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第64話『走り去る人』
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理沙ちゃんがずっと側にいてくれたおかげなのか何事もなく放課後を迎えた。沙耶先輩など他の風紀委員会メンバーも、無事に1日を過ごせたようだ。
理沙ちゃんはテニス部の顧問の先生からも風紀委員会を手伝うことを許可された。そのため、放課後になるとすぐに彼女と一緒に風紀委員会の活動室へ向かう。
活動室の中に入ると、そこには既に沙耶先輩と会長さんがいた。
「お疲れ様です、沙耶先輩、会長さん」
「2人ともお疲れ様」
「お疲れ様。琴実ちゃん、何事もなく過ごせたようだね」
「ええ。理沙ちゃんが側にいてくれたおかげかもしれません」
「なるほどね。唐沢さん、ありがとう」
「いえいえ、あたしがやりたいと思ったからやっているだけで。でも、今日はことみんに何もなくて良かったです」
「沙耶先輩の方は大丈夫でしたか?」
「うん、気付かないところで盗撮されているかもしれないけど。それに、こっちは生徒会長にボディーガードしてもらったから」
沙耶先輩は爽やかな笑みを浮かべながら会長さんの肩に手を乗せる。そのことに会長さんが嬉しそうにしていて。彼女が羨ましいと思いながらも、沙耶先輩と同じクラスだから……と納得させる。
「ただ、ずっと気になっていることがあってね」
「何かおかしな動きをしている人がいたんですか?」
沙耶先輩は真剣な表情をしながら私のことを見つめて、
「ううん、違うよ。ただ、白鳥さんと深津さんのパンツがどんな感じなのか……」
う~んと考えている。そうだよね、沙耶先輩だもんね。
「沙耶先輩、自分の置かれている立場が分かっているんですか?」
「分かっているよ。でも、美しい女性や可愛らしい女性のパンツがどんな感じなのか気になっちゃうんだ。警察官だから正義の白か、それとも何者にも染まらない黒か。いやぁ、想像するだけでワクワクしちゃうね!」
小さな子供のように、言葉通りのワクワクした様子になる沙耶先輩。
何てことを考えているんだと怒りたくなるけれど、ブレない沙耶先輩を見ていると安心できるのも事実。
「お仕事中にパンツを見ようとしたら、公務執行妨害で逮捕されちゃうかもしれないので気を付けてくださいね」
「大丈夫だって。そのくらいの常識はあるから」
沙耶先輩はそう言うけど、女性警察官のパンツがどんな感じなのか気になっている時点で心配なの。
「相変わらずですね、朝倉先輩は。そういえば、捜査の方は進んでいるのでしょうか。ことみん、東雲先生や秋川先生から連絡あった?」
「ううん、ないよ。沙耶先輩や会長さんは聞いていますか?」
「私も気になって昼休みとここに来る前に恵先生に聞いたけど、特に大きな進展はないみたいだね。ただ、琴実ちゃんが怪しい人物を見た日曜日の朝、私が住むマンションの近くにあるコンビニやスーパーの防犯カメラに、琴実ちゃんの言った服装の人物が走る映像はあったって。もしかしたら、後で刑事さん達とその映像を確認することになるかも」
「分かりました」
もし、その映像に映っている人が、昨日の朝に私が見た人と同じだったら……私に気付かれたから逃げたと考えて良さそうだ。
「あら、みなさん来ていたのですね」
「そうですね、千晴先輩。みなさん、お疲れ様です」
千晴先輩とひより先輩が一緒に活動室にやってきた。
「朝倉さん、琴実さん……何も変なことはありませんでしたか?」
「私も琴実ちゃんも大丈夫だよ、藤堂さん。あと、恵先生から話を聞いたけど、捜査に大きな進展はないみたい」
