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特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-
第16話『お言葉』
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「でも、2人なら幸せになれるんじゃないかな。私はそう思っているよ」
水代さんからのその言葉に、美来は嬉しそうな表情を浮かべる。
「本当ですか!」
「そう思うってだけで、私が2人のことを幸せな方へ持っていく力はないよ。全てはあなた達次第だからね」
「分かりました!」
さすがに縁結びの幽霊さんから言われることだけあって、彼女からのお言葉を美来は素直に聞いている。
でも、水代さんの言うとおり、全ては美来と僕次第だよね。ただ、今回の旅行で水代さんに会えて良かったと思う程度にしたほうがいいだろうな。
「これは私の勘だけど、よほど相手のことが嫌にならない限りは、絶対に一緒に居続けた方がいいわ」
「なるほどです。まあ、私が智也さんを嫌になることなんてありませんけどね」
「僕もないかな」
「あと……2人とも、周りの女性に気を付けた方がいいかも」
何だか、水代さんが占い師のように思えてきた。もしかして、幽霊になると僕達の未来を見られるのかな。
「智也さんは分かりますが、私もですか?」
「そうね」
「……女子高に転校したのでその影響でしょうかね。天羽女子の生徒さんを悪く言いたくはないですが」
なるほど、女子校に通っているから、美来も女性に気を付けろっていうことなのかな。
「へえ、天羽女子なんだ。23年前も頭のいい有名な女子校だったんだよ」
「そうだったんですか」
僕は3年くらい前に陸上インターハイで凄い選手がいるニュースで初めて天羽女子の名前を知った。確か、その生徒の名前は原田絢さんだったような。
「……あっ」
そういえば、原田って……プール横で遊具の貸し出しを担当していた女性のスタッフさんの名前もそうだったな。確か、髪は金色。3年前のニュースに出ていた女子生徒の髪は……金色。もしかしたら、例の原田絢さんがあのスタッフさんだったのかもしれない。
「でも、智也君の方が気を付けないといけないからね。あなた、意外と顔もいいんだから」
「……覚えておきます」
意外と顔がいいというのが気になるけど。
でも、思い返せば……水着に着替えて美来を待っているとき、何人かの女性が僕のことを見ていたっけ。そこに顔の良さが関係しているのかは分からないけど。
「智也さん、会社では気を付けてくださいね。智也さん、まだ2年目ですから、年上の方から言い寄られるかもしれません。年上だからって智也さんにふ、不埒な命令を……」
「そういうことはないと思うけど。もちろん気を付けるね」
今は別の立場だけど、有紗さんと同じプロジェクトに関わっているし、会社で何かあったときには、まずは有紗さんに相談するか。
「まあ、私がこういうことを言うのは、一つのことをきっかけに勝手に絶望して、私のように……身を投げてほしくないからね」
「……そうですか」
自分のようにか。そういう風に言えるなんて、水代さんは強い女性だと思う。ただ、それも、23年経ってようやく言えるようになったのかもしれない。
「といっても、あなた達には私が何も言わなくても大丈夫だと思うけどね。私のことを助けてくれた4組のカップルによく似ているから。この3年間の中で、その人達に似ていると思ったわ」
水代さんを救ったのは4組のカップルだったのか。そして、今の水代さんの話からして、彼女が助けられたのは3年前のことなんだな。
僕の記憶が正しければ、3年前、このホテルで長年続いていた脅迫に終止符を打たれた。その際、当時宿泊していた複数の客が解決に協力した。その客達が彼女の話す4組のカップルの可能性が高そうだ。
「……そうですか。ちなみに、その4組のカップルさんは今……幸せになっているのですか? もちろん、参考にですが」
「……色々なことがあったけど、4組とも幸せになっているように見えるわ」
水代さんは穏やかな笑みを浮かべながらそう言う。
3年も経てば色々とあるだろうけど、今の水代さんの顔を見れば4組とも幸せであるのは確かだろう。
「そうですか。私達もそうなれるように頑張りましょうね」
「そうだね」
美来と再会してから今日に至るまでの3ヶ月くらいの間に、色々なことがあった。僕は誤認逮捕まで経験している。それらの経験があったから分かっているけど、僕と美来の2人だけではなく、周りの支えもあってこそ今の僕らがあるんだよな。
「まあ、誤認逮捕を乗り越えたあなたなら大丈夫でしょ」
「……知っていたんですか」
「当時、宿泊してたお客さんがそのニュースを観ていたから、顔は覚えてた。だから、今日……ここにいるあなた達を見つけたとき、2人の様子を見守らせてもらおうかなって思ったんだよ」
「……なるほど」
23年前に亡くなった女子高生に、2ヶ月ほど前の僕の誤認逮捕のことを知られていたなんて。ただ、知ったきっかけがテレビというのは何か微笑ましい。この旅行で最も印象深い思い出の一つになりそうだ。
「そうしたら、海でイチャイチャ、レストランでイチャイチャ、お風呂でイチャイチャ、果てにはベッドの上で激しくイチャイチャするんだから。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいだったよ」
恥ずかしくなるなら見なければいいのに。そう言おうとしたけど思い留めた。
「ちなみに、2人はこのホテルにどのくらいいるの?」
「金曜日にチェックアウトですよね、智也さん」
「そうだね」
「なるほど、明日の夜くらいにまたお邪魔するかも。じゃあ、ケガとか喧嘩とかをしないように気を付けて、楽しい旅行にしてね」
「分かりました。ありがとうございます。あの、握手ってできますか? 縁結びの幽霊さんに会いたいと思っていたので」
美来の念願が叶ったわけだから、握手をしたいって思うか。
「ふふっ、何だか有名人みたいな感じがして嬉しいな」
水代さんは一瞬にして、美来の横に立って、彼女に握手をする。
「うわあっ、冷たいですね」
「何で冷たいんだろうね。死んでいるからかな? この部屋、冷房が結構効いているっていうのもあるかもしれないけど。あなたの方はとても温かいわね。智也君とたくさんイチャイチャしたから?」
「……思い出したら、また体が熱くなってきました。抱きしめてもいいですか?」
「しょうがないわね」
美来、目の前にいる女性が可愛らしい女子高生でも幽霊は幽霊。抱きしめてもいいか、ってよく訊けるなぁ。それだけ、彼女が冷たくて気持ちが良かったのかな。
僕がそんなことを考えていると、美来は水代さんと抱きしめ合う。
「冷たくて気持ちがいいですね」
「美来ちゃんはとても温かいわね。おまけに胸も大きいし」
「きゃあっ」
水代さんは美来の胸を凝視しているぞ。自分の胸がそこまで大きくないから、憧れを抱いてしまうのだろうか。
「ふふっ、智也君が夢中になるのも分かるな」
「……もぅ、えっちな幽霊さんですね」
僕と美来が色々としているのを見ていたぐらいだもんな。
「これ以上凝視すると智也君に悪いわね」
水代さんは美来との抱擁を解く。
「智也君にも抱きしめてあげようか?」
「……握手だけでいいですよ」
「もう、智也君を抱きしめてもイチャイチャすることまで持っていかないわよ。まあいいよ、じゃあ……握手ね」
水代さんが再び僕の横に移動し、握手をすると……やっぱり冷たいな。美来と握手をし、抱きしめ合った抱擁した直後だからさっきよりはまだマシだけど。
「それじゃ、また。楽しい旅行にしてね」
そう言うと、水代さんはすっと姿を消していった。姿が見えなくなっただけで、ここにいるかもしれないけど。
それでも、ようやくいつもの時間に戻ったような感じだ。
「まさか、本当に会うことができたなんて!」
「良かったね。手が冷たかったこと以外は幽霊らしくない幽霊だったけど」
「えっちな幽霊さんでしたよね」
「……確かに。それにしても、何だか眠気が覚めちゃったな。あと、酔いも醒めた」
「ふふっ、そうですか。私も眠気が飛んじゃいました。せっかくですからアニメでも観ます?」
「そうだね」
テレビを点けてみると、ちょうど、起きていれば見ようと言っていたアニメのエンディングテーマが流れているところだった。
「終わっちゃいましたね」
「そうだね」
「……もう寝ましょうか」
「うん。このベッド……ふかふかだからすぐに眠れるかも。いい夢が見られそうだ」
