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本編-新年度編-
第22話『タピオカドリンク』
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パールヨタカを後にした俺達はお店の近くにある広場へ向かう。
四鷹駅が見えるところにあるけど、駅周辺とは違い、この広場は落ち着いた雰囲気だ。ベンチに座る若い女性が喫茶店のコーヒーを飲みながら本を読んでいたり、ジャージ姿の男性が縄跳びで運動をしていたり、小学生くらいの子供達が黒猫と戯れていたり。思い思いの時間を楽しんでいるようだ。ここなら、タピオカドリンクをゆっくりと楽しめそうだ。
「ダイちゃん。あそこのベンチが空いてるよ」
サクラが広場の入口から近いところにあるベンチを指さした。なので、俺達はそこに隣り合って座ることに。
「じゃあ、さっそく……」
「待って、ダイちゃん。飲む前に写真撮らない? ひさしぶりのお出かけだし、パールヨタカで初めてタピオカドリンクを買ったからその記念に」
「そうだな」
これからも、サクラと2人きりで出かけたり、あのお店でタピオカドリンクを買ったりすることは何度もあるだろう。でも、『ひさしぶり』はなかなかないことだし、『初めて』は今回しかない。それは俺達が3年ぶりに仲直りしたから実現できたこと。きっと、サクラはそれが嬉しくて、写真に残したいと思っているのだろう。
サクラはショルダーバッグからスマホを取り出す。
「ダイちゃん。一緒に撮りやすいように、こっちに寄って」
「ああ」
サクラの指示通り、俺はサクラの側に寄る。そのことで、サクラの温もりや甘い匂いをはっきりと感じるように。段々とドキドキしてきた。
サクラが左手に持っているスマホの画面には俺達の顔が映っている。ただ、端の方に映っているのでお互いに顔を近づけ、先ほど買ったタピオカドリンクも映るように調整する。頬の熱さがサクラに伝わってしまうんじゃないかと思うくらいに近い。
「じゃあ、この状態で撮るよ。はい、チーズ」
画面的にピースサインを入れられそうになかったので、サクラのスマホの方を見て笑顔になる。
――カシャッ。
そんなシャッター音が聞こえると、サクラはすぐに今撮影した写真を確認する。スマホの画面を見ながらサクラはニッコリ。
「うんっ、いい写真が撮れた!」
サクラは俺にスマホを見せてくれる。さっきも顔が近いと思っていたけど、こんなにも顔を寄せていたのか。さっきもドキドキしていたけど、こうして写真を見るとまたドキドキしてくる。あと、タピオカドリンクもちゃんと写っている。
サクラは可愛い笑顔だ。俺も……うん、意外と自然な笑顔になっている。写真を撮ったとき、頬が熱くなっていたけど、赤くなっていなくて良かった。
「本当だ。いい写真が撮れたな」
「ふふっ、良かった。LIMEで送っておくね」
「ああ」
すると、程なくしてジャケットのポケットに入っているスマホが震える。見てみると、LIMEでサクラが今の写真を送ってくれていた。さっそくスマホに保存する。自分のスマホ画面で見られると嬉しい気持ちになるな。
「受け取ったよ。ありがとう」
「いえいえ。お待たせしちゃったね。じゃあ、タピオカドリンクを飲もうか」
「そうだな。タピオカティーいただきます」
「あたしはタピオカカフェオレいただきまーす。かんぱーい」
「乾杯」
サクラのカップに軽く当てて、俺はタピオカティーを一口飲んでみる。広場まで歩いて、写真も撮ったけど、まだまだ冷たい。
「……うん、サクラの言う通り、さっぱりしていて美味しいな。タピオカ自体が甘いから甘味もちょうどいい感じだ」
「良かった。カフェオレも美味しいね。結構甘いけど、コーヒーの苦味もあって。甘ったるくない。これから、あのお店で買う定番の一つになりそう」
「そう言ってくれると嬉しくなるよ。俺も紅茶が定番になりそうだな」
「ふふっ」
サクラは嬉しそうに笑うと、タピオカカフェオレをもう一口飲む。両手でカップを持ちながら飲むサクラがとても可愛らしい。サクラを見れば、パールヨタカの売上がかなり増えそうだと思えるくらいに可愛らしい。
「どうしたの? 私のことをじっと見て。飲まないの?」
「あまりにも美味しそうに飲んでいたからさ。俺も飲むよ」
俺はタピオカティーをゴクゴクと飲む。あぁ、冷たくてさっぱりとしていて美味しいなぁ! サクラと一緒にいて、体が熱くなってきている今の俺にはちょうどいい。
「あっ、もしかして……このタピオカカフェオレを飲みたいんでしょ? ダイちゃんはコーヒーが大好きだし」
ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべながら、俺にそう言ってくるサクラ。
「そ、そうだな。コーヒー系のドリンクを飲むことが多いし」
「やっぱり。じゃあ、ダイちゃんのタピオカティーを一口飲ませてくれるなら、私のカフェオレも一口飲んでいいよ?」
サクラはそんな提案をしてくる。昔は外で飲食するときは、一口交換することが多かった。大抵はサクラから提案する。和奏姉さんもいるときは、姉さんが提案することもたびたびあった。
ただ、一口飲ませることは間接キスすることになる。それが分かっているからなのか、サクラの頬はほんのりと赤い。それもまた可愛らしい。
「分かった。一口交換するか」
「うんっ!」
サクラとカップを交換して、俺はサクラのタピオカカフェオレを一口飲む。やっぱり、コーヒー系のドリンクは美味しいな。いつもよりも甘く感じるのはさっきまで紅茶を飲んでいたからだろうか。それとも、サクラが口を付けているからだろうか。
「うん、紅茶美味しい! カフェオレを飲んだからか、今までよりもさっぱりしている感じがするよ」
「そうか。こっちは逆に甘く感じる。もちろん美味しいのは変わらない。ありがとう、サクラ」
「こちらこそありがとう、ダイちゃん」
再びカップを交換し、俺はタピオカティーを飲む。カフェオレの甘味が残っているからか、それともサクラと間接キスしているからなのか、さっきまでよりも甘く感じる。
「そういえば、1年生のときに友達と一緒にタピオカドリンクを買ったとき、何人かがタピオカチャレンジをしていたな」
「タピオカチャレンジって……あぁ、前に漫画でそういう場面を見たことがあるな」
胸の上にカップを乗せて、手で支えることなくタピオカドリンクを飲めるかどうかというチャレンジだ。一定以上の胸の大きさがなければ成功しない。
「成功している友達もいれば、失敗している友達もいたな。量が少なかったけど、その子は制服を汚してた」
「そ、そうだったのか。そういえば、去年の夏に姉さんが送ってきたな。チャレンジしたら成功したからって」
「私にも届いてた。タピオカドリンクを飲みながらピースしている写真。和奏ちゃん、胸大きいもんね……」
和奏姉さんの性格からして、失敗して服が濡れても、『失敗しちゃった☆』とかメッセージを付けて、失敗した写真を送ってきそうだな。テヘッと笑って舌を出していそうだ、あの姉は。
サクラもチャレンジしたのか……と訊こうと思ったけど、さすがにそれはまずいか。胸の大きさが成功を左右することだし。
「私も……チャレンジしてみようかな? あのときはやらなかったけど。当時に比べたら……お、大きくなったし」
「そ、そうか」
サクラの胸をチラッと見てしまう。それなりの大きさはあると思うけど、チャレンジが成功するかどうかは分からない。実際に見たことはないし。あと、サクラはタピオカチャレンジは未経験なのか。
「よ、よーし。やってみるよ!」
「ちょっと待って。ま、万が一……失敗したら、服の上にタピオカカフェオレがこぼれるかもしれないから、俺が右手をスタンバイさせてもいいか?」
「う、うん。分かったよ。でも、その……どさくさに紛れて胸揉まないでね」
「ああ、もちろんだよ」
サクラの嫌がることはするつもりはない。
