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続編-螺旋百合-
第19話『今昔カルテット』
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『桃花さんと仁実さんが付き合うことになりました!』
という嬉しいメッセージが美来から届いたのは、午後2時半過ぎ。缶コーヒーを飲みながら有紗さんや景子ちゃんと一緒に休憩をしているときだった。
「桃花ちゃん、仁実ちゃんと恋人として付き合うことになったそうですよ」
「ちゃんと告白できたんだね!」
「女の子同士の恋愛ですか。それも素敵な愛情の形の一つですよね」
昨日から、今のように休憩しているときや、お昼ご飯のときは桃花ちゃん達のことを話題にしていたので、彼女達も今回の朗報にとても嬉しそうな表情を見せていた。
その後は平和な時間を過ごしているのか、それともイチャイチャしているのか……彼女達についての連絡は全くない。何かあったら連絡するように言ってあるので、その通りにしているのであれば問題ないということだろう。ちょっと寂しい気持ちもあるけど、安心できた。
今日の業務も問題なく終わり定時退社することができた。家で美来が待っていると思うと定時で仕事を終わることは嬉しいけれど、本来であればこれが普通であって残業が当たり前なのがおかしいんだよな。
電車が遅延したり、昨日のように桜花駅で仁実ちゃんとばったり再会したり……なんてこともなく、今日はスムーズに自宅に帰ることができた。午後7時前に家の玄関を開けることができるとは、何て幸せなことだろう。
「ただいま~」
家の中に入った途端、美味しそうな匂いが。この匂いは……ビーフシチューかな? それともハッシュドビーフだろうか。どちらにせよ、食欲がそそられる。
「おかえりなさいませ、智也さん!」
「おかえり、お兄ちゃん!」
「おかえり、トモくん」
「……うん、ただいま。桃花ちゃんと仁実ちゃん、付き合うようになって良かったね……って、ええっ!」
僕を出迎えてくれたのは、3人のメイド服姿の女の子だった。美来は夏仕様のメイド服で、桃花ちゃんと仁実ちゃんは冬仕様の長袖のメイド服を着ていた。思い返せば、前の家に住んでいたとき、家の中で美来と有紗さんが長袖のメイド服を着ていたっけ。
「仁実ちゃんまで家に来ていることにも驚いたけれど、それよりもメイドさんが3人に増えていることの方が驚きだよ」
「ふふっ、智也さんを驚かすために、仁実さんもここに来たことを隠していました。3人でメイド服を着て、智也さんのことをお出迎えすればより驚くんじゃないかと」
「なるほどね、見事に驚かされたよ」
まったく、美来ったら。2人もそんな美来の考えに乗ってしまうなんて。3人の可愛らしいメイド服姿を見られたと思えばいいか。こんなことは二度とないだろうから、スマートフォンで写真を撮っておこうっと。
「写真を撮るなんて、トモくん……2人の話通り、メイド服姿の女の子が大好きなんだね」
「美来ですっかりと慣れちゃったよ」
ただ、家の中に3人もメイド服姿の女の子がいるのは初めてだから、昨日以上にここがシュールな場所に思える。
「ひとみん、凄く似合ってるよ。これなら喫茶店だけじゃなくて、メイド喫茶でも十分にアルバイトできると思うよ」
「そ、そうかなぁ。でも、この近くにないからね」
近くにあったらバイトするかどうか考えていたのかな、仁実ちゃん。
「メイド服を着て3人でお出迎えしてくれてありがとね。あと、桃花ちゃんと仁実ちゃん、恋人として付き合うようになったんだよね。おめでとう」
そう言って、桃花ちゃんと仁実ちゃんの頭を撫でると、2人は嬉しそうな笑みを浮かべた。大学生になった2人と久しぶりに会っても、こうしていると小さい頃と変わらないな。メイド服であることを除いて。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「トモくんの言葉のおかげで吹っ切れたよ」
「……それは良かった」
2人にとって最初の一歩を踏み出すことができたようだ。僕は2人にとって一番近くにいる年上の人間として、美来と一緒に彼女達のことを見守っていくことにしよう。
「さっ、今日の夕ご飯はハッシュドビーフですよ、智也さん」
「やっぱりこの匂いはハッシュドビーフだったんだね。もうペコペコだよ」
「ふふっ、じゃあ……みなさん、着替えてください。私はその間に夕飯の準備をしますから」
「うん、分かったよ」
みなさんってことは、やっぱり桃花ちゃんと仁実ちゃんは僕を出迎えるためだけにメイド服を着ていたのかな。
寝室で部屋着へと着替えて、リビングに向かうと、私服姿になった桃花ちゃんと仁実ちゃんが既に椅子に座っていた。もちろん、隣同士で。
「はーい、ハッシュドビーフですよ。智也さんも席に座っていてくださいね」
「うん、分かった」
こうしている姿を見ると、まるで本当のメイドさんのようだな、美来。
僕は桃花ちゃんと向かい合うようにして座る。桃花ちゃんと仁実ちゃんが並んでいる姿を改めて見てみると、2人ともよく大人になったな。しかも、2人で付き合うことになるなんて。小さい頃から知っている人間にとっては感慨深いものがある。
「ど、どうしたの? お兄ちゃん、急に涙を流して……」
「いやぁ、2人ともよく大きくなったと思ってさ」
「あははっ! 昨日会ったときも思ったけれど、やっぱりおじさんになったよね!」
僕が涙を見せるのが面白いのか、仁実ちゃんは大爆笑。僕はまだ四捨五入してもかろうじて20歳と名乗れる年齢なんだけれど……って、それは昨日仁実ちゃんに言ったか。同じことを考えてしまうとは。
ただ……何だか、昔よりも涙腺が緩んできたとは思ったけれど、親戚の子とかのことで涙を流すようになったのは、おじさんになった証拠なのかもしれない。
「あらあら、智也さん……そんなことで泣いちゃって。これは何十年後かに私達の娘が恋人を紹介されたり、結婚したりするときは大泣き確定ですね」
「……僕達の子供は娘であること前提なの? あと、今の話で涙が止まったよ」
「もしもの話ですよぉ。でも、息子にせよ、娘にせよ……智也さんは節目で必ず号泣しそうな気がしますね。でも、私はどんなときでも智也さんの側にいて、頭を撫でたり、胸や腋を堪能させたりしますから」
美来は幸せそうな笑みを浮かべてそう言う。あと、僕ってそんなに涙もろいイメージを持たれているのかな。
そんなことを考えていたら、気付けば全員のところにハッシュドビーフが置かれていた。あぁ、美味しそうだ。
「じゃあ、いただきます!」
『いただきます!』
みんなでハッシュドビーフを食べ始める。牛肉の柔らかさ、コクのあるソースがご飯に合うなぁ。ビーフカレーもいいけれど、ハッシュドビーフもいいよね。
「美味しいよ、美来」
「ふふっ、ありがとうございます。3人で作ったんですよ。仁実さんは1人暮らしで自炊しているとのことで、とてもお料理が上手でした」
「へえ、そうなんだ」
「美来ちゃんに比べたらまだまだだよ。それに、5ヶ月かけて料理ができるようになったって感じだし」
1人暮らしをすると、自分でやらなければいけないから。僕の場合はたまにしか自炊してなくて、コンビニで買ってくることが多かったけれど。
「そういえばさ、昨日……ひとみんとお兄ちゃんが会っていたなんてね。私、全然知らなかったよ、美来ちゃんには話していたみたいだけれどさ」
「美来にはそういうことは逐一報告しておいた方がいいと思ってさ」
美来の性格上……僕が話さないままで別の形で事実を知ったとき、かなり怒るような気がするから。
「ふふっ、怪しいと思ったら尾行すればいいだけですよ」
「……ちゃんと話すよ、これからも」
僕が鈍感だったこともあるけれど、美来はおよそ8年も僕に気付かれないまま尾行していたからな。
「私達もお兄ちゃんと美来ちゃんみたいになれるようにしようね」
「そうだね」
「お兄ちゃん、美来ちゃん。ひとみんと付き合うことになったから、私……夏休みの間はひとみんのお家で暮らすことにするよ。お父さんとお母さんには連絡して許可はもらった」
