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第27話『黄金コンビ』
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「なるほどね。変態集団ダブル・ブレッドか……聞いたことないなぁ」
1時間目が終わった後の休憩時間、理沙ちゃんに昨日のことを話した。まあ、入学して間もない理沙ちゃんが知っているわけないか。
「でも、ダブル・ブレッドっていう名前の由来がパンツだって分かると、朝倉先輩が関わっているように思えるね」
「私も同じことを思ったけれど、先輩は違うって言っていたから信じることにしてるんだ」
「へえ、すっかりと朝倉先輩の相棒だね、ことみん」
頑張ってるね、と理沙ちゃんは指で私の胸をつん、と押してくる。
「ことみん、胸が大きくて柔らかいね。これは癖になっちゃうね」
つん……つんつん……と、指で私の胸を押すことを止めない。まさか、理沙ちゃん……ダブル・ブレッドのメンバーじゃないよね?
「大丈夫だよ。私が所属しているのはテニス部だけだから」
「……そっか」
どうやら、私の心を読まれていたみたい。ひとまず、理沙ちゃんがダブル・ブレッドと関わりと分かって安心した。
ただ、例の写真がある以上……沙耶先輩のことを盗撮した人がこの校内にいるって考えて間違いないんだよね。そう思うと、周りが気になって仕方なかったのであった。
昼休み。
沙耶先輩から、お昼ご飯を持って生徒会室に来てほしいとLINEのメッセージがあったので、私はお弁当を持って生徒会室に来ている。
「ごめんね、琴実ちゃん。急に呼び出しちゃって」
「いえ、気にしないでください。それで、何かあったんですか?」
「京華が昨日の放課後のことについて、琴実ちゃんからも話を聞きたいそうだから」
「ごめんね、私のわがままで」
「いえいえ」
理沙ちゃんとお昼を食べる予定だったけど、私がここに来なければいけなくなった知ったとき、彼女は部活でできた友達とお昼ご飯を食べると言っていた。私は委員会で、理沙ちゃんは部活で……それぞれの繋がりを作っているんだな。
沙耶先輩の隣に座って、お弁当を食べ始める。
「いただきます」
お母さん、今日も私の大好きな玉子焼きを入れてくれたんだ。嬉しいな。
沙耶先輩の方をちらっと見て、先輩のお昼ご飯を見てみると、パン2つと紙パックの牛乳か。購買で買ったのかな。
「お昼ご飯までパンツか、って思ったでしょ」
「……そこまで考えませんでしたね」
食事のときまでパンツのことなんて考えたくないよ。
「ただ、それだけで夜ご飯まで持つんですか?」
「うん。まあ、放課後には購買でお菓子を買っていいことになっているから、お腹が空いたら購買でお菓子を買っているよ」
「そうですか」
沙耶先輩、背も高いし、スタイルもいいからバランスのいい食事を取っているかと思っていたんだけど、意外とそうじゃなかったみたい。
「ええと、パンツに拘ってお昼ご飯はパン2つなんですか?」
「あははっ、今日はたまたまだよ。コンビニで買うときもあるし、京華と一緒に食堂で食べるときもあるから」
「そうなんですね」
「でも、パンと牛乳は黄金コンビだよね」
さすがの沙耶先輩でも、食事までパンツを絡ませることはしないんだ。ちょっと安心してしまったことが何とも言えない。
「ふふっ、沙耶と折笠さん、これなら上手くやっていけそうね。どう? 沙耶に色々と振り回されてる?」
「パンツのことではアレですけど、風紀委員の仕事に関しては本当に頼りになります」
「……そうなんだって。良かったわね、沙耶」
「私が見込んだだけあるでしょ」
沙耶先輩と生徒会長、楽しそうに話している。私と沙耶先輩が話しているときも、こういう風に見えているのかな。
「ただ、折笠さん。風紀委員になって日が浅いのに、面倒なことに巻き込んじゃってごめんなさいね」
「いえ、そんな……」
風紀委員会に所属していたら、時には面倒なことに関わるのは分かっていた。何せ、校外で男達に追いかけられ、風紀委員の沙耶先輩に助けられた経験があるし。
「ダブル・ブレッドは犯罪とも言える行為をする団体って言われているけれど、それが表面化したわけでもなく、生徒からその集団が行なったと思われる被害は報告されなかったの。てっきり一時期流れた噂ってことで収束するかと思ったら、今年度になって急に盗撮だもん。しかも、風紀委員である沙耶が撮られた。私もビックリしちゃったよ」
そう言いながらも、生徒会長は笑っている。盗撮された写真に写っているのが、パンツを拾って幸せそうな笑みを浮かべている沙耶先輩だったからかな。
「沙耶先輩から、ダブル・ブレッドについては生徒会長から教えられたと聞いています。会長はどうやってダブル・ブレッドのことを知ったんですか?」
「いい質問ね。私も友達から聞いてね。ネットにあるこの学校の裏サイト。TwitterなどのSNSにダブル・ブレッドに関する投稿があるって。それを私も実際に見てね。それで、当時も風紀委員の沙耶にこのことを話したの」
「なるほど……」
生徒会長もまた他の人から聞いたことだったんだ。それにしても、今も学校の裏サイトなんて存在するんだ。
「ダブル・ブレッドは少数精鋭の女性変態集団とも言われているし、大規模な変態同好会とも言われているよ」
集団にせよ、同好会にせよ変態であることは確定なんだ。
「女性変態集団ってことは、ダブル・ブレッドは女性だけで構成されているんですか?」
「この学校の中に存在しているみたいだから、その可能性は大きいね」
ということは、ダブル・ブレッドが本当に存在するなら、メンバーは今、校内で昼休みを過ごしているんだ。そして、沙耶先輩のことを盗撮した人も。
「折笠さん、昨日の放課後……沙耶と一緒に特別棟の見回りをしているとき、変な視線を感じたってことはなかった? 誰かに見られているとか……」
「いえ、特には。ただ、沙耶先輩にパンツを見せてきた2年生の生徒はいましたけど」
「ああ、それは本人から聞いた。朝の服装チェックでスカートの丈がギリギリだった生徒よね」
「はい。覚えていることはそれくらいで。沙耶先輩がパンツを見つけたときも、特に怪しいことはありませんでしたね。強いて言えば、落ちていたパンツが怪しいというか」
「ふふっ、そうよね」
ただ、廊下の真ん中に桃色のパンツが落ちていることに気を取られて、怪しい人物に気づけなかった可能性は残っている。
パンツを拾ったらすぐに私達は持ち主を探し始めたから、先輩のことを盗撮した人は私達がいなくなった隙を狙って逃げたんだと思う。
「もう少し冷静でいられたら、沙耶先輩が盗撮されることを防げたのでしょうかね。あとは、私も一緒にパンツが落ちていたところまで行っていれば……」
「過ぎたことは仕方ないよ。それに、琴実ちゃんと一緒に見回りをしていたからこそ、盗撮くらいで済んだのかもしれないし」
「そう……言ってくれると嬉しいです」
沙耶先輩、優しいなぁ。本当に……パンツのことさえなければ、今頃、どのくらい先輩のことが好きになっていたんだろう。
「沙耶が折笠さんを守るはずだったのが、折笠さんが沙耶のことを守る立場になったのかもね。折笠さん、沙耶のことをよろしくね」
「ははっ、立場逆転ってやつか。それでも、これからも相棒として琴実ちゃんのことは守っていくつもりだから安心して」
そうだ、私と沙耶先輩は相棒なんだから、互いに守り合う関係なんだ。
「私、沙耶先輩の相棒として……頑張ります!」
そのためにはまず、風紀委員の仕事をしっかり覚えていかないと。あとは、ダブル・ブレッドについて個人的に調べてみようかな。
「頼もしいね、琴実ちゃん」
沙耶先輩はハンカチで手を拭いて、私の頭を優しく撫でてくれる。そのときの彼女の笑みはとても優しかったのであった。
1時間目が終わった後の休憩時間、理沙ちゃんに昨日のことを話した。まあ、入学して間もない理沙ちゃんが知っているわけないか。
「でも、ダブル・ブレッドっていう名前の由来がパンツだって分かると、朝倉先輩が関わっているように思えるね」
「私も同じことを思ったけれど、先輩は違うって言っていたから信じることにしてるんだ」
「へえ、すっかりと朝倉先輩の相棒だね、ことみん」
頑張ってるね、と理沙ちゃんは指で私の胸をつん、と押してくる。
「ことみん、胸が大きくて柔らかいね。これは癖になっちゃうね」
つん……つんつん……と、指で私の胸を押すことを止めない。まさか、理沙ちゃん……ダブル・ブレッドのメンバーじゃないよね?
