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本編-新年度編-
第55話『当たったご褒美』
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午後0時半。
劇場版『名探偵クリス』の上映が終了し、館内の照明が点灯する。その瞬間、周囲から「面白かった~」とか「もう一度観に来よう!」とか「来年も楽しみ!」といった好意的な感想が聞こえてくる。俺もとても楽しめたし、来年のクリスも劇場で観たいと思う。
ちなみに、上映中はほとんどサクラからは手を重ねられ、一紗からは肩に頭を乗せられるか、手を重ねられるかのどちらかをされていた。照明が点いた今も、サクラと一紗は俺に手を重ねている。
「今年のクリスも名作だったわね。とても面白かったわ!」
「ああ。今年もスケールの大きい内容だったな。劇場版恒例の爆発もあったから満足してる」
「爆発しないと劇場版って感じがしなくなってきたよ、ダイちゃん。あと、今年も推理を披露するときのクリス君かっこよかったなぁ」
「かっこよかったですよね。キーパーソンになった青井さんもかっこよかったですね。特に銃を撃つときは。映画も面白かったですけど、先輩方の様子をたまに見るのも楽しかったですよ。大輝先輩の隣に座って映画を観たかった気持ちもありますけど、じゃんけんに負けて結果オーライだったかなと」
楽しげな笑顔で杏奈は俺達のことを見てくる。サクラは慌てた様子で手を離すけど、一紗はそのまま。
冒頭にサクラが手を重ねてきた直後、杏奈がこちらを見ていたのは知っていた。それ以降も杏奈の視線を感じるときがあったけど、それは気のせいではなかったようだ。
「あら、杏奈さんは私達のことも見ていたの? 映画と大輝君に夢中で気づかなかったわ」
「そうだと思いました。一紗先輩、凄く幸せそうでしたもん。文香先輩とは何度か目が合いましたよね」
「そうだったね。目が合うどころか、私に手を重ねたり、体を寄り添わせたりしたときもあったよね。私がポップコーンを食べさせたり」
「文香先輩、いい匂いがしますし、あたし好みの温かさだったので。先輩に食べさせてもらったキャラメルポップコーンは格別でした。ごちそうさまでした!」
「いえいえ。ポップコーン、美味しかったよね」
杏奈……上映中にサクラとそんなことをしていたのか。羨ましすぎる。女子同士だからできることだろう。ただ、そのこともあってか、サクラと杏奈の仲がさらに良くなったように思える。先輩後輩の垣根を越えて、友人関係を築けていそうだ。
少し話していたこともあり、館内にはお客さんがほとんどいなくなっており、スタッフの方が掃除を始めていた。なので、俺達も館内から出て、フロントに戻る。
「今は……午後0時40分か。お昼ご飯を食べるにはいい時間だけど、みんなはどうだ? 特にポップコーンを買っていたサクラと一紗は」
「私はお腹が空いているわ」
「平日ほどじゃないけど、お腹は空いてる」
「あたしはお腹ペコペコです」
「そうか。じゃあ、お昼ご飯を食べに行こうか。駅の南口の近くにある一紗と杏奈がオススメする喫茶店へ」
昨晩、グループトークでお昼ご飯のことについて話した。その中で、琴宿にオススメの喫茶店があると、一紗と杏奈が教えてくれたのだ。そのお店はサクラも知っており、一度行ってみたかったのだという。
お手洗いを済ませ、売店で『名探偵クリス』のグッズを購入した後、俺達は一紗と杏奈のオススメする喫茶店へ向かい始める。
映画館のあるビルを出ると、土曜日のお昼時なのもあってか、来たときよりもさらに多く人たちが行き交っていた。休日の今の時間帯は四鷹駅周辺も人が多いけど、それを凌駕している。
人が多く、迷ったり、はぐれたりしてしまわないようにと一紗は俺、杏奈はサクラの手をそれぞれ掴んで目的地の喫茶店へと向かう。
時々、喫茶店への方向を伝え、そちらに向かって手を引いてくれる一紗はしっかりしていて、頼もしい印象を抱く。それは杏奈についても同様だった。過去に琴宿で道に迷った経験もあるかな。
「着いたわよ」
「このお店です」
一紗と杏奈がそう言い、俺達は立ち止まる。そこに見えたのはベージュ色の壁と、濃い茶色の柱が印象的な落ち着いた雰囲気の外観だ。お店の入口の上に飾られている看板には、明朝体で『きんじゅく喫茶』と描かれている。
一紗と杏奈についていく形でお店の中に入る。外観だけでなく、中もなかなか落ち着いた感じだ。琴宿駅の近くにあるから、もっと高級感があったり、派手な感じだったりするのかと思っていたけど。
「いい感じの喫茶店だね」
「俺も思った。こういうお店は好みだ」
