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特別編-Looking back 10 years of LOVE-
第1話『出会った日のこと』
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美来、10年近くの内容をしっかりと話してくれるようだけど、どういう風に区切るんだろうか。
「えっと、最初は僕のことを見つけるまでの話だったっけ」
「そうですよ」
僕を見つけるまでってことは、前に聞いた話では……あの日から2年間くらいか。美来は幼稚園の年長さんから、小学2年生の前半。僕は中学2年生の後半から高校1年生の前半の時期か。
「今でも思い出すとドキドキしますね。まずは、智也さんと出会った日の話をしましょうか。遊園地を後にしたときからの話です」
「うん、聞かせてよ」
僕のことを見つけるまでの話なのに、さらに細かく区切って、まずは僕と出会った10年前のあの日のことを話してくれるのか。まあ、あの日は僕と美来にとって、全ての始まりの日だから、かなり重要か。
「それでは、始まりです」
まるで1本の映画が始まるような感じだな。楽しみながら聞くことにしよう。
*****
10年前のあの日、迷子になっているところを智也さんに助けられた私は、遊園地から家に帰る車の中でも、ずっと智也さんのことばかり考えていました。
「美来、あの男の子に本当に嬉しかったのね」
「うん! ともやおにいちゃんだいすき!」
「ふふっ、そうなの」
「わたし、ともやおにいちゃんにプロポーズしたの! わたしとけっこんしてくださいって」
「あらあら、素敵ね。美来も恋をするようになったかぁ。美来のウェディング姿を見られるのは意外と早いかもしれないね、お父さん」
「……視界がぼやけてきたぞ。絶対に結婚させたくねぇ」
「もう、お父さんったら。嫉妬なんて父親としてみっともないわよ。それに、今すぐに結婚するわけじゃないんだから……」
「こんなに可愛い娘のことは誰にもやらねえぞ! お父さんと結婚すればいいんだ」
「……まったくもう。浮気は許しませんよ」
「パパのいじわる。ともやおにいちゃんはすてきなひとなの! ママはともやおにいちゃんとけっこんすることをゆるしてくれる?」
「うん、もちろん。優しそうな男の子だったものね。ただ、結婚するためにはその好きだっていう気持ちをずっと持ち続けないとね」
「ママ、ありがとう! パパはだいきらい」
「くそっ、美来が結婚するよりも嫌われる方がショックだ……」
前に智也さんに話したように、お母さんは智也さんと出会ったその日に、智也さんとの結婚を許してくれました。
お父さんは私が16歳になる今年の4月までずっとこんな感じでした。私のことは誰にも嫁に出さないって。頑固ですよね。
でも、お母さんから、娘を持つ父親は大抵そうだから気にするなと言われました。なので、すぐに気にならなくなりました。
家に帰って、お父さんが持っていたカメラで写真や動画を撮影したので、夕ご飯の後に遊園地での思い出に浸りました。
ですが、そのときに気付いたのです。
「……ともやおにいちゃんのしゃしん、とればよかった」
「そうだね。写真を撮っておけば良かったね」
「どうすればいいのかな。ともやおにいちゃんとまたあいたい……」
「その智也君がどこに住んでいるか分からないから、会ったり、写真を撮ったりすることは難しいかな」
「うううっ……」
「じゃあ、智也君の絵を描こうか。美来、絵が上手だし。智也君のことを忘れないようにたくさん描こうよ。それが今、美来にできることじゃないかな」
「うん! そうする!」
お母さんの言うとおり、6歳の私にできる精一杯のことは智也さんの絵を描くことでした。智也さんのことを忘れないように、あの日から智也さんに出会うまでのほぼ毎日、智也さんの絵を描きました。
そういえば、あの日……まだお母さんのお腹の中にいた結菜のことについても話しましたね。
「はやく、このことをママのおなかにいるあかちゃんにもきかせてあげたいな」
「ふふっ、そうね」
「あかちゃんって、けっこんするとできるんでしょう? わたしも、ともやおにいちゃんとけっこんしてあかちゃんがほしい!」
「あらあら、本当に智也君のことが好きなのね。智也君とそんなことを考えるほど、美来は彼のことが好きなのね」
「うん! だいすきっ!」
「俺はまだお爺ちゃんになるつもりはないぞ!」
「もう、子供の言うことに本気で怒らないでよ。あと、胎教に良くないわ」
「す、すまない……」
「わたし、ともやおにいちゃんとけっこんする! こどももできて、パパやママみたいにしあわせになる!」
智也さんと会いたいという気持ちを胸に抱いて、こうして、智也さんと再会するまでの日々が始まったのです。
*****
「それが、智也さんと出会った日のことです」
「なるほどな……」
果歩さんから当初から結婚を許していたり、僕の絵を描いていたりした話は聞いていたけれど。それらは僕と美来が出会った日のことだったんだな。
あと、雅治さんは当時から面白い人だったんだなぁ。娘想いというか、娘バカというか。
「あの日から、僕のことがずっと好きだったんだね」
「もちろんですよ」
「……あと、果歩さんも6歳の女の子に対する教え方が上手だな。僕を忘れないために絵を描こうとか、子供は結婚すればできるとか……」
「あの頃の私は純粋でした。結婚できれば、自然と子供がお腹の中にできると信じていましたから。その……子供ができる過程を知り、えっちなことに目覚めたときの話もお話ししますのでお楽しみに」
美来、そのきっかけについて思い出しているのか1人で興奮している。
この10年の間に美来は小学生、中学生を経て今は高校生となっている。その中で性的な感心も年相応に抱くとは思うけれど、それは僕がきっかけってことなのか。まあ、好きな異性のことを考えていたら、それは自然なことなのかな。
「結菜ちゃんも、僕らが出会ったときにはまだ生まれてなかったんだよな……」
「そうですね。そんな結菜も今は小学4年生です。そう思うと、10年ってとても長い時間なんですね」
「そうだな……」
僕の場合、10年前は中学2年生。そのときのことを思い出しても、随分と昔のことだと思うけれど……結菜ちゃんが生まれてから小学4年生になったことを考えると、10年はとても長い時間だったことが分かる。
「そうだ。私が描いた智也さんの絵の写真がスマホにありますので、見てみますか?」
「うん」
どんな感じの絵なのか楽しみだな。
「あっ、これですね。最初に描いた絵です」
つまり、当時6歳だった美来が描いた僕の絵か。
美来のスマートフォンを見せてもらうと、そこには白馬に乗った僕の絵が描かれていた。自分を迷子から救った僕のことを白馬に乗ってやってきた王子様のように思えたんだな。
「というか、6歳にしてはかなり絵が上手だね。描かれている男の人が僕だってちゃんと分かるし。白馬に乗っているところがアレだけど」
「ありがとうございます。智也さんは私を救ってくれた白馬の王子様ですから」
「……そっか」
「さて、そろそろ智也さんを見つけたときの話をしましょうか」
「……切り替わりが早いね」
まあいい。ここは美来のペースに合わせるとしよう。
次の話はあの日以降、初めて僕の姿を見たときの話か。つまり、僕は高校生。
当時も一緒に通っていた羽賀や岡村とばっかりつるんでいたからな。美来はそういう風景を見たと思うけれど、どんな話を聞くことができるのやら。
「えっと、最初は僕のことを見つけるまでの話だったっけ」
「そうですよ」
僕を見つけるまでってことは、前に聞いた話では……あの日から2年間くらいか。美来は幼稚園の年長さんから、小学2年生の前半。僕は中学2年生の後半から高校1年生の前半の時期か。
「今でも思い出すとドキドキしますね。まずは、智也さんと出会った日の話をしましょうか。遊園地を後にしたときからの話です」
「うん、聞かせてよ」
僕のことを見つけるまでの話なのに、さらに細かく区切って、まずは僕と出会った10年前のあの日のことを話してくれるのか。まあ、あの日は僕と美来にとって、全ての始まりの日だから、かなり重要か。
「それでは、始まりです」
まるで1本の映画が始まるような感じだな。楽しみながら聞くことにしよう。
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10年前のあの日、迷子になっているところを智也さんに助けられた私は、遊園地から家に帰る車の中でも、ずっと智也さんのことばかり考えていました。
「美来、あの男の子に本当に嬉しかったのね」
「うん! ともやおにいちゃんだいすき!」
「ふふっ、そうなの」
「わたし、ともやおにいちゃんにプロポーズしたの! わたしとけっこんしてくださいって」
「あらあら、素敵ね。美来も恋をするようになったかぁ。美来のウェディング姿を見られるのは意外と早いかもしれないね、お父さん」
「……視界がぼやけてきたぞ。絶対に結婚させたくねぇ」
「もう、お父さんったら。嫉妬なんて父親としてみっともないわよ。それに、今すぐに結婚するわけじゃないんだから……」
「こんなに可愛い娘のことは誰にもやらねえぞ! お父さんと結婚すればいいんだ」
「……まったくもう。浮気は許しませんよ」
「パパのいじわる。ともやおにいちゃんはすてきなひとなの! ママはともやおにいちゃんとけっこんすることをゆるしてくれる?」
「うん、もちろん。優しそうな男の子だったものね。ただ、結婚するためにはその好きだっていう気持ちをずっと持ち続けないとね」
「ママ、ありがとう! パパはだいきらい」
「くそっ、美来が結婚するよりも嫌われる方がショックだ……」
前に智也さんに話したように、お母さんは智也さんと出会ったその日に、智也さんとの結婚を許してくれました。
お父さんは私が16歳になる今年の4月までずっとこんな感じでした。私のことは誰にも嫁に出さないって。頑固ですよね。
でも、お母さんから、娘を持つ父親は大抵そうだから気にするなと言われました。なので、すぐに気にならなくなりました。
家に帰って、お父さんが持っていたカメラで写真や動画を撮影したので、夕ご飯の後に遊園地での思い出に浸りました。
ですが、そのときに気付いたのです。
「……ともやおにいちゃんのしゃしん、とればよかった」
「そうだね。写真を撮っておけば良かったね」
「どうすればいいのかな。ともやおにいちゃんとまたあいたい……」
「その智也君がどこに住んでいるか分からないから、会ったり、写真を撮ったりすることは難しいかな」
「うううっ……」
「じゃあ、智也君の絵を描こうか。美来、絵が上手だし。智也君のことを忘れないようにたくさん描こうよ。それが今、美来にできることじゃないかな」
「うん! そうする!」
お母さんの言うとおり、6歳の私にできる精一杯のことは智也さんの絵を描くことでした。智也さんのことを忘れないように、あの日から智也さんに出会うまでのほぼ毎日、智也さんの絵を描きました。
そういえば、あの日……まだお母さんのお腹の中にいた結菜のことについても話しましたね。
「はやく、このことをママのおなかにいるあかちゃんにもきかせてあげたいな」
「ふふっ、そうね」
「あかちゃんって、けっこんするとできるんでしょう? わたしも、ともやおにいちゃんとけっこんしてあかちゃんがほしい!」
「あらあら、本当に智也君のことが好きなのね。智也君とそんなことを考えるほど、美来は彼のことが好きなのね」
「うん! だいすきっ!」
「俺はまだお爺ちゃんになるつもりはないぞ!」
「もう、子供の言うことに本気で怒らないでよ。あと、胎教に良くないわ」
「す、すまない……」
「わたし、ともやおにいちゃんとけっこんする! こどももできて、パパやママみたいにしあわせになる!」
智也さんと会いたいという気持ちを胸に抱いて、こうして、智也さんと再会するまでの日々が始まったのです。
*****
「それが、智也さんと出会った日のことです」
「なるほどな……」
果歩さんから当初から結婚を許していたり、僕の絵を描いていたりした話は聞いていたけれど。それらは僕と美来が出会った日のことだったんだな。
あと、雅治さんは当時から面白い人だったんだなぁ。娘想いというか、娘バカというか。
「あの日から、僕のことがずっと好きだったんだね」
「もちろんですよ」
「……あと、果歩さんも6歳の女の子に対する教え方が上手だな。僕を忘れないために絵を描こうとか、子供は結婚すればできるとか……」
「あの頃の私は純粋でした。結婚できれば、自然と子供がお腹の中にできると信じていましたから。その……子供ができる過程を知り、えっちなことに目覚めたときの話もお話ししますのでお楽しみに」
美来、そのきっかけについて思い出しているのか1人で興奮している。
この10年の間に美来は小学生、中学生を経て今は高校生となっている。その中で性的な感心も年相応に抱くとは思うけれど、それは僕がきっかけってことなのか。まあ、好きな異性のことを考えていたら、それは自然なことなのかな。
「結菜ちゃんも、僕らが出会ったときにはまだ生まれてなかったんだよな……」
「そうですね。そんな結菜も今は小学4年生です。そう思うと、10年ってとても長い時間なんですね」
「そうだな……」
僕の場合、10年前は中学2年生。そのときのことを思い出しても、随分と昔のことだと思うけれど……結菜ちゃんが生まれてから小学4年生になったことを考えると、10年はとても長い時間だったことが分かる。
「そうだ。私が描いた智也さんの絵の写真がスマホにありますので、見てみますか?」
「うん」
どんな感じの絵なのか楽しみだな。
「あっ、これですね。最初に描いた絵です」
つまり、当時6歳だった美来が描いた僕の絵か。
美来のスマートフォンを見せてもらうと、そこには白馬に乗った僕の絵が描かれていた。自分を迷子から救った僕のことを白馬に乗ってやってきた王子様のように思えたんだな。
「というか、6歳にしてはかなり絵が上手だね。描かれている男の人が僕だってちゃんと分かるし。白馬に乗っているところがアレだけど」
「ありがとうございます。智也さんは私を救ってくれた白馬の王子様ですから」
「……そっか」
「さて、そろそろ智也さんを見つけたときの話をしましょうか」
「……切り替わりが早いね」
まあいい。ここは美来のペースに合わせるとしよう。
次の話はあの日以降、初めて僕の姿を見たときの話か。つまり、僕は高校生。
当時も一緒に通っていた羽賀や岡村とばっかりつるんでいたからな。美来はそういう風景を見たと思うけれど、どんな話を聞くことができるのやら。
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