「私も秋川先生から同じことを聞きました。ただ、走っていく映像が複数あったということは、琴実さんに気付かれたので逃げたと推測できますね」
「そうだね。そういえば、藤堂さんやひよりちゃんは大丈夫だった? 風紀委員会のメンバーだから2人も狙われるかもしれない」
「私は大丈夫でした。ひよりさんは?」
「私も大丈夫でしたね。気付かれないところで盗撮されている可能性はありますが」
とりあえず、風紀委員会メンバーの周りでは目立った動きはなかったってことかな。警察も動き始めた効果かもしれない。
「ただ、掛布さんを捕まえたのも放課後ですから、これからの方がより気を付けないといけない気がしますね。もし、琴実さんを盗撮した人がうちの生徒なら尚更」
「藤堂さんの言うとおりだね。今日も校内の見回りをする予定だけど、そこはみんな気を付けようね。唐沢さんは放課後もこっちにいてくれるの? 部活の方は大丈夫?」
「はい。顧問の先生から、この問題が解決するまで風紀委員会の方を優先しなさいと言われました」
「分かった。じゃあ、唐沢さんは私や琴実ちゃんと一緒に3人見回りをしよう」
「分かりました!」
理沙ちゃんと一緒ならより心強いな。
「普段ならこれで見回り開始となりますが、朝倉さんと琴実さんの件もありましたから、秋川先生や東雲先生が来るまでは待機していましょうか」
「そうだね。じゃあ、それまでに唐沢さんの今日のパンツを堪能しようかな」
「朝倉先輩ったら本当にパンツが好きなんですね」
理沙ちゃんは笑顔でスパッツを脱いでいる。そういえば、この前の身だしなみチェックのときも特に嫌がるような素振りは見せてなかったな。
「ねえねえ、琴実ちゃん。パンツを脱ぐときよりもスパッツを脱ぐときの方がそそられない? ドキドキしない?」
「そんなこと考えたことありませんよ」
「そうかな? 京華は?」
「私も折笠さんと同じかなぁ」
良かった、私と同じ考えの人がいて。
「スパッツも脱いだので、あとは朝倉先輩のお好きなときに」
「うん、じゃあさっそく……」
そう言うと、沙耶先輩は理沙ちゃんのスカートをちらっとめくる。
「今日は白と桃色の縞模様なんだね。可愛い! いい匂い!」
沙耶先輩は理沙ちゃんの両脚を抱きしめて、スカートの中に頭を潜らせる。匂いを嗅いだりしているんだろう。
「おっ、生徒会長までいるじゃないか。……って、あっ」
東雲先生と秋川先生、捜査が一段落したのか白鳥さんと深津さんが部屋の中に入ってくるけれど、みんな理沙ちゃんと沙耶先輩の方に視線が固まっている。
「もしかしたら……そのスカートの中に顔を入れている人が、折笠さんを盗撮した人か『ブラン』かもしれませんよ! 菜々さん!」
「はいっ! いざ、確保!」
すると、さすがは警察官だけあって深津さんは素早く動き、沙耶先輩のことを理沙ちゃんから引き離した。
「うわっ、何をするんですか!」
「それはこちらのセリフですよ! それにしても、この方……被害届を出した朝倉さんですよ! まさか……」
「ええ、そのまさかかもしれないです。被害者の1人が実は犯人だったなんて。今回は唐沢さんのスパッツを脱がした後、パンツを脱がそうとしていたのかも」
「いや……違うよ、たぶん」
呆れた様子の東雲先生はため息を一度ついて、
「……麻美と深津さんに推理をしてもらって申し訳ないが、これはきっと唐沢の了解を得た上でパンツを堪能しているんだよ。そうだよな?」
「東雲先生の言うとおりです。朝倉先輩は無理矢理あたしのパンツを堪能しようとはしてません」
「そうですよ。ダブル・ブレッドとは違って、嫌がる変態行為はしません。パンツ堪能妨害罪っていうのがあったら、きっと逮捕されていたと思いますよ」
「それを警察の方に言ったら失礼でしょう。沙耶先輩と理沙ちゃんが言っていることは本当です。ここにいる私達がその証人です」
「おっ、フォローしてくれるなんてさすがは私の相棒だね、琴実ちゃん」
こんな形で相棒として褒められたくないよ。しかも、警察官の人達の前で。こっちは相棒として恥ずかしいんだから。
「なるほど、分かりました。菜々さん、朝倉さんのことを離してあげて」
「はい」
「真衣子先輩。朝倉さんってこういう子なんですか?」
「ああ。パンツに関しては筋金入りの変態だ。でも、相手が嫌がるようなことや法に触れるようなことはしない生徒だから安心してほしい。もちろん、ダブル・ブレッドのメンバーでもない。私が保証する。ただ、うちの生徒が紛らわしい行動をしていたことについては謝る。本当に申し訳ない。朝倉も謝れ」
「……ごめんなさい」
「いえいえ、謝るのは私の方ですよ。朝倉さん、申し訳ありませんでした」
「申し訳ないです」
すると、沙耶先輩はニヤリと笑って、
「それなら謝罪の変わりに――」
「それ以上言ったら本当にダメです。お二人は仕事中ですから」
「んんっ」
どうせ、勘違いのせいで理沙ちゃんから引き離した代償として2人のパンツを堪能させてほしいって言うに決まってる。沙耶先輩の相棒としてそれだけは阻止しないと。
「今回の件が落ち着いたら私のパンツをたっぷりと堪能させてあげますし、先輩の好きなパンツを穿いてあげますから、刑事さん達のパンツについては考えないでください」
沙耶先輩の耳元でそう囁き、彼女の口から手を離した。これで落ち着いてくれればいいんだけれど。
「琴実ちゃんの熱い想いは伝わったよ。これは一刻も早く解決しないとね。あと、唐沢さん、今日のパンツも最高だったよ」
理沙ちゃんに向けてウインクなんてしちゃって。まったく、理沙ちゃんが羨ましいと思うくらいにかっこいいよ。あと、沙耶先輩はTPOについて一度考えてもらった方がいいな。
「沙耶ちゃんがどんな子なのかが分かっていただいたところ……白鳥さん、菜々ちゃん。もちろん、私達に話せる範囲でいいので、捜査結果を話していただけますか?」
「分かりました。まずは『ブラン』について調べるために、掛布真白さんの家に行ってきましたが、今朝、真衣子先輩が仰っていたように『ブラン』との連絡方法が断たれてしまっている状態です。SNSを中心に調べてみましたが、『ブラン』に対して敬意を示す投稿がいくつかある程度で、誰なのか特定できる情報はありませんでした」
金曜日に掛布さんのことを捕まえた直後の時点で、『ブラン』とは連絡が取れなくなっていたし。警察が動き始めたこともあって、これからはより警戒すると思う。
「やっぱりそうか。ちなみに、折笠の件については? 確か、午後になって朝倉のマンション近くにあるコンビニやスーパーの防犯カメラに、折笠が証言した服装の人物が走る映像が記録されていたと聞いたが」
「ええ。その映像をお借りしたので、折笠さんに確認してほしいのです。折笠さん、いいですか?」
「分かりました」
白鳥さんが持参したノートパソコンで、例の人物が映っているという防犯カメラの映像を見せてもらう。どの映像もお店の入り口に付けられた防犯カメラの映像だ。
「ベージュのトレンチコートと帽子、それにサングラス……この人です! 間違いありません!」
ただ、この服装のせいで肝心の顔が全然見えず男女さえも分からない。このいかにも怪しい風貌は覚えているのに。
「分かりました。ありがとうございます。見た感じ、可能性は薄そうですが、この映像を解析してみましょう。再度、確認してもらうことになると思いますので、そのときは宜しくお願いします」
「はい、分かりました」
仮にこの映像に映っている人がダブル・ブレッドのメンバーだとしたら、掛布さんのときの経験も踏まえて、自分の正体がバレないように気を付けていると思う。映像解析については運が良ければという程度に考えておこう。
理沙ちゃんはテニス部の顧問の先生からも風紀委員会を手伝うことを許可された。そのため、放課後になるとすぐに彼女と一緒に風紀委員会の活動室へ向かう。
活動室の中に入ると、そこには既に沙耶先輩と会長さんがいた。
「お疲れ様です、沙耶先輩、会長さん」
「2人ともお疲れ様」
「お疲れ様。琴実ちゃん、何事もなく過ごせたようだね」
「ええ。理沙ちゃんが側にいてくれたおかげかもしれません」
「なるほどね。唐沢さん、ありがとう」
「いえいえ、あたしがやりたいと思ったからやっているだけで。でも、今日はことみんに何もなくて良かったです」
「沙耶先輩の方は大丈夫でしたか?」
「うん、気付かないところで盗撮されているかもしれないけど。それに、こっちは生徒会長にボディーガードしてもらったから」
沙耶先輩は爽やかな笑みを浮かべながら会長さんの肩に手を乗せる。そのことに会長さんが嬉しそうにしていて。彼女が羨ましいと思いながらも、沙耶先輩と同じクラスだから……と納得させる。
「ただ、ずっと気になっていることがあってね」
「何かおかしな動きをしている人がいたんですか?」
沙耶先輩は真剣な表情をしながら私のことを見つめて、
「ううん、違うよ。ただ、白鳥さんと深津さんのパンツがどんな感じなのか……」
う~んと考えている。そうだよね、沙耶先輩だもんね。
「沙耶先輩、自分の置かれている立場が分かっているんですか?」
「分かっているよ。でも、美しい女性や可愛らしい女性のパンツがどんな感じなのか気になっちゃうんだ。警察官だから正義の白か、それとも何者にも染まらない黒か。いやぁ、想像するだけでワクワクしちゃうね!」
小さな子供のように、言葉通りのワクワクした様子になる沙耶先輩。
何てことを考えているんだと怒りたくなるけれど、ブレない沙耶先輩を見ていると安心できるのも事実。
「お仕事中にパンツを見ようとしたら、公務執行妨害で逮捕されちゃうかもしれないので気を付けてくださいね」
「大丈夫だって。そのくらいの常識はあるから」
沙耶先輩はそう言うけど、女性警察官のパンツがどんな感じなのか気になっている時点で心配なの。
「相変わらずですね、朝倉先輩は。そういえば、捜査の方は進んでいるのでしょうか。ことみん、東雲先生や秋川先生から連絡あった?」
「ううん、ないよ。沙耶先輩や会長さんは聞いていますか?」
「私も気になって昼休みとここに来る前に恵先生に聞いたけど、特に大きな進展はないみたいだね。ただ、琴実ちゃんが怪しい人物を見た日曜日の朝、私が住むマンションの近くにあるコンビニやスーパーの防犯カメラに、琴実ちゃんの言った服装の人物が走る映像はあったって。もしかしたら、後で刑事さん達とその映像を確認することになるかも」
「分かりました」
もし、その映像に映っている人が、昨日の朝に私が見た人と同じだったら……私に気付かれたから逃げたと考えて良さそうだ。
「あら、みなさん来ていたのですね」
「そうですね、千晴先輩。みなさん、お疲れ様です」
千晴先輩とひより先輩が一緒に活動室にやってきた。
「朝倉さん、琴実さん……何も変なことはありませんでしたか?」
「私も琴実ちゃんも大丈夫だよ、藤堂さん。あと、恵先生から話を聞いたけど、捜査に大きな進展はないみたい」
「私も秋川先生から同じことを聞きました。ただ、走っていく映像が複数あったということは、琴実さんに気付かれたので逃げたと推測できますね」
「そうだね。そういえば、藤堂さんやひよりちゃんは大丈夫だった? 風紀委員会のメンバーだから2人も狙われるかもしれない」
「私は大丈夫でした。ひよりさんは?」
「私も大丈夫でしたね。気付かれないところで盗撮されている可能性はありますが」
とりあえず、風紀委員会メンバーの周りでは目立った動きはなかったってことかな。警察も動き始めた効果かもしれない。
「ただ、掛布さんを捕まえたのも放課後ですから、これからの方がより気を付けないといけない気がしますね。もし、琴実さんを盗撮した人がうちの生徒なら尚更」
「藤堂さんの言うとおりだね。今日も校内の見回りをする予定だけど、そこはみんな気を付けようね。唐沢さんは放課後もこっちにいてくれるの? 部活の方は大丈夫?」
「はい。顧問の先生から、この問題が解決するまで風紀委員会の方を優先しなさいと言われました」
「分かった。じゃあ、唐沢さんは私や琴実ちゃんと一緒に3人見回りをしよう」
「分かりました!」
理沙ちゃんと一緒ならより心強いな。
「普段ならこれで見回り開始となりますが、朝倉さんと琴実さんの件もありましたから、秋川先生や東雲先生が来るまでは待機していましょうか」
「そうだね。じゃあ、それまでに唐沢さんの今日のパンツを堪能しようかな」
「朝倉先輩ったら本当にパンツが好きなんですね」
理沙ちゃんは笑顔でスパッツを脱いでいる。そういえば、この前の身だしなみチェックのときも特に嫌がるような素振りは見せてなかったな。
「ねえねえ、琴実ちゃん。パンツを脱ぐときよりもスパッツを脱ぐときの方がそそられない? ドキドキしない?」
「そんなこと考えたことありませんよ」
「そうかな? 京華は?」
「私も折笠さんと同じかなぁ」
良かった、私と同じ考えの人がいて。
「スパッツも脱いだので、あとは朝倉先輩のお好きなときに」
「うん、じゃあさっそく……」
そう言うと、沙耶先輩は理沙ちゃんのスカートをちらっとめくる。
「今日は白と桃色の縞模様なんだね。可愛い! いい匂い!」
沙耶先輩は理沙ちゃんの両脚を抱きしめて、スカートの中に頭を潜らせる。匂いを嗅いだりしているんだろう。
「おっ、生徒会長までいるじゃないか。……って、あっ」
東雲先生と秋川先生、捜査が一段落したのか白鳥さんと深津さんが部屋の中に入ってくるけれど、みんな理沙ちゃんと沙耶先輩の方に視線が固まっている。
「もしかしたら……そのスカートの中に顔を入れている人が、折笠さんを盗撮した人か『ブラン』かもしれませんよ! 菜々さん!」
「はいっ! いざ、確保!」
すると、さすがは警察官だけあって深津さんは素早く動き、沙耶先輩のことを理沙ちゃんから引き離した。
「うわっ、何をするんですか!」
「それはこちらのセリフですよ! それにしても、この方……被害届を出した朝倉さんですよ! まさか……」
「ええ、そのまさかかもしれないです。被害者の1人が実は犯人だったなんて。今回は唐沢さんのスパッツを脱がした後、パンツを脱がそうとしていたのかも」
「いや……違うよ、たぶん」
呆れた様子の東雲先生はため息を一度ついて、
「……麻美と深津さんに推理をしてもらって申し訳ないが、これはきっと唐沢の了解を得た上でパンツを堪能しているんだよ。そうだよな?」
「東雲先生の言うとおりです。朝倉先輩は無理矢理あたしのパンツを堪能しようとはしてません」
「そうですよ。ダブル・ブレッドとは違って、嫌がる変態行為はしません。パンツ堪能妨害罪っていうのがあったら、きっと逮捕されていたと思いますよ」
「それを警察の方に言ったら失礼でしょう。沙耶先輩と理沙ちゃんが言っていることは本当です。ここにいる私達がその証人です」
「おっ、フォローしてくれるなんてさすがは私の相棒だね、琴実ちゃん」
こんな形で相棒として褒められたくないよ。しかも、警察官の人達の前で。こっちは相棒として恥ずかしいんだから。
