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第13話『顔合わせ』
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午後3時半。
昼休みに生駒会長からまずは生徒会室に来てほしいと言われたので、私は1人で生徒会室へと向かう。理沙ちゃんは今頃、テニス部の方に行って、楽しくテニスをしているんだろうなぁ。
――コンコン。
生徒会室の扉をノックすると、
『どうぞ』
生駒会長の声が聞こえたので生徒会室へと入る。中には生駒会長の他に沙耶先輩もいた。
「失礼します」
「おっ、琴実ちゃん。ちゃんと来たね、えらいえらい」
「幼稚園の子じゃないんですから……」
私がそう言っても、沙耶先輩は私の頭を優しく撫でてくれる。まあ、褒めてくれることは嬉しいから別にいいか。
「折笠さん、さっそく風紀委員会の部屋に案内するから」
「分かりました」
「じゃあ、一緒に行きましょう」
私は沙耶先輩や生駒会長と一緒に生徒会室を出発する。生徒会は生徒会室っていう部屋があるけれど、各委員会にも活動拠点みたいなところがあるんだ。
「風紀委員会に入っている生徒さんってどんな方達なんでしょう」
「風紀委員だけあってみんな真面目だよ。委員長は私に対して厳しいけど」
「それって、パンツばかり要求するからじゃないですか」
「ああ、なるほどね。じゃあ、もしかしたら初対面でパンツ見せてって言ったのがまずかったのかな」
沙耶先輩は今頃気付いたみたいだけど、絶対にそのせいだと思う。というか、沙耶先輩に一目惚れした私でさえパンツ見せてって初めて言われたときは嫌だったし。大半の人は初対面でパンツを見せろと言われたら嫌がるんじゃないかな。
「さあ、着いたわ。ここが風紀委員会の活動拠点になる部屋よ」
扉の横にあるボードには『委員会活動室1』と描かれていて、その下に『風紀委員会』と書かれている白いテープが貼られていた。
――コンコン。
生駒会長がノックをすると部屋の中から、
『はい、どうぞ』
と、知らない女性の声が聞こえた。風紀委員長なのかな。
風紀委員会の活動室に入ると、中には青髪のセミロングの女子生徒と、桃色の髪のショートボブの女子生徒が立っていた。青髪の方は沙耶先輩と違ったかっこよさがあって、桃色の髪の方はとても優しそうだ。笑顔が可愛らしい。
すると、青髪の女子生徒が爽やかに笑いながらこちらの方に近づいてくる。
「初めまして、折笠さん。私、3年2組の藤堂千晴。風紀委員長をやっていますわ」
「あたしは2年5組の成田ひより。よろしくね、琴実ちゃん」
青髪の方が藤堂先輩で、桃色の髪の方が成田先輩か。藤堂先輩の方はちょっと厳しそうな感じがするけど、この2人となら一緒にやっていけそう。
「1年3組の折笠琴実です。ええと、一昨日、朝倉沙耶先輩に助けられたことをきっかけに風紀委員会に誘われて、風紀委員をやってみようと思いました。分からないこととかたくさんありますが頑張ります。よろしくお願いします」
自己紹介をして、2人に頭を下げる。分からないことが多いので、先輩方に訊いて一つ一つ仕事内容を覚えていかないと。
「風紀委員会へようこそ、折笠さん。これからよろしくお願いいたします」
「琴実ちゃんが来ると賑やかになるよ、きっと。これから一緒に頑張ろうね」
そう言われて、私は笑顔の藤堂先輩と成田先輩に握手を交わす。
「まあ、生徒会長のお墨付きだから大丈夫だとは思っていましたけど、折笠さんは真面目そうな女の子ですわね。朝倉さんが最初に推してきたときは、彼女と同じパンツ大好き変態女子かと思いましたが」
「そ、そうだったんですか……」
「彼女の相棒として活動することになりますので、朝倉さんの暴走を止めてくれると期待します。風紀委員という立場の生徒が、パンツを見せることを要求するなんて言語道断ですからね! それに、私は決して忘れません! 初対面なのに私のパンツを見せてと言われたときのことを!」
「ごめんね。基本的に、興味のある女の子との初対面は『パンツを見てこんにちは』が私のモットーだから」
藤堂先輩が激しく怒っているのに、沙耶先輩がいつもの爽やかな笑みを浮かべて全く動じていない。というか、沙耶先輩、藤堂先輩に興味を持っているの? ちょっと胸騒ぎがしてきた。
「成田先輩も沙耶先輩と初対面の時にパンツ見せて、って要求されたんですか?」
「そうだよ。最初はビックリしたけれど、女の子相手だからいいかなって。あと、あたしのことはひよりでいいよ」
「私のことも千晴と呼んでください、琴実さん」
互いに下の名前で呼び合えるのは親近感が湧いていいかも。
というか、ひより先輩……今の様子からして、沙耶先輩にパンツを見られることにあまり抵抗がなさそうな感じ。もしかして、沙耶先輩に気があったりして。
「生徒会長の推薦ということで琴実さんの風紀委員会の仲間となることが決まりましたが、最初にその話を出したのは朝倉さんです。朝倉さん、なぜ、琴実さんを風紀委員会に入ることを薦めたのですか? 年度初めで時期的にはちょうどいいですが。まあ、きっかけは男達から琴実さんを助けたことでしょうけど」
「それもそうだけど、一番の理由はそうだねぇ……琴実ちゃん自身と琴実ちゃんの穿くパンツが可愛かったからかなぁ」
「はあっ? そんなことで折笠さんに風紀委員会に入るように勧めたのですか! あなたという人はどこまでも不純な方なのですね!」
千晴先輩、ぷんぷんと怒っているな。
「折笠さん、嫌なら辞めてもいいのですよ? 特に朝倉さんのことで。私はそれでも全然かまいませんから……」
「いえ、大丈夫です! 私もよく悩んだ末に決めたことですから。沙耶先輩の変態ぶりはこの体で分かっていますし……」
「そうなのですか……」
かわいそうに、と言われんばかりの表情をされ、同情の意味を込めてか千晴先輩に頭を優しく撫でられる。ううっ、せっかく沙耶先輩を信頼した上で風紀委員会に入ったのに。いったい、これまで、沙耶先輩はパンツのことでどれだけ迷惑をかけてきたんだろう。
「朝倉さんのパンツ暴走のストッパーとして期待していますわ」
「は、はい。頑張ります」
「でも、嫌なことがあったら、私に遠慮無く相談してきてくださいね」
「ありがとうございます」
「……私、そんなに暴走しないと思うけどなぁ」
いやいやそんなことないですって、と今は心の中で突っ込んでおこう。実際にツッコミを入れたところで沙耶先輩は何にも変わらない。
千晴先輩やひより先輩がいるなら、風紀委員としてこれから頑張っていけそうな気がする。沙耶先輩のパンツ暴走のストッパーだけではなく、沙耶先輩に怒る千晴先輩を宥める役目にもなりそうだけれど。
「そうだ、琴実ちゃん。明日は登校してくる生徒の服装チェックがあるから、今日よりも早めに学校へ行くよ」
「分かりました」
明日はさっそく朝から仕事があるんだ。気合いを入れないと。
部活や委員会に入らないよりも、きっと楽しくて充実した生活を送ることができる。そんなことを思った風紀委員としての初日なのであった。
昼休みに生駒会長からまずは生徒会室に来てほしいと言われたので、私は1人で生徒会室へと向かう。理沙ちゃんは今頃、テニス部の方に行って、楽しくテニスをしているんだろうなぁ。
――コンコン。
生徒会室の扉をノックすると、
『どうぞ』
生駒会長の声が聞こえたので生徒会室へと入る。中には生駒会長の他に沙耶先輩もいた。
「失礼します」
「おっ、琴実ちゃん。ちゃんと来たね、えらいえらい」
「幼稚園の子じゃないんですから……」
私がそう言っても、沙耶先輩は私の頭を優しく撫でてくれる。まあ、褒めてくれることは嬉しいから別にいいか。
「折笠さん、さっそく風紀委員会の部屋に案内するから」
「分かりました」
「じゃあ、一緒に行きましょう」
私は沙耶先輩や生駒会長と一緒に生徒会室を出発する。生徒会は生徒会室っていう部屋があるけれど、各委員会にも活動拠点みたいなところがあるんだ。
「風紀委員会に入っている生徒さんってどんな方達なんでしょう」
「風紀委員だけあってみんな真面目だよ。委員長は私に対して厳しいけど」
「それって、パンツばかり要求するからじゃないですか」
「ああ、なるほどね。じゃあ、もしかしたら初対面でパンツ見せてって言ったのがまずかったのかな」
沙耶先輩は今頃気付いたみたいだけど、絶対にそのせいだと思う。というか、沙耶先輩に一目惚れした私でさえパンツ見せてって初めて言われたときは嫌だったし。大半の人は初対面でパンツを見せろと言われたら嫌がるんじゃないかな。
「さあ、着いたわ。ここが風紀委員会の活動拠点になる部屋よ」
扉の横にあるボードには『委員会活動室1』と描かれていて、その下に『風紀委員会』と書かれている白いテープが貼られていた。
――コンコン。
生駒会長がノックをすると部屋の中から、
『はい、どうぞ』
と、知らない女性の声が聞こえた。風紀委員長なのかな。
風紀委員会の活動室に入ると、中には青髪のセミロングの女子生徒と、桃色の髪のショートボブの女子生徒が立っていた。青髪の方は沙耶先輩と違ったかっこよさがあって、桃色の髪の方はとても優しそうだ。笑顔が可愛らしい。
すると、青髪の女子生徒が爽やかに笑いながらこちらの方に近づいてくる。
「初めまして、折笠さん。私、3年2組の藤堂千晴。風紀委員長をやっていますわ」
「あたしは2年5組の成田ひより。よろしくね、琴実ちゃん」
青髪の方が藤堂先輩で、桃色の髪の方が成田先輩か。藤堂先輩の方はちょっと厳しそうな感じがするけど、この2人となら一緒にやっていけそう。
「1年3組の折笠琴実です。ええと、一昨日、朝倉沙耶先輩に助けられたことをきっかけに風紀委員会に誘われて、風紀委員をやってみようと思いました。分からないこととかたくさんありますが頑張ります。よろしくお願いします」
自己紹介をして、2人に頭を下げる。分からないことが多いので、先輩方に訊いて一つ一つ仕事内容を覚えていかないと。
「風紀委員会へようこそ、折笠さん。これからよろしくお願いいたします」
「琴実ちゃんが来ると賑やかになるよ、きっと。これから一緒に頑張ろうね」
そう言われて、私は笑顔の藤堂先輩と成田先輩に握手を交わす。
「まあ、生徒会長のお墨付きだから大丈夫だとは思っていましたけど、折笠さんは真面目そうな女の子ですわね。朝倉さんが最初に推してきたときは、彼女と同じパンツ大好き変態女子かと思いましたが」
「そ、そうだったんですか……」
「彼女の相棒として活動することになりますので、朝倉さんの暴走を止めてくれると期待します。風紀委員という立場の生徒が、パンツを見せることを要求するなんて言語道断ですからね! それに、私は決して忘れません! 初対面なのに私のパンツを見せてと言われたときのことを!」
「ごめんね。基本的に、興味のある女の子との初対面は『パンツを見てこんにちは』が私のモットーだから」
藤堂先輩が激しく怒っているのに、沙耶先輩がいつもの爽やかな笑みを浮かべて全く動じていない。というか、沙耶先輩、藤堂先輩に興味を持っているの? ちょっと胸騒ぎがしてきた。
「成田先輩も沙耶先輩と初対面の時にパンツ見せて、って要求されたんですか?」
「そうだよ。最初はビックリしたけれど、女の子相手だからいいかなって。あと、あたしのことはひよりでいいよ」
「私のことも千晴と呼んでください、琴実さん」
互いに下の名前で呼び合えるのは親近感が湧いていいかも。
というか、ひより先輩……今の様子からして、沙耶先輩にパンツを見られることにあまり抵抗がなさそうな感じ。もしかして、沙耶先輩に気があったりして。
「生徒会長の推薦ということで琴実さんの風紀委員会の仲間となることが決まりましたが、最初にその話を出したのは朝倉さんです。朝倉さん、なぜ、琴実さんを風紀委員会に入ることを薦めたのですか? 年度初めで時期的にはちょうどいいですが。まあ、きっかけは男達から琴実さんを助けたことでしょうけど」
「それもそうだけど、一番の理由はそうだねぇ……琴実ちゃん自身と琴実ちゃんの穿くパンツが可愛かったからかなぁ」
「はあっ? そんなことで折笠さんに風紀委員会に入るように勧めたのですか! あなたという人はどこまでも不純な方なのですね!」
千晴先輩、ぷんぷんと怒っているな。
「折笠さん、嫌なら辞めてもいいのですよ? 特に朝倉さんのことで。私はそれでも全然かまいませんから……」
「いえ、大丈夫です! 私もよく悩んだ末に決めたことですから。沙耶先輩の変態ぶりはこの体で分かっていますし……」
「そうなのですか……」
かわいそうに、と言われんばかりの表情をされ、同情の意味を込めてか千晴先輩に頭を優しく撫でられる。ううっ、せっかく沙耶先輩を信頼した上で風紀委員会に入ったのに。いったい、これまで、沙耶先輩はパンツのことでどれだけ迷惑をかけてきたんだろう。
「朝倉さんのパンツ暴走のストッパーとして期待していますわ」
「は、はい。頑張ります」
「でも、嫌なことがあったら、私に遠慮無く相談してきてくださいね」
「ありがとうございます」
「……私、そんなに暴走しないと思うけどなぁ」
いやいやそんなことないですって、と今は心の中で突っ込んでおこう。実際にツッコミを入れたところで沙耶先輩は何にも変わらない。
千晴先輩やひより先輩がいるなら、風紀委員としてこれから頑張っていけそうな気がする。沙耶先輩のパンツ暴走のストッパーだけではなく、沙耶先輩に怒る千晴先輩を宥める役目にもなりそうだけれど。
「そうだ、琴実ちゃん。明日は登校してくる生徒の服装チェックがあるから、今日よりも早めに学校へ行くよ」
「分かりました」
明日はさっそく朝から仕事があるんだ。気合いを入れないと。
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