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本編-ARIA-
第23話『First KISS-ARISA Ver.-』
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汗を流したいということで、有紗さんはお風呂に入っている。
朝食の準備をしようと思ったら、朝食を作るのでゆっくりしていてほしいと美来から言われたので、僕はリビングでのんびりとしている。ちなみに、美来の今の服装は先週の日曜日に着ていたメイド服。好きなのかな、あの服。
今、僕の家には2人の女性がいる。1人は入浴中で、もう1人は朝食を作ってくれている。しかも、どちらの女性も僕に好意を抱いていて。岡村にこのことを言ったら、嫉妬のあまりに殺されてしまうかもしれないな。あいつには言うべきときが来るまで絶対に言わないでおこう。
「……言うのを忘れてた。美来、起きたときに寝ぼけちゃって、間違えて美来のスマートフォンを見ちゃってごめんね」
「い、いえ……いいんですよ」
「学校の友達には、週末に僕の家に来ていることを言ってないんだね」
「……言うのには勇気が必要で。何人かには訊かれたんですけど、実家に帰っていたとごまかしているんです」
「そっか」
と言っても、諸澄君には見られているんだよなぁ。僕と美来がデートをしている姿を目撃している生徒が彼以外にもいるかもしれない。
『週末になると寮からいなくなるけど何やってんの?』
僕が見たあのメッセージ。
もしかしたら、美来から聞いていることが、実際と食い違っているから送られたのかもしれない。でも、それは僕の考えすぎかもしれないから、可能性の1つとして心に留めておこう。
「えっ! な、何なのこの服は!」
浴室の方から有紗さんの声が聞こえた。
「月村さんに着てほしい服です」
そういえば、有紗さんがお風呂に入ることになったとき、美来が着替えを用意しておくと言っていたな。有紗さんがあんな反応をするなんて、いったいどんな服を着替えとして脱衣室に置いておいたんだ?
「どうしてこれなの……」
「私も着ていますから大丈夫ですって」
美来も着ているってことはメイド服か。有紗さんのメイド服姿……想像できないなぁ。でも、きっと可愛いんだろうな。
「えっ、美来ちゃんも着ているの? それならいいかな……」
いいのかよ。美来が着ているなら、僕にメイド服姿を見られることの恥ずかしさに勝ったのか。
「美来ちゃん、これ、どうやって着るの?」
「普通に着ればいいんですよ。そちらに行きますね。智也さんは覗かないでくださいね」
「覗かないから安心して行きなさい」
僕は一度たりとも美来の着替えを覗きに行ったことはないんだけれどな。有紗さんにはすると思っているのか?
「きゃっ! 美来ちゃん、どこを触ってるの!」
「月村さん、お肌が綺麗だなと思いまして。スタイルもいいですよね。私よりも背が高いですし、羨ましいなぁ」
「胸とか脚をそんなに触らないで、くすぐったい……」
いったい、美来と有紗さんは何をやっているんだか。
美来が浴室の方に行ってから2、3分後。
「やっと終わりました。ほら、月村さんも」
「う、うん……」
美来に手を引かれて出てきた有紗さんはもちろんメイド服姿。カチューシャをきちんと頭に付けていて。
ちなみに、有紗さんとお揃いの姿になることが嬉しいのか、美来は可愛らしい笑みを見せる。
「……に、似合っているかな?」
「似合っていますよ。とても可愛らしいです」
メイド服を着ている姿を見ていると、不思議と2人の年齢がそこまで離れていないように思える。
「そっか。なら良かった。もしかして、智也君ってメイドさん好きなの?」
「メイド喫茶は一度も行ったことはありませんが。服装としては好きですね」
「……ご主人様。なんてね。ふふっ」
有紗さんの嬉しそうな笑顔はとても可愛い。思わず見惚れてしまった。まさか、有紗さんにご主人様と言われる日が来るなんてなぁ。
家の中にメイドさんが1人増えたことになるのか。こんなアパートの一室に。先週よりもシュールさが増しているぞ。
「さあ、朝ご飯ができましたよ。一緒に食べましょう」
