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第12話『星空に願いを』
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お昼ご飯の片付けをした後、俺はエリカさんと一緒に、食後の日本茶を飲みながらゆっくりする。夏でも温かいものを飲むと落ち着くなぁ。
「宏斗さん。午後はどうやって過ごしますか?」
「そうですね……あっ、そうだ。夕方から始まるんですけど、夏川駅の近くで七夕祭りっていうお祭りがあるんです。今日は雨も降りませんし、一緒に行きますか?」
「お祭りってことは人がたくさんいるんだ。楽しそうだね。ところで、七夕って何なの?」
「ざっくり言えば、織姫と彦星が一年に一度、天の川の上でデートができる日ですね。それにちなんで、短冊っていう小さな紙に願い事を書いて、笹につるすんです」
「へえ、素敵だね! そのお祭りに行ってみたい!」
「では、夕方から行ってみましょうか。露店と言って、食べ物やおもちゃを売るお店がたくさんあるんですよ。夜ご飯は露店で買ったものを食べましょうか」
「うん! 楽しみだなぁ」
良かった、エリカさんが興味を持ってくれて。
そういえば、地元でもこの時期に七夕祭りをやっていたな。そのお祭りには、笹が飾られていて願い事を書くことのできるコーナーがあったけれど、こっちの祭りではそういうのがあるのかな。
スマートフォンで夏川市の七夕祭りについて調べてみると……おっ、公式サイトがあるのか。どれどれ……うん、短冊コーナーがあった。
「会場に、願い事を短冊に書いて笹につるすコーナーが設けられているようです。会場に行ったら、そこで1つ願いを書きましょうか」
「そうだね。何を書こうかなぁ……」
エリカさんの書きそうな願い事はおおよその想像がつくけれど。
俺は昔、何を書いていたかな。受験生のときは志望校合格とか書いたのを覚えているけれど。今まで書いた願いを、俺はどれだけ叶えることができたのだろうか。
「宏斗さんはどんな願いを書く?」
「えっ? 全然考えてないですね。……まあ、それは実際に短冊に書いて笹に飾るときのお楽しみということにしましょう」
「そっちの方が楽しいかも。私は決めたけれど、そのときまで秘密にしておくね」
ふふっ、と笑いながら俺の方を見ているってことは……やっぱりあのことかな。
俺もちゃんと考えておかなければいけないと思いながら、日本茶をすするのであった。
午後5時。
俺はエリカさんと一緒に七夕祭りの会場に向かい始める。雨が降らなくて良かった。雲もないので、これなら夜に天の川を見ることもできそうだ。
「昨日とは違って、あまり暑くないね」
「夕方になりましたからね。それに、この時期の日本は梅雨といって雨が降る日が多いんです。なので、晴れて良かったです」
「じゃあ、今日は運がいいんだね。そんな日に願い事をしたら、どんな願いでも叶いそうな気がするよ」
「それは言えてますね」
今日はお願い事日和かもしれないな。
ただ、20年前に何日も探した流れ星の正体が分かって、ダイマ星人のエリカさんと出会うという経験をしたからか、大抵のお願いは叶うような気がしてきた。
「段々と人が多くなってきたね」
「もうすぐお祭り会場ですからね。こういう人の多い場所には慣れていますか?」
「たくさんの人が来る王国主催のイベントには、王族の人間として参加するし、普段も誰から注目は浴びているから。たぶん、今は別の理由で見てくる人が多いけど、それは全然気にしてないよ。私、異星人だからね」
「さすがはエリカさんです。人が多いですから、しっかりと手を繋ぎましょう」
「うん!」
俺はエリカさんの手をしっかりと握る。
王族だと多くの人から注目を浴びる機会があるんだろうな。だから、地球人から見られてもあまり気にならないのかも。
そんなことを話していると、俺達は七夕祭りの会場に到着する。たくさん露店があるからか、食欲をそそるいい匂いがしてくる。
「あぁ、お腹が空いてきた」
「お昼ご飯はざるうどんでしたからね。さっそく何か買いましょうか。食べてみたいものはありますか?」
「あそこにあるたこ焼きというものを食べてみたい! 怪物と呼ばれている生き物がどんな味なのか気になる!」
「ははっ、なるほど。ただ、タコは日本では普通に食べますけどね」
きっと、他の国も調べる中で、タコは怪物と呼ばれていると知ったのだろう。
たこ焼きの屋台に行って8個入りのたこ焼きを買うと、お店のおじさんがエリカさんのことを可愛いと気に入り、2個オマケしてくれた。この耳としっぽは、エリカさんの印象をむしろ良くさせるのかも。
近くの広場に行って、さっそくたこ焼きを食べることに。
「美味しそうだね。いい匂いもするし」
「ええ。熱いので気を付けてくださいね」
「うん。いただきます。……あっ、熱い。……う~ん、とても美味しい! この歯ごたえがいいものがタコなのかな?」
「そうですよ。……うん、美味しいですね」
「美味しいよね。なぁんだ、怪物って呼ばれていても、調理すれば美味しく食べられるじゃない。これも後日報告しよっと」
そう言って、エリカさんは次々とたこ焼きを食べている。好き嫌いがないと言っていただけあって、これまで食べてきた料理を全て美味しいと言っている。食べることが大好きなのかも。
その考えを裏付けるように、その後も露店で売られている食べ物を次々と食べていく。どれも美味しそうに食べていたので、それだけでもこのお祭りに来て良かったなと思える。
「ふぅ、どれも美味しかった」
「たくさん食べましたね」
「まだまだ食べられるよ」
「……凄いですね」
俺はお腹いっぱいになって、途中からは食べなくなったのに。地球人と体の大きさは変わらないけれど、胃袋の大きさはかなり違うのか?
