1 / 86
プロローグ「無垢なる白」
しおりを挟む
「助けてええっ!」
逃げています。
私、折笠琴実は2人の男から逃げています。
「待てコラァ!」
遊びに行こう、と声をかけられたのでやんわりと断ったら、急に血相を変えてきた。それがとても恐くて。走って逃げて。でも、男達の方が私なんかよりもよっぽど脚が速くて。
「逃げるなんて酷いじゃないか」
私の肩に男の手が触れる。
そのことに私は驚きのあまり、その場で立ち止まってしまう。
「これ以上逃げなければ優しく遊んであげるからさぁ」
「あ、あううっ……」
や、優しい遊びってどういう遊びなの? 絶対に私にとっては優しくない遊びだよね。想像しただけで恐ろしくて、逃げようと思っても脚が震えてしまって一歩も動けない。
私、もう……男達に弄ばれるしかないのかな。それがとても嫌で、悲しくて……私の前に立っている男の顔が揺らめき始めたときだった。
「パンツ・フォー!」
そう叫ぶ女性の声が背後から聞こえたのだ。
誰なんだろうと思って後ろに振り返った瞬間、
「うっ!」
私の肩を掴んでいる男が顔を蹴られ、その場で倒れてしまった。
そして、見えたのは私の通っている高校の制服を着た女子生徒。彼女の真剣な表情はとってもかっこよくて。キュンとなって。
「か弱い女の子を複数で襲おうとするなんて、男として最低だね。君達の遊び相手は警察なんじゃないかな」
女子生徒はニヤリと笑いながらそう言うと、一瞬にして私の目の前から姿を消した。
「うっ!」
気付けば、女子生徒はもう1人の男の腹部に拳を入れていた。あそこはきっと鳩尾だと思う。鈍い音がしたしかなり痛そうだ。
もう1人の男も力なくその場で倒れる。
「……もう大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます。あの……あなたは確か、風紀委員の朝倉沙耶さんですよね?」
私が女子生徒さんの名前を言うと、彼女は爽やかに笑った。話題になっている人なので名前も何とか思い出せた。学年は確か3年生だったはず。
「へえ、私の名前……知ってくれていたんだ。嬉しいな。君に話したいことがあるけど、それは後にしよう。まずはこいつらを警察に突き出さないと」
「は、はい……」
朝倉先輩が私に話したいことがとても気になるけど、彼女の言うとおりまずはこの男達の身柄を警察に渡さないとね。
朝倉先輩が警察に通報し、男達は現行犯逮捕され……私と朝倉先輩も事情聴取のために警察に向かった。
午後6時。
警察による事情聴取がようやく終わって、朝倉先輩と一緒に警察署を後にする。
「結構長いこと時間がかかったね」
「そうですね。そういえば、さっき……私に話したいことがあると言っていましたけれど、それって……」
「それについては君と2人きりになってから話したいんだ」
「そ、そうですか……じゃあ、私の家に来ませんか! さっきのお礼もしたいですし」
い、いきなり私の家に誘っちゃって大丈夫だったかな。迷惑……じゃないかな。
しかし、朝倉先輩はにっこりとした笑みを見せる。
「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかな」
「分かりましたっ! では、私の家に行きましょう! ……あっ、そういえば名前をまだ言っていませんでしたね! 私、1年の折笠琴実といいます!」
「琴実ちゃん、か。可愛い名前だね」
「そ、そうですか? えへへっ……」
今、凄く幸せな気分に浸っています。かっこいい女の子に助けてもらって、その人から可愛いって言ってもらえるなんて。
一緒に歩いているだけでも十分に楽しくて、あっという間に家に辿り着いた。
朝倉先輩を家に通し、私の部屋まで案内する。
「ここが琴実ちゃんの部屋なんだ」
「そうです。すみません、あまり綺麗じゃなくて」
「そんなことないよ。それよりも……ようやく2人きりになれたね」
「は、はい!」
2人きりだなんて朝倉先輩から言われると、もうドキドキしちゃう。これって、やっぱり……恋だよね。
助けてくれたときの先輩がとても格好良かったことばかり思い出す。これって……一目惚れだよね。
それにしても、朝倉先輩……凜々しいなぁ。背も高くて、顔立ちも良くて、ポニーテールの髪型もよく似合っていて。
「琴実ちゃん、さっき……私にお礼がしたいって言ったよね」
「はい」
「……私、琴実ちゃんにして欲しいことがあるんだけど、いいかな」
「私にできることなら何でも!」
何をお礼にしようか迷っていたところだし。それに、朝倉先輩からお願いを言ってくれるのがとても嬉しい。
そして、朝倉先輩は普段通りの爽やかな笑みを浮かべながら私のことを見て、
「じゃあ、琴実ちゃん……パンツ見せてくれる?」
逃げています。
私、折笠琴実は2人の男から逃げています。
「待てコラァ!」
遊びに行こう、と声をかけられたのでやんわりと断ったら、急に血相を変えてきた。それがとても恐くて。走って逃げて。でも、男達の方が私なんかよりもよっぽど脚が速くて。
「逃げるなんて酷いじゃないか」
私の肩に男の手が触れる。
そのことに私は驚きのあまり、その場で立ち止まってしまう。
「これ以上逃げなければ優しく遊んであげるからさぁ」
「あ、あううっ……」
や、優しい遊びってどういう遊びなの? 絶対に私にとっては優しくない遊びだよね。想像しただけで恐ろしくて、逃げようと思っても脚が震えてしまって一歩も動けない。
