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特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-
第25話『有頂展望台』
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頂上に到着すると、駐車場よりも多くの人がいた。レストランや甘味処があり、今がお昼時だからかな。そういえば、美来の話ではここに抹茶アイスがあるんだっけ。
「結構賑わっていますね」
「そうだね。もう正午は過ぎているし、そこにレストランもあるから、後で食べることにしようか」
「いいですね! それで、デザートに抹茶アイスを食べることにしましょう!」
「うん、そうしよう」
抹茶アイスを食べることを考えて、お昼ご飯はいつもよりもちょっと控え目にしておこうかな。
「それにしても、ここは涼しいですね」
「ここは標高1300m以上だからね。1000mで6℃くらい涼しくなるらしいから、1300mだと8℃くらいかな。羽崎の最高気温は33℃の予想だから、ここはだいたい25℃くらいってところか」
「なるほど。それを聞くととても涼しく感じますね。この服でちょうどいいです」
確かに、僕もワイシャツの袖を肘まで捲っているけど、とても快適だ。平地はとても暑く、鍾乳洞は寒かったのでここがとてもいい気候に思える。
「智也さん、展望台に行きましょう」
「うん」
僕は美来に手を引かれる形で展望台へと向かう。お昼時でレストランに行く人が多いのか、人は意外と少ない。
「いい景色ですね」
「そうだね。絶景だ」
ロープウェイに乗っているときから見えていた景色だけど、やはり上から見る景色はいいな。天気が快晴で本当に良かった。僕はスマートフォンとデジカメでこの景色の写真を撮る。
「ふふっ、写真を撮っている智也さんの写真を撮ることができました」
「何ていう写真を撮っているんだか」
僕にはない発想だな。撮影者を撮影するって。美来の前で何かを撮影することはあまりなかったから、レアだと思って撮ったのかもしれない。
「でも、この景色もとても素敵なので」
美来はスマートフォンで写真を撮った。そんな彼女のことをスマートフォンで撮影した。
「あっ、確かにこれはこれでいいかもしれない」
特に腋がチラッと見えていることや豊満な胸のラインが分かるところが。もちろん、美来の横顔も可愛らしい。
「美来、そのまま海の方を見ていてくれるかな」
「えっ? は、はい……」
僕は美来のことを後ろからそっと抱きしめた。
「智也さん……」
「展望台ではこうやって美来のことを後ろから抱きしめながら、ぼおっ……と、景色を眺めたいって思っていたんだ」
「そうだったんですか。後ろから何かされるとは思ってはいましたけど。おっぱいを鷲掴みされると思ってかまえていたんですよ?」
「ホテルの部屋のバルコニーだったら分からないけど、周りに人がいるところではやらないよ」
「なるほどです。でも、智也さんに抱きしめられながら見る景色は、一段と素敵に見えるような気がします」
そうして、美来はスマートフォンを持った右手を伸ばすと、僕が美来を抱きしめている今の光景を写真に収めた。
「素敵な思い出がまた一つ残りました。待ち受けにいいかもしれません」
「……その写真、後で送ってくれるかな。持っておきたいから」
「分かりました」
それにしても、涼しい中で美来のこと抱きしめるととても心地がいい。美来の体から優しい温かさが伝わってきて。
「いいですね。背中やお尻から智也さんの温もりが感じられるのは。後ろから抱きしめられることも人気である理由が分かる気がします。安心するというか。包み込まれているような気がします」
「なるほどね」
向き合った状態で抱きしめると文字通りの感覚だけれど、美来がこちらに背を向けた状態だと包み込んでいるように思えてくる。
「ねえ、智也さん。こういうところって来たことがあるんですか?」
「うん、何度か旅行で来たことはあるよ。何度も親から笑い話で……僕が小学校に入学する前、今くらいの季節に家族で旅行に行ったとき、途中で富士山に寄ったんだよ」
幼い頃の話であり、おぼろげな記憶なので、母親の話してくれた内容が事実であるかどうかは分からない。ただ、そういったところへ旅行に行ったなぁ、ということだけははっきりと覚えている。
「えっ、富士山ってあの富士山ですよね。途中で立ち寄るみたいな感覚で行けるんですか?」
「もちろん、頂上じゃないよ。でも、五合目までは車で行くことができるんだ。頂上じゃなくてもせっかくだからって、ここみたいに標高の高いところからの景色を見ようって。その日も今日みたいに快晴でね」
「なるほど、途中までは車で行けるんですね。天気が良かったら、こういった綺麗な景色も見られそうですよね。標高が高いなら涼しいですし」
「うん。標高も2400mくらいあるところだから……涼しいというよりも寒かったんだ。地上からだと15℃くらい違うのかな。半袖短パンだった僕は、親からせめても長袖のTシャツを着なさいって言われたんだけど、太陽に近づいているんだから涼しくなっているわけがない、という一点張りで長袖のシャツを着ようとしなかったんだ」
「それで……どうなったんですか?」
もう結果が予想できているのか、美来は僕の方に振り返り、ニヤニヤとしながらそう訊いてくる。
「もちろん、僕はその意志を貫いて半袖短パン姿で2400mのところに立ったよ。15℃前後の寒さだったのに、僕は暑いなぁって嘘であることがバレまくりの演技をやり続けて……結局、体が冷えちゃって翌日、旅先で見事に風邪を引いた。でも、実際は車で富士山の麓に下ったくらいからずっと鼻水は垂れ流しだったみたい。そのせいで、鼻と口の間の部分がただれたとか。1人だけ半袖短パンで強がっている僕が可愛かったって、母親が何度もそのことを話したよ。あっ、堪えきれなかったら笑ってもいい――」
「あははっ!」
両手で口を押さえながら必死に堪えていたので、僕が許可を出しかけたところで美来は大爆笑。もう、周りの目なんて気にせずに大声で笑っているよ。声楽部に所属しているだけあって、美来の笑い声がよく響く。
周りの人は最初こそ驚いていたけど、美来が可愛いからなのか、それとも笑い声よく響いているからなのか、程なくして驚いた人の多くが笑顔に変わっていった。泣くことも連鎖すれば、笑顔も連鎖すると聞いたことはあったけれど、それは本当のようだ。
というか、笑われている僕にとってはちょっと恥ずかしい。今の話は母親曰くとても笑えるエピソードだと豪語していたけど、どうやらそれは本当だったようだ。15年くらい信じていなかったけど。
「はあっ、はあっ……今年一番に笑った気がします」
「そんなに面白いかなぁ」
バカだなとしか思えないんだけどね。そういう意味はクスッと笑える程度で、今の美来のように笑いすぎて涙が出るほど面白くはないだろう。
「当時の智也さんに会ってみたかったですね。ちなみに、当時の写真はあるんですか?」
「実家にはあったと思うよ。お土産を買ってそれを渡すために一度実家に帰ろうと思うから、そのときに見てみようか」
「はいっ!」
旅行後の楽しみが一つできたのか、美来はとても嬉しそうだった。
アルバムを見せるっていう約束をしたけれど、特に小さい頃の写真は僕にとって恥ずかしい写真が残っている可能性が。今度、こっそりと父さんに連絡して、どんな写真があるのか確認してもらおうかな。
「たくさん笑ったらお腹が空いてきちゃいました。そろそろお昼ご飯を食べたいなと思っているのですが、どうでしょう?」
「そうだね。僕にとってはちょっと恥ずかしい話をしたから、何か食べて気を紛らわしたい気分だったんだ。もちろん、お腹も空いているけど」
「可愛いお話だと思いましたよ、智也さん。高校生以降の智也さんしか知らないので想像できない感じでしたが」
そうだ、美来は僕が高校入学した後くらいからの8年間のことはある程度知っているんだよな。そのことを時々忘れてしまう。
「もちろん、今はかっこいいですけどね」
「美来がそう言ってくれて良かったよ。昔話をした甲斐があった」
「これからもどんどん聞かせてくださいね。じゃあ、行きましょうか。お昼ご飯にアイスです!」
「美味しいからって、食べ過ぎてお腹を壊さないように気を付けようね」
こういうところのレストランはきっとバイキング形式じゃないと思うから、ついつい食べ過ぎてしまうことはないと思うけど。健康でなければ、美味しいものも美味しいと思えなくなるから。
