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続編-螺旋百合-
第10話『変態協奏曲』
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途中、昼食休憩を挟んで、夕方に『夜桜Tricks』を最終話まで観た。僕はアルバムを見ながらチラチラと観る程度だったけど、それでも作品の内容をはっきりと思い出し、やっぱりいい作品だなと思った。
随所にキスシーンがあったけれど、美来と有紗さんは「きゃああっ!」と黄色い声を上げ、羽賀は「ほぉ」と落ち着いた様子で観ていた。桃花ちゃんはたまに「ううっ」と悶えて顔を赤くしていた。
「恩田さん。焦らずにゆっくりと考えるといい」
「何かあったら相談してきてね」
と言って、羽賀と有紗さんは午後6時過ぎに僕らの家を後にした。
窓から外を眺めると、空が大分暗くなっていた。今週末のお休みももうすぐ終わっちゃうのか。
思い返すと、この週末は旅行のお土産を渡すために実家に帰って、桃花ちゃんとひさしぶりに再会して、それからは桃花ちゃんが持ってきてくれたアルバムやDVDを観てばっかりだったような気がする。今日もみんな『夜桜Tricks』を観ている中で、僕はアルバムを眺めていたからな。
「智也さん、桃花さん、ちょっと早いですが夕ご飯を作りますね。今日はオムライスを作りますので楽しみにしていてください」
「私、オムライス大好きなんだ! 楽しみだなぁ」
「ふふっ、普段以上に気合いが入っちゃいますね」
すると、美来はエプロンを身につけ、金色の髪をポニーテールの形でまとめる。彼女曰く、こうすることで気持ちが切り替わるとのこと。ただ、メイド服を着ているときはポニーテールにすることはあまりない。
「美来ちゃん、ポニーテールにすると印象が変わるね。ひとみんと同じ髪型だからかもしれないけれど、活発な感じがするよ」
「そうですか? ただ、考えてみると、漫画やアニメだとポニーテールのキャラクターは活発で気さくな方が多い気がしますね」
美来も僕に対しては活発な感じだと思うけどな。特に夜になると。
「智也さん、どうしたんですか? 私のことをじっと見て」
「エプロン姿がとても似合っているなと思って。あとポニーテールも」
「智也さんにそう言っていただけると嬉しいですね。智也さんと2人きりであれば裸エプロンでもいいんですが、料理をするときには大変ですね」
「お兄ちゃん、いくら将来の奥さんだからって美来ちゃんに何てことをさせているの。美来ちゃんが嫌じゃないなら私からは何も言わないけどさ」
「いやいや、させたことないから」
さすがの桃花ちゃんも引いた雰囲気になって僕のことをで見ている。裸エプロンはないけれど、裸にメイド服というのは旅行中に一度だけさせたことがある。
「智也さんはそういうことを言うタイプじゃないですよ。むしろ、私の方から自主的にしちゃいますね」
「……お兄ちゃん。昨日から薄々思っていたんだけど、美来ちゃんって変態なところがあるの?」
「やっと分かったか」
ただ、変態なところは僕に対してだけであってほしい。色々な意味で。
「人に傷つけたり、迷惑を掛けたりする変態は最低ですが、そうでなければ変態であることはかまわないかと。でも、今のところ……実際にそういったところを見せるのは智也さんだけですね」
「何だか深いね、美来ちゃんの変態論」
「美来の言っていることは間違っていないとは思うけど、真に受けなくていいからね、桃花ちゃん」
僕もたまに美来の変態ぶりに引くときがあるから。今の美来の言葉に感化されて、桃花ちゃんが仁実ちゃんに変なことをしてしまわないか心配だ。
「美来。今日の夕飯がオムライスだって聞いたら僕、凄くお腹が空いちゃったなぁ。早く食べたいなぁ」
「あらあら、智也さんったら。珍しいですね、そこまで言うなんて。それでは今日はいつも以上に腕によりを掛けて作りますからね!」
