ガール&パンツ

桜庭かなめ

文字の大きさ
上 下
13 / 86

第12話『任命』

しおりを挟む
 4月13日、水曜日。
 沙耶先輩は一緒に登校するだけでなく、1年3組の教室の前まで来てくれた。

「琴実ちゃん、昼休みに生徒会室まで来てくれるかな。一応、琴実ちゃんは生徒会からの推薦で風紀委員会に入る予定だから」
「分かりました」
「じゃあ、また昼休みにね」

 沙耶先輩は私に手を振り、教室を後にした。
 教室の中に入ると、既に理沙ちゃんが自分の席に座っていた。

「理沙ちゃん、おはよう」
「おはよう、ことみん。朝倉先輩と一緒に来たけど、仲直りできたんだ」
「うん。昨日の帰りに、また男達に襲われそうになってね。そこでまた沙耶先輩に助けてもらって……風紀委員になることに決めたよ」
「……そっか。ちょっと寂しくなるね」

 寂しくなる……か。
 確かに風紀委員になったら、今日みたいに昼休みには教室にいられなくなる日も多くなりそうだし、放課後は仕事ばかりになるかもしれない。

「一緒にいられる時間が結構減っちゃうかもしれないね」
「そうだね。それは嫌だけど、ことみんが決めたことだもんね。あたしは風紀委員の活動を応援するよ」
「ありがとう、理沙ちゃん。そういえば、理沙ちゃんの方はどうだった? 確か、テニス部の見学に行ったんだよね」
「うん、結構楽しそうだったよ。あたしは入部しようと思うんだけど、ことみんはどうする?」
「風紀委員の方があるからね。とりあえずは様子見かなぁ。でも、委員会の方でいっぱいになって、部活と両立するのは難しいかも。文化部ならまだしも」

 風紀委員の仕事がどういうものなのか。詳しい内容はそこまで知らないけど、中には沙耶先輩が私を助けてくれたような危険な仕事だってあるわけでしょ。そんな委員会と部活を両立させるのはかなり難しいと思う。

「そっか。高校生活自体にも慣れないといけないしね。分かったよ。じゃあ、あたしだけでテニス部に入るね」
「うん、ごめんね、誘ってもらったのに」
「いいよ、気にしないで。ことみんとはクラスメイトとして一緒ににいられるんだし」
「そうだね。……あっ、昼休みに生徒会室に呼ばれているから、理沙ちゃんと一緒にお昼ご飯が食べられないの」
「そっかぁ、寂しいなぁ。分かったよ」

 生徒会に所属する生徒は、いつも生徒会室でお昼を食べるって聞いたことがあるけど、白布女学院もそうなのかな。昨日のお昼は生駒会長しかいなかったけど。それがちょっと気になった。



 昼休みになり、私は1人で生徒会室へと向かう。

 ――コンコン。
『どうぞ』

 ノックをすると、すぐに中から生駒会長の声が聞こえた。

「失礼します」

 扉を開け、生徒会室の中を見てみると、そこには沙耶先輩と生駒会長の2人が。

「おっ、琴実ちゃん。ちゃんと来てくれたね」
「はい。あの……お2人だけですか? ここにいるの」
「ええ、そうよ。いつもは私1人だけだったり、生徒会のメンバーと一緒に昼食を食べることがあったり。沙耶と2人きりで食べることもあるわよ」
「そう……なんですね」

 どうやら、白布女学院は違うようだ。これなら、理沙ちゃんと一緒に昼休みを過ごせる日が多くなるかもしれない。
 ただ、沙耶先輩と2人きりのときがあるんだ。2人は幼なじみだそうだし、ここで2人の親交を深めているのかも。生駒会長が羨ましい。

「どうしたの、琴実ちゃん。顔をしかめて。気分でも悪い?」
「いえ、そんなことはありません」

 うううっ、顔に出ちゃっていたんだ。

「じゃあ、さっそく折笠さんに」

 すると、生駒会長が私の目の前に立つ。

「1年3組、折笠琴実さん。生徒会より、あなたを今日から風紀委員に任命します」
「はい。よろしくお願いします」

 こうして、私は生徒会からの任命により、正式に風紀委員になった。
 生駒会長の方から私と握手を交わす。

「風紀委員の仕事、頑張ってね。沙耶、折笠さんのことをよろしく」
「任せて。彼女の相棒として、責任を持って彼女のことを育てていくよ」

 2人が見守ってくれていると思うと、何だか安心できる。今でもちょっと怖い気持ちはあるけど、ここなら何とかやっていけそうかな。
 そうだ、昨日のことを謝っておかないと。生駒会長には色々なことを言っちゃったから。