「そうですね」
僕は美来と寄り添って眠ることに。ベッドが気持ち良くて、お酒の酔いがまだ残っているからか、程なくして眠りにつくのであった。
水代さんからのその言葉に、美来は嬉しそうな表情を浮かべる。
「本当ですか!」
「そう思うってだけで、私が2人のことを幸せな方へ持っていく力はないよ。全てはあなた達次第だからね」
「分かりました!」
さすがに縁結びの幽霊さんから言われることだけあって、彼女からのお言葉を美来は素直に聞いている。
でも、水代さんの言うとおり、全ては美来と僕次第だよね。ただ、今回の旅行で水代さんに会えて良かったと思う程度にしたほうがいいだろうな。
「これは私の勘だけど、よほど相手のことが嫌にならない限りは、絶対に一緒に居続けた方がいいわ」
「なるほどです。まあ、私が智也さんを嫌になることなんてありませんけどね」
「僕もないかな」
「あと……2人とも、周りの女性に気を付けた方がいいかも」
何だか、水代さんが占い師のように思えてきた。もしかして、幽霊になると僕達の未来を見られるのかな。
「智也さんは分かりますが、私もですか?」
「そうね」
「……女子高に転校したのでその影響でしょうかね。天羽女子の生徒さんを悪く言いたくはないですが」
なるほど、女子校に通っているから、美来も女性に気を付けろっていうことなのかな。
「へえ、天羽女子なんだ。23年前も頭のいい有名な女子校だったんだよ」
「そうだったんですか」
僕は3年くらい前に陸上インターハイで凄い選手がいるニュースで初めて天羽女子の名前を知った。確か、その生徒の名前は原田絢さんだったような。
「……あっ」
そういえば、原田って……プール横で遊具の貸し出しを担当していた女性のスタッフさんの名前もそうだったな。確か、髪は金色。3年前のニュースに出ていた女子生徒の髪は……金色。もしかしたら、例の原田絢さんがあのスタッフさんだったのかもしれない。
「でも、智也君の方が気を付けないといけないからね。あなた、意外と顔もいいんだから」
「……覚えておきます」
意外と顔がいいというのが気になるけど。
でも、思い返せば……水着に着替えて美来を待っているとき、何人かの女性が僕のことを見ていたっけ。そこに顔の良さが関係しているのかは分からないけど。
「智也さん、会社では気を付けてくださいね。智也さん、まだ2年目ですから、年上の方から言い寄られるかもしれません。年上だからって智也さんにふ、不埒な命令を……」
「そういうことはないと思うけど。もちろん気を付けるね」
今は別の立場だけど、有紗さんと同じプロジェクトに関わっているし、会社で何かあったときには、まずは有紗さんに相談するか。
「まあ、私がこういうことを言うのは、一つのことをきっかけに勝手に絶望して、私のように……身を投げてほしくないからね」
「……そうですか」
自分のようにか。そういう風に言えるなんて、水代さんは強い女性だと思う。ただ、それも、23年経ってようやく言えるようになったのかもしれない。
「といっても、あなた達には私が何も言わなくても大丈夫だと思うけどね。私のことを助けてくれた4組のカップルによく似ているから。この3年間の中で、その人達に似ていると思ったわ」
水代さんを救ったのは4組のカップルだったのか。そして、今の水代さんの話からして、彼女が助けられたのは3年前のことなんだな。
僕の記憶が正しければ、3年前、このホテルで長年続いていた脅迫に終止符を打たれた。その際、当時宿泊していた複数の客が解決に協力した。その客達が彼女の話す4組のカップルの可能性が高そうだ。
「……そうですか。ちなみに、その4組のカップルさんは今……幸せになっているのですか? もちろん、参考にですが」
「……色々なことがあったけど、4組とも幸せになっているように見えるわ」
水代さんは穏やかな笑みを浮かべながらそう言う。
3年も経てば色々とあるだろうけど、今の水代さんの顔を見れば4組とも幸せであるのは確かだろう。
「そうですか。私達もそうなれるように頑張りましょうね」
「そうだね」
美来と再会してから今日に至るまでの3ヶ月くらいの間に、色々なことがあった。僕は誤認逮捕まで経験している。それらの経験があったから分かっているけど、僕と美来の2人だけではなく、周りの支えもあってこそ今の僕らがあるんだよな。