体調のことについてすぐに考えたり、美来に色々と言ってしまったりするのは歳のせいなのだろうか。それとも、16歳の女子高生と一緒にいるからだろうか。きっと、美来がいるからだろう。絶対にそうだ。そんなことを思いながら、美来と一緒にレストランへと向かうのであった。
「結構賑わっていますね」
「そうだね。もう正午は過ぎているし、そこにレストランもあるから、後で食べることにしようか」
「いいですね! それで、デザートに抹茶アイスを食べることにしましょう!」
「うん、そうしよう」
抹茶アイスを食べることを考えて、お昼ご飯はいつもよりもちょっと控え目にしておこうかな。
「それにしても、ここは涼しいですね」
「ここは標高1300m以上だからね。1000mで6℃くらい涼しくなるらしいから、1300mだと8℃くらいかな。羽崎の最高気温は33℃の予想だから、ここはだいたい25℃くらいってところか」
「なるほど。それを聞くととても涼しく感じますね。この服でちょうどいいです」
確かに、僕もワイシャツの袖を肘まで捲っているけど、とても快適だ。平地はとても暑く、鍾乳洞は寒かったのでここがとてもいい気候に思える。
「智也さん、展望台に行きましょう」
「うん」
僕は美来に手を引かれる形で展望台へと向かう。お昼時でレストランに行く人が多いのか、人は意外と少ない。
「いい景色ですね」
「そうだね。絶景だ」
ロープウェイに乗っているときから見えていた景色だけど、やはり上から見る景色はいいな。天気が快晴で本当に良かった。僕はスマートフォンとデジカメでこの景色の写真を撮る。
「ふふっ、写真を撮っている智也さんの写真を撮ることができました」
「何ていう写真を撮っているんだか」
僕にはない発想だな。撮影者を撮影するって。美来の前で何かを撮影することはあまりなかったから、レアだと思って撮ったのかもしれない。
「でも、この景色もとても素敵なので」
美来はスマートフォンで写真を撮った。そんな彼女のことをスマートフォンで撮影した。
「あっ、確かにこれはこれでいいかもしれない」
特に腋がチラッと見えていることや豊満な胸のラインが分かるところが。もちろん、美来の横顔も可愛らしい。
「美来、そのまま海の方を見ていてくれるかな」
「えっ? は、はい……」
僕は美来のことを後ろからそっと抱きしめた。
「智也さん……」
「展望台ではこうやって美来のことを後ろから抱きしめながら、ぼおっ……と、景色を眺めたいって思っていたんだ」
「そうだったんですか。後ろから何かされるとは思ってはいましたけど。おっぱいを鷲掴みされると思ってかまえていたんですよ?」
「ホテルの部屋のバルコニーだったら分からないけど、周りに人がいるところではやらないよ」
「なるほどです。でも、智也さんに抱きしめられながら見る景色は、一段と素敵に見えるような気がします」
そうして、美来はスマートフォンを持った右手を伸ばすと、僕が美来を抱きしめている今の光景を写真に収めた。
「素敵な思い出がまた一つ残りました。待ち受けにいいかもしれません」
「……その写真、後で送ってくれるかな。持っておきたいから」
「分かりました」
それにしても、涼しい中で美来のこと抱きしめるととても心地がいい。美来の体から優しい温かさが伝わってきて。
「いいですね。背中やお尻から智也さんの温もりが感じられるのは。後ろから抱きしめられることも人気である理由が分かる気がします。安心するというか。包み込まれているような気がします」
「なるほどね」
向き合った状態で抱きしめると文字通りの感覚だけれど、美来がこちらに背を向けた状態だと包み込んでいるように思えてくる。
「ねえ、智也さん。こういうところって来たことがあるんですか?」
「うん、何度か旅行で来たことはあるよ。何度も親から笑い話で……僕が小学校に入学する前、今くらいの季節に家族で旅行に行ったとき、途中で富士山に寄ったんだよ」
幼い頃の話であり、おぼろげな記憶なので、母親の話してくれた内容が事実であるかどうかは分からない。ただ、そういったところへ旅行に行ったなぁ、ということだけははっきりと覚えている。
「えっ、富士山ってあの富士山ですよね。途中で立ち寄るみたいな感覚で行けるんですか?」
「もちろん、頂上じゃないよ。でも、五合目までは車で行くことができるんだ。頂上じゃなくてもせっかくだからって、ここみたいに標高の高いところからの景色を見ようって。その日も今日みたいに快晴でね」
