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プロローグ『「僕」』
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『心に咲く花』
僕は「まとも」じゃない。
そんなこと、ずっと前から分かってる。
僕・沖田千尋は男性としての体の中に、女性の心が住んでいる。
最初に、性別については違和感を抱いたのは幼稚園の頃だろうか。5歳の七五三のとき、どうして僕は袴姿で参加しているのだろうかと。
そのとき、両親から女の子は3歳と7歳のときに七五三があると知り、どうして僕は3歳のときに着物を着て参加をしなかったのだろうかと思った。
小学校に入学したのを機に、僕の体は男だけれど、心は女なのだと割り切った。そう思うと、それまで抱いていた違和感はすっと消えたのだ。
これまで僕は男性の体が嫌だと思ったこともないし、男子として見られることに何の嫌悪感も抱いていない。男性として周りの人と接することにも不自由はない。僕を「僕」と言うことにも違和感はない。それに、女性なのかと怪しまれた経験も一度もない。
ただ……なぜかは分からないけど、男女問わずに美しいと言われることはある。
それに、僕は男性よりも女性の方に興味がある。だから、普通に過ごすには男性として生きていることの方が「都合がいい」のだ。
体は男だけれど、心は女。
だから、男として生きていることに問題ないし、嘘もないでしょう?
これまでに何度か、自分は女性の心を持っているってカミングアウトしようかどうか考えたことがあった。
ただ、体の性別と心の性別に違いがあるとカミングアウトしたら、周りの人間はきっと、それまでと変わらずに僕と接してはくれないだろう。
やむを得ない事情があったとしても、大多数の人間とは違うからと非難し軽蔑する。そうすることで、自分は普通の人間であると安心するために。実際にメディアやネットを見ていると、辛辣な言葉を目にすることがある。
そんなリスクを冒すくらいなら、体の中に住む女性の心のことを明かさずに、僕は男として穏やかに生きていくことに決めたんだ。
自分から言わずに。
誰からも怪しまれずに。
この春……私立白花高等学校に男子として入学し、僕は高校生活を送り始めるのであった。
僕は「まとも」じゃない。
そんなこと、ずっと前から分かってる。
僕・沖田千尋は男性としての体の中に、女性の心が住んでいる。
最初に、性別については違和感を抱いたのは幼稚園の頃だろうか。5歳の七五三のとき、どうして僕は袴姿で参加しているのだろうかと。
そのとき、両親から女の子は3歳と7歳のときに七五三があると知り、どうして僕は3歳のときに着物を着て参加をしなかったのだろうかと思った。
小学校に入学したのを機に、僕の体は男だけれど、心は女なのだと割り切った。そう思うと、それまで抱いていた違和感はすっと消えたのだ。
これまで僕は男性の体が嫌だと思ったこともないし、男子として見られることに何の嫌悪感も抱いていない。男性として周りの人と接することにも不自由はない。僕を「僕」と言うことにも違和感はない。それに、女性なのかと怪しまれた経験も一度もない。
ただ……なぜかは分からないけど、男女問わずに美しいと言われることはある。
それに、僕は男性よりも女性の方に興味がある。だから、普通に過ごすには男性として生きていることの方が「都合がいい」のだ。
体は男だけれど、心は女。
だから、男として生きていることに問題ないし、嘘もないでしょう?
これまでに何度か、自分は女性の心を持っているってカミングアウトしようかどうか考えたことがあった。
ただ、体の性別と心の性別に違いがあるとカミングアウトしたら、周りの人間はきっと、それまでと変わらずに僕と接してはくれないだろう。
やむを得ない事情があったとしても、大多数の人間とは違うからと非難し軽蔑する。そうすることで、自分は普通の人間であると安心するために。実際にメディアやネットを見ていると、辛辣な言葉を目にすることがある。
そんなリスクを冒すくらいなら、体の中に住む女性の心のことを明かさずに、僕は男として穏やかに生きていくことに決めたんだ。
自分から言わずに。
誰からも怪しまれずに。
この春……私立白花高等学校に男子として入学し、僕は高校生活を送り始めるのであった。
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