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続編-ゴールデンウィーク編-
第34話『3人でひさしぶりに-後編-』
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俺の髪も洗い終わったので、次は体を洗うことに。
和奏姉さんの提案で、俺の背中を姉さん、姉さんの背中をサクラが流す。2人の背中を流し終わった後に、姉さんがサクラの背中を流すことに決まった。
「和奏ちゃん。今の洗い方で大丈夫ですか? 痛くはないですか?」
「大丈夫だよ、フミちゃん。凄く気持ちいい」
「良かったです。じゃあ、この感じで洗っていきますね」
「うん、お願いね。大輝はどう?」
「俺も大丈夫。気持ちいいよ」
「分かった。じゃあ、この感じでやっていくね」
曇っている鏡を右手で拭くと、俺の背中を流してくれる和奏姉さんはもちろんのこと、姉さんの後ろにいるサクラの姿も見える。こういう光景を見ると、とても懐かしい気持ちになる。
「背中を流してもらいながら、誰かの背中を流すのも懐かしいなぁ」
弾んだ声で和奏姉さんはそう言う。人それぞれで、懐かしいと思うポイントが違うようだ。
「こうやって3人並んで背中を流すのはひさしぶりですもんね。小さい頃に家族ぐるみで温泉旅行に行ったときは、女性の大浴場で優子さんとお母さんと5人並んで背中を流しましたよね」
「やったねぇ」
「そんなこともあったなぁ」
家族ぐるみで旅行に行くことが多かったから、俺も小さい頃は女湯に何度も入らせてもらった。背中を流し合ったり、一緒に温泉に入ったりして楽しかったな。貸切風呂とかではない限り、もう二度とホテルや旅館ではああいった時間を過ごせないだろう。
そういえば、俺が女湯に入ることはあったけど、サクラと和奏姉さんが男湯に入ってきたことは一度もなかったな。
「あっ、思い出した。一度、大輝が大浴場の浴槽で転びそうになったとき、美紀さんが大輝を抱き留めたことがあったよね」
「ありましたね! そのときはダイちゃん……お母さんの胸に顔を突っ込んでいましたね」
「……俺も思い出した。幼稚園の頃だったな。あのとき、美紀さんはなかなか俺のことを離さなかったんだよなぁ」
とても柔らかいものに顔を包まれて、優しくて甘い匂いがしたことを覚えている。幼稚園に通っていた頃だったので、そのときは「転ばなくて良かった」くらいにしか思わなかったな。
「息子ってこんな感じなのかもって、お母さんがダイちゃんを嬉しそうに抱いていたよ。それを見ていいなぁって思ってた」
「ふふっ。……大輝、背中流し終わったよ」
「ありがとう、姉さん」
「私の方も流し終わりました」
「ありがとう、フミちゃん。じゃあ、フミちゃんの背中はあたしが流すね。大輝は……あとは自分で洗ってくれる? お姉ちゃんに洗ってほしいなら前も洗ってあげるけど?」
「気持ちだけ受け取っておくよ。あとは自分でやるさ」
「……はぁい」
ちょっとつまらなそうに返事し、俺にボディータオルを渡してくる和奏姉さん。洗ってほしいならとか言っていたけど、本当は俺の体をもっと洗いたかったのでは。姉さんならあり得そうだ。
俺は和奏姉さんから受け取ったボディータオルで背中以外の部分を洗っていく。
「フミちゃん、気持ちいい?」
「はい、気持ちいいです」
「良かった」
背後からそんな楽しげな会話が聞こえてくる。一昨日、小泉さんと3人で一緒に入浴したときも、2人は今のように楽しく話していたのだろう。
昔のハプニング話をしたので、何かハプニングが起きてしまわないかどうか心配だったけど、何事もなく俺達3人は体を洗い終える。
「いよいよ、大輝とフミちゃんと3人で湯船に浸かるんだね」
「そうですね。青葉ちゃんと一緒に入ったときは窮屈じゃなかったから、きっとダイちゃんとも一緒に入れるよ」
「そうだといいんだけどな」
「もし、窮屈そうだったら、大輝がフミちゃんを抱き寄せればいいんじゃないかな?」
「ほええっ!」
サクラの甘い声が浴室中に響き渡る。その声が大きかったので耳が痛くなってしまう。
和奏姉さんはとっさに両手で耳を塞いでいた。驚いてはいるものの、特に痛がっている様子はないので、耳は無事な模様。
「ま、まずかったかな?」
「えっと、その……ダイちゃんとは付き合い始めてから何度もお風呂に入っていますけど、裸で抱き合ったことはなくて。そんなことをしたら、ドキドキしてすぐにのぼせてしまうかもしれないです……」
サクラは顔を真っ赤にし、か弱い声でそう言った。俺と目が合うとすぐに視線を逸らしてしまう。
「サクラの言う通りだな。俺も今のサクラと抱き合ったらのぼせるかもしれない。だから、窮屈そうなら姉さんがサクラを抱き寄せてくれないか?」
「分かったよ。じゃあ、3人で一緒に入ろう」
俺は和奏姉さんと向かい合うようにして体育座りの形で座り、背中を浴槽の壁にくっつける。
サクラは浴室の入り口の方に向きながら、俺と和奏姉さんの間にできたスペースにゆっくりと腰を下ろそうとすると、
「ひゃっ」
そんなサクラの声が聞こえたのと同時に、両脚のつま先に何か柔らかいものが当たる。おそらく、彼女の太ももかおしりが当たったのだろう。
「両側の太ももに2人のつま先が当たっちゃいますね」
「じゃあ、私に寄りかかる形で入ろうか。大輝、脚を伸ばすから当たっちゃうかもしれない」
「かまわないよ」
和奏姉さんはゆっくりと脚を伸ばすと、俺の両脚に触れる。このくらいなら全く問題ないな。
そして、サクラは和奏姉さんに寄りかかるようにして湯船に浸かった。湯船のお湯が気持ちいいのか、それとも和奏姉さんに寄りかかる体勢が気に入ったのか、サクラはまったりとした表情に。
「あぁ、気持ちいい。和奏ちゃんに寄りかかるのもいいですね」
「嬉しいな。私もフミちゃんを後ろから抱きしめるのはいいよ」
そう言って、サクラと和奏姉さんは笑い合っている。その光景が微笑ましい。将来は義理の姉妹になるかもしれないと思うと感慨深くもある。
あと、俺も和奏姉さんのように、サクラを後ろから抱きしめながら湯船に浸かりたい。……想像してみるだけで結構ドキドキしてくる。体も熱くなってきたし、のぼせ防止のためにも想像タイム終了だ。
「どうしたの、ダイちゃん。顔を赤くして」
「一番風呂だからか、お湯が熱めだなって思ったんだ。……今でもうちの湯船で3人一緒に入れたな」
「そうだね、ダイちゃん」
「入れたね。小さい頃みたいに湯船に余裕はあんまりないけどさ。それでも、あのときみたいな時間を過ごせてお姉ちゃんは幸せだよ」
「私も幸せですよ。……ダイちゃんはどう?」
サクラがそう問いかけると、彼女と和奏姉さんは俺をじっと見つめてくる。2人が幸せだって言葉にしてくれたんだから、俺もちゃんと言わないと。
「……懐かしくていいなって思ったよ。それに、サクラと仲直りして、恋人にならないとこういう時間は過ごせない。だから……俺も幸せだよ」
そういう形で言ったけど、幸せだって口にすると照れくさいな。サクラと和奏姉さんが俺を見つめるから照れくささが右肩上がり。2人を見るよりも、湯船に顔をつけた方が顔の熱くなり方がマシになるんじゃないだろうか。そんなことを考えても、2人から視線を離すことはできなかった。
からかわれるかな……と思ったら、サクラは嬉しそうな、和奏姉さんは優しげな笑顔をそれぞれ見せてくれる。
「ダイちゃんが同じ気持ちで嬉しいよ!」
「そうだね、フミちゃん。これから、帰省したら一度は3人でお風呂に入ろっか」
「いいですね!」
「サクラがそう言うなら俺もいいよ」
