130 / 194
続編-ゴールデンウィーク編-
第29話『ありのまま』
しおりを挟む
夕食は予定通り鶏塩鍋。母さんと俺で作った。
鍋だから一人増えても変わらないという理由で羽柴を誘い、彼も一緒に食べることに。
泊まりに来た一紗と杏奈のことや、午後に見たアルバムやホームビデオを主な話題にして、和やかで楽しく夕食の時間が進む。小さい頃の俺が可愛かったと一紗と杏奈が何度も言うので、俺は恥ずかしいけど。
速水家の人間とサクラはもちろんのこと、一紗と杏奈、羽柴も美味しそうに食べてくれる。作った人間として、これ以上に嬉しいことはない。
また、一紗は持ち前の大食いを発揮して、俺よりも食べている。小泉さんと競わせたいと思うほどにモリモリと食べてくれる。
そんな小泉さんから、夕食中にLIMEのグループトークにメッセージが届いた。向こうの夕食はポークカレーとのこと。たくさん練習してお腹が空いたから、小泉さんは5杯食べたらしい。小泉さんの胃は四次元なんじゃないか?
一紗を筆頭に、サクラも和奏姉さんも杏奈もたくさん食べてくれたので、用意していた鍋の具はもちろんのこと、締めのラーメンも完食してくれた。
『ごちそうさまでした!』
食卓にいる8人全員でそう言って、夕食が終了した。
「大輝君! お母様! とても美味しい夕食でした!」
「本当に美味しかったですよね、一紗先輩。美味しい夕食を作っていただきありがとうございました」
「俺まで美味しい夕食をありがとうございました」
一紗、杏奈、羽柴はお礼の言葉を言う。杏奈は俺と母さんに向かって頭を下げる。杏奈に倣ってか一紗と羽柴も。
「いえいえ。みんなが美味しく食べてくれて俺は嬉しいよ」
「お母さんも。2人ともたくさん食べてくれて嬉しかったわ」
「一紗ちゃんは凄かったですよね。和奏ちゃんもなかなかでしたが」
「大輝も作った夕ご飯だからね。昨日の青葉ちゃんに負けないくらいの食べっぷりだったよ。競わせたらいい勝負になるかも」
和奏姉さんは俺と似たようなことを考えるんだな。さすがは俺の姉。
「じゃあ、俺はそろそろ帰ります」
「分かった」
羽柴がそう言うので、俺は彼を玄関まで見送ることに。
「いやぁ、楽しい午後の時間だった。和奏さんからは漫画やラノベとかの特典をたくさんもらえたし」
「もらったときは本当に嬉しそうだったよな。俺も楽しかったよ」
「そうか。桜井っていう恋人もいるんだし、麻生や小鳥遊と変なことはするんじゃないぞ。いや、むしろしそうなのは麻生の方か。速水の家に泊まるから興奮しそうだし」
「そうだな。気をつけておくよ」
サクラと和奏姉さんがいるから大丈夫だと思うけど。杏奈も一紗に比べたら、変なことをする可能性はかなり低いだろう。
「じゃあな、速水」
「ああ、またな」
羽柴は小さく手を振って、家を後にした。
キッチンに戻ると、食事が終わったけど今も談笑が続いている。
「羽柴、帰っていったよ」
「そうか。お風呂は母さんと大輝が夕食を作っている間に準備しておいたから、今すぐに入れるよ。昨日と同じように、若い人達が先に入りなさい」
「分かったよ、お父さん。……昨日、フミちゃんと青葉ちゃんと3人で入ったんだけど、うちのお風呂だと一緒に入るのは3人が限界だと思う。だから、私は……一度も入ったことのない一紗ちゃんと杏奈ちゃんと一緒に入りたいんだけど。大輝達はどうかな?」
やっぱり、今日は一紗と杏奈と一緒に入ろうとしているんだな、和奏姉さんは。
「……って、俺にまで同意を求めるのか。一紗達がよければ、俺はそれでいいんじゃないかと思う」
俺がそう言うと、和奏姉さんは口角を上げて頷いた。