私、もう……男達に弄ばれるしかないのかな。それがとても嫌で、悲しくて……私の前に立っている男の顔が揺らめき始めたときだった。
「パンツ・フォー!」
そう叫ぶ女性の声が背後から聞こえたのだ。
誰なんだろうと思って後ろに振り返った瞬間、
「うっ!」
私の肩を掴んでいる男が顔を蹴られ、その場で倒れてしまった。
そして、見えたのは私の通っている高校の制服を着た女子生徒。彼女の真剣な表情はとってもかっこよくて。キュンとなって。
「か弱い女の子を複数で襲おうとするなんて、男として最低だね。君達の遊び相手は警察なんじゃないかな」
女子生徒はニヤリと笑いながらそう言うと、一瞬にして私の目の前から姿を消した。
「うっ!」
気付けば、女子生徒はもう1人の男の腹部に拳を入れていた。あそこはきっと鳩尾だと思う。鈍い音がしたしかなり痛そうだ。
もう1人の男も力なくその場で倒れる。
「……もう大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます。あの……あなたは確か、風紀委員の朝倉沙耶さんですよね?」
私が女子生徒さんの名前を言うと、彼女は爽やかに笑った。話題になっている人なので名前も何とか思い出せた。学年は確か3年生だったはず。
「へえ、私の名前……知ってくれていたんだ。嬉しいな。君に話したいことがあるけど、それは後にしよう。まずはこいつらを警察に突き出さないと」
「は、はい……」
朝倉先輩が私に話したいことがとても気になるけど、彼女の言うとおりまずはこの男達の身柄を警察に渡さないとね。
朝倉先輩が警察に通報し、男達は現行犯逮捕され……私と朝倉先輩も事情聴取のために警察に向かった。
午後6時。
警察による事情聴取がようやく終わって、朝倉先輩と一緒に警察署を後にする。
「結構長いこと時間がかかったね」
「そうですね。そういえば、さっき……私に話したいことがあると言っていましたけれど、それって……」
「それについては君と2人きりになってから話したいんだ」
「そ、そうですか……じゃあ、私の家に来ませんか! さっきのお礼もしたいですし」
い、いきなり私の家に誘っちゃって大丈夫だったかな。迷惑……じゃないかな。
しかし、朝倉先輩はにっこりとした笑みを見せる。
「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかな」
「分かりましたっ! では、私の家に行きましょう! ……あっ、そういえば名前をまだ言っていませんでしたね! 私、1年の折笠琴実といいます!」
「琴実ちゃん、か。可愛い名前だね」
「そ、そうですか? えへへっ……」
今、凄く幸せな気分に浸っています。かっこいい女の子に助けてもらって、その人から可愛いって言ってもらえるなんて。
一緒に歩いているだけでも十分に楽しくて、あっという間に家に辿り着いた。
朝倉先輩を家に通し、私の部屋まで案内する。
「ここが琴実ちゃんの部屋なんだ」
「そうです。すみません、あまり綺麗じゃなくて」
「そんなことないよ。それよりも……ようやく2人きりになれたね」
「は、はい!」
2人きりだなんて朝倉先輩から言われると、もうドキドキしちゃう。これって、やっぱり……恋だよね。
助けてくれたときの先輩がとても格好良かったことばかり思い出す。これって……一目惚れだよね。
それにしても、朝倉先輩……凜々しいなぁ。背も高くて、顔立ちも良くて、ポニーテールの髪型もよく似合っていて。
「琴実ちゃん、さっき……私にお礼がしたいって言ったよね」
「はい」
「……私、琴実ちゃんにして欲しいことがあるんだけど、いいかな」
「私にできることなら何でも!」
何をお礼にしようか迷っていたところだし。それに、朝倉先輩からお願いを言ってくれるのがとても嬉しい。
そして、朝倉先輩は普段通りの爽やかな笑みを浮かべながら私のことを見て、
「じゃあ、琴実ちゃん……パンツ見せてくれる?」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ハナノカオリ
桜庭かなめ
恋愛
女子高に進学した坂井遥香は入学式当日、校舎の中で迷っているところをクラスメイトの原田絢に助けられ一目惚れをする。ただ、絢は「王子様」と称されるほどの人気者であり、彼女に恋をする生徒は数知れず。
そんな絢とまずはどうにか接したいと思った遥香は、絢に入学式の日に助けてくれたお礼のクッキーを渡す。絢が人気者であるため、遥香は2人きりの場で絢との交流を深めていく。そして、遥香は絢からの誘いで初めてのデートをすることに。
しかし、デートの直前、遥香の元に絢が「悪魔」であると告発する手紙と見知らぬ女の子の写真が届く。
絢が「悪魔」と称されてしまう理由は何なのか。写真の女の子とは誰か。そして、遥香の想いは成就するのか。
女子高に通う女の子達を中心に繰り広げられる青春ガールズラブストーリーシリーズ! 泣いたり。笑ったり。そして、恋をしたり。彼女達の物語をお楽しみください。
※全話公開しました(2020.12.21)
※Fragranceは本編で、Short Fragranceは短編です。Short Fragranceについては読まなくても本編を読むのに支障を来さないようにしています。
※Fragrance 8-タビノカオリ-は『ルピナス』という作品の主要キャラクターが登場しております。
※お気に入り登録や感想お待ちしています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる