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エピローグ『ことだま』
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4月25日、月曜日。
今週も学校生活が始まる。ただ、金曜日は祝日なので4日学校に行けば3連休になるので得した気分だ。
今日の天気は快晴で、ブレザーを着て歩くとちょっと熱いくらいだ。先週の金曜日の寒さが嘘のよう。ただ、爽やかな風が吹いているので歩くのがとても気持ちがいい。先週の金曜日の登校までずっと車だったこともあるかも。
登校して風紀委員会の活動室に行くと、既に沙耶先輩、千晴先輩、ひより先輩の3人が揃っていた。
「おはようございます」
「おはよう、琴実ちゃん」
「おはようございます、琴実さん」
「おはよう、琴実ちゃん。唐沢さんはテニス部に戻ったということで、今日からはまた4人での活動になりますね」
「そうですね、ひよりさん。元気な理沙さんがいなくなったことは寂しいですが、今日からまた4人で頑張っていきましょう」
「藤堂さんの言うとおりだね。今日からまたこの4人で頑張ろう。そういえば、ダブル・ブレッドのメンバー全員から……解散のことについて了承はもらえたのかな?」
「運良く、生駒会長から受け取ったリストに書いてあった全員から、週末の間に了承をいただくことができました」
「じゃあ、一応……これでひとまず区切りを付けることができそうだね」
「ええ。なので、これからはまた通常のお仕事を頑張りましょう」
今日からまた通常の日々を送ることになるんだ。先週まではダブル・ブレッドのことで大変だったので、何事もなく過ごすことができるのはとても有り難いことだと分かる。
その後、秋川先生がやってきて、会長さんについての法的な処分については今日にも分かるとのこと。放課後には伝えてくれるらしい。ちなみに、昨日、東雲先生が白鳥さんからこっそりと訊いた限りでは、重い処分になることはないそうだけど。
いつもの日々に戻ったけれど、会長さんがどんな処分が下されるのか頭の中を駆け巡り、今日の授業もそこまで集中できなかった。
そして、今日も放課後になる。
「じゃあ、ことみん。委員会頑張ってね」
「うん。理沙ちゃんも部活頑張って。久しぶりだから無理はしないでね」
「ありがとう、気を付けるよ。じゃあ、また明日ね!」
理沙ちゃんはそう言って私に手を振ると、教室を飛び出ていった。そうだよね、今日からはまた4人で風紀委員会の活動をするんだよね。ちょっと寂しいな。
「……今日からも委員会を頑張ろう」
実際に声に出して自分の胸にその言葉を刻む。
そして、風紀委員会の活動室に向かうとそこには沙耶先輩の姿があった。
「お疲れ様です、沙耶先輩」
「お疲れ様、琴実ちゃん」
すると、沙耶先輩はいつもの爽やかな笑みを浮かべながら私の目の前までやってきて、何の前ぶりもなくキスしてきた。
「最初に琴実ちゃんが来たらキスしようって決めていたんだ」
「そうだったんですか。いきなりだったのでちょっとビックリしちゃいました」
「私も琴実ちゃんの立場だったら多分ビックリする」
「何ですかそれ」
こうして沙耶先輩と笑い合えるなんて。凄く幸せな気持ちになれる。そんな気持ちが強すぎるのか、気付けば沙耶先輩をぎゅっと抱きしめていた。
「……幸せです」
「私もだよ、琴実ちゃん」
そう言うと、沙耶先輩はもう一度口づけをして、私のことを抱きしめてくれる。やっぱり、この温もりと匂いや柔らかさを感じると本当に安心する。
「ねえ、琴実ちゃん。パンツ……堪能してもいい?」
「いいですよ」
私がスカートをたくし上げると、沙耶先輩はパンツを堪能する。沙耶先輩だからだと思うけれど、堪能される私も気持ち良かったりする。
「今日の白いパンツも可愛いよ。こうしていると金曜や土曜の夜を思い出すよ」
「……私もです」
あのときのことを思い出すと、今でもドキドキして体がとても熱くなる。先輩とまた、ああいうことをしたくなっちゃうな。
「お疲れ様で……す」
「2人きりだからかイチャイチャしていますね。さすがは相棒兼カップルです!」
「……ひよりさんの言う通りですね。ああ、このお部屋が暑く感じます」
ううっ、千晴先輩やひより先輩でも、パンツを堪能されるところを見つけられると恥ずかしいよ。
「琴実ちゃんと2人きりだからね。恋人としてスキンシップをしておこうと思って」
「それは大切かもしれませんが、ここは学校です。風紀委員として節度ある交際をするように心がけてくださいね」
「さすがは委員長。言うことがしっかりしていらっしゃる」
「当然のことです! 琴実さんも気を付けてくださいね」
「分かりました」
沙耶先輩のことを注意している千晴先輩を見ると、何だかいつもの風紀委員会って感じがする。ただ、以前と比べると、千晴先輩はちょっと柔らかい雰囲気になったかな?
「そういえば、金曜日に琴実ちゃんは朝倉先輩と一緒に帰ったけれど、週末は一緒に過ごしていたよね」
「日曜日の夕方までずっと一緒にいました。あっ、今とは雰囲気が違う沙耶先輩の写真を見ますか? スマホで撮ったんです。髪を下ろした沙耶先輩は可愛いですよ」
「是非、見させてください!」
千晴先輩、興奮気味でそう言ってくる。
「……まあ、2人になら写真を見せていいよ」
いつになく、沙耶先輩は頬を赤らめながらそう言った。
私は千晴先輩とひより先輩に、スマートフォンで撮影した沙耶先輩のワンピース姿の写真を見せる。
「あらぁ、朝倉さんもこんなに可愛らしい姿になれるのですね。彼女はスタイルが良くて美人な方ですものね」
「学校とは違う雰囲気ですね。はにかんでいるところがまたいいですよね、朝倉先輩」
「このワンピースは私のものなんですけど、先輩に似合いそうなものを着てもらったんですよ」
「琴実さんのコーディネートですか。さすがは恋人ですね。あと、髪型が普段とは違ってストレートのセミロングというのもいいですね。この写真だけ見たらパンツに関してド変態だと思う人はいませんよ」
「まあ、褒め言葉として受け取っておくよ」
沙耶先輩は爽やかな笑みを浮かべている。ただ、いつもと違う姿を褒められたことに照れているのか、頬が赤くなっている。
「おっ、風紀委員会4人全員揃っているな」
「みんな、お疲れ様」
東雲先生と秋川先生が活動室の中に入ってくる。先生方がここに来たってことは会長さんのことについて連絡が来たのかな。
「ほぉ、朝倉に似ているが……朝倉の姉さんとは雰囲気が違うなぁ。従姉妹か?」
東雲先生と秋川先生が私のスマートフォンを凝視している。
「真衣子さん、彼女は沙耶ちゃんですよ!」
「……朝倉、お前も可愛い女なんだな。いや、パンツに関してはどうしようもない変態だから、ただの女じゃないとは思っていてな……」
「生まれてからずっと女ですよ。そうじゃなければ、ここにだって通えていません。あと、変態な女性はいますし、人を傷つけなければ変態でもいいんですよ」
「……朝倉はやっぱり朝倉だな。何か安心した」
ふっと東雲先生は静かに笑った。沙耶先輩のように、ここまで変態について熱く語ることにできる女子高生はそうそういないか。
「あぁ、そうだ。あのことをちゃんと話さないと。多分、みんなが考えていることだと思うが……生駒のことについて麻美から連絡があった」
「京華は……どうなるんですか?」
「……不起訴処分だ。折笠への暴行、黒瀬への朝倉に対する傷害の教唆の罪などが該当するが、初犯であること、未成年であること、生駒本人も深く反省しているということで不起訴処分という形にしたそうだ」
「そうですか……」
沙耶先輩はほっと胸を撫で下ろした。会長さん……しっかりと反省して、それが警察に伝わったんだ。一番いい結果になったんじゃないかなと思う。
「不起訴であることを考慮した上で、学校としても生駒への処分を検討することになった。膨大な量の反省文提出と停学処分になるのかな。私と恵で学校側とも生駒とも話して、具体的な処分を決めていくよ。だから、今後しばらくは大変な日もあると思うからよろしくな、恵」
「分かりました、真衣子さん。ということで、風紀委員会としては今日からまた通常通りの仕事に戻ります。今日の放課後はまた沙耶ちゃんと琴実ちゃん、千晴ちゃんとひよりちゃんの2組で見回りの仕事をしてね」
「分かりました。ただ、朝倉さん……折笠さんと2人で見回りするからといって、隠れてイチャイチャするのはダメですよ。仕事に支障をきたすようでしたら、組み合わせを変えますからね」
「ああ、気を付けるよ」
千晴先輩やひより先輩と一緒に見回りをするのもいいけど、やっぱり沙耶先輩と一緒にお仕事がしたいし……私も気を付けよう。
「じゃあ、今日も見回りをするってことで……いつもの掛け声を言おうよ。琴実ちゃん、これまで全然言ってくれないから……今日はちゃんと言ってくれる?」
「……分かりました。しっかりと言いますよ」
沙耶先輩の恋人になったわけだし。この活動室で言うならいいか。
「せっかくですから、先生方も言いましょうよ」