俺はサクラの方に身を捩り、右手をサクラの胸の近くにスタンバイさせる。今さらだけど、周りの人がこの光景を見たら、俺がこれからサクラの胸を揉むように見えるな。しかし、サクラがやる気満々そうに胸の上にタピオカドリンクを乗せているので、ここで中止するのは無理そうだ。
「じゃ、じゃあ……いくよ!」
「ああ」
頑張れ、サクラ。どう頑張ればいいのか俺には分からないが。
サクラはストローを咥えて、カップから両手をゆっくりと離す。何秒かは安定していたけど、
「んっ!」
両手の支えがなくなったからか、タピオカカフェオレの入ったカップが滑り落ちそうになる。
「おっと」
倒れそうになったカップを俺が掴んだので、カップの中に入っているタピオカカフェオレが溢れずに済んだ。万が一のためにスタンバイしておいて正解だったな。
「良かった、倒れなくて」
「そ、そうだね。ありがとう。でも、その……」
顔を赤くしながらサクラはお礼を言うと、視線を下げる。そういえば、腕から温もりが伝わってきて、柔らかい感触が伝わってくる。
自分の右手を見てみると、何と俺の右腕がサクラの右胸に触れているではありませんか。
「ご、ごめんサクラ!」
慌てて右腕をサクラの胸から離し、サクラにカフェオレの入ったカップを渡す。その際、サクラは「あ、ありがと」と小さな声でお礼を言ってくれた。
故意ではないとはいえ、サクラの胸に触れてしまったからか、体が急に熱くなってくる。俺は自分のタピオカティーをゴクゴクと飲む。
「き、気にしないで。あの状況じゃ、手や腕が触れるのは仕方ないと思うし。それにしても、失敗しちゃったね。私じゃ無理だったか」
はにかみながらそう言うと、サクラはタピオカカフェオレを一口飲む。
「良かったよ、ダイちゃんが右手をあそこにスタンバイしておいてくれて。そうじゃなかったら、今頃、ワンピースが大惨事になっていたかもしれない。今もこうしてカフェオレが飲めてなかっただろうね」
「まあ、何事も無くて良かったよ」
「うんっ。青葉ちゃんは分からないけど、一紗ちゃんなら成功しそうだよね。かなり大きいし」
「……そ、そうかもな」
そういう風にしか答えられない。
ただ、今までの記憶の限りでは……一紗のいっぱいでっかいおっぱいは和奏姉さんと同じくらいはあると思われる。和奏姉さんが成功したのだから、一紗も成功するんじゃないだろうか。
「私も成功するときが来るのかな」
俺を見ながら小さな声でそう言うと、サクラは「ちゅー」とタピオカカフェオレをまた一口。
胸に関することなので、正直どう答えるのが一番いいのか悩む質問だな。でも、サクラは今も俺の目をじっと見つめている。
俺はタピオカティーを一口飲んで、一度、長く息を吐く。
「いつか来るかもな」
何事も、未来ではどうなるか分からない。
ただ、中2の初め頃までは幼かったサクラの体つきが、この3年間で胸を含めて結構成長した。だから、将来はチャレンジが成功するほどの大きさになる可能性はあると俺は思っている。母親の美紀さんもかなり大きいし。
一言での返事だったけど、どうやらそれで満足らしい。サクラは赤みの残る顔に可愛らしい笑みを浮かべる。
「そうなるといいな。失敗したところを見られちゃったから、ダイちゃんにはちゃんと成功する瞬間も見届けてもらわないと」
「……そこまで言うなら、成功する場面をいつか見せてもらおうか」
「ま、任せてっ!」
サクラはそう言い、それなりにある胸を張った。
果たして、成功するのはいつになるのやら。いつでも見届けられるように、サクラとはわだかまりができてしまわないように気を付けなければ。
サクラのタピオカチャレンジ成功を祈念し、俺は残りのタピオカティーを一気に飲むのであった。ごちそうさまでした。
四鷹駅が見えるところにあるけど、駅周辺とは違い、この広場は落ち着いた雰囲気だ。ベンチに座る若い女性が喫茶店のコーヒーを飲みながら本を読んでいたり、ジャージ姿の男性が縄跳びで運動をしていたり、小学生くらいの子供達が黒猫と戯れていたり。思い思いの時間を楽しんでいるようだ。ここなら、タピオカドリンクをゆっくりと楽しめそうだ。
