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第25話『気になること』
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午前8時。
今日も沙耶先輩と一緒に登校する。こんな生活を始めてからまだ1週間も経っていないのに、先輩と一緒に登校することに早くも慣れ始めてしまっているのが恐ろしい。
「いやぁ、今日もいい天気だね」
「ええ、そうですね」
「4月も半ばになったけど、琴実ちゃんは高校生活に慣れてきたかな?」
「……色々なことがありましたので」
男達に追いかけられたり、沙耶先輩にパンツを堪能されたり。挙げ句の果てには風紀委員になってしまったり。盛りだくさんすぎて、学校生活の中で授業を受けているときが一番平和な時間だ。だからなのか、授業にはしっかりとついて行けている。
「ははっ、確かに……色々なことがあったね。ただ、こんなにも琴実ちゃんのパンツを堪能できているから、高校最後の1年はいい1年間になりそうだよ」
「先輩、3年生ですもんね。あの、受験勉強は大丈夫なんですか?」
「私は指定校推薦があるからね。私立大学だけど。教師と進路相談する中で、推薦の方向で受験をしていくことになったんだ。藤堂さんはどうだったかなぁ。彼女は学年で五本指に入るくらいに優秀だから、国公立大学を一般受験かもね」
「へえ……」
だから、沙耶先輩も千晴先輩も委員会活動に集中できるってことなんだね。千晴先輩が五本指に入るくらいの頭の良さなのは納得だけど、沙耶先輩が指定校推薦をしてもらえるほどの好成績を取っているのは意外だ
。
「ふふっ、琴実ちゃん。今、私はパンツとそれに準ずる知識しかないと思っていたでしょ」
「そんなことないですよ。ただ、沙耶先輩が推薦だなんて意外な感じがして」
あんなにパンツのことで暴走しているのに。今から、先輩が面接試験で何かやらかさないように祈っておこう。
「そうかな? ただ、大学に入学できるいい方法があるんだったら、それを使わない手はないからね。もちろん、正式に認められている方法であればの話だけど。入学できたら、キャンパンツライフを送るつもりさ」
「キャンパンツライフ……」
キャンパスライフの間違いだよね。今からこんなことを言っていたら、試験のときに何かやらかさないか心配だ。
「キャンパンツライフっていうのは、キャンパスで女子大生のパンツを堪能しながら送っていく大学生活のことだよ」
「……私の思っていた通りのことなんですね」
まさか、沙耶先輩が受験しようしている学部学科ってパンツに関わるところなんじゃ。そして、卒業論文でもパンツに関わることだったりして。沙耶先輩ならあり得そう。
「……ただ、来年から琴実ちゃんと同じ学校にいられなくなるんだよね。それはちょっと寂しいね。留年するわけにもいかないし、こればかりは仕方ないか」
「沙耶先輩……」
パンツが絡むとたまに頭を抱えたくなるときがあるけど、寂しいと言ってくれると、そんなことはどうでも良くなってしまう。寂しいってことは、私と一緒にいたいってことだよね、きっと。
私だって、沙耶先輩と離れるのは寂しいよ。来年からのことは正直、あまり考えたくない。先輩と一緒にこうして通学できる今年のことだけ考えたい。
「……今日みたいに、朝早く私の家に来てもいいんですよ」
「そう言ってくれると嬉しいね。大学生になっても、休みの日には遊びに行くよ」
「……はい。あと、大学に入学したら、どこなのか教えてくださいね。沙耶先輩と一緒の大学に進学できれば、離ればなれになるのは2年間だけで済むかもしれませんから」
大学のレベルによっては、一緒に通うのは難しくなるけど。
「……分かったよ、琴実ちゃん。合格したら真っ先に琴実ちゃんに伝えるよ」
「はい!」
沙耶先輩がどこの大学に進学しても大丈夫なように、今から勉強頑張っていかないと。そのくらいしなければ、先輩と一緒にいることはできないような気がする。
「じゃあ、琴実ちゃんと一緒にキャンパンツライフを送ることを、今後の目標の1つにしようかな」
「キャンパスライフでしょう? そういえば、パンツのことですが……昨日、沙耶先輩と一緒に見回りをしたとき、先輩がパンツを拾ったじゃないですか。あれ、結局誰のものだったんでしょうか」
「そうだね……昨晩、委員長から連絡があって、とりあえず暫くの間は職員室で預かることになったみたいだ」
「そうなんですか……」
まあ、そうなるよね。落とし主があの場所に行って、パンツがないことが分かれば、職員室に行って誰か女性の先生にパンツのことを訊くよね。
「でも、琴実ちゃん。どうしてパンツのことが気になるんだい? まさか、昨日はあんな態度を取っていたけど、実は琴実ちゃんの……」
「そんなわけないですって! 昨日も違うって言ったじゃないですか。ただ、放課後の特別棟という人気のない場所で、例の桃色のパンツが廊下に落ちていました。特別棟で部活動をしていた生徒も、プールで活動していた水泳部の生徒も心当たりはありませんでした。沙耶先輩があのパンツを見せたいためにわざと落としたわけじゃないですよね」
「そんなことしないよ。パンツを見せたいなら、そんな回りくどいことなんかしないで堂々と見せるよ。琴実ちゃんこそ、昨日と同じことを訊いているじゃないか」
「す、すみません……」
確かに、沙耶先輩なら……回りくどいことはせずにストレートに見せてきそう。そのときは、スカートをたくし上げそうかな。
――プルルッ。
あれ、スマートフォンが鳴っている音がする。私のスマートフォン……じゃないか。
「私の方か。……あっ、藤堂さんからだ。ちょっとごめんね」
「はい」
沙耶先輩のことを嫌っているようにも見える千晴先輩が朝から電話だなんて。何かあったに違いない。
「沙耶先輩、すみませんがスピーカーホンでお願いします」
「ああ、分かった」
沙耶先輩はスピーカーホンにして通話に出る。
「おはよう、藤堂さん。どうかしたの?」
『どうかしたの? ではありません! 今、風紀委員の活動室に到着したのですが、扉の下に写真が挟まっていたのですよ』
「写真が?」
『ええ。しかし、その写真……あなたが例のパンツを拾った瞬間が撮影された写真なんです!』
「えええっ!」
思わず、大きな声を挙げてしまった。まさか、あの状況で沙耶先輩のことを撮影した人がいたっていうの?
『今、琴実さんの声が聞こえましたが、彼女と登校しているのですか?』
「ああ、そうだよ。ほら、前に男達から追いかけられた件があったじゃない。だから、少しの間、私と一緒に登校することにしていて」
『なるほど。それなら都合がいいです。もう一度、昨日の放課後について話を訊かせてください。登校したらすぐに風紀委員の活動室に来てください』
「分かった。すぐに行くよ」
沙耶先輩の方から通話を切った。
「……琴実ちゃんが疑問を抱いて当然ってことか」
あの場所にパンツが落ちていたのは事実だからね。
「今の話だと、あのパンツを落としたのは、沙耶先輩の写真を撮影した人ってことになりますよね」
「今の話だけだとね。その写真を見ないと何とも言えないけど、写真を撮影するためであれば、パンツを落としたのではなく、置いたって言う方がより正確じゃないかな」
「ただ、どうしてパンツを拾う先輩の姿を……」
まさか、パンツのことに関して変態な先輩のことが好きな人の誰かが、パンツを拾った姿を撮影したくてわざと置いたとか。わざわざ、先輩にパンツを見せてきた生徒もいるくらいだし。
「さあね。私のファンかな? 世の中には物好きさんもいるから……」
「沙耶先輩は格好良くて、す、素敵ですよ。パンツのことはともかく」
「ははっ、言ってくれるね。でも、藤堂さんが見つけた写真はパンツ絡みの私の姿。変態な私が好きなファンっていう理由だけならいいけど……」
沙耶先輩はそう言うけど、先輩のファンだとしてもあの場所にパンツを置くってことは、沙耶先輩があの時間に特別棟を見回りすることを分かっている人がした可能性が高い。もしそうなら、先輩をストーカーする人がいることになるか。
「沙耶先輩、何か心当たりはないんですか? その、誰かにつけられている気配を感じているとか」
「今のところ、そういうことは特にないかな。ただ、白布女学院に関するとある噂があるんだ。パンツを拾ったときの私を写した写真はその噂と関わりがあるかもしれない。まあ、それは後で写真を見たときに教えるよ」
「分かりました」
その噂がどんな内容なのか気になるな。きっと、先輩は普通の写真ではなく、パンツを拾った自分の写真だからこそ、その噂のことを思い出したんだと思う。だから、ちょっと嫌な予感がするな。
「とにかく、今は一刻も早く藤堂さんのところに行こう。ちょっと走るけど、スカートがめくれてパンツが見えないように気を付けてね」
「言われなくても気を付けますって。先輩こそ気を付けてくださいね」
「うん」
そして、私は沙耶先輩と一緒に駆け足で学校へと向かった。
ただ、パンツが見えるかもしれないと思うと、あまり早く走れない。