「はあ? あの掛け声を言うのかよ。あいにく、私はそういう気分じゃないんだが……」
東雲先生、あからさまに嫌そうな様子を見せてくる。
私も最初にあの掛け声を聞いたときは、沙耶先輩って何にでもパンツを絡ませてくる人なんだなって思ったよ。呆れたと言ってもいいくらい。
「たまにはいいじゃないですか、真衣子さん。今まで言ったことないですけど、私は結構好きですよ。元気がもらえますし」
「……朝倉の影響を受けているな、恵。じゃあ、元気が出そうな恵に免じて今回だけは付き合ってやるか」
何だかんだで、秋川先生には甘いよね、東雲先生って。そんなところが最近可愛らしく思えてきた。きっと、秋川先生は東雲先生の可愛いところをこれまでにたくさん見てきているのだと思う。
「秋川先生が言うように、私も不思議と元気がもらえますね。やるぞ! という感じで鼓舞できるというか」
「ひよりさんも朝倉さんの影響を受けていますね。まあ、私も……こういう掛け声も悪くないと最近思えるようになりました。決して、好きな人が考えた掛け声だからではありませんよ! ただ、パンツという言葉には前向きな力が宿っていると思っただけですから!」
顔を真っ赤にしている千晴先輩が、沙耶先輩の影響を一番受けているんじゃないだろうか。フラれたとはいえ、沙耶先輩への好意は今も千晴先輩の心に強く抱き続けているのかな。
「何だかんだ、みんな言う気満々じゃないですか」
沙耶先輩はいつもの爽やかな笑みを浮かべる。
「それじゃ、みなさんご一緒に! せーの!」
『パンツ・フォー!』
6人一緒に言ったその掛け声は……不思議と気分を明るくさせてくれて。元気が湧いてきて。言霊って本当にあるんだ。
私は今日も風紀委員会の一員としてお仕事をしっかり頑張っています。優しい仲間や愛おしい人と一緒に。
『ガール&パンツ』 おわり
今週も学校生活が始まる。ただ、金曜日は祝日なので4日学校に行けば3連休になるので得した気分だ。
今日の天気は快晴で、ブレザーを着て歩くとちょっと熱いくらいだ。先週の金曜日の寒さが嘘のよう。ただ、爽やかな風が吹いているので歩くのがとても気持ちがいい。先週の金曜日の登校までずっと車だったこともあるかも。
登校して風紀委員会の活動室に行くと、既に沙耶先輩、千晴先輩、ひより先輩の3人が揃っていた。
「おはようございます」
「おはよう、琴実ちゃん」
「おはようございます、琴実さん」
「おはよう、琴実ちゃん。唐沢さんはテニス部に戻ったということで、今日からはまた4人での活動になりますね」
「そうですね、ひよりさん。元気な理沙さんがいなくなったことは寂しいですが、今日からまた4人で頑張っていきましょう」
「藤堂さんの言うとおりだね。今日からまたこの4人で頑張ろう。そういえば、ダブル・ブレッドのメンバー全員から……解散のことについて了承はもらえたのかな?」
「運良く、生駒会長から受け取ったリストに書いてあった全員から、週末の間に了承をいただくことができました」
「じゃあ、一応……これでひとまず区切りを付けることができそうだね」
「ええ。なので、これからはまた通常のお仕事を頑張りましょう」
今日からまた通常の日々を送ることになるんだ。先週まではダブル・ブレッドのことで大変だったので、何事もなく過ごすことができるのはとても有り難いことだと分かる。
その後、秋川先生がやってきて、会長さんについての法的な処分については今日にも分かるとのこと。放課後には伝えてくれるらしい。ちなみに、昨日、東雲先生が白鳥さんからこっそりと訊いた限りでは、重い処分になることはないそうだけど。
いつもの日々に戻ったけれど、会長さんがどんな処分が下されるのか頭の中を駆け巡り、今日の授業もそこまで集中できなかった。
そして、今日も放課後になる。
「じゃあ、ことみん。委員会頑張ってね」
「うん。理沙ちゃんも部活頑張って。久しぶりだから無理はしないでね」
「ありがとう、気を付けるよ。じゃあ、また明日ね!」
理沙ちゃんはそう言って私に手を振ると、教室を飛び出ていった。そうだよね、今日からはまた4人で風紀委員会の活動をするんだよね。ちょっと寂しいな。
「……今日からも委員会を頑張ろう」
実際に声に出して自分の胸にその言葉を刻む。