「なるほど、分かりました。菜々さん、朝倉さんのことを離してあげて」
「はい」
「真衣子先輩。朝倉さんってこういう子なんですか?」
「ああ。パンツに関しては筋金入りの変態だ。でも、相手が嫌がるようなことや法に触れるようなことはしない生徒だから安心してほしい。もちろん、ダブル・ブレッドのメンバーでもない。私が保証する。ただ、うちの生徒が紛らわしい行動をしていたことについては謝る。本当に申し訳ない。朝倉も謝れ」
「……ごめんなさい」
「いえいえ、謝るのは私の方ですよ。朝倉さん、申し訳ありませんでした」
「申し訳ないです」
すると、沙耶先輩はニヤリと笑って、
「それなら謝罪の変わりに――」
「それ以上言ったら本当にダメです。お二人は仕事中ですから」
「んんっ」
どうせ、勘違いのせいで理沙ちゃんから引き離した代償として2人のパンツを堪能させてほしいって言うに決まってる。沙耶先輩の相棒としてそれだけは阻止しないと。
「今回の件が落ち着いたら私のパンツをたっぷりと堪能させてあげますし、先輩の好きなパンツを穿いてあげますから、刑事さん達のパンツについては考えないでください」
沙耶先輩の耳元でそう囁き、彼女の口から手を離した。これで落ち着いてくれればいいんだけれど。
「琴実ちゃんの熱い想いは伝わったよ。これは一刻も早く解決しないとね。あと、唐沢さん、今日のパンツも最高だったよ」
理沙ちゃんに向けてウインクなんてしちゃって。まったく、理沙ちゃんが羨ましいと思うくらいにかっこいいよ。あと、沙耶先輩はTPOについて一度考えてもらった方がいいな。
「沙耶ちゃんがどんな子なのかが分かっていただいたところ……白鳥さん、菜々ちゃん。もちろん、私達に話せる範囲でいいので、捜査結果を話していただけますか?」
「分かりました。まずは『ブラン』について調べるために、掛布真白さんの家に行ってきましたが、今朝、真衣子先輩が仰っていたように『ブラン』との連絡方法が断たれてしまっている状態です。SNSを中心に調べてみましたが、『ブラン』に対して敬意を示す投稿がいくつかある程度で、誰なのか特定できる情報はありませんでした」
金曜日に掛布さんのことを捕まえた直後の時点で、『ブラン』とは連絡が取れなくなっていたし。警察が動き始めたこともあって、これからはより警戒すると思う。
「やっぱりそうか。ちなみに、折笠の件については? 確か、午後になって朝倉のマンション近くにあるコンビニやスーパーの防犯カメラに、折笠が証言した服装の人物が走る映像が記録されていたと聞いたが」
「ええ。その映像をお借りしたので、折笠さんに確認してほしいのです。折笠さん、いいですか?」
「分かりました」
白鳥さんが持参したノートパソコンで、例の人物が映っているという防犯カメラの映像を見せてもらう。どの映像もお店の入り口に付けられた防犯カメラの映像だ。
「ベージュのトレンチコートと帽子、それにサングラス……この人です! 間違いありません!」
ただ、この服装のせいで肝心の顔が全然見えず男女さえも分からない。このいかにも怪しい風貌は覚えているのに。
「分かりました。ありがとうございます。見た感じ、可能性は薄そうですが、この映像を解析してみましょう。再度、確認してもらうことになると思いますので、そのときは宜しくお願いします」
「はい、分かりました」
仮にこの映像に映っている人がダブル・ブレッドのメンバーだとしたら、掛布さんのときの経験も踏まえて、自分の正体がバレないように気を付けていると思う。映像解析については運が良ければという程度に考えておこう。
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