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本編-ARIA-
第94話『無実予告』
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前もって羽賀さんから指示されたとおり、詩織ちゃんと一緒に公園近くに駐車していた岡村さんの車に乗って、羽賀さんのご友人が勤めている報道局に行くことに。私達の車の後ろには、お父さんとお母さんが乗っている車に月村さんの車が走っている。
「朝比奈ちゃん。急いでいるならちょっと飛ばした方がいいかな?」
「急いではいますけど、安全運転でお願いします」
「了解っす」
今は高速道路を走っているから、より安全運転でいかないとね。
カーナビを見てみると、今走っているところから報道局まではあと30分くらい。それまで羽賀さんの計画が警察にバレなければいいんだけど。
「車に乗るまでが一番大変だと思う。それをクリアできたから大丈夫な気がするよ、美来ちゃん」
「羽賀さんが公園で佐相警視と話してくれたからね」
逮捕される場合はおそらく佐相警視が来ると羽賀さんに言われていた。そのときは羽賀さんが色々と話して時間稼ぎをするので、その間に私と詩織ちゃんで岡村さんがいる車に乗るように言われた。
「そういえば、そちらの黒髪のお嬢ちゃんの名前は? 前にも会ったけど、名前を聞くのを忘れちゃっててさ」
「そうでしたね。私、絢瀬詩織です。美来ちゃんのクラスメイトです」
「そっか。絢瀬ちゃんね。覚えておくぜ。しっかし、助手席に座る恋人と喋るのもいいけど、後部座席で女の子達が喋っている声を聞きながら運転するのも悪くねえな! 2人とも可愛いからなお良し!」
岡村さん、上機嫌だなぁ。智也さんから聞いていたとおり女好きなのも頷ける。
「そうだ、朝比奈ちゃん。着くまで30分くらいあるから、その……鷺沼って奴だっけ? 今のうちに、そいつに連絡しておいた方がいい。朝に羽賀が一言入れておいたらしいが、順調に事を進ませるためにも、簡単でいいから今のうちに状況を伝えておいた方がいいよ」
「分かりました」
羽賀さんから鷺沼さんの名刺はもらっているので、連絡先は分かっている。さっそく、スマートフォンを使って鷺沼さんのスマートフォンに電話をかけてみる。
『はい、もしもし』
「鷺沼亮さんのスマートフォンで合っていますでしょうか」
『そうです。私が鷺沼ですが、あなたは?』
そっか、私のスマートフォンから電話しているから、鷺沼さんは誰から電話がかかってきたのか分からないんだ。
ええと、どうやって名乗ればいいんだろう。迷うなぁ。でも、ここははっきりと言った方がいいよね。
「……私、氷室智也が逮捕された事件の『被害者』と言われている朝比奈美来と申します」
『えっ! あ、朝比奈さんなのですか?』
「はい、そうです」
鷺沼さんからは驚きの声が。それは驚くよね。今、最も騒がれている事件の「被害者」から電話がかかってきているんだもんね。
『えっと、どうして朝比奈さんが私に? あっ、もしかして……今朝、羽賀が言っていた氷室智也が逮捕された事件の情報提供ですか?』
「はい。そのことで連絡させていただきました。あと、鷺沼さんが報道局に勤めているそうなので、もう知っているかもしれませんが、羽賀さんが公務執行妨害で逮捕されてしまったんです」
『えええっ!』
さっきよりも大きな声で驚かれた。ううっ、耳が痛いよ。この様子だとまだ知らないんだ。まあ、公園を出発してから10分ぐらいしか経っていないし、羽賀さんが逮捕されるという情報はまだマスコミに公開されていないのかも。
『羽賀が何をやったんですか? 公務執行妨害って……』
「智也さんと一緒で羽賀さんも無実です」
『氷室智也も無実なんですか?』
「もちろんそうです。それに以前から私自身も無実だと証言していますし、父も家の前で同じことを言ったではないですか。とにかく、真犯人が自白したICレコーダーを持って、今、そちらに向かっているところです。あと30分ほどで到着します」
『わ、分かりました。こちらも準備しておきます。でも、よろしいのですか? 警察の方ではなく、私どもの方で……』
「真犯人の自白から、真犯人に協力した警察関係者がいることが分かったんです。羽賀さんもそれを考慮して、ご友人である鷺沼さんに情報を提供すると言ったのだと思います。智也さんを釈放するには報道の力が必要なんです。お願いします」
羽賀さんも佐相さんの自白を全国ネットで報道すれば、世論が智也さんを釈放へと向かわせてくれると言っていた。羽賀さんのことについても、私が頑張って無実であることを伝えなくちゃ。
『分かりました。羽賀のことは信頼しています。今から朝比奈さんが持ってきていただく証拠は、氷室さんが無実である証拠なのでしょう。お話を聞く準備はしておきますので、気をつけてお越しください』
「はい。ありがとうございます」
『お手数を掛けしますが、到着した際に再度、私のスマートフォンに連絡していただけると助かります』
「分かりました。では、失礼します」
私の方から通話を切った。
「岡村さん、詩織ちゃん。鷺沼さんに簡単に説明したところ、話を聞く準備をしてくださるそうです。報道局に到着したらまた連絡がほしいと」
「了解。俺がきちんと2人のことを連れて行くぜ」
「ありがとうございます」
「今のところ、パトカーや警察官が乗っている車が追ってくるようなことはないね」
詩織ちゃんはそう言うけど、念のために後ろを見てみる。家の黒い車と、月村さんが運転している赤い車が並走している。
「このまま報道局に着けば、お昼頃のニュースで氷室さんが無実だって報道されるんじゃないかな」
「そうなるようにしたいね」
逮捕された被疑者を検察庁へ送検するか否かは、逮捕されてから48時間までという決まりがあると羽賀さんが言っていた。送検されなければ釈放される。一昨日の昼頃に逮捕された智也さんの送検期限が間もなく迫っている。もし、送検されてしまったら、検察庁にも圧力をかけて、智也さんがすぐに起訴される危険があるという。昼頃のニュースで報じられればいいけど。
――プォーン。
パトカーのサイレンの音が聞こえる。
「何なんだ? まさか、警察にバレたのか?」
確かに、警察側に羽賀さんの計画がバレて、私達のことを追いかけてきてもおかしくない時間帯だ。
「岡村さんは焦らずにこのまま運転を続けてください。詩織ちゃんは後ろを見てくれるかな? 反対側を走っているかもしれないから、私は反対側を見るね」
「うん!」
反対側の方を見てみると、物凄いスピードで走っている銀色の乗用車が見える。その後ろにパトカーの赤いランプが見えている。おそらく、何らかの事件があって、銀色の乗用車を追っているんだろう。
「反対側にパトカーが走っていきました。今、すれ違いましたね」
「うん、そのパトカー見えたよ。こっちの方は大丈夫」
「はぁ、良かったぜ」
普段からパトカーのサイレンを聞くと嫌な気分になるけど、今はなおさら嫌になる。さっきよりも息苦しく感じる。
「よし、あと10分くらいで到着する。朝比奈ちゃんに絢瀬ちゃん、鷺沼っていう奴に早くそして正確に事情を説明できるよう、今のうちに情報をまとめておきな。羽賀が時間との闘いだって言っていただろう? テレビ局に連れて行くのは俺達大人に任せろ」
「分かりました。ありがとうございます」
とにかく、伝えなければいけないのは、この事件には真犯人と、警察関係者に協力者がいること。黒幕が存在すること。それを根拠に、智也さんが無実であること。羽賀さんが捜査妨害のために逮捕されてしまったことも伝えなきゃ。
刻一刻とそのときが近づいていたのであった。
「朝比奈ちゃん。急いでいるならちょっと飛ばした方がいいかな?」
「急いではいますけど、安全運転でお願いします」
「了解っす」
今は高速道路を走っているから、より安全運転でいかないとね。
カーナビを見てみると、今走っているところから報道局まではあと30分くらい。それまで羽賀さんの計画が警察にバレなければいいんだけど。
「車に乗るまでが一番大変だと思う。それをクリアできたから大丈夫な気がするよ、美来ちゃん」
「羽賀さんが公園で佐相警視と話してくれたからね」
逮捕される場合はおそらく佐相警視が来ると羽賀さんに言われていた。そのときは羽賀さんが色々と話して時間稼ぎをするので、その間に私と詩織ちゃんで岡村さんがいる車に乗るように言われた。
「そういえば、そちらの黒髪のお嬢ちゃんの名前は? 前にも会ったけど、名前を聞くのを忘れちゃっててさ」
「そうでしたね。私、絢瀬詩織です。美来ちゃんのクラスメイトです」
「そっか。絢瀬ちゃんね。覚えておくぜ。しっかし、助手席に座る恋人と喋るのもいいけど、後部座席で女の子達が喋っている声を聞きながら運転するのも悪くねえな! 2人とも可愛いからなお良し!」
岡村さん、上機嫌だなぁ。智也さんから聞いていたとおり女好きなのも頷ける。
「そうだ、朝比奈ちゃん。着くまで30分くらいあるから、その……鷺沼って奴だっけ? 今のうちに、そいつに連絡しておいた方がいい。朝に羽賀が一言入れておいたらしいが、順調に事を進ませるためにも、簡単でいいから今のうちに状況を伝えておいた方がいいよ」
「分かりました」
羽賀さんから鷺沼さんの名刺はもらっているので、連絡先は分かっている。さっそく、スマートフォンを使って鷺沼さんのスマートフォンに電話をかけてみる。
『はい、もしもし』
「鷺沼亮さんのスマートフォンで合っていますでしょうか」
『そうです。私が鷺沼ですが、あなたは?』
そっか、私のスマートフォンから電話しているから、鷺沼さんは誰から電話がかかってきたのか分からないんだ。
ええと、どうやって名乗ればいいんだろう。迷うなぁ。でも、ここははっきりと言った方がいいよね。
「……私、氷室智也が逮捕された事件の『被害者』と言われている朝比奈美来と申します」
『えっ! あ、朝比奈さんなのですか?』
「はい、そうです」
鷺沼さんからは驚きの声が。それは驚くよね。今、最も騒がれている事件の「被害者」から電話がかかってきているんだもんね。
『えっと、どうして朝比奈さんが私に? あっ、もしかして……今朝、羽賀が言っていた氷室智也が逮捕された事件の情報提供ですか?』
「はい。そのことで連絡させていただきました。あと、鷺沼さんが報道局に勤めているそうなので、もう知っているかもしれませんが、羽賀さんが公務執行妨害で逮捕されてしまったんです」
『えええっ!』
さっきよりも大きな声で驚かれた。ううっ、耳が痛いよ。この様子だとまだ知らないんだ。まあ、公園を出発してから10分ぐらいしか経っていないし、羽賀さんが逮捕されるという情報はまだマスコミに公開されていないのかも。
『羽賀が何をやったんですか? 公務執行妨害って……』
「智也さんと一緒で羽賀さんも無実です」
『氷室智也も無実なんですか?』
「もちろんそうです。それに以前から私自身も無実だと証言していますし、父も家の前で同じことを言ったではないですか。とにかく、真犯人が自白したICレコーダーを持って、今、そちらに向かっているところです。あと30分ほどで到着します」
『わ、分かりました。こちらも準備しておきます。でも、よろしいのですか? 警察の方ではなく、私どもの方で……』
「真犯人の自白から、真犯人に協力した警察関係者がいることが分かったんです。羽賀さんもそれを考慮して、ご友人である鷺沼さんに情報を提供すると言ったのだと思います。智也さんを釈放するには報道の力が必要なんです。お願いします」
羽賀さんも佐相さんの自白を全国ネットで報道すれば、世論が智也さんを釈放へと向かわせてくれると言っていた。羽賀さんのことについても、私が頑張って無実であることを伝えなくちゃ。
『分かりました。羽賀のことは信頼しています。今から朝比奈さんが持ってきていただく証拠は、氷室さんが無実である証拠なのでしょう。お話を聞く準備はしておきますので、気をつけてお越しください』
「はい。ありがとうございます」
『お手数を掛けしますが、到着した際に再度、私のスマートフォンに連絡していただけると助かります』
「分かりました。では、失礼します」
私の方から通話を切った。
「岡村さん、詩織ちゃん。鷺沼さんに簡単に説明したところ、話を聞く準備をしてくださるそうです。報道局に到着したらまた連絡がほしいと」
「了解。俺がきちんと2人のことを連れて行くぜ」
「ありがとうございます」
「今のところ、パトカーや警察官が乗っている車が追ってくるようなことはないね」
詩織ちゃんはそう言うけど、念のために後ろを見てみる。家の黒い車と、月村さんが運転している赤い車が並走している。
「このまま報道局に着けば、お昼頃のニュースで氷室さんが無実だって報道されるんじゃないかな」
「そうなるようにしたいね」
逮捕された被疑者を検察庁へ送検するか否かは、逮捕されてから48時間までという決まりがあると羽賀さんが言っていた。送検されなければ釈放される。一昨日の昼頃に逮捕された智也さんの送検期限が間もなく迫っている。もし、送検されてしまったら、検察庁にも圧力をかけて、智也さんがすぐに起訴される危険があるという。昼頃のニュースで報じられればいいけど。
――プォーン。
パトカーのサイレンの音が聞こえる。
「何なんだ? まさか、警察にバレたのか?」
確かに、警察側に羽賀さんの計画がバレて、私達のことを追いかけてきてもおかしくない時間帯だ。
「岡村さんは焦らずにこのまま運転を続けてください。詩織ちゃんは後ろを見てくれるかな? 反対側を走っているかもしれないから、私は反対側を見るね」
「うん!」
反対側の方を見てみると、物凄いスピードで走っている銀色の乗用車が見える。その後ろにパトカーの赤いランプが見えている。おそらく、何らかの事件があって、銀色の乗用車を追っているんだろう。
「反対側にパトカーが走っていきました。今、すれ違いましたね」
「うん、そのパトカー見えたよ。こっちの方は大丈夫」
「はぁ、良かったぜ」
普段からパトカーのサイレンを聞くと嫌な気分になるけど、今はなおさら嫌になる。さっきよりも息苦しく感じる。
「よし、あと10分くらいで到着する。朝比奈ちゃんに絢瀬ちゃん、鷺沼っていう奴に早くそして正確に事情を説明できるよう、今のうちに情報をまとめておきな。羽賀が時間との闘いだって言っていただろう? テレビ局に連れて行くのは俺達大人に任せろ」
「分かりました。ありがとうございます」
とにかく、伝えなければいけないのは、この事件には真犯人と、警察関係者に協力者がいること。黒幕が存在すること。それを根拠に、智也さんが無実であること。羽賀さんが捜査妨害のために逮捕されてしまったことも伝えなきゃ。
刻一刻とそのときが近づいていたのであった。
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