美来は張り切った表情を僕達に見せて、キッチンへと向かっていった。僕の催促が嬉しかったのか鼻歌まで歌っちゃって。
夕ご飯ができるまでの間、僕と桃花ちゃんはソファーに座ってゆっくりとすることに。
「桃花ちゃん、『夜桜Tricks』を観て、少しは考えがまとまったかな?」
「……ドキドキしちゃって、考えるどころじゃなかったよ」
「あははっ、そうか」
ほんわかとした雰囲気だけど、キスシーンが多かったりしてドキドキする場面が多い作品だ。キャラクターの可愛さや声優さんの演技によって、特に初見だとドキドキしっぱなしになっちゃうのかも。羽賀も初見のはずなのに、終始落ち着いていたな。
「でも、あの主人公の女の子達みたいな仲のいい恋人同士になりたいって思ったよ」
「なるほどね。目標を確認できたのは大きいんじゃないかな」
まあ、『夜桜Tricks』の2人はとても仲のいいカップルだから。実際にどうなるかはともかく、仲良くなりたいなって思うことがまずは大切なんじゃないかと思う。
「そういえば、桃花ちゃん。アルバムを見て仁実ちゃんのことを思い出していたけど、仁実ちゃんなら桃花ちゃんの気持ちに向き合ってくれるような気がするよ」
「……そうだといいな」
明るくて気さくで、桃花ちゃんともとても仲がいいから、その性格が変わっていなければ、桃花ちゃんと向き合ってくれるような気がするけれど。
ただ、それは友情の上で成り立っていたことで、そこに恋愛感情が介入すると一気に崩れてしまう可能性も否めない。きっと、桃花ちゃんもそれを恐れているんだと思う。
「でも、恋愛についてひとみんと話したことなんてなかったから、想像しただけでも恥ずかしいというか。女性同士で付き合うことに、ひとみんってどういう考えを持っているのか分からないし。『夜桜Tricks』の女の子みたいに積極的だったら嬉しいけど」
「そうだったら……いいよね」
昔のことを思い出すと、桃花ちゃんと仁実ちゃんが寄り添っていたこともたくさんあった。
「桃花ちゃんの話を聞くと、久しぶりに会っていきなり告白するよりも、まずは今の仁実ちゃんの気持ちを知るのがいいのかもしれないね」
「では、とりあえず……明日、私と一緒に仁実さんと会ってみるのはどうでしょう。今月中はお休みですから」
美来の声が聞こえたので振り返ってみると、そこにはエプロン姿の美来が。オムライスのいい匂いもするし、夕ご飯を作り終えたのかな。
「仁実ちゃんと会う、か……」
「ええ。私もいれば、色々と話しもしやすいんじゃないかと思いまして。智也さんは私の未来の旦那さんですし。それに、桃花さんが智也さんの家にひさしぶりに会いに来たのは事実ですからね」
「僕絡みが多いだろうけど、仁実ちゃんと話すネタは問題なさそうだね」
僕が誤認逮捕されたときに、心配して桃花ちゃんと連絡を取り合ったそうだし。
「桃花さん、仁実さんのお家の住所は分かっているんですよね」
「うん、分かってるよ」
「……では、明日……一緒に仁実さんの家に突撃しましょう。もしいなかったら、そのときに考えましょう」
お家に突撃か。そういえば、僕と10年ぶりに再会したときには、僕の家の前に制服姿の美来が待ってくれていたな。
「美来ちゃんが一緒なら心強いかも。でも、緊張する」
桃花ちゃん、今から体を震わせているぞ。笑みも消えちゃったし。事前に、仁実ちゃんに会いに行くと連絡した方がいいんじゃないかと言おうとしたけど、今の桃花ちゃんの様子を見ると、彼女自身のためにも連絡しない方が無難かも。
「桃花ちゃん、とりあえず落ち着こうか」
桃花ちゃんの頭を優しく撫でると、桃花ちゃんは僕の顔を見ながらはにかんだ。
「ひとみんの顔を頭に浮かべたら凄くドキドキしちゃった」
「それだけ仁実さんのことが好きだということですね」
「美来の言う通りだね。くれぐれも仁実ちゃんの迷惑にならないように気を付けるんだよ。あと、何かあったら僕や羽賀、有紗さんの誰でもいいから連絡してね」
「分かりました。じゃあ、夕ご飯のオムライスができましたので、冷めないうちに食べましょう」