2人で美来の作った朝食を配膳する。メイド服を着た女性が食事の準備をしてくれると、お金持ちになったような気分になるけれど、あくまでも気分だけ。ここは一人暮らしの人間が住むアパートの一室だ。
「あたしの分までありがとね、美来ちゃん」
「いいえ、いいんですよ。2人分も3人分もあまり変わりません。では、3人で一緒に食べましょう。いただきます」
『いただきます』
僕はメイド服姿の2人に挟まれて、美来の作った朝食を食べる。今日も和風だけれど、とても美味しい。味噌汁を飲むと落ち着くな。
「そういえば、月曜日に私が作った煮物、ちゃんと食べきってくれたんですね。ありがとうございます」
「お礼を言うのは僕の方だよ。朝も炊いたご飯に、野菜を取るために煮物をちょっとずつ食べたよ。やっぱり、朝ご飯って大事だね」
「でしょう? 朝ご飯は大切なんですよ。食べられそうなときはなるべく食べてから会社に行くようにしてくださいね」
朝ご飯をちょっと食べても、満員電車の中で気持ち悪くなくなってきたし。これなら、これからも朝食を食べてから家を出ることができそうだ。
「何だか夫婦みたいで羨ましいなぁ」
「羨ましいですか? ちなみに私はこの家の鍵も持っているんですよ!」
「……そうだと思った。だって、昨日の夜からここにいたもんね」
誇らしげに胸を張る美来に、羨ましそうに頬を膨らます有紗さん。何とも言えない空気が僕の部屋を包み込んでいる。
「まあ、しょうがないわよね。美来ちゃんの方が先にそういう関係になったものね」
「月村さんが先でしたら、きっと月村さんの方が鍵を受け取っていたと思いますよ」
「まるで同棲しているみたいね。いいなぁ」
美来が家の鍵を持っているということで、有紗さんは美来よりも何歩も後ろにいると思っているんだろうな。
「正直なところ、智也君と美来ちゃんってどのくらいまで進んでるの?」
熟れたトマトのように顔を真っ赤にして、有紗さんはそんなことを訊いてくる。
「キスまではしましたよ?」
「キ、キスですって!」
美来からあっさりと事実を告げられ、有紗さんは悶えている。
「昨晩も月村さんが寝ている横でたくさんキスしましたよね」
「……そ、そうだね」
美来の不安だった気持ちを少しでも取り除くためだったんだけれど。
「……ねえ、智也君」
「何でしょうか?」
もじもじして、チラチラと有紗さんは僕のことを見てくる。
「あ、あたしともキスしてくれない?」
美来の前でキスをするっていうのか。それを美来が許すかどうか……って、美来はのほほんと味噌汁をすすっている。
「キスをするんですか? するのでしたら、私のことは気にせずにキスしてください。わ、私はご飯を……た、食べていますので……」
本人は平静を装っているつもりなんだろうけど、お椀を持っている手が震えており、今にも味噌汁が溢れそうだ。とっても気になっているみたい。
「するのであれば、早くしてしまいましょうか」
「う、うん。あたしから……していい?」
「分かりました」
まさか、有紗さんとキスをすることになるなんて。美来のときと同じか、いや……それ以上に緊張する。
有紗さんは僕のことをそっと抱きしめ、ゆっくりと顔を近づけていく。
「じゃあ、するよ?」
「はい」
「……智也君、好きだよ」
そう言うと、有紗さんは僕にキスをしてきた。ほんの数秒だったけれど、有紗さんの唇の柔らかさと温もりが確かに感じられる。
「まさか、智也君とキスできるときが来るなんて思わなかったよ。恋人同士ならもっと嬉しかったんだけれどね」
「そうですか」
唇を離したときの有紗さんの笑顔には、思わず惹かれてしまう。こんな有紗さんを他の男性は知っているのだろうか。なるべく、知っていてほしくない。
「ねえ、もう1度してもいい?」
「……好きなだけどうぞ」
僕がそう言ったからか、有紗さんは何度も唇を重ねてくる。舌まで絡ませてくるからドキドキするけれど、味噌汁の風味が感じられるので落ち着くという不思議な感覚に包まれている。キスは味噌の味……日本人らしい。
「早く食べないとご飯が冷めちゃいますよ」
いつまでもキスをしている僕と有紗さんを見かねたのか、美来はいつもよりも低い声でそう言った。
「そ、そうだね! 早く食べちゃいましょう!」
「そうですね」
僕と有紗さんは食事を再開する。美来のご機嫌を取るためにも美味しいと言い続け、食事の後片付けも有紗さんと2人でするのであった。
朝食の準備をしようと思ったら、朝食を作るのでゆっくりしていてほしいと美来から言われたので、僕はリビングでのんびりとしている。ちなみに、美来の今の服装は先週の日曜日に着ていたメイド服。好きなのかな、あの服。
今、僕の家には2人の女性がいる。1人は入浴中で、もう1人は朝食を作ってくれている。しかも、どちらの女性も僕に好意を抱いていて。岡村にこのことを言ったら、嫉妬のあまりに殺されてしまうかもしれないな。あいつには言うべきときが来るまで絶対に言わないでおこう。
「……言うのを忘れてた。美来、起きたときに寝ぼけちゃって、間違えて美来のスマートフォンを見ちゃってごめんね」
「い、いえ……いいんですよ」
「学校の友達には、週末に僕の家に来ていることを言ってないんだね」
「……言うのには勇気が必要で。何人かには訊かれたんですけど、実家に帰っていたとごまかしているんです」
「そっか」
と言っても、諸澄君には見られているんだよなぁ。僕と美来がデートをしている姿を目撃している生徒が彼以外にもいるかもしれない。
『週末になると寮からいなくなるけど何やってんの?』
僕が見たあのメッセージ。
もしかしたら、美来から聞いていることが、実際と食い違っているから送られたのかもしれない。でも、それは僕の考えすぎかもしれないから、可能性の1つとして心に留めておこう。
「えっ! な、何なのこの服は!」
浴室の方から有紗さんの声が聞こえた。
「月村さんに着てほしい服です」
そういえば、有紗さんがお風呂に入ることになったとき、美来が着替えを用意しておくと言っていたな。有紗さんがあんな反応をするなんて、いったいどんな服を着替えとして脱衣室に置いておいたんだ?
「どうしてこれなの……」
「私も着ていますから大丈夫ですって」
美来も着ているってことはメイド服か。有紗さんのメイド服姿……想像できないなぁ。でも、きっと可愛いんだろうな。
「えっ、美来ちゃんも着ているの? それならいいかな……」
いいのかよ。美来が着ているなら、僕にメイド服姿を見られることの恥ずかしさに勝ったのか。
「美来ちゃん、これ、どうやって着るの?」
「普通に着ればいいんですよ。そちらに行きますね。智也さんは覗かないでくださいね」
「覗かないから安心して行きなさい」
僕は一度たりとも美来の着替えを覗きに行ったことはないんだけれどな。有紗さんにはすると思っているのか?
「きゃっ! 美来ちゃん、どこを触ってるの!」
「月村さん、お肌が綺麗だなと思いまして。スタイルもいいですよね。私よりも背が高いですし、羨ましいなぁ」
「胸とか脚をそんなに触らないで、くすぐったい……」
いったい、美来と有紗さんは何をやっているんだか。
美来が浴室の方に行ってから2、3分後。
「やっと終わりました。ほら、月村さんも」
「う、うん……」
美来に手を引かれて出てきた有紗さんはもちろんメイド服姿。カチューシャをきちんと頭に付けていて。
ちなみに、有紗さんとお揃いの姿になることが嬉しいのか、美来は可愛らしい笑みを見せる。
「……に、似合っているかな?」
「似合っていますよ。とても可愛らしいです」
メイド服を着ている姿を見ていると、不思議と2人の年齢がそこまで離れていないように思える。
「そっか。なら良かった。もしかして、智也君ってメイドさん好きなの?」
「メイド喫茶は一度も行ったことはありませんが。服装としては好きですね」
「……ご主人様。なんてね。ふふっ」
有紗さんの嬉しそうな笑顔はとても可愛い。思わず見惚れてしまった。まさか、有紗さんにご主人様と言われる日が来るなんてなぁ。
家の中にメイドさんが1人増えたことになるのか。こんなアパートの一室に。先週よりもシュールさが増しているぞ。
「さあ、朝ご飯ができましたよ。一緒に食べましょう」
2人で美来の作った朝食を配膳する。メイド服を着た女性が食事の準備をしてくれると、お金持ちになったような気分になるけれど、あくまでも気分だけ。ここは一人暮らしの人間が住むアパートの一室だ。
「あたしの分までありがとね、美来ちゃん」
