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特別編-小さな晩夏-
プロローグ『醒めない』
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特別編-小さな晩夏-
8月28日、水曜日。
先週の土曜日から今日まで、俺は彩花と2人きりでプレ・ハネムーンという名の旅行に行ってきた。
旅行中に2組のカップルと出会い、そこで色々とあったけれど……最後には楽しい思い出となり、無事に家まで帰ってくることができた。
5日間の旅の疲れもあるので、今夜は特に何もせずに早めに寝ようということに。今夜は彩花の寝室のベッドで。
「旅行、楽しかったですね」
「そうだな」
「明日は渚先輩が家に来るんですよね」
「……ああ。まあ……宿題の手伝いもあるけどな」
夕食を食べ終わったときに渚から電話が掛かってきて、忘れていた宿題があることが分かったから明日、俺に手伝ってほしいという。旅行中に渚から電話を掛かってきたことがあったけれど、その時はとても落ち着いていた様子だったのに。
明日は渚にお土産を渡して、お土産話をしながらゆっくりする予定だったけれど、宿題の量によってはそれは明後日以降におあずけかな。
「彩花の方は宿題どうだ?」
「旅行に行く前に全て終わらせました」
「おっ、偉いな」
彩花の頭を優しく撫でると、彼女は嬉しそうに笑った。
「直人先輩の方は? 期末試験を受けなかったので、きっと渚先輩よりも多いとは思いますけど……」
「多かったけど、俺も旅行に行く前に終わらせたよ。まあ、もしかしたら渚みたいにやっていない課題があるかもしれないから、明日確認することにするよ」
「そうですね。じゃあ、私もそうしようかなぁ……」
残り数日しかないけど、渚は夏休みが終わる前に忘れていた宿題の存在に気付くことができたんだからまだいい。中学のとき、友人が9月1日に忘れていた宿題があることに気付いて青ざめたのを間近で見たことがあるから。
「それにしても、旅行……楽しかったですね」
「そうだな」
「色々とありましたけど……直人先輩とこうして一緒にいられることがとても幸せなんだって思うことができました」
「……そっか。俺も彩花が側にいてくれて幸せだよ」
「……嬉しいです」
そう言うと、彩花は俺にキスしてきた。彩花のベッドの上で、彩花の匂いに包まれながらキスされるとより一層幸せになる。
「今までは旅行が終わると結構寂しい気持ちになっていたんですけど、今回の旅行はちょっと違いますね。直人先輩と一緒に行ったからでしょうか」
「確かに、それはあるかもしれないな」
俺も……今までとは違う感覚だ。今まで家族に行った旅行や、今年のゴールデンウィークの帰省から帰ってきたときは何とも言えない切なさがあったけど。今回の旅行は彩花と2人きりで、色々なこともあったから幸せな気持ちが強い。
「……旅行から帰ってきても、好きな人がすぐ側にいるからかもしれませんね。本当に私は……幸せ者だと思います」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
「……何だか、話していたらちょっとしたくなっちゃいました。一度だけ……イチャイチャしてもいいですか?」
「……しょうがないな」
何だか、家に帰ってきたのにまだ旅行気分が醒めていないみたいだ。これも俺と2人で行ったことが影響しているのかな。
そして、俺と彩花は一度、体を介して愛情を確かめ合い……そのことで程良い眠気が来たので眠りについたのであった。
8月29日、木曜日。
ゆっくりと目を覚ますと、隣にはぐっすりと眠っている彩花の姿があった。家で彩花の可愛らしい寝顔を見ることができて、なぜだか安心できた。
部屋の時計をみると、午前7時過ぎ……か。
「よく寝たな……」
って、あれ? 何か、声がおかしいような気がする。
「あー、あー」
俺、こんなに声が高かったっけ? 特に喉が痛みは感じないけど……旅行疲れで気付かない間に喉にダメージがきちゃったのかな。
「……え?」
寝間着が大きくなったように思える。腕を見ると半袖のはずなのに、七分袖くらいの感じになっていて、腕自体も細くなっている。
「ええっ……」
もしかしたら、足の方もおかしいかもしれない思い見てみると、長ズボンの裾から脚が出ていなかった。大分捲って、ようやく足が出てきたけれど……その足も大分小さくなっているように思えた。
声に腕、そして足……何か、俺の体に異変が起きたことは確かだ。起きていてほしくないけれど。
ここの彩花の寝室には全身鏡が置いているので、ベッドから降り、全身鏡を見て自分の姿を確認してみると――。
「ど、どういうことだよ……」
鏡に映っている自分の姿に目を疑った。
「小さく、なってる……」
自分が自分じゃないように思えて、表情を変えたり、手足を動かしたりしてみると……鏡の中にいる人間も同じ動きを見せたのだ。残念ながら、鏡に映っているのは小さくなった自分・藍沢直人の姿のようだ。
夢、という可能性も捨てきれないので、ちょっと強めに自分の頬を叩くと、
「ううっ、痛い……」
痛みがはっきりと感じられ、強く叩いてしまったのでジンジンと残ってしまった。どうやら、夢じゃないようだ。
アルバムやホームビデオを思い出すと……この体の大きさは小学校に入学したときくらいかな。まあ、体は小さくなっても、頭脳の方は高校2年生のままなのが唯一の救いってところか。
「それにしても、何で小さくなったんだ……」
まさか、今回の旅行で出会った幽霊の仕業なのか? 可能性はありそうだな。
理由を考えるのは後にして、まずは……彩花にこのことを伝えないと。彩花、このことを知ったらどう思うんだろう。ショック……受けそうだな。今もなお、ベッドでぐっすりと眠っている彼女のことを見ながらそう思うのであった。
8月28日、水曜日。
先週の土曜日から今日まで、俺は彩花と2人きりでプレ・ハネムーンという名の旅行に行ってきた。
旅行中に2組のカップルと出会い、そこで色々とあったけれど……最後には楽しい思い出となり、無事に家まで帰ってくることができた。
5日間の旅の疲れもあるので、今夜は特に何もせずに早めに寝ようということに。今夜は彩花の寝室のベッドで。
「旅行、楽しかったですね」
「そうだな」
「明日は渚先輩が家に来るんですよね」
「……ああ。まあ……宿題の手伝いもあるけどな」
夕食を食べ終わったときに渚から電話が掛かってきて、忘れていた宿題があることが分かったから明日、俺に手伝ってほしいという。旅行中に渚から電話を掛かってきたことがあったけれど、その時はとても落ち着いていた様子だったのに。
明日は渚にお土産を渡して、お土産話をしながらゆっくりする予定だったけれど、宿題の量によってはそれは明後日以降におあずけかな。
「彩花の方は宿題どうだ?」
「旅行に行く前に全て終わらせました」
「おっ、偉いな」
彩花の頭を優しく撫でると、彼女は嬉しそうに笑った。
「直人先輩の方は? 期末試験を受けなかったので、きっと渚先輩よりも多いとは思いますけど……」
「多かったけど、俺も旅行に行く前に終わらせたよ。まあ、もしかしたら渚みたいにやっていない課題があるかもしれないから、明日確認することにするよ」
「そうですね。じゃあ、私もそうしようかなぁ……」
残り数日しかないけど、渚は夏休みが終わる前に忘れていた宿題の存在に気付くことができたんだからまだいい。中学のとき、友人が9月1日に忘れていた宿題があることに気付いて青ざめたのを間近で見たことがあるから。
「それにしても、旅行……楽しかったですね」
「そうだな」
「色々とありましたけど……直人先輩とこうして一緒にいられることがとても幸せなんだって思うことができました」
「……そっか。俺も彩花が側にいてくれて幸せだよ」
「……嬉しいです」
そう言うと、彩花は俺にキスしてきた。彩花のベッドの上で、彩花の匂いに包まれながらキスされるとより一層幸せになる。
「今までは旅行が終わると結構寂しい気持ちになっていたんですけど、今回の旅行はちょっと違いますね。直人先輩と一緒に行ったからでしょうか」
「確かに、それはあるかもしれないな」
俺も……今までとは違う感覚だ。今まで家族に行った旅行や、今年のゴールデンウィークの帰省から帰ってきたときは何とも言えない切なさがあったけど。今回の旅行は彩花と2人きりで、色々なこともあったから幸せな気持ちが強い。
「……旅行から帰ってきても、好きな人がすぐ側にいるからかもしれませんね。本当に私は……幸せ者だと思います」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
「……何だか、話していたらちょっとしたくなっちゃいました。一度だけ……イチャイチャしてもいいですか?」
「……しょうがないな」
何だか、家に帰ってきたのにまだ旅行気分が醒めていないみたいだ。これも俺と2人で行ったことが影響しているのかな。
そして、俺と彩花は一度、体を介して愛情を確かめ合い……そのことで程良い眠気が来たので眠りについたのであった。
8月29日、木曜日。
ゆっくりと目を覚ますと、隣にはぐっすりと眠っている彩花の姿があった。家で彩花の可愛らしい寝顔を見ることができて、なぜだか安心できた。
部屋の時計をみると、午前7時過ぎ……か。
「よく寝たな……」
って、あれ? 何か、声がおかしいような気がする。
「あー、あー」
俺、こんなに声が高かったっけ? 特に喉が痛みは感じないけど……旅行疲れで気付かない間に喉にダメージがきちゃったのかな。
「……え?」
寝間着が大きくなったように思える。腕を見ると半袖のはずなのに、七分袖くらいの感じになっていて、腕自体も細くなっている。
「ええっ……」
もしかしたら、足の方もおかしいかもしれない思い見てみると、長ズボンの裾から脚が出ていなかった。大分捲って、ようやく足が出てきたけれど……その足も大分小さくなっているように思えた。
声に腕、そして足……何か、俺の体に異変が起きたことは確かだ。起きていてほしくないけれど。
ここの彩花の寝室には全身鏡が置いているので、ベッドから降り、全身鏡を見て自分の姿を確認してみると――。
「ど、どういうことだよ……」
鏡に映っている自分の姿に目を疑った。
「小さく、なってる……」
自分が自分じゃないように思えて、表情を変えたり、手足を動かしたりしてみると……鏡の中にいる人間も同じ動きを見せたのだ。残念ながら、鏡に映っているのは小さくなった自分・藍沢直人の姿のようだ。
夢、という可能性も捨てきれないので、ちょっと強めに自分の頬を叩くと、
「ううっ、痛い……」
痛みがはっきりと感じられ、強く叩いてしまったのでジンジンと残ってしまった。どうやら、夢じゃないようだ。
アルバムやホームビデオを思い出すと……この体の大きさは小学校に入学したときくらいかな。まあ、体は小さくなっても、頭脳の方は高校2年生のままなのが唯一の救いってところか。
「それにしても、何で小さくなったんだ……」
まさか、今回の旅行で出会った幽霊の仕業なのか? 可能性はありそうだな。
理由を考えるのは後にして、まずは……彩花にこのことを伝えないと。彩花、このことを知ったらどう思うんだろう。ショック……受けそうだな。今もなお、ベッドでぐっすりと眠っている彼女のことを見ながらそう思うのであった。
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