「生駒会長。その……色々なことを言ってしまってごめんなさい」
「ふふっ、私は別にかまわないわよ。折笠さんの言うことも間違っていなかったし。ああいうことを言ったあなただからこそ、風紀委員になると決意してくれたことがとても嬉しいと思っているし、期待しているのよ。もちろん、そんなあなたを信頼しているわ」
「……ありがとうございます」

 昨日も私のことを信頼していると言ってくれた。生駒会長に色々と酷いことを言ってしまったのに、その想いは揺らいでいない。それがとても嬉しいし、会長の想いに応えることができるよう頑張らなければいけないなと強く思う。

「……でも、昨日はちょっと傷付いちゃったかも。何かお詫びしてほしいなぁ」
「じゃあ、パンツを見せてもらえばいいんじゃない? 今日の琴実ちゃんのパンツは桃色で可愛いんだ! お尻もね」
「何で沙耶が興奮しているのよ。ていうか、パンツの色を知っているということは折笠さんのパンツを見てきたのね、まったく……」
「今朝、琴実ちゃんの家に行って、彼女が制服に着替えているときに見たんだよ」
「……これから色々と大変だと思うけど、頑張ってね、折笠さん」
「は、はい……」

 沙耶先輩が暴走しないように気をつけないと。私のときと同じように生徒さんを助けたときに、その報酬としてパンツを見せてって言いそうだから。

「それで、京華は琴実ちゃんのパンツを見ないの?」
「私はあなたとは違って、パンツにはあまり興味はないの。どっちかっていうと、こっちの方が気になるかな?」

 そう言うと、生駒会長は両手を私の胸に当ててくる。

「ひゃあっ!」
「……へえ、結構大きいのね。私ほどじゃないけど」
「えっと、その……んんっ」

 生駒会長に胸を揉まれてしまっている。でも、会長が爽やかな笑みを浮かべていて、手つきが優しいからか、彼女のことを厭らしく感じない。

「へえ、京華って胸に興味があったんだ」
「……ただ、昨日のお詫びとして揉ませてもらっただけよ。だから、安心して。もうこれっきりだから。あと、あなたの胸、程良い柔らかさだったわ」
「は、はい……」

 程良い柔らかさって。他の人の胸も触ってきたってことなのかな。
 でも、安心した。てっきり、これから定期的に会長に胸を揉まれるかと思ったから。もし、会長が胸の大好きなド変態さんだったらどうしようかと。

「じゃあ、やるべきことも終わったし、お昼ご飯でも食べましょう」
「はい」
「……そうだ、放課後になったら一度、生徒会室に来て。沙耶以外の風紀委員のメンバーとの顔合わせをしたいから」
「分かりました」

 風紀委員会の生徒さん達って、どんな感じの人達なんだろう。沙耶先輩みたいな変態がいなければいいんだけど。そんなことを考えながら、3人でお昼ご飯を食べるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

女子校に男子入学可となったので入学したら男子が俺しかいなかった話

童好P
恋愛
タイトルのまんまにするつもりです

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-が完結しました!(2024.5.30)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

ハナノカオリ

桜庭かなめ
恋愛
 女子高に進学した坂井遥香は入学式当日、校舎の中で迷っているところをクラスメイトの原田絢に助けられ一目惚れをする。ただ、絢は「王子様」と称されるほどの人気者であり、彼女に恋をする生徒は数知れず。  そんな絢とまずはどうにか接したいと思った遥香は、絢に入学式の日に助けてくれたお礼のクッキーを渡す。絢が人気者であるため、遥香は2人きりの場で絢との交流を深めていく。そして、遥香は絢からの誘いで初めてのデートをすることに。  しかし、デートの直前、遥香の元に絢が「悪魔」であると告発する手紙と見知らぬ女の子の写真が届く。  絢が「悪魔」と称されてしまう理由は何なのか。写真の女の子とは誰か。そして、遥香の想いは成就するのか。  女子高に通う女の子達を中心に繰り広げられる青春ガールズラブストーリーシリーズ! 泣いたり。笑ったり。そして、恋をしたり。彼女達の物語をお楽しみください。  ※全話公開しました(2020.12.21)  ※Fragranceは本編で、Short Fragranceは短編です。Short Fragranceについては読まなくても本編を読むのに支障を来さないようにしています。  ※Fragrance 8-タビノカオリ-は『ルピナス』という作品の主要キャラクターが登場しております。  ※お気に入り登録や感想お待ちしています。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

処理中です...