「和奏ちゃんの言うように、昨日の感じだと、この4人で入るのは広さ的に厳しいと思いますね。一緒に入るなら3人までがいいかと」
「なるほどです。機会がそうそうないという意味でも、和奏さんとは一緒に入りたいですね」
「私もお姉様と入れる機会は滅多にないから、一緒に入りたいわ。杏奈さんとも入りたいし。ということは、お姉様の案で決定ね」
うんうん、と一紗はとても納得した様子で頷いている。しかし、杏奈はちょっと怪訝な表情に。
「和奏さんはもちろんいいですよ。ただ、一紗先輩は……あたしが素肌を晒したことで興奮して、厭らしいことをしないかどうか心配です」
やはり、一紗のことで心配していたか。
一紗は「こほん」とわざとらしく咳き込むと、真面目な表情になって杏奈を見る。
「……しないわよ。文香さんから、ここに泊まる条件として杏奈さんに厭らしいことをしないと約束したんだし」
「……約束がありましたね」
「まあ、あたしも一緒に入るからさ。何か嫌だなって思うことがあったら、遠慮なくあたしに言って。あたしが杏奈ちゃんを守って、一紗ちゃんに注意してあげるから」
「……分かりました。では、和奏さんと一紗先輩と一緒に入りましょう」
「ありがとう! 杏奈さん!」
一紗、今日で一番と言っていいくらいに喜んでいるぞ。あまりにも嬉しすぎて、杏奈に何か変なことをしてしまわないかちょっと不安になるけど、和奏姉さんが一緒に入るからきっと大丈夫だろう。
「ちなみに、寝るのはフミちゃんも一緒に4人でね。客間にもふとんがあるから、それを敷けば4人で寝られると思うよ」
「分かりました。楽しみにしています。じゃあ、今日は私と2人でお風呂に入ろうか、ダイちゃん」
「そうだな。じゃあ、一番風呂は和奏姉さん達が……」
「大輝君、ちょっと待って。提案があるのだけれど」
「どんなことだろう、一紗」
「大輝君と文香さんが一番風呂に入るのはどう? そうすれば……私達が入ったときに、2人とも一緒に入るような気分になれそうだから」
「なるほど……」
一紗の言うことも……分からなくはないかな。それも本当かもしれないけど、一番の理由は俺とサクラの入ったお湯に浸かりたいことじゃないか? 一紗は俺とサクラを見ながらちょっとニヤけているし。
「……こればかりは杏奈と和奏姉さんの意見次第だな。特に杏奈。どうだろう?」
男性の入った湯船に入るのは抵抗感や嫌悪感を抱くかもしれない。春休みの帰省時にも一緒に入浴した和奏姉さんは大丈夫そうだけど、杏奈は嫌がる可能性はある。
「うちでは最初に入ることも多いですが……大輝先輩と文香先輩であれば、お二人の後でもかまいません」
「お姉ちゃんは大丈夫だよ!」
「そうか。2人がこう言うなら……一番風呂をいただくか、サクラ」
「そうだね。じゃあ、私達が最初に入りますね」
「ゆっくり入ってきてね」
和奏姉さんのその言葉に一紗も杏奈も頷いているので……お言葉に甘えて、サクラとゆっくり入浴することにしよう。
自分の部屋で替えの下着や寝間着など必要なもの用意し、サクラと一緒に1階の洗面所へと向かう。
いつも通り、俺達は互いに背を向けた状態で服を脱ぎ始める。
「まさか、私達が一番風呂に入るとは思わなかったよね」
「ああ。一紗がそう提案した一番の理由って、俺達の入ったお湯に浸かりたいからことだよな」
「私も同じことを思った」
ふふっ、とサクラの楽しげな声が聞こえてくる。サクラも同じ考えだったのが嬉しくて、俺も声に出して笑った。
和やかな雰囲気の中、着ていた服を全て脱ぐ。普段通りに腰にタオルを巻こうとしたときだった。
「……ねえ、ダイちゃん」
「うん?」