「まあ、誤認逮捕を乗り越えたあなたなら大丈夫でしょ」
「……知っていたんですか」
「当時、宿泊してたお客さんがそのニュースを観ていたから、顔は覚えてた。だから、今日……ここにいるあなた達を見つけたとき、2人の様子を見守らせてもらおうかなって思ったんだよ」
「……なるほど」
23年前に亡くなった女子高生に、2ヶ月ほど前の僕の誤認逮捕のことを知られていたなんて。ただ、知ったきっかけがテレビというのは何か微笑ましい。この旅行で最も印象深い思い出の一つになりそうだ。
「そうしたら、海でイチャイチャ、レストランでイチャイチャ、お風呂でイチャイチャ、果てにはベッドの上で激しくイチャイチャするんだから。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいだったよ」
恥ずかしくなるなら見なければいいのに。そう言おうとしたけど思い留めた。
「ちなみに、2人はこのホテルにどのくらいいるの?」
「金曜日にチェックアウトですよね、智也さん」
「そうだね」
「なるほど、明日の夜くらいにまたお邪魔するかも。じゃあ、ケガとか喧嘩とかをしないように気を付けて、楽しい旅行にしてね」
「分かりました。ありがとうございます。あの、握手ってできますか? 縁結びの幽霊さんに会いたいと思っていたので」
美来の念願が叶ったわけだから、握手をしたいって思うか。
「ふふっ、何だか有名人みたいな感じがして嬉しいな」
水代さんは一瞬にして、美来の横に立って、彼女に握手をする。
「うわあっ、冷たいですね」
「何で冷たいんだろうね。死んでいるからかな? この部屋、冷房が結構効いているっていうのもあるかもしれないけど。あなたの方はとても温かいわね。智也君とたくさんイチャイチャしたから?」
「……思い出したら、また体が熱くなってきました。抱きしめてもいいですか?」
「しょうがないわね」
美来、目の前にいる女性が可愛らしい女子高生でも幽霊は幽霊。抱きしめてもいいか、ってよく訊けるなぁ。それだけ、彼女が冷たくて気持ちが良かったのかな。
僕がそんなことを考えていると、美来は水代さんと抱きしめ合う。
「冷たくて気持ちがいいですね」
「美来ちゃんはとても温かいわね。おまけに胸も大きいし」
「きゃあっ」
水代さんは美来の胸を凝視しているぞ。自分の胸がそこまで大きくないから、憧れを抱いてしまうのだろうか。
「ふふっ、智也君が夢中になるのも分かるな」
「……もぅ、えっちな幽霊さんですね」
僕と美来が色々としているのを見ていたぐらいだもんな。
「これ以上凝視すると智也君に悪いわね」
水代さんは美来との抱擁を解く。
「智也君にも抱きしめてあげようか?」
「……握手だけでいいですよ」
「もう、智也君を抱きしめてもイチャイチャすることまで持っていかないわよ。まあいいよ、じゃあ……握手ね」
水代さんが再び僕の横に移動し、握手をすると……やっぱり冷たいな。美来と握手をし、抱きしめ合った抱擁した直後だからさっきよりはまだマシだけど。
「それじゃ、また。楽しい旅行にしてね」
そう言うと、水代さんはすっと姿を消していった。姿が見えなくなっただけで、ここにいるかもしれないけど。
それでも、ようやくいつもの時間に戻ったような感じだ。
「まさか、本当に会うことができたなんて!」
「良かったね。手が冷たかったこと以外は幽霊らしくない幽霊だったけど」
「えっちな幽霊さんでしたよね」
「……確かに。それにしても、何だか眠気が覚めちゃったな。あと、酔いも醒めた」
「ふふっ、そうですか。私も眠気が飛んじゃいました。せっかくですからアニメでも観ます?」
「そうだね」
テレビを点けてみると、ちょうど、起きていれば見ようと言っていたアニメのエンディングテーマが流れているところだった。
「終わっちゃいましたね」
「そうだね」
「……もう寝ましょうか」
「うん。このベッド……ふかふかだからすぐに眠れるかも。いい夢が見られそうだ」
「そうですね」
僕は美来と寄り添って眠ることに。ベッドが気持ち良くて、お酒の酔いがまだ残っているからか、程なくして眠りにつくのであった。
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