僕達は美来の作ったオムライスを食べる。玉子のふんわり感も絶妙だし、チキンライスもとても美味しい。
桃花ちゃんもオムライスを食べているときは幸せそうな笑みを浮かべていた。今のような笑みを仁実ちゃんに見せられるように応援しよう。
随所にキスシーンがあったけれど、美来と有紗さんは「きゃああっ!」と黄色い声を上げ、羽賀は「ほぉ」と落ち着いた様子で観ていた。桃花ちゃんはたまに「ううっ」と悶えて顔を赤くしていた。
「恩田さん。焦らずにゆっくりと考えるといい」
「何かあったら相談してきてね」
と言って、羽賀と有紗さんは午後6時過ぎに僕らの家を後にした。
窓から外を眺めると、空が大分暗くなっていた。今週末のお休みももうすぐ終わっちゃうのか。
思い返すと、この週末は旅行のお土産を渡すために実家に帰って、桃花ちゃんとひさしぶりに再会して、それからは桃花ちゃんが持ってきてくれたアルバムやDVDを観てばっかりだったような気がする。今日もみんな『夜桜Tricks』を観ている中で、僕はアルバムを眺めていたからな。
「智也さん、桃花さん、ちょっと早いですが夕ご飯を作りますね。今日はオムライスを作りますので楽しみにしていてください」
「私、オムライス大好きなんだ! 楽しみだなぁ」
「ふふっ、普段以上に気合いが入っちゃいますね」
すると、美来はエプロンを身につけ、金色の髪をポニーテールの形でまとめる。彼女曰く、こうすることで気持ちが切り替わるとのこと。ただ、メイド服を着ているときはポニーテールにすることはあまりない。
「美来ちゃん、ポニーテールにすると印象が変わるね。ひとみんと同じ髪型だからかもしれないけれど、活発な感じがするよ」
「そうですか? ただ、考えてみると、漫画やアニメだとポニーテールのキャラクターは活発で気さくな方が多い気がしますね」
美来も僕に対しては活発な感じだと思うけどな。特に夜になると。
「智也さん、どうしたんですか? 私のことをじっと見て」
「エプロン姿がとても似合っているなと思って。あとポニーテールも」
「智也さんにそう言っていただけると嬉しいですね。智也さんと2人きりであれば裸エプロンでもいいんですが、料理をするときには大変ですね」
「お兄ちゃん、いくら将来の奥さんだからって美来ちゃんに何てことをさせているの。美来ちゃんが嫌じゃないなら私からは何も言わないけどさ」
「いやいや、させたことないから」
さすがの桃花ちゃんも引いた雰囲気になって僕のことをで見ている。裸エプロンはないけれど、裸にメイド服というのは旅行中に一度だけさせたことがある。
「智也さんはそういうことを言うタイプじゃないですよ。むしろ、私の方から自主的にしちゃいますね」
「……お兄ちゃん。昨日から薄々思っていたんだけど、美来ちゃんって変態なところがあるの?」
「やっと分かったか」
ただ、変態なところは僕に対してだけであってほしい。色々な意味で。
「人に傷つけたり、迷惑を掛けたりする変態は最低ですが、そうでなければ変態であることはかまわないかと。でも、今のところ……実際にそういったところを見せるのは智也さんだけですね」
「何だか深いね、美来ちゃんの変態論」
「美来の言っていることは間違っていないとは思うけど、真に受けなくていいからね、桃花ちゃん」
僕もたまに美来の変態ぶりに引くときがあるから。今の美来の言葉に感化されて、桃花ちゃんが仁実ちゃんに変なことをしてしまわないか心配だ。
「美来。今日の夕飯がオムライスだって聞いたら僕、凄くお腹が空いちゃったなぁ。早く食べたいなぁ」
「あらあら、智也さんったら。珍しいですね、そこまで言うなんて。それでは今日はいつも以上に腕によりを掛けて作りますからね!」
美来は張り切った表情を僕達に見せて、キッチンへと向かっていった。僕の催促が嬉しかったのか鼻歌まで歌っちゃって。
夕ご飯ができるまでの間、僕と桃花ちゃんはソファーに座ってゆっくりとすることに。
「桃花ちゃん、『夜桜Tricks』を観て、少しは考えがまとまったかな?」