気付けば、空も暗くなっており、雲もないからか星が綺麗に見えていた。
「エリカさん。今日はあそこらへんにある天の川で、織姫と彦星が会っているんですよ」
「そうなんだ。……そろそろ、お願い事を書きに行こうか」
「そうですね」
公式サイトには、願い事を書いた短冊を笹につるすことができると書いてあった。お祭りが始まってから時間も経っているし、笹がたくさんつるされた笹がどこかにあるはず。
「あれかな、宏斗さん。色々な色の紙がつるされているけれど」
そう言ってエリカさんが指さした先にあったのは、短冊がつるされている笹だった。結構高いところまでにも、笹がつるされているんだな。
「そうです。つるされているものが短冊です」
「なるほどね。じゃあ、あそこに向かって行ってみよう」
大きな笹を目印に歩いていくと、短冊コーナーと書かれた幟が見えた。
「着きましたね、短冊コーナー」
「書いている人がたくさんいる。みんな、叶えたいことがあるんだ」
「そのようですね」
性別や世代を問わず、色々な人が短冊に願い事を書いているな。
俺とエリカさんは短冊コーナーの列に並ぶ。結構長いけれど、書く場所はたくさんあるし少し待っていれば順番が来そうかな。
「ねえ、おかあさん。このしっぽ、ねこちゃんみたいでかわいい」
「ふふっ、そうね」
後ろに並んでいる親子かな。そういった会話が聞こえてくる。エリカさんはそのことにとても嬉しそうだ。褒められたしっぽを左右に振っている。
最近の猫ブームもあってなのか、今のところは、エリカさんに嫌悪感を向ける人はあまりいないように思える。
「ねえ、宏斗さん。願い事って日本語で書いた方がいいのかな」
「それは自由だと思いますが、地球の言葉で書く方が、願いをより叶えやすくなるイメージがあります」
「そっか。じゃあ、日本語で書こうっと」
言語はどうであれ、ダイマ星人が短冊に願い事を書いたことを知ったら、織姫や彦星もビックリするだろうな。
俺の予想通り、割と早く俺達の順番が回ってきた。エリカさんと隣同士で短冊に願い事に書くことに。
「よし、書けた」
「宏斗さんも書けた? じゃあ、つるす前に見せ合おうよ」
「ええ」
俺はエリカさんとお互いにどんな願いを書いたのか見せ合う。俺は青い短冊に、
『宇宙平和 風見宏斗』
と書いて、エリカさんは赤い短冊に、
『好きな人と結婚できますように! エリカ・ダイマ』
と書いてあった。やっぱり、エリカさんのお願い事は結婚についてだったか。あと、エリカさんの字はとても綺麗で読みやすいな。
「ふふっ、何なの、宇宙平和って」
「ダイマ王星の人と出会って、色々と話を聞きましたからね。全ての惑星が平和なのが一番だと思って。エリカさんのお願い事は……エリカさんらしいですね」
「うん。今、私にとって最も叶えたいことだからね。……さっそく叶えてくれてもいいんだよ?」
そう言って、エリカさんは艶っぽい表情をして俺のことを見つめてくる。
「まずは短冊をつるさないと、叶えられるものも叶えられなくなる気がしますよ」
「……早く飾ろう」
真剣な様子となったエリカさんは俺の手を掴んで、笹のところまで連れて行く。俺の手を掴む強さから本当に叶えたい願いであることを伺わせる。
その後、隣同士に短冊をつるして、祭り会場を後にする。
エリカさんと出会ったこともあってか、この週末はとても長く感じた。そんな非日常な日々が明日からも続くことに俺は安心したのであった。
「宏斗さん。午後はどうやって過ごしますか?」
「そうですね……あっ、そうだ。夕方から始まるんですけど、夏川駅の近くで七夕祭りっていうお祭りがあるんです。今日は雨も降りませんし、一緒に行きますか?」
「お祭りってことは人がたくさんいるんだ。楽しそうだね。ところで、七夕って何なの?」
「ざっくり言えば、織姫と彦星が一年に一度、天の川の上でデートができる日ですね。それにちなんで、短冊っていう小さな紙に願い事を書いて、笹につるすんです」
「へえ、素敵だね! そのお祭りに行ってみたい!」
「では、夕方から行ってみましょうか。露店と言って、食べ物やおもちゃを売るお店がたくさんあるんですよ。夜ご飯は露店で買ったものを食べましょうか」
「うん! 楽しみだなぁ」
良かった、エリカさんが興味を持ってくれて。
そういえば、地元でもこの時期に七夕祭りをやっていたな。そのお祭りには、笹が飾られていて願い事を書くことのできるコーナーがあったけれど、こっちの祭りではそういうのがあるのかな。