「ダイちゃん。あそこのベンチが空いてるよ」
サクラが広場の入口から近いところにあるベンチを指さした。なので、俺達はそこに隣り合って座ることに。
「じゃあ、さっそく……」
「待って、ダイちゃん。飲む前に写真撮らない? ひさしぶりのお出かけだし、パールヨタカで初めてタピオカドリンクを買ったからその記念に」
「そうだな」
これからも、サクラと2人きりで出かけたり、あのお店でタピオカドリンクを買ったりすることは何度もあるだろう。でも、『ひさしぶり』はなかなかないことだし、『初めて』は今回しかない。それは俺達が3年ぶりに仲直りしたから実現できたこと。きっと、サクラはそれが嬉しくて、写真に残したいと思っているのだろう。
サクラはショルダーバッグからスマホを取り出す。
「ダイちゃん。一緒に撮りやすいように、こっちに寄って」
「ああ」
サクラの指示通り、俺はサクラの側に寄る。そのことで、サクラの温もりや甘い匂いをはっきりと感じるように。段々とドキドキしてきた。
サクラが左手に持っているスマホの画面には俺達の顔が映っている。ただ、端の方に映っているのでお互いに顔を近づけ、先ほど買ったタピオカドリンクも映るように調整する。頬の熱さがサクラに伝わってしまうんじゃないかと思うくらいに近い。
「じゃあ、この状態で撮るよ。はい、チーズ」
画面的にピースサインを入れられそうになかったので、サクラのスマホの方を見て笑顔になる。
――カシャッ。
そんなシャッター音が聞こえると、サクラはすぐに今撮影した写真を確認する。スマホの画面を見ながらサクラはニッコリ。
「うんっ、いい写真が撮れた!」
サクラは俺にスマホを見せてくれる。さっきも顔が近いと思っていたけど、こんなにも顔を寄せていたのか。さっきもドキドキしていたけど、こうして写真を見るとまたドキドキしてくる。あと、タピオカドリンクもちゃんと写っている。
サクラは可愛い笑顔だ。俺も……うん、意外と自然な笑顔になっている。写真を撮ったとき、頬が熱くなっていたけど、赤くなっていなくて良かった。
「本当だ。いい写真が撮れたな」
「ふふっ、良かった。LIMEで送っておくね」
「ああ」
すると、程なくしてジャケットのポケットに入っているスマホが震える。見てみると、LIMEでサクラが今の写真を送ってくれていた。さっそくスマホに保存する。自分のスマホ画面で見られると嬉しい気持ちになるな。
「受け取ったよ。ありがとう」
「いえいえ。お待たせしちゃったね。じゃあ、タピオカドリンクを飲もうか」
「そうだな。タピオカティーいただきます」
「あたしはタピオカカフェオレいただきまーす。かんぱーい」
「乾杯」
サクラのカップに軽く当てて、俺はタピオカティーを一口飲んでみる。広場まで歩いて、写真も撮ったけど、まだまだ冷たい。
「……うん、サクラの言う通り、さっぱりしていて美味しいな。タピオカ自体が甘いから甘味もちょうどいい感じだ」
「良かった。カフェオレも美味しいね。結構甘いけど、コーヒーの苦味もあって。甘ったるくない。これから、あのお店で買う定番の一つになりそう」
「そう言ってくれると嬉しくなるよ。俺も紅茶が定番になりそうだな」
「ふふっ」
サクラは嬉しそうに笑うと、タピオカカフェオレをもう一口飲む。両手でカップを持ちながら飲むサクラがとても可愛らしい。サクラを見れば、パールヨタカの売上がかなり増えそうだと思えるくらいに可愛らしい。
「どうしたの? 私のことをじっと見て。飲まないの?」
「あまりにも美味しそうに飲んでいたからさ。俺も飲むよ」
俺はタピオカティーをゴクゴクと飲む。あぁ、冷たくてさっぱりとしていて美味しいなぁ! サクラと一緒にいて、体が熱くなってきている今の俺にはちょうどいい。
「あっ、もしかして……このタピオカカフェオレを飲みたいんでしょ? ダイちゃんはコーヒーが大好きだし」
ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべながら、俺にそう言ってくるサクラ。
「そ、そうだな。コーヒー系のドリンクを飲むことが多いし」
「やっぱり。じゃあ、ダイちゃんのタピオカティーを一口飲ませてくれるなら、私のカフェオレも一口飲んでいいよ?」
サクラはそんな提案をしてくる。昔は外で飲食するときは、一口交換することが多かった。大抵はサクラから提案する。和奏姉さんもいるときは、姉さんが提案することもたびたびあった。
ただ、一口飲ませることは間接キスすることになる。それが分かっているからなのか、サクラの頬はほんのりと赤い。それもまた可愛らしい。
「分かった。一口交換するか」
「うんっ!」
サクラとカップを交換して、俺はサクラのタピオカカフェオレを一口飲む。やっぱり、コーヒー系のドリンクは美味しいな。いつもよりも甘く感じるのはさっきまで紅茶を飲んでいたからだろうか。それとも、サクラが口を付けているからだろうか。
「うん、紅茶美味しい! カフェオレを飲んだからか、今までよりもさっぱりしている感じがするよ」
「そうか。こっちは逆に甘く感じる。もちろん美味しいのは変わらない。ありがとう、サクラ」
「こちらこそありがとう、ダイちゃん」
再びカップを交換し、俺はタピオカティーを飲む。カフェオレの甘味が残っているからか、それともサクラと間接キスしているからなのか、さっきまでよりも甘く感じる。
「そういえば、1年生のときに友達と一緒にタピオカドリンクを買ったとき、何人かがタピオカチャレンジをしていたな」
「タピオカチャレンジって……あぁ、前に漫画でそういう場面を見たことがあるな」
胸の上にカップを乗せて、手で支えることなくタピオカドリンクを飲めるかどうかというチャレンジだ。一定以上の胸の大きさがなければ成功しない。
「成功している友達もいれば、失敗している友達もいたな。量が少なかったけど、その子は制服を汚してた」
「そ、そうだったのか。そういえば、去年の夏に姉さんが送ってきたな。チャレンジしたら成功したからって」
「私にも届いてた。タピオカドリンクを飲みながらピースしている写真。和奏ちゃん、胸大きいもんね……」
和奏姉さんの性格からして、失敗して服が濡れても、『失敗しちゃった☆』とかメッセージを付けて、失敗した写真を送ってきそうだな。テヘッと笑って舌を出していそうだ、あの姉は。
サクラもチャレンジしたのか……と訊こうと思ったけど、さすがにそれはまずいか。胸の大きさが成功を左右することだし。
「私も……チャレンジしてみようかな? あのときはやらなかったけど。当時に比べたら……お、大きくなったし」
「そ、そうか」
サクラの胸をチラッと見てしまう。それなりの大きさはあると思うけど、チャレンジが成功するかどうかは分からない。実際に見たことはないし。あと、サクラはタピオカチャレンジは未経験なのか。
「よ、よーし。やってみるよ!」
「ちょっと待って。ま、万が一……失敗したら、服の上にタピオカカフェオレがこぼれるかもしれないから、俺が右手をスタンバイさせてもいいか?」
「う、うん。分かったよ。でも、その……どさくさに紛れて胸揉まないでね」
「ああ、もちろんだよ」
サクラの嫌がることはするつもりはない。
俺はサクラの方に身を捩り、右手をサクラの胸の近くにスタンバイさせる。今さらだけど、周りの人がこの光景を見たら、俺がこれからサクラの胸を揉むように見えるな。しかし、サクラがやる気満々そうに胸の上にタピオカドリンクを乗せているので、ここで中止するのは無理そうだ。
「じゃ、じゃあ……いくよ!」
「ああ」
頑張れ、サクラ。どう頑張ればいいのか俺には分からないが。
サクラはストローを咥えて、カップから両手をゆっくりと離す。何秒かは安定していたけど、
「んっ!」
両手の支えがなくなったからか、タピオカカフェオレの入ったカップが滑り落ちそうになる。