ちなみに、今年の春休みの帰省までは、帰省の度に和奏姉さんと2人きりで入浴するのがお決まりだった。そのお決まりが、これからはサクラとの3人での入浴に変わるのかな。……いや、和奏姉さんのことだから、俺との2人きりの入浴を継続するかもしれない。
「そうだ。お風呂に3人で入ったんだから、今日は3人で寝ようよ。一昨日と昨日はフミちゃんの部屋だから、今日は大輝の部屋でさ」
「それいいですね!」
「いいよ。ただ、3人で俺のベッドには寝られないと思うぞ。ふとんを敷いて姉さんが寝るのか?」
「ううん。ふとんを2枚敷いてそこで3人で寝るつもりだよ」
「素敵ですね! 私は賛成です!」
「ふとん2枚だったら、身を寄せ合えば何とか寝られるか」
「きっと寝られるよ。決まりだね!」
「ですね!」
サクラと和奏姉さんは楽しく笑い合っている。かつてのお泊まり会のように眠れるのが嬉しいのだろう。
サクラの部屋に置いてある帰省用の和奏姉さんのふとんと、客間にあるふとんを使えば大丈夫か。テーブルとクッションを部屋の端に動かせば、ふとん2枚くらいは敷けるスペースはあるはず。きっと大丈夫だろう。
それから少しの間、湯船に浸かり続ける。サクラと和奏姉さんのおかげか、普段よりも体の温まり方は早く感じられた。それでも、苦しさは感じずとても心地よかった。
お風呂から上がった後は俺の部屋でテレビを見たり、ゲームをしたり、一紗とのお出かけの話をしたりして過ごした。
あっという間に日付変更目前の時間がやってきて、俺達は寝る準備に入る。
2枚のふとんについては、昨日、一紗と杏奈が泊まった際に使ったためサクラの部屋にあるとのこと。俺がふとん2枚をサクラの部屋から持ってきて、ベッドの横に敷く。予想通り、テーブルとクッションを動かしたら敷けた。
「それで、どういう並びで寝るんだ?」
「大輝が真ん中」
「賛成です!」
「まあ、2人がそれでいいなら」
とは言うものの、俺が真ん中になるんじゃないかと思っていたよ。
歯を磨いたり、お手洗いを済ませたりして、俺達は2枚並んだふとんの中に入る。その際、サクラはもちろんのこと、和奏姉さんも俺の腕を抱きしめてきた。ちなみに、サクラが左腕で和奏姉さんが右腕。
小さい頃も、こうして2人で腕を抱かれながら寝たことがあったっけ。
「サクラも和奏姉さんもふとんからは出てないか?」
「大丈夫だよ、ダイちゃん」
「あたしも。……寝ぼけてあたしにキスしちゃダメだよ、大輝」
「ダメだよ! ダイちゃん!」
「そんなことにはならないよ。安心しろ」
匂いで判別できるからな。あと、腕に当たっている柔らかな感触の違いとかでも。ただ、それを言ったら、2人にどんな反応をされるのか恐いので言わないでおくけど。
「一昨日はフミちゃんと青葉ちゃん、昨日はフミちゃんと一紗ちゃんと杏奈ちゃんが一緒だったけど、こうして大輝とフミちゃんと3人で寝るのもいいね。懐かしいし」
「そうですね。あと、ふとんに入ってダイちゃんと和奏ちゃんの匂いを感じるととても懐かしい気持ちになります。今日はいい夢が見られそうです」
「あたしも」
「こうして寝るのはひさしぶりだから、どんな夢を見られるか楽しみだ」
「そうだね。温かいから眠くなってきた。大輝、フミちゃん、おやすみ」
「おやすみなさい」
「2人ともおやすみ」
俺はゆっくりと目を瞑る。
ひさしぶりにサクラと和奏姉さんから腕を抱かれてどうなるかと思ったけど、2人の温もりと甘い匂い、柔らかさが心地良くて。目を瞑ってからあまり時間が経たないうちに眠りについた。
和奏姉さんの提案で、俺の背中を姉さん、姉さんの背中をサクラが流す。2人の背中を流し終わった後に、姉さんがサクラの背中を流すことに決まった。
「和奏ちゃん。今の洗い方で大丈夫ですか? 痛くはないですか?」
「大丈夫だよ、フミちゃん。凄く気持ちいい」
「良かったです。じゃあ、この感じで洗っていきますね」
「うん、お願いね。大輝はどう?」
「俺も大丈夫。気持ちいいよ」
「分かった。じゃあ、この感じでやっていくね」
曇っている鏡を右手で拭くと、俺の背中を流してくれる和奏姉さんはもちろんのこと、姉さんの後ろにいるサクラの姿も見える。こういう光景を見ると、とても懐かしい気持ちになる。
「背中を流してもらいながら、誰かの背中を流すのも懐かしいなぁ」
弾んだ声で和奏姉さんはそう言う。人それぞれで、懐かしいと思うポイントが違うようだ。
「こうやって3人並んで背中を流すのはひさしぶりですもんね。小さい頃に家族ぐるみで温泉旅行に行ったときは、女性の大浴場で優子さんとお母さんと5人並んで背中を流しましたよね」
「やったねぇ」
「そんなこともあったなぁ」
家族ぐるみで旅行に行くことが多かったから、俺も小さい頃は女湯に何度も入らせてもらった。背中を流し合ったり、一緒に温泉に入ったりして楽しかったな。貸切風呂とかではない限り、もう二度とホテルや旅館ではああいった時間を過ごせないだろう。
そういえば、俺が女湯に入ることはあったけど、サクラと和奏姉さんが男湯に入ってきたことは一度もなかったな。
「あっ、思い出した。一度、大輝が大浴場の浴槽で転びそうになったとき、美紀さんが大輝を抱き留めたことがあったよね」
「ありましたね! そのときはダイちゃん……お母さんの胸に顔を突っ込んでいましたね」
「……俺も思い出した。幼稚園の頃だったな。あのとき、美紀さんはなかなか俺のことを離さなかったんだよなぁ」
とても柔らかいものに顔を包まれて、優しくて甘い匂いがしたことを覚えている。幼稚園に通っていた頃だったので、そのときは「転ばなくて良かった」くらいにしか思わなかったな。
「息子ってこんな感じなのかもって、お母さんがダイちゃんを嬉しそうに抱いていたよ。それを見ていいなぁって思ってた」
「ふふっ。……大輝、背中流し終わったよ」
「ありがとう、姉さん」
「私の方も流し終わりました」
「ありがとう、フミちゃん。じゃあ、フミちゃんの背中はあたしが流すね。大輝は……あとは自分で洗ってくれる? お姉ちゃんに洗ってほしいなら前も洗ってあげるけど?」
「気持ちだけ受け取っておくよ。あとは自分でやるさ」
「……はぁい」
ちょっとつまらなそうに返事し、俺にボディータオルを渡してくる和奏姉さん。洗ってほしいならとか言っていたけど、本当は俺の体をもっと洗いたかったのでは。姉さんならあり得そうだ。
俺は和奏姉さんから受け取ったボディータオルで背中以外の部分を洗っていく。
「フミちゃん、気持ちいい?」
「はい、気持ちいいです」
「良かった」
背後からそんな楽しげな会話が聞こえてくる。一昨日、小泉さんと3人で一緒に入浴したときも、2人は今のように楽しく話していたのだろう。
昔のハプニング話をしたので、何かハプニングが起きてしまわないかどうか心配だったけど、何事もなく俺達3人は体を洗い終える。
「いよいよ、大輝とフミちゃんと3人で湯船に浸かるんだね」
「そうですね。青葉ちゃんと一緒に入ったときは窮屈じゃなかったから、きっとダイちゃんとも一緒に入れるよ」
「そうだといいんだけどな」
「もし、窮屈そうだったら、大輝がフミちゃんを抱き寄せればいいんじゃないかな?」
「ほええっ!」
サクラの甘い声が浴室中に響き渡る。その声が大きかったので耳が痛くなってしまう。
和奏姉さんはとっさに両手で耳を塞いでいた。驚いてはいるものの、特に痛がっている様子はないので、耳は無事な模様。
「ま、まずかったかな?」
「えっと、その……ダイちゃんとは付き合い始めてから何度もお風呂に入っていますけど、裸で抱き合ったことはなくて。そんなことをしたら、ドキドキしてすぐにのぼせてしまうかもしれないです……」