スマートフォンで夏川市の七夕祭りについて調べてみると……おっ、公式サイトがあるのか。どれどれ……うん、短冊コーナーがあった。
「会場に、願い事を短冊に書いて笹につるすコーナーが設けられているようです。会場に行ったら、そこで1つ願いを書きましょうか」
「そうだね。何を書こうかなぁ……」
エリカさんの書きそうな願い事はおおよその想像がつくけれど。
俺は昔、何を書いていたかな。受験生のときは志望校合格とか書いたのを覚えているけれど。今まで書いた願いを、俺はどれだけ叶えることができたのだろうか。
「宏斗さんはどんな願いを書く?」
「えっ? 全然考えてないですね。……まあ、それは実際に短冊に書いて笹に飾るときのお楽しみということにしましょう」
「そっちの方が楽しいかも。私は決めたけれど、そのときまで秘密にしておくね」
ふふっ、と笑いながら俺の方を見ているってことは……やっぱりあのことかな。
俺もちゃんと考えておかなければいけないと思いながら、日本茶をすするのであった。
午後5時。
俺はエリカさんと一緒に七夕祭りの会場に向かい始める。雨が降らなくて良かった。雲もないので、これなら夜に天の川を見ることもできそうだ。
「昨日とは違って、あまり暑くないね」
「夕方になりましたからね。それに、この時期の日本は梅雨といって雨が降る日が多いんです。なので、晴れて良かったです」
「じゃあ、今日は運がいいんだね。そんな日に願い事をしたら、どんな願いでも叶いそうな気がするよ」
「それは言えてますね」
今日はお願い事日和かもしれないな。
ただ、20年前に何日も探した流れ星の正体が分かって、ダイマ星人のエリカさんと出会うという経験をしたからか、大抵のお願いは叶うような気がしてきた。
「段々と人が多くなってきたね」
「もうすぐお祭り会場ですからね。こういう人の多い場所には慣れていますか?」
「たくさんの人が来る王国主催のイベントには、王族の人間として参加するし、普段も誰から注目は浴びているから。たぶん、今は別の理由で見てくる人が多いけど、それは全然気にしてないよ。私、異星人だからね」
「さすがはエリカさんです。人が多いですから、しっかりと手を繋ぎましょう」
「うん!」
俺はエリカさんの手をしっかりと握る。
王族だと多くの人から注目を浴びる機会があるんだろうな。だから、地球人から見られてもあまり気にならないのかも。
そんなことを話していると、俺達は七夕祭りの会場に到着する。たくさん露店があるからか、食欲をそそるいい匂いがしてくる。
「あぁ、お腹が空いてきた」
「お昼ご飯はざるうどんでしたからね。さっそく何か買いましょうか。食べてみたいものはありますか?」
「あそこにあるたこ焼きというものを食べてみたい! 怪物と呼ばれている生き物がどんな味なのか気になる!」
「ははっ、なるほど。ただ、タコは日本では普通に食べますけどね」
きっと、他の国も調べる中で、タコは怪物と呼ばれていると知ったのだろう。
たこ焼きの屋台に行って8個入りのたこ焼きを買うと、お店のおじさんがエリカさんのことを可愛いと気に入り、2個オマケしてくれた。この耳としっぽは、エリカさんの印象をむしろ良くさせるのかも。
近くの広場に行って、さっそくたこ焼きを食べることに。
「美味しそうだね。いい匂いもするし」
「ええ。熱いので気を付けてくださいね」
「うん。いただきます。……あっ、熱い。……う~ん、とても美味しい! この歯ごたえがいいものがタコなのかな?」
「そうですよ。……うん、美味しいですね」
「美味しいよね。なぁんだ、怪物って呼ばれていても、調理すれば美味しく食べられるじゃない。これも後日報告しよっと」
そう言って、エリカさんは次々とたこ焼きを食べている。好き嫌いがないと言っていただけあって、これまで食べてきた料理を全て美味しいと言っている。食べることが大好きなのかも。
その考えを裏付けるように、その後も露店で売られている食べ物を次々と食べていく。どれも美味しそうに食べていたので、それだけでもこのお祭りに来て良かったなと思える。
「ふぅ、どれも美味しかった」
「たくさん食べましたね」
「まだまだ食べられるよ」
「……凄いですね」
俺はお腹いっぱいになって、途中からは食べなくなったのに。地球人と体の大きさは変わらないけれど、胃袋の大きさはかなり違うのか?