四鷹にもありそうな感じの喫茶店で、個人的にはなじみやすいかな。
「2人にそう言ってもらえて良かったわ」
「ですね」
一紗と杏奈はほっとした様子。
店員さんにより、俺達は4人用のテーブル席へと案内される。その中で店内を見ると、お客さんは家族連れだったり、老夫婦だったり、俺達のように学生のグループだったり。老若男女のファンがいるお店のようだ。
映画の座席ではじゃんけんに負けたからという理由で、杏奈が俺の隣に座ることに。サクラと一紗は俺とテーブルに向かい合う形で座る。
メニュー表が2つあるので、隣に座っている杏奈と一緒に、メニューを見る。
昨晩のグループトークやここに来るときの間、一紗と杏奈が言っていたように、ここのお店は料理メニューが豊富だ。パスタ系にパン系、オムライス、ハンバーグなど色々あって。これなら、この時間に家族連れのお客さんがいるのも納得かも。
俺はナポリタン、サクラはオムライス、一紗はカルボナーラ大盛り、杏奈はハムサンドを注文。喫茶店だからなのかは定かではないが、飲み物を選べ、おかわりが一度無料になる。俺と杏奈はアイスコーヒー、サクラと一紗はアイスティーにした。
「ここ、料理のメニューが豊富だよな。2人って、琴宿に来るとここで食事をすることが多いのか?」
「私は結構多いわね。料理は美味しいし、お店の雰囲気も好きだし。性格で、気に入ったお店があったら、同じところに何度も行くことが多いの」
「あたしは色々なお店に行きますけど、ここは何度も来たことがありますね。一紗先輩の言う通り、料理が美味しいですからね。あと、値段もそんなに高くないですし」
「美味しさはもちろんだけど、値段も重要だよな」
「そうだね。2人が美味しいって言うなら、私が頼んだオムライスも期待できそう」
サクラはとても楽しみな様子。俺も2人のおかげでナポリタンが楽しみになってきた。あと、既に食事をしているお客さんがいるから、いい匂いもしてきて。腹が減ってきたな。
それからすぐに、飲み物が先に運ばれてきた。それを機に、俺達の話題はさっき観た『名探偵クリス』の話題へと変わる。
「そういえば、上映前に誰が犯人か予想をしたじゃないですか。文香先輩の予想が見事に当たりましたね!」
「当たったね」
サクラは微笑みながらアイスティーを飲む。
入場する前にパンフレットを見て、4人それぞれ違う人を犯人だと予想していた。その結果、サクラが予想した人が犯人だったのだ。
「完全に勘だったけどね。まさか当たるとは思わなかったよ」
「そう言う割には、クリス君が犯人の名前を言ったとき、文香先輩は嬉しそうに『よしっ!』って言って、左手をぎゅっと握りしめていたじゃないですか。可愛かったですよ」
そのときのサクラを真似しているのか、杏奈は嬉しそうな様子で「よしっ!」と言って、左手を握りしめている。そのことにサクラはほんのりと頬を赤くし、一紗は「ふふっ」と上品に笑っている。
実は俺も、クリス君が『犯人はあなただ』と言った直後、サクラの「よしっ!」という声が聞こえていた。その際にサクラを見ると、杏奈がやっているように左手をしっかりと握りしめており、嬉しそうな表情を浮かべていた。杏奈の言うとおり、あのときのサクラは可愛かったな。そして、懐かしかった。
「ううっ、何だか恥ずかしい……」
「こういうことで喜べるのはいいことだと思うぞ。そういえば、昔はサクラが犯人を当てたら、帰りに自販機でジュース買ってあげたり、オリオのゲームコーナーでぬいぐるみを取ってあげたりしたよな。100円で一発だけど」
「そ、そんなこともあったね! ダイちゃんが当てたときはコンビニでお菓子を1つ買ってあげたよね」
「あたしも、友達と行ったときは、犯人当てで小さな賭け事をしましたね。全員外れちゃうときもありましたけど」
「そうだったのね。じゃあ、犯人を当てた文香さんに何かご褒美をあげない?」
「いいですね!」
「今日はひさしぶりの映画だったからな。俺もいいよ」
「……文香さん。どんなご褒美がいい?」
「えっ? そ、そうだね。急に言われるとなぁ……」
う~ん、とサクラは腕を組みながら考える。急にご褒美をあげるって言われると迷っちゃうよな。
サクラも高校2年生になったし、ご褒美を与えるのは3人。昔とは違うご褒美がほしいと言う可能性が高そうだ。
いいご褒美が思いついたのか、サクラは明るい笑みを浮かべる。
「みんなの注文したメニューを一口食べさせてほしいな。それぞれ違うし、どんな味なのか気になるから」
「ふふっ、可愛いご褒美を希望するのね。分かったわ」
「ですね。いいですよ、文香先輩」
「俺もいいぞ」
「ありがとう。楽しみだな」
そう言って、ワクワクとした様子になるサクラ。そんなサクラを見ていると、昔のサクラを見ているようだ。