「……付き合い始めてから何度もお風呂に入っているし、そろそろ……全てを見せてもいいかなって私は思えてきたんだけど。ダイちゃんの姿も……見てみたいし。それに、昔、和奏ちゃんと3人で入ったときは隠さないことも多かったし」
「それは小さい頃の話だからなぁ。それに、俺達が恥ずかしいって言えば、和奏姉さんも隠していることは許してくれると思うけど」
「多分そうだと思うけど、予行演習も兼ねて。ダイちゃんは……どう?」
俺にしか聞こえないような小さな声で、サクラはそう問いかけてくる。内容が内容だけに体が段々と熱くなってくる。
今までは見られては恥ずかしい場所をタオルなどで隠したり、時には目を瞑ったりして対応していた。
正直、高校生になって成長したサクラの姿の全てを見てみたい。それに、2人きりのこの状況であれば、サクラに自分の姿を全てさらけ出してもいいと思える。
「……分かった。いいよ。一度、見せ合ってみよう」
「ありがとう。じゃあ、とりあえず……振り返って、お互いの姿を見てみようか。それで大丈夫そうならそのままで。恥ずかしかったら隠そう」
「分かった。じゃあ、俺が『せーの』って言ったら、振り返ろう。俺は服を脱いでいるけど、サクラはどうだ?」
「私も脱いでる。じゃあ、ダイちゃんが言ったタイミングで振り返ろっか」
「分かった。じゃあ……いくぞ。せーの!」
勇気を出して、俺は背後に振り返る。
すると、そこには綺麗な姿をしたサクラがこちらを向いて立っていた。凄くドキッとしたし、このままでは理性がぶっ飛びそうなので、すぐに視線をサクラの顔を向ける。
「……ほえっ」
サクラは顔を真っ赤にしてそんな可愛らしい声を漏らすと、視線を俺の目に向けた。
「小さい頃とは違うね、ダイちゃん。大人になった」
「……サクラこそ」
「……どうもです」
そう言うと、サクラははにかんだ。
「凄くドキッとして緊張もするけど……嫌じゃないよ。見るのも。見られるのも」
「……俺もだ」
こう言っていいのかは分からないけど、お互いの体を見たことで一つ壁が取れた感じがする。
「ただ……は、恥ずかしいから、今日はこのくらいにしよっか」
「そ、そうだな」
俺は再びサクラと背を向ける状態になり、手に持っていたタオルを腰に巻く。こうすると、いつも通りな感じがして気持ちが落ち着くな。
「こ、こっちに向いていいよ」
ゆっくりと振り返ると、そこにはタオルで前面を隠したサクラがいた。
「……入ろっか」
サクラのその言葉に首肯すると、サクラは何も言わずに俺の手を引いて浴室に連れて行ってくれた。
お互いの体を見たことの緊張や恥ずかしさもあって、今までよりもサクラを見る回数は少なかった。彼女と言葉を交わす回数も少なくて。
それでも、サクラと一緒に湯船に浸かると、今まで以上に気持ち良くて開放感も感じられた。気持ちいいのかサクラも笑顔になって。その姿はとても可愛かった。
鍋だから一人増えても変わらないという理由で羽柴を誘い、彼も一緒に食べることに。
泊まりに来た一紗と杏奈のことや、午後に見たアルバムやホームビデオを主な話題にして、和やかで楽しく夕食の時間が進む。小さい頃の俺が可愛かったと一紗と杏奈が何度も言うので、俺は恥ずかしいけど。
速水家の人間とサクラはもちろんのこと、一紗と杏奈、羽柴も美味しそうに食べてくれる。作った人間として、これ以上に嬉しいことはない。
また、一紗は持ち前の大食いを発揮して、俺よりも食べている。小泉さんと競わせたいと思うほどにモリモリと食べてくれる。
そんな小泉さんから、夕食中にLIMEのグループトークにメッセージが届いた。向こうの夕食はポークカレーとのこと。たくさん練習してお腹が空いたから、小泉さんは5杯食べたらしい。小泉さんの胃は四次元なんじゃないか?
一紗を筆頭に、サクラも和奏姉さんも杏奈もたくさん食べてくれたので、用意していた鍋の具はもちろんのこと、締めのラーメンも完食してくれた。
『ごちそうさまでした!』
食卓にいる8人全員でそう言って、夕食が終了した。
「大輝君! お母様! とても美味しい夕食でした!」
「本当に美味しかったですよね、一紗先輩。美味しい夕食を作っていただきありがとうございました」
「俺まで美味しい夕食をありがとうございました」
一紗、杏奈、羽柴はお礼の言葉を言う。杏奈は俺と母さんに向かって頭を下げる。杏奈に倣ってか一紗と羽柴も。
「いえいえ。みんなが美味しく食べてくれて俺は嬉しいよ」
「お母さんも。2人ともたくさん食べてくれて嬉しかったわ」
「一紗ちゃんは凄かったですよね。和奏ちゃんもなかなかでしたが」
「大輝も作った夕ご飯だからね。昨日の青葉ちゃんに負けないくらいの食べっぷりだったよ。競わせたらいい勝負になるかも」
和奏姉さんは俺と似たようなことを考えるんだな。さすがは俺の姉。
「じゃあ、俺はそろそろ帰ります」
「分かった」
羽柴がそう言うので、俺は彼を玄関まで見送ることに。
「いやぁ、楽しい午後の時間だった。和奏さんからは漫画やラノベとかの特典をたくさんもらえたし」
「もらったときは本当に嬉しそうだったよな。俺も楽しかったよ」
「そうか。桜井っていう恋人もいるんだし、麻生や小鳥遊と変なことはするんじゃないぞ。いや、むしろしそうなのは麻生の方か。速水の家に泊まるから興奮しそうだし」
「そうだな。気をつけておくよ」
サクラと和奏姉さんがいるから大丈夫だと思うけど。杏奈も一紗に比べたら、変なことをする可能性はかなり低いだろう。
「じゃあな、速水」
「ああ、またな」
羽柴は小さく手を振って、家を後にした。
キッチンに戻ると、食事が終わったけど今も談笑が続いている。
「羽柴、帰っていったよ」
「そうか。お風呂は母さんと大輝が夕食を作っている間に準備しておいたから、今すぐに入れるよ。昨日と同じように、若い人達が先に入りなさい」
「分かったよ、お父さん。……昨日、フミちゃんと青葉ちゃんと3人で入ったんだけど、うちのお風呂だと一緒に入るのは3人が限界だと思う。だから、私は……一度も入ったことのない一紗ちゃんと杏奈ちゃんと一緒に入りたいんだけど。大輝達はどうかな?」
やっぱり、今日は一紗と杏奈と一緒に入ろうとしているんだな、和奏姉さんは。
「……って、俺にまで同意を求めるのか。一紗達がよければ、俺はそれでいいんじゃないかと思う」
俺がそう言うと、和奏姉さんは口角を上げて頷いた。
「和奏ちゃんの言うように、昨日の感じだと、この4人で入るのは広さ的に厳しいと思いますね。一緒に入るなら3人までがいいかと」
「なるほどです。機会がそうそうないという意味でも、和奏さんとは一緒に入りたいですね」
「私もお姉様と入れる機会は滅多にないから、一緒に入りたいわ。杏奈さんとも入りたいし。ということは、お姉様の案で決定ね」
うんうん、と一紗はとても納得した様子で頷いている。しかし、杏奈はちょっと怪訝な表情に。
「和奏さんはもちろんいいですよ。ただ、一紗先輩は……あたしが素肌を晒したことで興奮して、厭らしいことをしないかどうか心配です」
やはり、一紗のことで心配していたか。
一紗は「こほん」とわざとらしく咳き込むと、真面目な表情になって杏奈を見る。
「……しないわよ。文香さんから、ここに泊まる条件として杏奈さんに厭らしいことをしないと約束したんだし」
「……約束がありましたね」
「まあ、あたしも一緒に入るからさ。何か嫌だなって思うことがあったら、遠慮なくあたしに言って。あたしが杏奈ちゃんを守って、一紗ちゃんに注意してあげるから」
「……分かりました。では、和奏さんと一紗先輩と一緒に入りましょう」
「ありがとう! 杏奈さん!」
一紗、今日で一番と言っていいくらいに喜んでいるぞ。あまりにも嬉しすぎて、杏奈に何か変なことをしてしまわないかちょっと不安になるけど、和奏姉さんが一緒に入るからきっと大丈夫だろう。
「ちなみに、寝るのはフミちゃんも一緒に4人でね。客間にもふとんがあるから、それを敷けば4人で寝られると思うよ」
「分かりました。楽しみにしています。じゃあ、今日は私と2人でお風呂に入ろうか、ダイちゃん」
「そうだな。じゃあ、一番風呂は和奏姉さん達が……」
「大輝君、ちょっと待って。提案があるのだけれど」
「どんなことだろう、一紗」
「大輝君と文香さんが一番風呂に入るのはどう? そうすれば……私達が入ったときに、2人とも一緒に入るような気分になれそうだから」
「なるほど……」
一紗の言うことも……分からなくはないかな。それも本当かもしれないけど、一番の理由は俺とサクラの入ったお湯に浸かりたいことじゃないか? 一紗は俺とサクラを見ながらちょっとニヤけているし。
「……こればかりは杏奈と和奏姉さんの意見次第だな。特に杏奈。どうだろう?」
男性の入った湯船に入るのは抵抗感や嫌悪感を抱くかもしれない。春休みの帰省時にも一緒に入浴した和奏姉さんは大丈夫そうだけど、杏奈は嫌がる可能性はある。
「うちでは最初に入ることも多いですが……大輝先輩と文香先輩であれば、お二人の後でもかまいません」
「お姉ちゃんは大丈夫だよ!」
「そうか。2人がこう言うなら……一番風呂をいただくか、サクラ」
「そうだね。じゃあ、私達が最初に入りますね」
「ゆっくり入ってきてね」