気付けば、空も暗くなっており、雲もないからか星が綺麗に見えていた。
「エリカさん。今日はあそこらへんにある天の川で、織姫と彦星が会っているんですよ」
「そうなんだ。……そろそろ、お願い事を書きに行こうか」
「そうですね」
公式サイトには、願い事を書いた短冊を笹につるすことができると書いてあった。お祭りが始まってから時間も経っているし、笹がたくさんつるされた笹がどこかにあるはず。
「あれかな、宏斗さん。色々な色の紙がつるされているけれど」
そう言ってエリカさんが指さした先にあったのは、短冊がつるされている笹だった。結構高いところまでにも、笹がつるされているんだな。
「そうです。つるされているものが短冊です」
「なるほどね。じゃあ、あそこに向かって行ってみよう」
大きな笹を目印に歩いていくと、短冊コーナーと書かれた幟が見えた。
「着きましたね、短冊コーナー」
「書いている人がたくさんいる。みんな、叶えたいことがあるんだ」
「そのようですね」
性別や世代を問わず、色々な人が短冊に願い事を書いているな。
俺とエリカさんは短冊コーナーの列に並ぶ。結構長いけれど、書く場所はたくさんあるし少し待っていれば順番が来そうかな。
「ねえ、おかあさん。このしっぽ、ねこちゃんみたいでかわいい」
「ふふっ、そうね」
後ろに並んでいる親子かな。そういった会話が聞こえてくる。エリカさんはそのことにとても嬉しそうだ。褒められたしっぽを左右に振っている。
最近の猫ブームもあってなのか、今のところは、エリカさんに嫌悪感を向ける人はあまりいないように思える。
「ねえ、宏斗さん。願い事って日本語で書いた方がいいのかな」
「それは自由だと思いますが、地球の言葉で書く方が、願いをより叶えやすくなるイメージがあります」
「そっか。じゃあ、日本語で書こうっと」
言語はどうであれ、ダイマ星人が短冊に願い事を書いたことを知ったら、織姫や彦星もビックリするだろうな。
俺の予想通り、割と早く俺達の順番が回ってきた。エリカさんと隣同士で短冊に願い事に書くことに。
「よし、書けた」
「宏斗さんも書けた? じゃあ、つるす前に見せ合おうよ」
「ええ」
俺はエリカさんとお互いにどんな願いを書いたのか見せ合う。俺は青い短冊に、
『宇宙平和 風見宏斗』
と書いて、エリカさんは赤い短冊に、
『好きな人と結婚できますように! エリカ・ダイマ』
と書いてあった。やっぱり、エリカさんのお願い事は結婚についてだったか。あと、エリカさんの字はとても綺麗で読みやすいな。
「ふふっ、何なの、宇宙平和って」
「ダイマ王星の人と出会って、色々と話を聞きましたからね。全ての惑星が平和なのが一番だと思って。エリカさんのお願い事は……エリカさんらしいですね」
「うん。今、私にとって最も叶えたいことだからね。……さっそく叶えてくれてもいいんだよ?」
そう言って、エリカさんは艶っぽい表情をして俺のことを見つめてくる。
「まずは短冊をつるさないと、叶えられるものも叶えられなくなる気がしますよ」
「……早く飾ろう」
真剣な様子となったエリカさんは俺の手を掴んで、笹のところまで連れて行く。俺の手を掴む強さから本当に叶えたい願いであることを伺わせる。
その後、隣同士に短冊をつるして、祭り会場を後にする。
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