乗り、乗換駅である畑町駅へと向かう。
「これが朝の通勤・通学列車なんだね。徒歩通学だからか、こうして体が触れることに違和感があるよ。昨日は座れなかったけれど、空いていたし」
「確かに、徒歩通学ですとこういうことはないですよね。あと、端の車両なのでまだこの程度で済んでいますが、真ん中の車両では圧力や痛みを感じるときもありますよ」
「そうなんだ。……家から近くて良かった」
玲奈先輩は苦笑い。私もようやくこの満員電車に慣れ始めてきたけれど、今の亜依ちゃんの話を聞いて真ん中の車両には間違ってでも乗りたくないな。
「きゃっ」
車両が揺れたことで、玲奈先輩は私の方によろめいてくる。
「ごめんね、朝比奈さん」
「いえ、気にしないでください」
こういうことってあるよね。特に電車に乗り慣れていないときだと。
すると、玲奈先輩は頬を赤くして、
「柔らかくて温かいね、美来ちゃん。そういえば、昔は乃愛のことをよく抱きしめていたけれど、乃愛はこういう感覚だったのかな」
「昔から乃愛ちゃんと仲がいいのですね。私には姉妹がいないので、そういった話を聞くと羨ましくなります」
そういえば、亜依ちゃんは一人っ子なんだっけ。だから、昨日……一緒にお風呂に入ったときもあんなに楽しそうだったのかな。
「朝比奈さん、佐々木さん。私、決めたことがあるの」
すると、さっきまでの照れた表情から一転して真剣な表情に変わって、
「今日、乃愛に告白する」
電車の中だからか、普段よりも声が小さいけれど、玲奈先輩の言葉がはっきりと聞こえた。
「勇気が出たんですね、玲奈先輩」
「うん。みんなのおかげだよ。上手くいくかどうか分からないけれど、乃愛に告白してみるね」
玲奈先輩はそう言うけど、きっと告白は上手くいくと思う。先週の金曜日、玲奈先輩が乃愛ちゃんを振ったときに怒ってはいたけれど、玲奈先輩が嫌いになったようには見えなかった。むしろ、私の方が嫌いになった確率が高そうだ。
「頑張ってください。応援しています。あと、乃愛ちゃんを一番の笑顔にできるのは玲奈先輩だと思いますから」
「ありがとう、朝比奈さん。……お願いなんだけど、朝比奈さんと佐々木さん。告白するときに一緒についていてくれないかな」
「あのときも美来ちゃんと私が乃愛ちゃんの側についていましたからね。私はかまいませんが、美来ちゃんはどうします?」
「……もちろん、見守りたいと思います」
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