そして、風紀委員会の活動室に向かうとそこには沙耶先輩の姿があった。
「お疲れ様です、沙耶先輩」
「お疲れ様、琴実ちゃん」
すると、沙耶先輩はいつもの爽やかな笑みを浮かべながら私の目の前までやってきて、何の前ぶりもなくキスしてきた。
「最初に琴実ちゃんが来たらキスしようって決めていたんだ」
「そうだったんですか。いきなりだったのでちょっとビックリしちゃいました」
「私も琴実ちゃんの立場だったら多分ビックリする」
「何ですかそれ」
こうして沙耶先輩と笑い合えるなんて。凄く幸せな気持ちになれる。そんな気持ちが強すぎるのか、気付けば沙耶先輩をぎゅっと抱きしめていた。
「……幸せです」
「私もだよ、琴実ちゃん」
そう言うと、沙耶先輩はもう一度口づけをして、私のことを抱きしめてくれる。やっぱり、この温もりと匂いや柔らかさを感じると本当に安心する。
「ねえ、琴実ちゃん。パンツ……堪能してもいい?」
「いいですよ」
私がスカートをたくし上げると、沙耶先輩はパンツを堪能する。沙耶先輩だからだと思うけれど、堪能される私も気持ち良かったりする。
「今日の白いパンツも可愛いよ。こうしていると金曜や土曜の夜を思い出すよ」
「……私もです」
あのときのことを思い出すと、今でもドキドキして体がとても熱くなる。先輩とまた、ああいうことをしたくなっちゃうな。
「お疲れ様で……す」
「2人きりだからかイチャイチャしていますね。さすがは相棒兼カップルです!」
「……ひよりさんの言う通りですね。ああ、このお部屋が暑く感じます」
ううっ、千晴先輩やひより先輩でも、パンツを堪能されるところを見つけられると恥ずかしいよ。
「琴実ちゃんと2人きりだからね。恋人としてスキンシップをしておこうと思って」
「それは大切かもしれませんが、ここは学校です。風紀委員として節度ある交際をするように心がけてくださいね」
「さすがは委員長。言うことがしっかりしていらっしゃる」
「当然のことです! 琴実さんも気を付けてくださいね」
「分かりました」
沙耶先輩のことを注意している千晴先輩を見ると、何だかいつもの風紀委員会って感じがする。ただ、以前と比べると、千晴先輩はちょっと柔らかい雰囲気になったかな?
「そういえば、金曜日に琴実ちゃんは朝倉先輩と一緒に帰ったけれど、週末は一緒に過ごしていたよね」
「日曜日の夕方までずっと一緒にいました。あっ、今とは雰囲気が違う沙耶先輩の写真を見ますか? スマホで撮ったんです。髪を下ろした沙耶先輩は可愛いですよ」
「是非、見させてください!」
千晴先輩、興奮気味でそう言ってくる。
「……まあ、2人になら写真を見せていいよ」
いつになく、沙耶先輩は頬を赤らめながらそう言った。
私は千晴先輩とひより先輩に、スマートフォンで撮影した沙耶先輩のワンピース姿の写真を見せる。
「あらぁ、朝倉さんもこんなに可愛らしい姿になれるのですね。彼女はスタイルが良くて美人な方ですものね」
「学校とは違う雰囲気ですね。はにかんでいるところがまたいいですよね、朝倉先輩」
「このワンピースは私のものなんですけど、先輩に似合いそうなものを着てもらったんですよ」
「琴実さんのコーディネートですか。さすがは恋人ですね。あと、髪型が普段とは違ってストレートのセミロングというのもいいですね。この写真だけ見たらパンツに関してド変態だと思う人はいませんよ」
「まあ、褒め言葉として受け取っておくよ」
沙耶先輩は爽やかな笑みを浮かべている。ただ、いつもと違う姿を褒められたことに照れているのか、頬が赤くなっている。
「おっ、風紀委員会4人全員揃っているな」
「みんな、お疲れ様」
東雲先生と秋川先生が活動室の中に入ってくる。先生方がここに来たってことは会長さんのことについて連絡が来たのかな。
「ほぉ、朝倉に似ているが……朝倉の姉さんとは雰囲気が違うなぁ。従姉妹か?」
東雲先生と秋川先生が私のスマートフォンを凝視している。
「真衣子さん、彼女は沙耶ちゃんですよ!」
「……朝倉、お前も可愛い女なんだな。いや、パンツに関してはどうしようもない変態だから、ただの女じゃないとは思っていてな……」
「生まれてからずっと女ですよ。そうじゃなければ、ここにだって通えていません。あと、変態な女性はいますし、人を傷つけなければ変態でもいいんですよ」
「……朝倉はやっぱり朝倉だな。何か安心した」
ふっと東雲先生は静かに笑った。沙耶先輩のように、ここまで変態について熱く語ることにできる女子高生はそうそういないか。
「あぁ、そうだ。あのことをちゃんと話さないと。多分、みんなが考えていることだと思うが……生駒のことについて麻美から連絡があった」
「京華は……どうなるんですか?」
「……不起訴処分だ。折笠への暴行、黒瀬への朝倉に対する傷害の教唆の罪などが該当するが、初犯であること、未成年であること、生駒本人も深く反省しているということで不起訴処分という形にしたそうだ」
「そうですか……」
沙耶先輩はほっと胸を撫で下ろした。会長さん……しっかりと反省して、それが警察に伝わったんだ。一番いい結果になったんじゃないかなと思う。
「不起訴であることを考慮した上で、学校としても生駒への処分を検討することになった。膨大な量の反省文提出と停学処分になるのかな。私と恵で学校側とも生駒とも話して、具体的な処分を決めていくよ。だから、今後しばらくは大変な日もあると思うからよろしくな、恵」
「分かりました、真衣子さん。ということで、風紀委員会としては今日からまた通常通りの仕事に戻ります。今日の放課後はまた沙耶ちゃんと琴実ちゃん、千晴ちゃんとひよりちゃんの2組で見回りの仕事をしてね」
「分かりました。ただ、朝倉さん……折笠さんと2人で見回りするからといって、隠れてイチャイチャするのはダメですよ。仕事に支障をきたすようでしたら、組み合わせを変えますからね」
「ああ、気を付けるよ」
千晴先輩やひより先輩と一緒に見回りをするのもいいけど、やっぱり沙耶先輩と一緒にお仕事がしたいし……私も気を付けよう。
「じゃあ、今日も見回りをするってことで……いつもの掛け声を言おうよ。琴実ちゃん、これまで全然言ってくれないから……今日はちゃんと言ってくれる?」
「……分かりました。しっかりと言いますよ」
沙耶先輩の恋人になったわけだし。この活動室で言うならいいか。
「せっかくですから、先生方も言いましょうよ」
「はあ? あの掛け声を言うのかよ。あいにく、私はそういう気分じゃないんだが……」
東雲先生、あからさまに嫌そうな様子を見せてくる。
私も最初にあの掛け声を聞いたときは、沙耶先輩って何にでもパンツを絡ませてくる人なんだなって思ったよ。呆れたと言ってもいいくらい。
「たまにはいいじゃないですか、真衣子さん。今まで言ったことないですけど、私は結構好きですよ。元気がもらえますし」
「……朝倉の影響を受けているな、恵。じゃあ、元気が出そうな恵に免じて今回だけは付き合ってやるか」
何だかんだで、秋川先生には甘いよね、東雲先生って。そんなところが最近可愛らしく思えてきた。きっと、秋川先生は東雲先生の可愛いところをこれまでにたくさん見てきているのだと思う。
「秋川先生が言うように、私も不思議と元気がもらえますね。やるぞ! という感じで鼓舞できるというか」
「ひよりさんも朝倉さんの影響を受けていますね。まあ、私も……こういう掛け声も悪くないと最近思えるようになりました。決して、好きな人が考えた掛け声だからではありませんよ! ただ、パンツという言葉には前向きな力が宿っていると思っただけですから!」
顔を真っ赤にしている千晴先輩が、沙耶先輩の影響を一番受けているんじゃないだろうか。フラれたとはいえ、沙耶先輩への好意は今も千晴先輩の心に強く抱き続けているのかな。
「何だかんだ、みんな言う気満々じゃないですか」
沙耶先輩はいつもの爽やかな笑みを浮かべる。
「それじゃ、みなさんご一緒に! せーの!」
『パンツ・フォー!』
6人一緒に言ったその掛け声は……不思議と気分を明るくさせてくれて。元気が湧いてきて。言霊って本当にあるんだ。
私は今日も風紀委員会の一員としてお仕事をしっかり頑張っています。優しい仲間や愛おしい人と一緒に。
『ガール&パンツ』 おわり
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