「おっと」
倒れそうになったカップを俺が掴んだので、カップの中に入っているタピオカカフェオレが溢れずに済んだ。万が一のためにスタンバイしておいて正解だったな。
「良かった、倒れなくて」
「そ、そうだね。ありがとう。でも、その……」
顔を赤くしながらサクラはお礼を言うと、視線を下げる。そういえば、腕から温もりが伝わってきて、柔らかい感触が伝わってくる。
自分の右手を見てみると、何と俺の右腕がサクラの右胸に触れているではありませんか。
「ご、ごめんサクラ!」
慌てて右腕をサクラの胸から離し、サクラにカフェオレの入ったカップを渡す。その際、サクラは「あ、ありがと」と小さな声でお礼を言ってくれた。
故意ではないとはいえ、サクラの胸に触れてしまったからか、体が急に熱くなってくる。俺は自分のタピオカティーをゴクゴクと飲む。
「き、気にしないで。あの状況じゃ、手や腕が触れるのは仕方ないと思うし。それにしても、失敗しちゃったね。私じゃ無理だったか」
はにかみながらそう言うと、サクラはタピオカカフェオレを一口飲む。
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「まあ、何事も無くて良かったよ」
「うんっ。青葉ちゃんは分からないけど、一紗ちゃんなら成功しそうだよね。かなり大きいし」
「……そ、そうかもな」
そういう風にしか答えられない。
ただ、今までの記憶の限りでは……一紗のいっぱいでっかいおっぱいは和奏姉さんと同じくらいはあると思われる。和奏姉さんが成功したのだから、一紗も成功するんじゃないだろうか。
「私も成功するときが来るのかな」
俺を見ながら小さな声でそう言うと、サクラは「ちゅー」とタピオカカフェオレをまた一口。
胸に関することなので、正直どう答えるのが一番いいのか悩む質問だな。でも、サクラは今も俺の目をじっと見つめている。
俺はタピオカティーを一口飲んで、一度、長く息を吐く。
「いつか来るかもな」
何事も、未来ではどうなるか分からない。
ただ、中2の初め頃までは幼かったサクラの体つきが、この3年間で胸を含めて結構成長した。だから、将来はチャレンジが成功するほどの大きさになる可能性はあると俺は思っている。母親の美紀さんもかなり大きいし。
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「……そこまで言うなら、成功する場面をいつか見せてもらおうか」
「ま、任せてっ!」
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『クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。』の続編がスタートしました!(2025.2.8) 学園ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/89864889
『高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。』は全編公開中です。 学園ラブコメ作品です。是非、読みに来てみてください。宜しくお願いします。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/441389601
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しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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※続編がスタートしました!(2025.2.8)
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