俺達の注文した料理が届いたので、昼食の時間が始まる。
俺の注文したナポリタンは、具がソーセージにピーマン、たまねぎ、マッシュルームという王道のもの。それらの具を絡ませるように巻き取り、一口食べる。
「……美味いなぁ」
トマトケチャップの甘酸っぱさがたまらない。入っている具が定番なのもあって、初めて食べたのに心が安らぐ。
サクラ達が注文した料理も口に合ったようで、それぞれ美味しそうに食べている。
少し食べたところで、俺と一紗、杏奈はサクラに犯人当てのご褒美として、自分の注文した料理を一口ずつ食べさせた。ピーマンがまだちょっと苦手だからか、俺がナポリタンを食べさせるときは、
「ピーマンを避けてね」
と言ってきたけど。俺のナポリタンを含めサクラは美味しそうに食べてくれた。
料理が美味しいのはもちろんのこと、サクラのご褒美イベントがあったり、映画の話をしたりして楽しい昼食の時間になった。
劇場版『名探偵クリス』の上映が終了し、館内の照明が点灯する。その瞬間、周囲から「面白かった~」とか「もう一度観に来よう!」とか「来年も楽しみ!」といった好意的な感想が聞こえてくる。俺もとても楽しめたし、来年のクリスも劇場で観たいと思う。
ちなみに、上映中はほとんどサクラからは手を重ねられ、一紗からは肩に頭を乗せられるか、手を重ねられるかのどちらかをされていた。照明が点いた今も、サクラと一紗は俺に手を重ねている。
「今年のクリスも名作だったわね。とても面白かったわ!」
「ああ。今年もスケールの大きい内容だったな。劇場版恒例の爆発もあったから満足してる」
「爆発しないと劇場版って感じがしなくなってきたよ、ダイちゃん。あと、今年も推理を披露するときのクリス君かっこよかったなぁ」
「かっこよかったですよね。キーパーソンになった青井さんもかっこよかったですね。特に銃を撃つときは。映画も面白かったですけど、先輩方の様子をたまに見るのも楽しかったですよ。大輝先輩の隣に座って映画を観たかった気持ちもありますけど、じゃんけんに負けて結果オーライだったかなと」
楽しげな笑顔で杏奈は俺達のことを見てくる。サクラは慌てた様子で手を離すけど、一紗はそのまま。
冒頭にサクラが手を重ねてきた直後、杏奈がこちらを見ていたのは知っていた。それ以降も杏奈の視線を感じるときがあったけど、それは気のせいではなかったようだ。
「あら、杏奈さんは私達のことも見ていたの? 映画と大輝君に夢中で気づかなかったわ」
「そうだと思いました。一紗先輩、凄く幸せそうでしたもん。文香先輩とは何度か目が合いましたよね」
「そうだったね。目が合うどころか、私に手を重ねたり、体を寄り添わせたりしたときもあったよね。私がポップコーンを食べさせたり」
「文香先輩、いい匂いがしますし、あたし好みの温かさだったので。先輩に食べさせてもらったキャラメルポップコーンは格別でした。ごちそうさまでした!」
「いえいえ。ポップコーン、美味しかったよね」
杏奈……上映中にサクラとそんなことをしていたのか。羨ましすぎる。女子同士だからできることだろう。ただ、そのこともあってか、サクラと杏奈の仲がさらに良くなったように思える。先輩後輩の垣根を越えて、友人関係を築けていそうだ。
少し話していたこともあり、館内にはお客さんがほとんどいなくなっており、スタッフの方が掃除を始めていた。なので、俺達も館内から出て、フロントに戻る。
「今は……午後0時40分か。お昼ご飯を食べるにはいい時間だけど、みんなはどうだ? 特にポップコーンを買っていたサクラと一紗は」
「私はお腹が空いているわ」
「平日ほどじゃないけど、お腹は空いてる」
「あたしはお腹ペコペコです」
「そうか。じゃあ、お昼ご飯を食べに行こうか。駅の南口の近くにある一紗と杏奈がオススメする喫茶店へ」
昨晩、グループトークでお昼ご飯のことについて話した。その中で、琴宿にオススメの喫茶店があると、一紗と杏奈が教えてくれたのだ。そのお店はサクラも知っており、一度行ってみたかったのだという。
お手洗いを済ませ、売店で『名探偵クリス』のグッズを購入した後、俺達は一紗と杏奈のオススメする喫茶店へ向かい始める。
映画館のあるビルを出ると、土曜日のお昼時なのもあってか、来たときよりもさらに多く人たちが行き交っていた。休日の今の時間帯は四鷹駅周辺も人が多いけど、それを凌駕している。
人が多く、迷ったり、はぐれたりしてしまわないようにと一紗は俺、杏奈はサクラの手をそれぞれ掴んで目的地の喫茶店へと向かう。
時々、喫茶店への方向を伝え、そちらに向かって手を引いてくれる一紗はしっかりしていて、頼もしい印象を抱く。それは杏奈についても同様だった。過去に琴宿で道に迷った経験もあるかな。
「着いたわよ」
「このお店です」
一紗と杏奈がそう言い、俺達は立ち止まる。そこに見えたのはベージュ色の壁と、濃い茶色の柱が印象的な落ち着いた雰囲気の外観だ。お店の入口の上に飾られている看板には、明朝体で『きんじゅく喫茶』と描かれている。
一紗と杏奈についていく形でお店の中に入る。外観だけでなく、中もなかなか落ち着いた感じだ。琴宿駅の近くにあるから、もっと高級感があったり、派手な感じだったりするのかと思っていたけど。
「いい感じの喫茶店だね」
「俺も思った。こういうお店は好みだ」
四鷹にもありそうな感じの喫茶店で、個人的にはなじみやすいかな。
「2人にそう言ってもらえて良かったわ」
「ですね」
一紗と杏奈はほっとした様子。
店員さんにより、俺達は4人用のテーブル席へと案内される。その中で店内を見ると、お客さんは家族連れだったり、老夫婦だったり、俺達のように学生のグループだったり。老若男女のファンがいるお店のようだ。
映画の座席ではじゃんけんに負けたからという理由で、杏奈が俺の隣に座ることに。サクラと一紗は俺とテーブルに向かい合う形で座る。
メニュー表が2つあるので、隣に座っている杏奈と一緒に、メニューを見る。
昨晩のグループトークやここに来るときの間、一紗と杏奈が言っていたように、ここのお店は料理メニューが豊富だ。パスタ系にパン系、オムライス、ハンバーグなど色々あって。これなら、この時間に家族連れのお客さんがいるのも納得かも。
俺はナポリタン、サクラはオムライス、一紗はカルボナーラ大盛り、杏奈はハムサンドを注文。喫茶店だからなのかは定かではないが、飲み物を選べ、おかわりが一度無料になる。俺と杏奈はアイスコーヒー、サクラと一紗はアイスティーにした。
「ここ、料理のメニューが豊富だよな。2人って、琴宿に来るとここで食事をすることが多いのか?」
「私は結構多いわね。料理は美味しいし、お店の雰囲気も好きだし。性格で、気に入ったお店があったら、同じところに何度も行くことが多いの」
「あたしは色々なお店に行きますけど、ここは何度も来たことがありますね。一紗先輩の言う通り、料理が美味しいですからね。あと、値段もそんなに高くないですし」
「美味しさはもちろんだけど、値段も重要だよな」
「そうだね。2人が美味しいって言うなら、私が頼んだオムライスも期待できそう」
サクラはとても楽しみな様子。俺も2人のおかげでナポリタンが楽しみになってきた。あと、既に食事をしているお客さんがいるから、いい匂いもしてきて。腹が減ってきたな。
それからすぐに、飲み物が先に運ばれてきた。それを機に、俺達の話題はさっき観た『名探偵クリス』の話題へと変わる。
「そういえば、上映前に誰が犯人か予想をしたじゃないですか。文香先輩の予想が見事に当たりましたね!」
「当たったね」
サクラは微笑みながらアイスティーを飲む。
入場する前にパンフレットを見て、4人それぞれ違う人を犯人だと予想していた。その結果、サクラが予想した人が犯人だったのだ。
「完全に勘だったけどね。まさか当たるとは思わなかったよ」
「そう言う割には、クリス君が犯人の名前を言ったとき、文香先輩は嬉しそうに『よしっ!』って言って、左手をぎゅっと握りしめていたじゃないですか。可愛かったですよ」
そのときのサクラを真似しているのか、杏奈は嬉しそうな様子で「よしっ!」と言って、左手を握りしめている。そのことにサクラはほんのりと頬を赤くし、一紗は「ふふっ」と上品に笑っている。
実は俺も、クリス君が『犯人はあなただ』と言った直後、サクラの「よしっ!」という声が聞こえていた。その際にサクラを見ると、杏奈がやっているように左手をしっかりと握りしめており、嬉しそうな表情を浮かべていた。杏奈の言うとおり、あのときのサクラは可愛かったな。そして、懐かしかった。
「ううっ、何だか恥ずかしい……」
「こういうことで喜べるのはいいことだと思うぞ。そういえば、昔はサクラが犯人を当てたら、帰りに自販機でジュース買ってあげたり、オリオのゲームコーナーでぬいぐるみを取ってあげたりしたよな。100円で一発だけど」
「そ、そんなこともあったね! ダイちゃんが当てたときはコンビニでお菓子を1つ買ってあげたよね」
「あたしも、友達と行ったときは、犯人当てで小さな賭け事をしましたね。全員外れちゃうときもありましたけど」
「そうだったのね。じゃあ、犯人を当てた文香さんに何かご褒美をあげない?」
「いいですね!」
「今日はひさしぶりの映画だったからな。俺もいいよ」
「……文香さん。どんなご褒美がいい?」
「えっ? そ、そうだね。急に言われるとなぁ……」
う~ん、とサクラは腕を組みながら考える。急にご褒美をあげるって言われると迷っちゃうよな。
サクラも高校2年生になったし、ご褒美を与えるのは3人。昔とは違うご褒美がほしいと言う可能性が高そうだ。
いいご褒美が思いついたのか、サクラは明るい笑みを浮かべる。
「みんなの注文したメニューを一口食べさせてほしいな。それぞれ違うし、どんな味なのか気になるから」
「ふふっ、可愛いご褒美を希望するのね。分かったわ」
「ですね。いいですよ、文香先輩」
「俺もいいぞ」
「ありがとう。楽しみだな」
そう言って、ワクワクとした様子になるサクラ。そんなサクラを見ていると、昔のサクラを見ているようだ。
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俺の注文したナポリタンは、具がソーセージにピーマン、たまねぎ、マッシュルームという王道のもの。それらの具を絡ませるように巻き取り、一口食べる。
「……美味いなぁ」
トマトケチャップの甘酸っぱさがたまらない。入っている具が定番なのもあって、初めて食べたのに心が安らぐ。
サクラ達が注文した料理も口に合ったようで、それぞれ美味しそうに食べている。
少し食べたところで、俺と一紗、杏奈はサクラに犯人当てのご褒美として、自分の注文した料理を一口ずつ食べさせた。ピーマンがまだちょっと苦手だからか、俺がナポリタンを食べさせるときは、
「ピーマンを避けてね」
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料理が美味しいのはもちろんのこと、サクラのご褒美イベントがあったり、映画の話をしたりして楽しい昼食の時間になった。
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読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や感想をお待ちしております。
『クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。』の続編がスタートしました!(2025.2.8) 学園ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/89864889
『高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。』は全編公開中です。 学園ラブコメ作品です。是非、読みに来てみてください。宜しくお願いします。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/441389601
『まずはお嫁さんからお願いします。』は全編公開中です。高校生夫婦学園ラブコメです。是非、読みに来て見てください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/120759248
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お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※続編がスタートしました!(2025.2.8)
※1日1話ずつ公開していく予定です。
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
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貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
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男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
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しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
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『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
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