サクラは顔を真っ赤にし、か弱い声でそう言った。俺と目が合うとすぐに視線を逸らしてしまう。
「サクラの言う通りだな。俺も今のサクラと抱き合ったらのぼせるかもしれない。だから、窮屈そうなら姉さんがサクラを抱き寄せてくれないか?」
「分かったよ。じゃあ、3人で一緒に入ろう」
俺は和奏姉さんと向かい合うようにして体育座りの形で座り、背中を浴槽の壁にくっつける。
サクラは浴室の入り口の方に向きながら、俺と和奏姉さんの間にできたスペースにゆっくりと腰を下ろそうとすると、
「ひゃっ」
そんなサクラの声が聞こえたのと同時に、両脚のつま先に何か柔らかいものが当たる。おそらく、彼女の太ももかおしりが当たったのだろう。
「両側の太ももに2人のつま先が当たっちゃいますね」
「じゃあ、私に寄りかかる形で入ろうか。大輝、脚を伸ばすから当たっちゃうかもしれない」
「かまわないよ」
和奏姉さんはゆっくりと脚を伸ばすと、俺の両脚に触れる。このくらいなら全く問題ないな。
そして、サクラは和奏姉さんに寄りかかるようにして湯船に浸かった。湯船のお湯が気持ちいいのか、それとも和奏姉さんに寄りかかる体勢が気に入ったのか、サクラはまったりとした表情に。
「あぁ、気持ちいい。和奏ちゃんに寄りかかるのもいいですね」
「嬉しいな。私もフミちゃんを後ろから抱きしめるのはいいよ」
そう言って、サクラと和奏姉さんは笑い合っている。その光景が微笑ましい。将来は義理の姉妹になるかもしれないと思うと感慨深くもある。
あと、俺も和奏姉さんのように、サクラを後ろから抱きしめながら湯船に浸かりたい。……想像してみるだけで結構ドキドキしてくる。体も熱くなってきたし、のぼせ防止のためにも想像タイム終了だ。
「どうしたの、ダイちゃん。顔を赤くして」
「一番風呂だからか、お湯が熱めだなって思ったんだ。……今でもうちの湯船で3人一緒に入れたな」
「そうだね、ダイちゃん」
「入れたね。小さい頃みたいに湯船に余裕はあんまりないけどさ。それでも、あのときみたいな時間を過ごせてお姉ちゃんは幸せだよ」
「私も幸せですよ。……ダイちゃんはどう?」
サクラがそう問いかけると、彼女と和奏姉さんは俺をじっと見つめてくる。2人が幸せだって言葉にしてくれたんだから、俺もちゃんと言わないと。
「……懐かしくていいなって思ったよ。それに、サクラと仲直りして、恋人にならないとこういう時間は過ごせない。だから……俺も幸せだよ」
そういう形で言ったけど、幸せだって口にすると照れくさいな。サクラと和奏姉さんが俺を見つめるから照れくささが右肩上がり。2人を見るよりも、湯船に顔をつけた方が顔の熱くなり方がマシになるんじゃないだろうか。そんなことを考えても、2人から視線を離すことはできなかった。
からかわれるかな……と思ったら、サクラは嬉しそうな、和奏姉さんは優しげな笑顔をそれぞれ見せてくれる。
「ダイちゃんが同じ気持ちで嬉しいよ!」
「そうだね、フミちゃん。これから、帰省したら一度は3人でお風呂に入ろっか」
「いいですね!」
「サクラがそう言うなら俺もいいよ」
ちなみに、今年の春休みの帰省までは、帰省の度に和奏姉さんと2人きりで入浴するのがお決まりだった。そのお決まりが、これからはサクラとの3人での入浴に変わるのかな。……いや、和奏姉さんのことだから、俺との2人きりの入浴を継続するかもしれない。
「そうだ。お風呂に3人で入ったんだから、今日は3人で寝ようよ。一昨日と昨日はフミちゃんの部屋だから、今日は大輝の部屋でさ」
「それいいですね!」
「いいよ。ただ、3人で俺のベッドには寝られないと思うぞ。ふとんを敷いて姉さんが寝るのか?」
「ううん。ふとんを2枚敷いてそこで3人で寝るつもりだよ」