「大丈夫だよ。私が所属しているのはテニス部だけだから」
「……そっか」
どうやら、私の心を読まれていたみたい。ひとまず、理沙ちゃんがダブル・ブレッドと関わりと分かって安心した。
ただ、例の写真がある以上……沙耶先輩のことを盗撮した人がこの校内にいるって考えて間違いないんだよね。そう思うと、周りが気になって仕方なかったのであった。
昼休み。
沙耶先輩から、お昼ご飯を持って生徒会室に来てほしいとLINEのメッセージがあったので、私はお弁当を持って生徒会室に来ている。
「ごめんね、琴実ちゃん。急に呼び出しちゃって」
「いえ、気にしないでください。それで、何かあったんですか?」
「京華が昨日の放課後のことについて、琴実ちゃんからも話を聞きたいそうだから」
「ごめんね、私のわがままで」
「いえいえ」
理沙ちゃんとお昼を食べる予定だったけど、私がここに来なければいけなくなった知ったとき、彼女は部活でできた友達とお昼ご飯を食べると言っていた。私は委員会で、理沙ちゃんは部活で……それぞれの繋がりを作っているんだな。
沙耶先輩の隣に座って、お弁当を食べ始める。
「いただきます」
お母さん、今日も私の大好きな玉子焼きを入れてくれたんだ。嬉しいな。
沙耶先輩の方をちらっと見て、先輩のお昼ご飯を見てみると、パン2つと紙パックの牛乳か。購買で買ったのかな。
「お昼ご飯までパンツか、って思ったでしょ」
「……そこまで考えませんでしたね」
食事のときまでパンツのことなんて考えたくないよ。
「ただ、それだけで夜ご飯まで持つんですか?」
「うん。まあ、放課後には購買でお菓子を買っていいことになっているから、お腹が空いたら購買でお菓子を買っているよ」
「そうですか」
沙耶先輩、背も高いし、スタイルもいいからバランスのいい食事を取っているかと思っていたんだけど、意外とそうじゃなかったみたい。
「ええと、パンツに拘ってお昼ご飯はパン2つなんですか?」
「あははっ、今日はたまたまだよ。コンビニで買うときもあるし、京華と一緒に食堂で食べるときもあるから」
「そうなんですね」
「でも、パンと牛乳は黄金コンビだよね」
さすがの沙耶先輩でも、食事までパンツを絡ませることはしないんだ。ちょっと安心してしまったことが何とも言えない。
「ふふっ、沙耶と折笠さん、これなら上手くやっていけそうね。どう? 沙耶に色々と振り回されてる?」
「パンツのことではアレですけど、風紀委員の仕事に関しては本当に頼りになります」
「……そうなんだって。良かったわね、沙耶」
「私が見込んだだけあるでしょ」
沙耶先輩と生徒会長、楽しそうに話している。私と沙耶先輩が話しているときも、こういう風に見えているのかな。
「ただ、折笠さん。風紀委員になって日が浅いのに、面倒なことに巻き込んじゃってごめんなさいね」
「いえ、そんな……」
風紀委員会に所属していたら、時には面倒なことに関わるのは分かっていた。何せ、校外で男達に追いかけられ、風紀委員の沙耶先輩に助けられた経験があるし。
「ダブル・ブレッドは犯罪とも言える行為をする団体って言われているけれど、それが表面化したわけでもなく、生徒からその集団が行なったと思われる被害は報告されなかったの。てっきり一時期流れた噂ってことで収束するかと思ったら、今年度になって急に盗撮だもん。しかも、風紀委員である沙耶が撮られた。私もビックリしちゃったよ」
そう言いながらも、生徒会長は笑っている。盗撮された写真に写っているのが、パンツを拾って幸せそうな笑みを浮かべている沙耶先輩だったからかな。
「沙耶先輩から、ダブル・ブレッドについては生徒会長から教えられたと聞いています。会長はどうやってダブル・ブレッドのことを知ったんですか?」
「いい質問ね。私も友達から聞いてね。ネットにあるこの学校の裏サイト。TwitterなどのSNSにダブル・ブレッドに関する投稿があるって。それを私も実際に見てね。それで、当時も風紀委員の沙耶にこのことを話したの」
「なるほど……」
生徒会長もまた他の人から聞いたことだったんだ。それにしても、今も学校の裏サイトなんて存在するんだ。
「ダブル・ブレッドは少数精鋭の女性変態集団とも言われているし、大規模な変態同好会とも言われているよ」
集団にせよ、同好会にせよ変態であることは確定なんだ。
「女性変態集団ってことは、ダブル・ブレッドは女性だけで構成されているんですか?」
「この学校の中に存在しているみたいだから、その可能性は大きいね」
ということは、ダブル・ブレッドが本当に存在するなら、メンバーは今、校内で昼休みを過ごしているんだ。そして、沙耶先輩のことを盗撮した人も。
「折笠さん、昨日の放課後……沙耶と一緒に特別棟の見回りをしているとき、変な視線を感じたってことはなかった? 誰かに見られているとか……」
「いえ、特には。ただ、沙耶先輩にパンツを見せてきた2年生の生徒はいましたけど」
「ああ、それは本人から聞いた。朝の服装チェックでスカートの丈がギリギリだった生徒よね」
「はい。覚えていることはそれくらいで。沙耶先輩がパンツを見つけたときも、特に怪しいことはありませんでしたね。強いて言えば、落ちていたパンツが怪しいというか」
「ふふっ、そうよね」
ただ、廊下の真ん中に桃色のパンツが落ちていることに気を取られて、怪しい人物に気づけなかった可能性は残っている。
パンツを拾ったらすぐに私達は持ち主を探し始めたから、先輩のことを盗撮した人は私達がいなくなった隙を狙って逃げたんだと思う。
「もう少し冷静でいられたら、沙耶先輩が盗撮されることを防げたのでしょうかね。あとは、私も一緒にパンツが落ちていたところまで行っていれば……」
「過ぎたことは仕方ないよ。それに、琴実ちゃんと一緒に見回りをしていたからこそ、盗撮くらいで済んだのかもしれないし」
「そう……言ってくれると嬉しいです」
沙耶先輩、優しいなぁ。本当に……パンツのことさえなければ、今頃、どのくらい先輩のことが好きになっていたんだろう。
「沙耶が折笠さんを守るはずだったのが、折笠さんが沙耶のことを守る立場になったのかもね。折笠さん、沙耶のことをよろしくね」
「ははっ、立場逆転ってやつか。それでも、これからも相棒として琴実ちゃんのことは守っていくつもりだから安心して」
そうだ、私と沙耶先輩は相棒なんだから、互いに守り合う関係なんだ。
「私、沙耶先輩の相棒として……頑張ります!」
そのためにはまず、風紀委員の仕事をしっかり覚えていかないと。あとは、ダブル・ブレッドについて個人的に調べてみようかな。
「頼もしいね、琴実ちゃん」
沙耶先輩はハンカチで手を拭いて、私の頭を優しく撫でてくれる。そのときの彼女の笑みはとても優しかったのであった。
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