「いいえ、いいんですよ。2人分も3人分もあまり変わりません。では、3人で一緒に食べましょう。いただきます」
『いただきます』
僕はメイド服姿の2人に挟まれて、美来の作った朝食を食べる。今日も和風だけれど、とても美味しい。味噌汁を飲むと落ち着くな。
「そういえば、月曜日に私が作った煮物、ちゃんと食べきってくれたんですね。ありがとうございます」
「お礼を言うのは僕の方だよ。朝も炊いたご飯に、野菜を取るために煮物をちょっとずつ食べたよ。やっぱり、朝ご飯って大事だね」
「でしょう? 朝ご飯は大切なんですよ。食べられそうなときはなるべく食べてから会社に行くようにしてくださいね」
朝ご飯をちょっと食べても、満員電車の中で気持ち悪くなくなってきたし。これなら、これからも朝食を食べてから家を出ることができそうだ。
「何だか夫婦みたいで羨ましいなぁ」
「羨ましいですか? ちなみに私はこの家の鍵も持っているんですよ!」
「……そうだと思った。だって、昨日の夜からここにいたもんね」
誇らしげに胸を張る美来に、羨ましそうに頬を膨らます有紗さん。何とも言えない空気が僕の部屋を包み込んでいる。
「まあ、しょうがないわよね。美来ちゃんの方が先にそういう関係になったものね」
「月村さんが先でしたら、きっと月村さんの方が鍵を受け取っていたと思いますよ」
「まるで同棲しているみたいね。いいなぁ」
美来が家の鍵を持っているということで、有紗さんは美来よりも何歩も後ろにいると思っているんだろうな。
「正直なところ、智也君と美来ちゃんってどのくらいまで進んでるの?」
熟れたトマトのように顔を真っ赤にして、有紗さんはそんなことを訊いてくる。
「キスまではしましたよ?」
「キ、キスですって!」
美来からあっさりと事実を告げられ、有紗さんは悶えている。
「昨晩も月村さんが寝ている横でたくさんキスしましたよね」
「……そ、そうだね」
美来の不安だった気持ちを少しでも取り除くためだったんだけれど。
「……ねえ、智也君」
「何でしょうか?」
もじもじして、チラチラと有紗さんは僕のことを見てくる。
「あ、あたしともキスしてくれない?」
美来の前でキスをするっていうのか。それを美来が許すかどうか……って、美来はのほほんと味噌汁をすすっている。
「キスをするんですか? するのでしたら、私のことは気にせずにキスしてください。わ、私はご飯を……た、食べていますので……」
本人は平静を装っているつもりなんだろうけど、お椀を持っている手が震えており、今にも味噌汁が溢れそうだ。とっても気になっているみたい。
「するのであれば、早くしてしまいましょうか」
「う、うん。あたしから……していい?」
「分かりました」
まさか、有紗さんとキスをすることになるなんて。美来のときと同じか、いや……それ以上に緊張する。
有紗さんは僕のことをそっと抱きしめ、ゆっくりと顔を近づけていく。
「じゃあ、するよ?」
「はい」
「……智也君、好きだよ」
そう言うと、有紗さんは僕にキスをしてきた。ほんの数秒だったけれど、有紗さんの唇の柔らかさと温もりが確かに感じられる。
「まさか、智也君とキスできるときが来るなんて思わなかったよ。恋人同士ならもっと嬉しかったんだけれどね」
「そうですか」
唇を離したときの有紗さんの笑顔には、思わず惹かれてしまう。こんな有紗さんを他の男性は知っているのだろうか。なるべく、知っていてほしくない。
「ねえ、もう1度してもいい?」
「……好きなだけどうぞ」
僕がそう言ったからか、有紗さんは何度も唇を重ねてくる。舌まで絡ませてくるからドキドキするけれど、味噌汁の風味が感じられるので落ち着くという不思議な感覚に包まれている。キスは味噌の味……日本人らしい。
「早く食べないとご飯が冷めちゃいますよ」
いつまでもキスをしている僕と有紗さんを見かねたのか、美来はいつもよりも低い声でそう言った。
「そ、そうだね! 早く食べちゃいましょう!」
「そうですね」
僕と有紗さんは食事を再開する。美来のご機嫌を取るためにも美味しいと言い続け、食事の後片付けも有紗さんと2人でするのであった。
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