「なるほど、途中までは車で行けるんですね。天気が良かったら、こういった綺麗な景色も見られそうですよね。標高が高いなら涼しいですし」
「うん。標高も2400mくらいあるところだから……涼しいというよりも寒かったんだ。地上からだと15℃くらい違うのかな。半袖短パンだった僕は、親からせめても長袖のTシャツを着なさいって言われたんだけど、太陽に近づいているんだから涼しくなっているわけがない、という一点張りで長袖のシャツを着ようとしなかったんだ」
「それで……どうなったんですか?」
もう結果が予想できているのか、美来は僕の方に振り返り、ニヤニヤとしながらそう訊いてくる。
「もちろん、僕はその意志を貫いて半袖短パン姿で2400mのところに立ったよ。15℃前後の寒さだったのに、僕は暑いなぁって嘘であることがバレまくりの演技をやり続けて……結局、体が冷えちゃって翌日、旅先で見事に風邪を引いた。でも、実際は車で富士山の麓に下ったくらいからずっと鼻水は垂れ流しだったみたい。そのせいで、鼻と口の間の部分がただれたとか。1人だけ半袖短パンで強がっている僕が可愛かったって、母親が何度もそのことを話したよ。あっ、堪えきれなかったら笑ってもいい――」
「あははっ!」
両手で口を押さえながら必死に堪えていたので、僕が許可を出しかけたところで美来は大爆笑。もう、周りの目なんて気にせずに大声で笑っているよ。声楽部に所属しているだけあって、美来の笑い声がよく響く。
周りの人は最初こそ驚いていたけど、美来が可愛いからなのか、それとも笑い声よく響いているからなのか、程なくして驚いた人の多くが笑顔に変わっていった。泣くことも連鎖すれば、笑顔も連鎖すると聞いたことはあったけれど、それは本当のようだ。
というか、笑われている僕にとってはちょっと恥ずかしい。今の話は母親曰くとても笑えるエピソードだと豪語していたけど、どうやらそれは本当だったようだ。15年くらい信じていなかったけど。
「はあっ、はあっ……今年一番に笑った気がします」
「そんなに面白いかなぁ」
バカだなとしか思えないんだけどね。そういう意味はクスッと笑える程度で、今の美来のように笑いすぎて涙が出るほど面白くはないだろう。
「当時の智也さんに会ってみたかったですね。ちなみに、当時の写真はあるんですか?」
「実家にはあったと思うよ。お土産を買ってそれを渡すために一度実家に帰ろうと思うから、そのときに見てみようか」
「はいっ!」
旅行後の楽しみが一つできたのか、美来はとても嬉しそうだった。
アルバムを見せるっていう約束をしたけれど、特に小さい頃の写真は僕にとって恥ずかしい写真が残っている可能性が。今度、こっそりと父さんに連絡して、どんな写真があるのか確認してもらおうかな。
「たくさん笑ったらお腹が空いてきちゃいました。そろそろお昼ご飯を食べたいなと思っているのですが、どうでしょう?」
「そうだね。僕にとってはちょっと恥ずかしい話をしたから、何か食べて気を紛らわしたい気分だったんだ。もちろん、お腹も空いているけど」
「可愛いお話だと思いましたよ、智也さん。高校生以降の智也さんしか知らないので想像できない感じでしたが」
そうだ、美来は僕が高校入学した後くらいからの8年間のことはある程度知っているんだよな。そのことを時々忘れてしまう。
「もちろん、今はかっこいいですけどね」
「美来がそう言ってくれて良かったよ。昔話をした甲斐があった」
「これからもどんどん聞かせてくださいね。じゃあ、行きましょうか。お昼ご飯にアイスです!」
「美味しいからって、食べ過ぎてお腹を壊さないように気を付けようね」
こういうところのレストランはきっとバイキング形式じゃないと思うから、ついつい食べ過ぎてしまうことはないと思うけど。健康でなければ、美味しいものも美味しいと思えなくなるから。
体調のことについてすぐに考えたり、美来に色々と言ってしまったりするのは歳のせいなのだろうか。それとも、16歳の女子高生と一緒にいるからだろうか。きっと、美来がいるからだろう。絶対にそうだ。そんなことを思いながら、美来と一緒にレストランへと向かうのであった。
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