「素敵ですね! 私は賛成です!」
「ふとん2枚だったら、身を寄せ合えば何とか寝られるか」
「きっと寝られるよ。決まりだね!」
「ですね!」
サクラと和奏姉さんは楽しく笑い合っている。かつてのお泊まり会のように眠れるのが嬉しいのだろう。
サクラの部屋に置いてある帰省用の和奏姉さんのふとんと、客間にあるふとんを使えば大丈夫か。テーブルとクッションを部屋の端に動かせば、ふとん2枚くらいは敷けるスペースはあるはず。きっと大丈夫だろう。
それから少しの間、湯船に浸かり続ける。サクラと和奏姉さんのおかげか、普段よりも体の温まり方は早く感じられた。それでも、苦しさは感じずとても心地よかった。
お風呂から上がった後は俺の部屋でテレビを見たり、ゲームをしたり、一紗とのお出かけの話をしたりして過ごした。
あっという間に日付変更目前の時間がやってきて、俺達は寝る準備に入る。
2枚のふとんについては、昨日、一紗と杏奈が泊まった際に使ったためサクラの部屋にあるとのこと。俺がふとん2枚をサクラの部屋から持ってきて、ベッドの横に敷く。予想通り、テーブルとクッションを動かしたら敷けた。
「それで、どういう並びで寝るんだ?」
「大輝が真ん中」
「賛成です!」
「まあ、2人がそれでいいなら」
とは言うものの、俺が真ん中になるんじゃないかと思っていたよ。
歯を磨いたり、お手洗いを済ませたりして、俺達は2枚並んだふとんの中に入る。その際、サクラはもちろんのこと、和奏姉さんも俺の腕を抱きしめてきた。ちなみに、サクラが左腕で和奏姉さんが右腕。
小さい頃も、こうして2人で腕を抱かれながら寝たことがあったっけ。
「サクラも和奏姉さんもふとんからは出てないか?」
「大丈夫だよ、ダイちゃん」
「あたしも。……寝ぼけてあたしにキスしちゃダメだよ、大輝」
「ダメだよ! ダイちゃん!」
「そんなことにはならないよ。安心しろ」
匂いで判別できるからな。あと、腕に当たっている柔らかな感触の違いとかでも。ただ、それを言ったら、2人にどんな反応をされるのか恐いので言わないでおくけど。
「一昨日はフミちゃんと青葉ちゃん、昨日はフミちゃんと一紗ちゃんと杏奈ちゃんが一緒だったけど、こうして大輝とフミちゃんと3人で寝るのもいいね。懐かしいし」
「そうですね。あと、ふとんに入ってダイちゃんと和奏ちゃんの匂いを感じるととても懐かしい気持ちになります。今日はいい夢が見られそうです」
「あたしも」
「こうして寝るのはひさしぶりだから、どんな夢を見られるか楽しみだ」
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読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や感想をお待ちしております。
『クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。』の続編がスタートしました!(2025.2.8) 学園ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/89864889
『高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。』は全編公開中です。 学園ラブコメ作品です。是非、読みに来てみてください。宜しくお願いします。
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しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
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