そんな私に比べて、沙耶先輩は物凄いスピードで走って行く。それなのに、スカートがあまりめくれないことが不思議で仕方なかったのであった。
今日も沙耶先輩と一緒に登校する。こんな生活を始めてからまだ1週間も経っていないのに、先輩と一緒に登校することに早くも慣れ始めてしまっているのが恐ろしい。
「いやぁ、今日もいい天気だね」
「ええ、そうですね」
「4月も半ばになったけど、琴実ちゃんは高校生活に慣れてきたかな?」
「……色々なことがありましたので」
男達に追いかけられたり、沙耶先輩にパンツを堪能されたり。挙げ句の果てには風紀委員になってしまったり。盛りだくさんすぎて、学校生活の中で授業を受けているときが一番平和な時間だ。だからなのか、授業にはしっかりとついて行けている。
「ははっ、確かに……色々なことがあったね。ただ、こんなにも琴実ちゃんのパンツを堪能できているから、高校最後の1年はいい1年間になりそうだよ」
「先輩、3年生ですもんね。あの、受験勉強は大丈夫なんですか?」
「私は指定校推薦があるからね。私立大学だけど。教師と進路相談する中で、推薦の方向で受験をしていくことになったんだ。藤堂さんはどうだったかなぁ。彼女は学年で五本指に入るくらいに優秀だから、国公立大学を一般受験かもね」
「へえ……」
だから、沙耶先輩も千晴先輩も委員会活動に集中できるってことなんだね。千晴先輩が五本指に入るくらいの頭の良さなのは納得だけど、沙耶先輩が指定校推薦をしてもらえるほどの好成績を取っているのは意外だ
。
「ふふっ、琴実ちゃん。今、私はパンツとそれに準ずる知識しかないと思っていたでしょ」
「そんなことないですよ。ただ、沙耶先輩が推薦だなんて意外な感じがして」
あんなにパンツのことで暴走しているのに。今から、先輩が面接試験で何かやらかさないように祈っておこう。
「そうかな? ただ、大学に入学できるいい方法があるんだったら、それを使わない手はないからね。もちろん、正式に認められている方法であればの話だけど。入学できたら、キャンパンツライフを送るつもりさ」
「キャンパンツライフ……」
キャンパスライフの間違いだよね。今からこんなことを言っていたら、試験のときに何かやらかさないか心配だ。
「キャンパンツライフっていうのは、キャンパスで女子大生のパンツを堪能しながら送っていく大学生活のことだよ」
「……私の思っていた通りのことなんですね」
まさか、沙耶先輩が受験しようしている学部学科ってパンツに関わるところなんじゃ。そして、卒業論文でもパンツに関わることだったりして。沙耶先輩ならあり得そう。
「……ただ、来年から琴実ちゃんと同じ学校にいられなくなるんだよね。それはちょっと寂しいね。留年するわけにもいかないし、こればかりは仕方ないか」
「沙耶先輩……」
パンツが絡むとたまに頭を抱えたくなるときがあるけど、寂しいと言ってくれると、そんなことはどうでも良くなってしまう。寂しいってことは、私と一緒にいたいってことだよね、きっと。
私だって、沙耶先輩と離れるのは寂しいよ。来年からのことは正直、あまり考えたくない。先輩と一緒にこうして通学できる今年のことだけ考えたい。
「……今日みたいに、朝早く私の家に来てもいいんですよ」
「そう言ってくれると嬉しいね。大学生になっても、休みの日には遊びに行くよ」
「……はい。あと、大学に入学したら、どこなのか教えてくださいね。沙耶先輩と一緒の大学に進学できれば、離ればなれになるのは2年間だけで済むかもしれませんから」
大学のレベルによっては、一緒に通うのは難しくなるけど。
「……分かったよ、琴実ちゃん。合格したら真っ先に琴実ちゃんに伝えるよ」
「はい!」
沙耶先輩がどこの大学に進学しても大丈夫なように、今から勉強頑張っていかないと。そのくらいしなければ、先輩と一緒にいることはできないような気がする。
「じゃあ、琴実ちゃんと一緒にキャンパンツライフを送ることを、今後の目標の1つにしようかな」
「キャンパスライフでしょう? そういえば、パンツのことですが……昨日、沙耶先輩と一緒に見回りをしたとき、先輩がパンツを拾ったじゃないですか。あれ、結局誰のものだったんでしょうか」
「そうだね……昨晩、委員長から連絡があって、とりあえず暫くの間は職員室で預かることになったみたいだ」
「そうなんですか……」
まあ、そうなるよね。落とし主があの場所に行って、パンツがないことが分かれば、職員室に行って誰か女性の先生にパンツのことを訊くよね。
「でも、琴実ちゃん。どうしてパンツのことが気になるんだい? まさか、昨日はあんな態度を取っていたけど、実は琴実ちゃんの……」
「そんなわけないですって! 昨日も違うって言ったじゃないですか。ただ、放課後の特別棟という人気のない場所で、例の桃色のパンツが廊下に落ちていました。特別棟で部活動をしていた生徒も、プールで活動していた水泳部の生徒も心当たりはありませんでした。沙耶先輩があのパンツを見せたいためにわざと落としたわけじゃないですよね」
「そんなことしないよ。パンツを見せたいなら、そんな回りくどいことなんかしないで堂々と見せるよ。琴実ちゃんこそ、昨日と同じことを訊いているじゃないか」
「す、すみません……」
確かに、沙耶先輩なら……回りくどいことはせずにストレートに見せてきそう。そのときは、スカートをたくし上げそうかな。
――プルルッ。
あれ、スマートフォンが鳴っている音がする。私のスマートフォン……じゃないか。
「私の方か。……あっ、藤堂さんからだ。ちょっとごめんね」
「はい」
沙耶先輩のことを嫌っているようにも見える千晴先輩が朝から電話だなんて。何かあったに違いない。
「沙耶先輩、すみませんがスピーカーホンでお願いします」
「ああ、分かった」
沙耶先輩はスピーカーホンにして通話に出る。
「おはよう、藤堂さん。どうかしたの?」
『どうかしたの? ではありません! 今、風紀委員の活動室に到着したのですが、扉の下に写真が挟まっていたのですよ』
「写真が?」
『ええ。しかし、その写真……あなたが例のパンツを拾った瞬間が撮影された写真なんです!』
「えええっ!」
思わず、大きな声を挙げてしまった。まさか、あの状況で沙耶先輩のことを撮影した人がいたっていうの?
『今、琴実さんの声が聞こえましたが、彼女と登校しているのですか?』
「ああ、そうだよ。ほら、前に男達から追いかけられた件があったじゃない。だから、少しの間、私と一緒に登校することにしていて」
『なるほど。それなら都合がいいです。もう一度、昨日の放課後について話を訊かせてください。登校したらすぐに風紀委員の活動室に来てください』
「分かった。すぐに行くよ」
沙耶先輩の方から通話を切った。
「……琴実ちゃんが疑問を抱いて当然ってことか」
あの場所にパンツが落ちていたのは事実だからね。
「今の話だと、あのパンツを落としたのは、沙耶先輩の写真を撮影した人ってことになりますよね」
「今の話だけだとね。その写真を見ないと何とも言えないけど、写真を撮影するためであれば、パンツを落としたのではなく、置いたって言う方がより正確じゃないかな」
「ただ、どうしてパンツを拾う先輩の姿を……」
まさか、パンツのことに関して変態な先輩のことが好きな人の誰かが、パンツを拾った姿を撮影したくてわざと置いたとか。わざわざ、先輩にパンツを見せてきた生徒もいるくらいだし。
「さあね。私のファンかな? 世の中には物好きさんもいるから……」
「沙耶先輩は格好良くて、す、素敵ですよ。パンツのことはともかく」
「ははっ、言ってくれるね。でも、藤堂さんが見つけた写真はパンツ絡みの私の姿。変態な私が好きなファンっていう理由だけならいいけど……」
沙耶先輩はそう言うけど、先輩のファンだとしてもあの場所にパンツを置くってことは、沙耶先輩があの時間に特別棟を見回りすることを分かっている人がした可能性が高い。もしそうなら、先輩をストーカーする人がいることになるか。
「沙耶先輩、何か心当たりはないんですか? その、誰かにつけられている気配を感じているとか」
「今のところ、そういうことは特にないかな。ただ、白布女学院に関するとある噂があるんだ。パンツを拾ったときの私を写した写真はその噂と関わりがあるかもしれない。まあ、それは後で写真を見たときに教えるよ」
「分かりました」
その噂がどんな内容なのか気になるな。きっと、先輩は普通の写真ではなく、パンツを拾った自分の写真だからこそ、その噂のことを思い出したんだと思う。だから、ちょっと嫌な予感がするな。
「とにかく、今は一刻も早く藤堂さんのところに行こう。ちょっと走るけど、スカートがめくれてパンツが見えないように気を付けてね」
「言われなくても気を付けますって。先輩こそ気を付けてくださいね」
「うん」
そして、私は沙耶先輩と一緒に駆け足で学校へと向かった。
ただ、パンツが見えるかもしれないと思うと、あまり早く走れない。
そんな私に比べて、沙耶先輩は物凄いスピードで走って行く。それなのに、スカートがあまりめくれないことが不思議で仕方なかったのであった。
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