「……ドキドキしちゃって、考えるどころじゃなかったよ」
「あははっ、そうか」
ほんわかとした雰囲気だけど、キスシーンが多かったりしてドキドキする場面が多い作品だ。キャラクターの可愛さや声優さんの演技によって、特に初見だとドキドキしっぱなしになっちゃうのかも。羽賀も初見のはずなのに、終始落ち着いていたな。
「でも、あの主人公の女の子達みたいな仲のいい恋人同士になりたいって思ったよ」
「なるほどね。目標を確認できたのは大きいんじゃないかな」
まあ、『夜桜Tricks』の2人はとても仲のいいカップルだから。実際にどうなるかはともかく、仲良くなりたいなって思うことがまずは大切なんじゃないかと思う。
「そういえば、桃花ちゃん。アルバムを見て仁実ちゃんのことを思い出していたけど、仁実ちゃんなら桃花ちゃんの気持ちに向き合ってくれるような気がするよ」
「……そうだといいな」
明るくて気さくで、桃花ちゃんともとても仲がいいから、その性格が変わっていなければ、桃花ちゃんと向き合ってくれるような気がするけれど。
ただ、それは友情の上で成り立っていたことで、そこに恋愛感情が介入すると一気に崩れてしまう可能性も否めない。きっと、桃花ちゃんもそれを恐れているんだと思う。
「でも、恋愛についてひとみんと話したことなんてなかったから、想像しただけでも恥ずかしいというか。女性同士で付き合うことに、ひとみんってどういう考えを持っているのか分からないし。『夜桜Tricks』の女の子みたいに積極的だったら嬉しいけど」
「そうだったら……いいよね」
昔のことを思い出すと、桃花ちゃんと仁実ちゃんが寄り添っていたこともたくさんあった。
「桃花ちゃんの話を聞くと、久しぶりに会っていきなり告白するよりも、まずは今の仁実ちゃんの気持ちを知るのがいいのかもしれないね」
「では、とりあえず……明日、私と一緒に仁実さんと会ってみるのはどうでしょう。今月中はお休みですから」
美来の声が聞こえたので振り返ってみると、そこにはエプロン姿の美来が。オムライスのいい匂いもするし、夕ご飯を作り終えたのかな。
「仁実ちゃんと会う、か……」
「ええ。私もいれば、色々と話しもしやすいんじゃないかと思いまして。智也さんは私の未来の旦那さんですし。それに、桃花さんが智也さんの家にひさしぶりに会いに来たのは事実ですからね」
「僕絡みが多いだろうけど、仁実ちゃんと話すネタは問題なさそうだね」
僕が誤認逮捕されたときに、心配して桃花ちゃんと連絡を取り合ったそうだし。
「桃花さん、仁実さんのお家の住所は分かっているんですよね」
「うん、分かってるよ」
「……では、明日……一緒に仁実さんの家に突撃しましょう。もしいなかったら、そのときに考えましょう」
お家に突撃か。そういえば、僕と10年ぶりに再会したときには、僕の家の前に制服姿の美来が待ってくれていたな。
「美来ちゃんが一緒なら心強いかも。でも、緊張する」
桃花ちゃん、今から体を震わせているぞ。笑みも消えちゃったし。事前に、仁実ちゃんに会いに行くと連絡した方がいいんじゃないかと言おうとしたけど、今の桃花ちゃんの様子を見ると、彼女自身のためにも連絡しない方が無難かも。
「桃花ちゃん、とりあえず落ち着こうか」
桃花ちゃんの頭を優しく撫でると、桃花ちゃんは僕の顔を見ながらはにかんだ。
「ひとみんの顔を頭に浮かべたら凄くドキドキしちゃった」
「それだけ仁実さんのことが好きだということですね」
「美来の言う通りだね。くれぐれも仁実ちゃんの迷惑にならないように気を付けるんだよ。あと、何かあったら僕や羽賀、有紗さんの誰でもいいから連絡してね」
「分かりました。じゃあ、夕ご飯のオムライスができましたので、冷めないうちに食べましょう」
僕達は美来の作ったオムライスを食べる。玉子のふんわり感も絶妙だし、チキンライスもとても美味しい。
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