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特別編-浅野狂騒曲-
第6話『実は。』
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午後11時。
羽賀や岡村と呑み終わって、ようやく自宅に帰ってきた。美来はまだ起きているかな。羽賀から浅野さんが僕の家で美来や浅野さんと一緒に呑んでいるということなので、もしかしたらまだ2人が家にいたりして。
「ただいま」
家に入ると、玄関には美来の他に有紗さんの靴があった。
あと、カレーのいい匂いがするな。確か、今回のカレーはチキンカレーだったかな。夕方、家を出発するときに美来が張り切って下準備をしていたから。
「おかえりなさい、智也さん」
部屋着姿の美来が俺のことを出迎えてくれた。
「お風呂にはまだ入っていないってことは、今までずっと有紗さんに付き合わされちゃっていたのかな?」
「いえ、有紗さんはお酒に酔ってしまって、2時間くらい前からベッドで眠っています。ぐっすりと眠っていて、起きる気配は全くないですね」
「そっか」
「有紗さんが眠ってから30分くらい浅野さんと話して、彼女は帰っていきました」
「なるほどね」
美来と浅野さんというのは今までにない組み合わせなので、どんなことを話すのか想像できないな。浅野さんがBL好きだから、BL布教でもされたのかな?
「羽賀さんの言うとおり、BLについて浅野さんに牽制しておいて正解でした」
「いつの間に羽賀とそんなやり取りを……」
「午後6時半くらいでしょうか。羽賀さんからメールが来て、浅野さんがここに来るかもしれないと。それで、BLについて色々と言われそうな空気になったら、遠慮なく拒否反応を示していいって。もちろん、嫌だと思ったらですが」
「そっか……」
そういえば、浅野さんが一緒に呑みたいと駄々をこねていたと羽賀も言っていたっけ。おそらく、自分達と一緒に呑めないなら、僕達と関わりのある人物と呑むかもしれないと考えて、美来に連絡をしておいたってところかな。そういうことを予測して、しっかりと事前に連絡できるところが羽賀の凄さかな。
「妄想は自由ですが、それを言葉にするには気をつけてと言っておきました」
「それでいいと思うよ。美来、よく言えたね」
よしよし、と美来の頭を優しく撫でると、美来はデレデレとした笑みを浮かべる。可愛いなぁ、抱きしめよう。
「きゃあっ! と、智也さん……」
「ご褒美だよ、美来」
羽賀でさえも浅野さんには少し困っている様子だから、BLについてのことをきちんと言えた美来はとても偉いと思う。
「……そういえば、美来。まだ、お風呂に入っていないのかな。いつもだったら、もうお風呂から出ている時間だと思うけれど」
まさか、お風呂が壊れちゃったのかな。もしそうだったら、美来からメールかメッセージで一言送ってくれると思うけど。
「智也さんと一緒に入りたくて、ずっと待っていました」
「そっか。じゃあ、一緒に入ろうか」
「あ、あと……外から帰ってきた智也さんに癒しを提供したいと思いまして。何かしてほしいことはありませんか? お酒を呑んだので、いつもよりも欲求不満になっているんじゃないかと思って」
欲求不満の部分を大きめの声で言ったので、一緒に入りたいと言った美来の思惑はだいたい分かったぞ。
「……美来の方が欲求不満なんじゃないのかな」
「何を言っているんですか。ただ、お酒で酔った智也さんの要求をできる限りで何でも受け入れる心積もりでして、私は無事に帰ってきた智也さんを見るだけで欲求は満たされていますって」
ふふっ、と美来は視線をちらつかせている。まったく、素直じゃないんだから。
「正直に言えば、今日は酔っているから普段はしないことをしたかも――」
「欲求不満です!」
「……急に正直になったね」
好きなことを妄想する点では浅野さんに負けず劣らずなので、美来は浅野さんにきちんとBLのことを言えたのかもしれないな。
ただ、美来に言ったように今の僕は酔いがまだ残っている状態なので、普段とは違うことをしてしまうかもしれない。気をつけないといけないな。
部屋に入ると、ワイシャツ姿の有紗さんがベッドの上でぐっすりと眠っている。
「有紗さん、気持ち良さそうに眠ってるね」
「そうですね。そんな有紗さんを起こしてはいけませんから、智也さんとイチャイチャするのは浴室がいいと思った次第です」
「なるほどね」
一緒にお風呂に入る一番の目的は僕とイチャイチャすることだったんだな。有紗さんが起きないと踏んでいるのか。それとも、起きてしまっても俺と美来の関係性をよく知っている有紗さんなら大丈夫だと思っているんだろう。
「さあ、智也さん。着替えは洗面所に用意してありますから、このまま行きましょう」
「用意がいいね」
一緒に入る気満々なんだな。そこまでするなんて。ただ、家に帰ってきたらお風呂が湧いてあって、着替えまで用意してくれているのは本当に有り難い。
僕は美来にキスをする。
「ありがとう、美来」
「……いえいえ。てっきり、お風呂に入るまで我慢できずに、ここでイチャイチャし始めてしまうのかと思いました。有紗さんが横にいるといくらかの背徳感がありますが」
「……僕は平和に美来との交流を深めたいよ」
イチャイチャするのであれば、有紗さんが気付かないよう静かにしたい。
「智也さんがそう言うのであれば。では、浴室に行きましょう」
「うん」
有紗さんを起こしてしまわないように、僕と美来は静かに洗面所に向かう。
てっきり、家に帰ったら美来が既に眠っていると思ったんだけれど。どうやら、今夜はもう少し続きそうなのであった。
羽賀や岡村と呑み終わって、ようやく自宅に帰ってきた。美来はまだ起きているかな。羽賀から浅野さんが僕の家で美来や浅野さんと一緒に呑んでいるということなので、もしかしたらまだ2人が家にいたりして。
「ただいま」
家に入ると、玄関には美来の他に有紗さんの靴があった。
あと、カレーのいい匂いがするな。確か、今回のカレーはチキンカレーだったかな。夕方、家を出発するときに美来が張り切って下準備をしていたから。
「おかえりなさい、智也さん」
部屋着姿の美来が俺のことを出迎えてくれた。
「お風呂にはまだ入っていないってことは、今までずっと有紗さんに付き合わされちゃっていたのかな?」
「いえ、有紗さんはお酒に酔ってしまって、2時間くらい前からベッドで眠っています。ぐっすりと眠っていて、起きる気配は全くないですね」
「そっか」
「有紗さんが眠ってから30分くらい浅野さんと話して、彼女は帰っていきました」
「なるほどね」
美来と浅野さんというのは今までにない組み合わせなので、どんなことを話すのか想像できないな。浅野さんがBL好きだから、BL布教でもされたのかな?
「羽賀さんの言うとおり、BLについて浅野さんに牽制しておいて正解でした」
「いつの間に羽賀とそんなやり取りを……」
「午後6時半くらいでしょうか。羽賀さんからメールが来て、浅野さんがここに来るかもしれないと。それで、BLについて色々と言われそうな空気になったら、遠慮なく拒否反応を示していいって。もちろん、嫌だと思ったらですが」
「そっか……」
そういえば、浅野さんが一緒に呑みたいと駄々をこねていたと羽賀も言っていたっけ。おそらく、自分達と一緒に呑めないなら、僕達と関わりのある人物と呑むかもしれないと考えて、美来に連絡をしておいたってところかな。そういうことを予測して、しっかりと事前に連絡できるところが羽賀の凄さかな。
「妄想は自由ですが、それを言葉にするには気をつけてと言っておきました」
「それでいいと思うよ。美来、よく言えたね」
よしよし、と美来の頭を優しく撫でると、美来はデレデレとした笑みを浮かべる。可愛いなぁ、抱きしめよう。
「きゃあっ! と、智也さん……」
「ご褒美だよ、美来」
羽賀でさえも浅野さんには少し困っている様子だから、BLについてのことをきちんと言えた美来はとても偉いと思う。
「……そういえば、美来。まだ、お風呂に入っていないのかな。いつもだったら、もうお風呂から出ている時間だと思うけれど」
まさか、お風呂が壊れちゃったのかな。もしそうだったら、美来からメールかメッセージで一言送ってくれると思うけど。
「智也さんと一緒に入りたくて、ずっと待っていました」
「そっか。じゃあ、一緒に入ろうか」
「あ、あと……外から帰ってきた智也さんに癒しを提供したいと思いまして。何かしてほしいことはありませんか? お酒を呑んだので、いつもよりも欲求不満になっているんじゃないかと思って」
欲求不満の部分を大きめの声で言ったので、一緒に入りたいと言った美来の思惑はだいたい分かったぞ。
「……美来の方が欲求不満なんじゃないのかな」
「何を言っているんですか。ただ、お酒で酔った智也さんの要求をできる限りで何でも受け入れる心積もりでして、私は無事に帰ってきた智也さんを見るだけで欲求は満たされていますって」
ふふっ、と美来は視線をちらつかせている。まったく、素直じゃないんだから。
「正直に言えば、今日は酔っているから普段はしないことをしたかも――」
「欲求不満です!」
「……急に正直になったね」
好きなことを妄想する点では浅野さんに負けず劣らずなので、美来は浅野さんにきちんとBLのことを言えたのかもしれないな。
ただ、美来に言ったように今の僕は酔いがまだ残っている状態なので、普段とは違うことをしてしまうかもしれない。気をつけないといけないな。
部屋に入ると、ワイシャツ姿の有紗さんがベッドの上でぐっすりと眠っている。
「有紗さん、気持ち良さそうに眠ってるね」
「そうですね。そんな有紗さんを起こしてはいけませんから、智也さんとイチャイチャするのは浴室がいいと思った次第です」
「なるほどね」
一緒にお風呂に入る一番の目的は僕とイチャイチャすることだったんだな。有紗さんが起きないと踏んでいるのか。それとも、起きてしまっても俺と美来の関係性をよく知っている有紗さんなら大丈夫だと思っているんだろう。
「さあ、智也さん。着替えは洗面所に用意してありますから、このまま行きましょう」
「用意がいいね」
一緒に入る気満々なんだな。そこまでするなんて。ただ、家に帰ってきたらお風呂が湧いてあって、着替えまで用意してくれているのは本当に有り難い。
僕は美来にキスをする。
「ありがとう、美来」
「……いえいえ。てっきり、お風呂に入るまで我慢できずに、ここでイチャイチャし始めてしまうのかと思いました。有紗さんが横にいるといくらかの背徳感がありますが」
「……僕は平和に美来との交流を深めたいよ」
イチャイチャするのであれば、有紗さんが気付かないよう静かにしたい。
「智也さんがそう言うのであれば。では、浴室に行きましょう」
「うん」
有紗さんを起こしてしまわないように、僕と美来は静かに洗面所に向かう。
てっきり、家に帰ったら美来が既に眠っていると思ったんだけれど。どうやら、今夜はもう少し続きそうなのであった。
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