和奏姉さんのその言葉に一紗も杏奈も頷いているので……お言葉に甘えて、サクラとゆっくり入浴することにしよう。
自分の部屋で替えの下着や寝間着など必要なもの用意し、サクラと一緒に1階の洗面所へと向かう。
いつも通り、俺達は互いに背を向けた状態で服を脱ぎ始める。
「まさか、私達が一番風呂に入るとは思わなかったよね」
「ああ。一紗がそう提案した一番の理由って、俺達の入ったお湯に浸かりたいからことだよな」
「私も同じことを思った」
ふふっ、とサクラの楽しげな声が聞こえてくる。サクラも同じ考えだったのが嬉しくて、俺も声に出して笑った。
和やかな雰囲気の中、着ていた服を全て脱ぐ。普段通りに腰にタオルを巻こうとしたときだった。
「……ねえ、ダイちゃん」
「うん?」
「……付き合い始めてから何度もお風呂に入っているし、そろそろ……全てを見せてもいいかなって私は思えてきたんだけど。ダイちゃんの姿も……見てみたいし。それに、昔、和奏ちゃんと3人で入ったときは隠さないことも多かったし」
「それは小さい頃の話だからなぁ。それに、俺達が恥ずかしいって言えば、和奏姉さんも隠していることは許してくれると思うけど」
「多分そうだと思うけど、予行演習も兼ねて。ダイちゃんは……どう?」
俺にしか聞こえないような小さな声で、サクラはそう問いかけてくる。内容が内容だけに体が段々と熱くなってくる。
今までは見られては恥ずかしい場所をタオルなどで隠したり、時には目を瞑ったりして対応していた。
正直、高校生になって成長したサクラの姿の全てを見てみたい。それに、2人きりのこの状況であれば、サクラに自分の姿を全てさらけ出してもいいと思える。
「……分かった。いいよ。一度、見せ合ってみよう」
「ありがとう。じゃあ、とりあえず……振り返って、お互いの姿を見てみようか。それで大丈夫そうならそのままで。恥ずかしかったら隠そう」
「分かった。じゃあ、俺が『せーの』って言ったら、振り返ろう。俺は服を脱いでいるけど、サクラはどうだ?」
「私も脱いでる。じゃあ、ダイちゃんが言ったタイミングで振り返ろっか」
「分かった。じゃあ……いくぞ。せーの!」
勇気を出して、俺は背後に振り返る。
すると、そこには綺麗な姿をしたサクラがこちらを向いて立っていた。凄くドキッとしたし、このままでは理性がぶっ飛びそうなので、すぐに視線をサクラの顔を向ける。
「……ほえっ」
サクラは顔を真っ赤にしてそんな可愛らしい声を漏らすと、視線を俺の目に向けた。
「小さい頃とは違うね、ダイちゃん。大人になった」
「……サクラこそ」
「……どうもです」
そう言うと、サクラははにかんだ。
「凄くドキッとして緊張もするけど……嫌じゃないよ。見るのも。見られるのも」
「……俺もだ」
こう言っていいのかは分からないけど、お互いの体を見たことで一つ壁が取れた感じがする。
「ただ……は、恥ずかしいから、今日はこのくらいにしよっか」
「そ、そうだな」
俺は再びサクラと背を向ける状態になり、手に持っていたタオルを腰に巻く。こうすると、いつも通りな感じがして気持ちが落ち着くな。
「こ、こっちに向いていいよ」
ゆっくりと振り返ると、そこにはタオルで前面を隠したサクラがいた。
「……入ろっか」
サクラのその言葉に首肯すると、サクラは何も言わずに俺の手を引いて浴室に連れて行ってくれた。
お互いの体を見たことの緊張や恥ずかしさもあって、今までよりもサクラを見る回数は少なかった。彼女と言葉を交わす回数も少なくて。
それでも、サクラと一緒に湯船に浸かると、今まで以上に気持ち良くて開放感も感じられた。気持ちいいのかサクラも笑顔になって。その姿はとても可愛かった。
0
読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や感想をお待ちしております。
『クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。』の続編がスタートしました!(2025.2.8) 学園ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/89864889
『高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。』は全編公開中です。 学園ラブコメ作品です。是非、読みに来てみてください。宜しくお願いします。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/441389601
『まずはお嫁さんからお願いします。』は全編公開中です。高校生夫婦学園ラブコメです。是非、読みに来て見てください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/120759248
『クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。』の続編がスタートしました!(2025.2.8) 学園ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/89864889