「そうなんだ。仲良く、そして楽しく過ごせるといいね。ここに来たくなったらいつでも遊びに来ていいからね」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん、美来ちゃん」
桃花ちゃん、とても嬉しそうな笑みを浮かべている。こういった笑顔は昔と変わらず本当に可愛いな。
「もう、智也さんったらまた泣いているんですか」
「本当にね、酔ってもいないのにね」
ただ、桃花ちゃんと仁実ちゃんが付き合うことになったことを知ると、感極まっちゃうんだよ。お盆とお正月だけだったけれど、2人のことを近くで見ていたからかな。
「今、こんなに泣いていると、おじいさんになったときは常に涙を流しているんじゃないですか」
「……そのときになってみないと分からないな。でも、嬉しいことなんだから、たくさん涙を流してもいいんじゃないかな」
「ふふっ、そうですね」
よしよし、と美来に頭を撫でられる始末。桃花ちゃんや仁実ちゃんが見ている前で恥ずかしいな、まったく。
「昔よりも涙もろくはなったけれどさ、トモくんや美来ちゃんが近くにいると思うと安心するよ。これからも色々とよろしくね」
「うん、分かったよ。もし、仁実ちゃんさえよければ近々、美来と一緒に仁実ちゃんのお家に遊びに行っていいかな」
「2人だったらかまわないよ」
「仁実さんのお家にもアルバムやホームビデオがありますので、行ったときには一緒に観ましょうね」
「どんなものが残っているのか不安だ……」
「大丈夫ですよ。智也さんが恥ずかしがるようなものもありますけど、可愛いですし」
「……僕が恥ずかしくなることはほぼ決まりなんだね」
もう、みんなで僕のことを笑いものにして。それでも、みんなが楽しそうに笑っているからまあいいか。
その後も、4人での楽しい夕飯は続いた。これまでに何度も話したことのある昔話も4人では初めてなので何だか新鮮に感じた。
夕飯を食べ終わってすぐに、桃花ちゃんと仁実ちゃんは幸せそうな様子で家に帰っていったのであった。
という嬉しいメッセージが美来から届いたのは、午後2時半過ぎ。缶コーヒーを飲みながら有紗さんや景子ちゃんと一緒に休憩をしているときだった。
「桃花ちゃん、仁実ちゃんと恋人として付き合うことになったそうですよ」
「ちゃんと告白できたんだね!」
「女の子同士の恋愛ですか。それも素敵な愛情の形の一つですよね」
昨日から、今のように休憩しているときや、お昼ご飯のときは桃花ちゃん達のことを話題にしていたので、彼女達も今回の朗報にとても嬉しそうな表情を見せていた。
その後は平和な時間を過ごしているのか、それともイチャイチャしているのか……彼女達についての連絡は全くない。何かあったら連絡するように言ってあるので、その通りにしているのであれば問題ないということだろう。ちょっと寂しい気持ちもあるけど、安心できた。
今日の業務も問題なく終わり定時退社することができた。家で美来が待っていると思うと定時で仕事を終わることは嬉しいけれど、本来であればこれが普通であって残業が当たり前なのがおかしいんだよな。
電車が遅延したり、昨日のように桜花駅で仁実ちゃんとばったり再会したり……なんてこともなく、今日はスムーズに自宅に帰ることができた。午後7時前に家の玄関を開けることができるとは、何て幸せなことだろう。
「ただいま~」
家の中に入った途端、美味しそうな匂いが。この匂いは……ビーフシチューかな? それともハッシュドビーフだろうか。どちらにせよ、食欲がそそられる。
「おかえりなさいませ、智也さん!」
「おかえり、お兄ちゃん!」
「おかえり、トモくん」
「……うん、ただいま。桃花ちゃんと仁実ちゃん、付き合うようになって良かったね……って、ええっ!」
僕を出迎えてくれたのは、3人のメイド服姿の女の子だった。美来は夏仕様のメイド服で、桃花ちゃんと仁実ちゃんは冬仕様の長袖のメイド服を着ていた。思い返せば、前の家に住んでいたとき、家の中で美来と有紗さんが長袖のメイド服を着ていたっけ。
「仁実ちゃんまで家に来ていることにも驚いたけれど、それよりもメイドさんが3人に増えていることの方が驚きだよ」
「ふふっ、智也さんを驚かすために、仁実さんもここに来たことを隠していました。3人でメイド服を着て、智也さんのことをお出迎えすればより驚くんじゃないかと」
「なるほどね、見事に驚かされたよ」
まったく、美来ったら。2人もそんな美来の考えに乗ってしまうなんて。3人の可愛らしいメイド服姿を見られたと思えばいいか。こんなことは二度とないだろうから、スマートフォンで写真を撮っておこうっと。
「写真を撮るなんて、トモくん……2人の話通り、メイド服姿の女の子が大好きなんだね」
「美来ですっかりと慣れちゃったよ」
ただ、家の中に3人もメイド服姿の女の子がいるのは初めてだから、昨日以上にここがシュールな場所に思える。
「ひとみん、凄く似合ってるよ。これなら喫茶店だけじゃなくて、メイド喫茶でも十分にアルバイトできると思うよ」
「そ、そうかなぁ。でも、この近くにないからね」
近くにあったらバイトするかどうか考えていたのかな、仁実ちゃん。
「メイド服を着て3人でお出迎えしてくれてありがとね。あと、桃花ちゃんと仁実ちゃん、恋人として付き合うようになったんだよね。おめでとう」
そう言って、桃花ちゃんと仁実ちゃんの頭を撫でると、2人は嬉しそうな笑みを浮かべた。大学生になった2人と久しぶりに会っても、こうしていると小さい頃と変わらないな。メイド服であることを除いて。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「トモくんの言葉のおかげで吹っ切れたよ」
「……それは良かった」
2人にとって最初の一歩を踏み出すことができたようだ。僕は2人にとって一番近くにいる年上の人間として、美来と一緒に彼女達のことを見守っていくことにしよう。
「さっ、今日の夕ご飯はハッシュドビーフですよ、智也さん」
「やっぱりこの匂いはハッシュドビーフだったんだね。もうペコペコだよ」
「ふふっ、じゃあ……みなさん、着替えてください。私はその間に夕飯の準備をしますから」
「うん、分かったよ」
みなさんってことは、やっぱり桃花ちゃんと仁実ちゃんは僕を出迎えるためだけにメイド服を着ていたのかな。
寝室で部屋着へと着替えて、リビングに向かうと、私服姿になった桃花ちゃんと仁実ちゃんが既に椅子に座っていた。もちろん、隣同士で。
「はーい、ハッシュドビーフですよ。智也さんも席に座っていてくださいね」
「うん、分かった」
こうしている姿を見ると、まるで本当のメイドさんのようだな、美来。
僕は桃花ちゃんと向かい合うようにして座る。桃花ちゃんと仁実ちゃんが並んでいる姿を改めて見てみると、2人ともよく大人になったな。しかも、2人で付き合うことになるなんて。小さい頃から知っている人間にとっては感慨深いものがある。
「ど、どうしたの? お兄ちゃん、急に涙を流して……」
「いやぁ、2人ともよく大きくなったと思ってさ」
「あははっ! 昨日会ったときも思ったけれど、やっぱりおじさんになったよね!」
僕が涙を見せるのが面白いのか、仁実ちゃんは大爆笑。僕はまだ四捨五入してもかろうじて20歳と名乗れる年齢なんだけれど……って、それは昨日仁実ちゃんに言ったか。同じことを考えてしまうとは。
ただ……何だか、昔よりも涙腺が緩んできたとは思ったけれど、親戚の子とかのことで涙を流すようになったのは、おじさんになった証拠なのかもしれない。
「あらあら、智也さん……そんなことで泣いちゃって。これは何十年後かに私達の娘が恋人を紹介されたり、結婚したりするときは大泣き確定ですね」
「……僕達の子供は娘であること前提なの? あと、今の話で涙が止まったよ」
「もしもの話ですよぉ。でも、息子にせよ、娘にせよ……智也さんは節目で必ず号泣しそうな気がしますね。でも、私はどんなときでも智也さんの側にいて、頭を撫でたり、胸や腋を堪能させたりしますから」
美来は幸せそうな笑みを浮かべてそう言う。あと、僕ってそんなに涙もろいイメージを持たれているのかな。
そんなことを考えていたら、気付けば全員のところにハッシュドビーフが置かれていた。あぁ、美味しそうだ。
「じゃあ、いただきます!」
『いただきます!』
みんなでハッシュドビーフを食べ始める。牛肉の柔らかさ、コクのあるソースがご飯に合うなぁ。ビーフカレーもいいけれど、ハッシュドビーフもいいよね。
「美味しいよ、美来」
「ふふっ、ありがとうございます。3人で作ったんですよ。仁実さんは1人暮らしで自炊しているとのことで、とてもお料理が上手でした」
「へえ、そうなんだ」
「美来ちゃんに比べたらまだまだだよ。それに、5ヶ月かけて料理ができるようになったって感じだし」
1人暮らしをすると、自分でやらなければいけないから。僕の場合はたまにしか自炊してなくて、コンビニで買ってくることが多かったけれど。
「そういえばさ、昨日……ひとみんとお兄ちゃんが会っていたなんてね。私、全然知らなかったよ、美来ちゃんには話していたみたいだけれどさ」
「美来にはそういうことは逐一報告しておいた方がいいと思ってさ」
美来の性格上……僕が話さないままで別の形で事実を知ったとき、かなり怒るような気がするから。
「ふふっ、怪しいと思ったら尾行すればいいだけですよ」
「……ちゃんと話すよ、これからも」
僕が鈍感だったこともあるけれど、美来はおよそ8年も僕に気付かれないまま尾行していたからな。
「私達もお兄ちゃんと美来ちゃんみたいになれるようにしようね」
「そうだね」
「お兄ちゃん、美来ちゃん。ひとみんと付き合うことになったから、私……夏休みの間はひとみんのお家で暮らすことにするよ。お父さんとお母さんには連絡して許可はもらった」
「そうなんだ。仲良く、そして楽しく過ごせるといいね。ここに来たくなったらいつでも遊びに来ていいからね」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん、美来ちゃん」
桃花ちゃん、とても嬉しそうな笑みを浮かべている。こういった笑顔は昔と変わらず本当に可愛いな。
「もう、智也さんったらまた泣いているんですか」
「本当にね、酔ってもいないのにね」
ただ、桃花ちゃんと仁実ちゃんが付き合うことになったことを知ると、感極まっちゃうんだよ。お盆とお正月だけだったけれど、2人のことを近くで見ていたからかな。
「今、こんなに泣いていると、おじいさんになったときは常に涙を流しているんじゃないですか」
「……そのときになってみないと分からないな。でも、嬉しいことなんだから、たくさん涙を流してもいいんじゃないかな」
「ふふっ、そうですね」
よしよし、と美来に頭を撫でられる始末。桃花ちゃんや仁実ちゃんが見ている前で恥ずかしいな、まったく。
「昔よりも涙もろくはなったけれどさ、トモくんや美来ちゃんが近くにいると思うと安心するよ。これからも色々とよろしくね」
「うん、分かったよ。もし、仁実ちゃんさえよければ近々、美来と一緒に仁実ちゃんのお家に遊びに行っていいかな」
「2人だったらかまわないよ」
「仁実さんのお家にもアルバムやホームビデオがありますので、行ったときには一緒に観ましょうね」
「どんなものが残っているのか不安だ……」
「大丈夫ですよ。智也さんが恥ずかしがるようなものもありますけど、可愛いですし」
「……僕が恥ずかしくなることはほぼ決まりなんだね」
もう、みんなで僕のことを笑いものにして。それでも、みんなが楽しそうに笑っているからまあいいか。
その後も、4人での楽しい夕飯は続いた。これまでに何度も話したことのある昔話も4人では初めてなので何だか新鮮に感じた。
夕飯を食べ終わってすぐに、桃花ちゃんと仁実ちゃんは幸せそうな様子で家に帰っていったのであった。
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