『高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。』は全編公開中です。 学園ラブコメ作品です。是非、読みに来てみてください。宜しくお願いします。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/441389601
『まずはお嫁さんからお願いします。』は全編公開中です。高校生夫婦学園ラブコメです。是非、読みに来て見てください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/120759248
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

僕(じゃない人)が幸せにします。
暇魷フミユキ
恋愛
【副題に☆が付いている話だけでだいたい分かります!】
・第1章
彼、〈君島奏向〉の悩み。それはもし将来、恋人が、妻ができたとしても、彼女を不幸にすることだった。
そんな彼を想う二人。
席が隣でもありよく立ち寄る喫茶店のバイトでもある〈草壁美頼〉。
所属する部の部長でたまに一緒に帰る仲の〈西沖幸恵〉。
そして彼は幸せにする方法を考えつく――――
「僕よりもっと相応しい人にその好意が向くようにしたいんだ」
本当にそんなこと上手くいくのか!?
それで本当に幸せなのか!?
そもそも幸せにするってなんだ!?
・第2章
草壁・西沖の二人にそれぞれの相応しいと考える人物を近付けるところまでは進んだ夏休み前。君島のもとにさらに二人の女子、〈深町冴羅〉と〈深町凛紗〉の双子姉妹が別々にやってくる。
その目的は――――
「付き合ってほしいの!!」
「付き合ってほしいんです!!」
なぜこうなったのか!?
二人の本当の想いは!?
それを叶えるにはどうすれば良いのか!?
・第3章
文化祭に向け、君島と西沖は映像部として広報動画を撮影・編集することになっていた。
君島は西沖の劇への参加だけでも心配だったのだが……
深町と付き合おうとする別府!
ぼーっとする深町冴羅!
心配事が重なる中無事に文化祭を成功することはできるのか!?
・第4章
二年生は修学旅行と進路調査票の提出を控えていた。
期待と不安の間で揺れ動く中で、君島奏向は決意する――
「僕のこれまでの行動を二人に明かそうと思う」
二人は何を思い何をするのか!?
修学旅行がそこにもたらすものとは!?
彼ら彼女らの行く先は!?
・第5章
冬休みが過ぎ、受験に向けた勉強が始まる二年生の三学期。
そんな中、深町凛紗が行動を起こす――
君島の草津・西沖に対するこれまでの行動の調査!
映像部への入部!
全ては幸せのために!
――これは誰かが誰かを幸せにする物語。
ここでは毎日1話ずつ投稿してまいります。
作者ページの「僕(じゃない人)が幸せにします。(「小説家になろう」投稿済み全話版)」から全話読むこともできます!

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ
桜庭かなめ
恋愛
高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。
あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。
3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。
出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2024.8.2)
※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。
しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。
ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。
桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしています。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

管理人さんといっしょ。
桜庭かなめ
恋愛
桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。
しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。
風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、
「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」
高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。
ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!
※特別編10が完結しました!(2024.6.21)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※続編がスタートしました!(2025.2.8)
※1日1話ずつ公開していく予定です。
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる