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第4章
エピローグ『粉々』
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紅林先輩は高校の近くにあった金崎総合病院に搬送された。
大動脈の損傷による出血は激しかったものの、渚先輩の賢明な応急処置が功を奏し、紅林先輩は一命を取り留めた。緊急手術が終わって、今は病室で安静にしている。
直人先輩は激しい頭痛の末、意識を失ってしまった。命には別状はないけど、先輩も別の部屋で入院することになった。
7月4日、木曜日。
直人先輩の病室には先輩のご家族が来ているので、私、渚先輩、広瀬先輩は紅林先輩の病室にいる。私以外はみんな眠っている。
現在の時刻は午前6時。
紅林先輩は未だに意識は回復していない。広瀬先輩は泣き疲れでこの病室に到着してからずっと、紅林先輩の側で眠っている。
紅林先輩がいつ意識を取り戻しても大丈夫なように、私と渚先輩で彼女のことを見守ることに決めた。私が先に眠って、午前2時過ぎにくらいに交代をした。
「だいぶ明るくなってきたな……」
窓から外の景色を見るけれど、なかなか綺麗。入院していても、こういう景色を見れば少しは元気になれるかも。
「……こ、ここは……」
紅林先輩の声が聞こえたので彼女の方を振り返ると、そこには意識を取り戻した紅林先輩がいた。
「ここは……病院ですよ」
「……私、生きているのね」
「ええ、広瀬先輩と渚先輩のおかげで一命を取り留めることができたんです」
「そう、なの……」
紅林先輩は私とは目を合わせなかった。まあ、昨日……あんなことがあったら、あの場に居合わせた私の目を見ることはできないか。
「……夢を見た」
「えっ?」
「……とても苦しくて、それこそ死にそうで。そんな私に咲が手を差し伸べてくれて。そうしたら凄く心が軽くなって。嬉しくもなって。それから、目が覚めるまでずっと咲の笑顔が映っていたの」
「……それだけ、先輩にとって広瀬先輩は大きな存在なんだと思いますよ」
「……そうね」
すると、紅林先輩は涙を流し始める。
「羨ましかった。離れていても、3年間もずっと思い続ける人がいて。再会したら、恋人になって。そんな咲がとっても羨ましかった。私も直人君のことが好きになってた。彼のことは咲からずっと聞いていたからね。素敵な人だなとは思っていたの」
「紅林先輩も直人先輩の虜になったわけですか」
親友の好きな人を自分も好きになってしまったわけか。まあ、それだけ直人先輩が魅力的だからなんだろうけど。
「でも、好きな気持ちは独占欲や憎しみに変わってた。直人君を独占したくて、咲がとても邪魔になって憎らしく思えた。殺したいほどにね……」
「だから、選ばれなかった人は死ぬって言ったんですか」
「……うん」
直人先輩のことが本当に好きだから、他の人を傷つけても直人先輩のことが欲しくなった。でも、手に入れられないのなら、生きている価値はない。そう思って、紅林先輩は自殺を図ったのかもしれない。
「直人君から咲と付き合う決断を聞いたとき、もう私は独りになってしまったと思った。こんなにひどい私をまともに接してくれる人はもういないと思って。だから、死のうって思ったんだ」
「そんなことありません! 広瀬先輩はあなたが首を切ってから、ずっとあなたの名前を呼んで、泣いていました。広瀬先輩はあなたのことを大切に想っていると思います。それはこれからも変わらないと思います」
広瀬先輩は紅林先輩のことを決して貶したりはしなかった。広瀬先輩はずっと信じていたんだ。紅林先輩の心の奥底にある優しさを。
「……また、咲と笑い合えるかな」
「きっと、笑い合えますよ。正面から本音でぶつかり合えば」
「……そうだといいな。ありがとう、宮原さん」
紅林先輩は声に出して泣き始める。
すると、その声に反応したのか、広瀬先輩の目がゆっくりと開いた。
「紅林先輩の意識が戻りましたよ」
「杏子の?」
その瞬間、虚ろだった広瀬先輩の目がパッチリと開く。
「杏子、良かった……!」
広瀬先輩は嬉しそうな表情をして、紅林先輩のことをそっと抱きしめた。
「生きていて良かった……」
「……ごめんね、咲。本当に、ひどいことをして……」
「……杏子は簡単には許せないことをしたよ。だから、これからは一緒に楽しい思い出を作らないとダメなんだからね」
「……うん」
これで……広瀬先輩と紅林先輩は大丈夫かな。
「……ああ、よく寝た。……あっ、紅林さんの意識が戻ったんだね」
渚先輩も目を覚まし、笑顔で体を伸ばしている。
「良かったよ。紅林さんの命が助かって。誰一人、死ななくて。直人も入院しているけど、いずれは意識を取り戻すだろうって言っていたし」
「そうですね、渚先輩」
それに、直人先輩は記憶を取り戻したと思う。紅林先輩が首筋をカッターナイフで切った直後、直人先輩は「また」人を殺したと言っていたし。きっと、柴崎さんが亡くなったことを覚えているからだろう。ちなみに、自分のことを記憶がなくなる以前と同じように俺と言っていたし。
また、いつもの直人先輩と接することができると思うと嬉しかった。
そう、思っていたんだ。
「みなさん!」
美月ちゃんが慌てた様子で病室にやってきた。
「どうしたの? 美月ちゃん」
「お兄ちゃんの意識が戻ったんですけど、様子がおかしくて。みなさんに来て欲ほしくて」
「うん、分かった」
「……みんな、直人君のところへ行ってあげて。私はもう大丈夫だから」
「分かったわ、杏子。美月ちゃん、直人の病室を案内してくれるかな」
「はい!」
私達は美月ちゃんと一緒に、直人先輩の入院している病室へと向かう。
すると、そこには何かに怯えている表情をして、体を震わせている直人先輩がいた。
「直人、どうしたんだ。何が怖い夢でも見たのか?」
浩一さんがそう訊くと、直人先輩はゆっくりと口を開けて、
「夢じゃない。実際にあったんだ。俺は……また人を殺したんだ。唯のことだけじゃなくて紅林さんのことまで、俺は……」
「紅林さんは一命を取り留めたんだ。お前は誰も殺しちゃいない!」
「そんなことない。俺は、追い詰めちまったんだよ。2人のことを……」
そう言うと、直人先輩の体の震えは激しさを増す。そして、
「そんな俺に生きる価値なんてない。死ねば良かったんだ……!」
直人先輩はそう言うと、昨日、紅林先輩が自分の首を切り裂いたときのように呻き声を上げる。
「うあああっ!」
「母さん! 美月! 先生を呼んできてくれ!」
「分かったわ、お父さん!」
「お兄ちゃん、すぐに呼んでくるからね!」
ひかりさんと美月ちゃんは病室を飛び出す。
「直人、落ち着くんだ! 直人!」
「俺はっ! 俺はああっ!」
浩一さんが両肩を掴んで暴れる直人先輩のことを必死に抑える。私達も直人先輩の気持ちが落ち着くように、先輩に大丈夫だと言い続けた。
その後の診察によって、直人先輩は失った記憶を完全に取り戻したことが分かった。しかし、取り戻すきっかけがショッキングだったこともあり、その代償は大きく――。
直人先輩の心が崩れ去ってしまったのであった。
*****
『……そっか。それじゃ、なおくんの記憶は無事に戻ったんだね、咲ちゃん』
「うん。でも、杏子が自殺を図ったところを実際に見たことで、直人は自分が殺人者だと思い込んじゃっているみたいで。たまに、自分が死ねばいいって思うこともあって……」
『一難去ってまた一難か』
「そんな感じ。でも、やってきた一難が大きすぎる」
『そうだね。なおくんがまた、元気になるのは相当難しいかもね。今度は、今まであったことに対してどう向き合うかだから……』
「うん。だから、あなたに電話をしたの。幼なじみであるあなたなら、直人のことを元気づけられるような気がして。あたしにはその自信が……ないの」
『咲ちゃんはなおくんの恋人でしょう? 少しずつでもいいから頑張ってみようよ』
「ううん、もう……あたしは彼の恋人だって言える資格はない」
『えっ? どういうこと?』
「杏子じゃなくてあたしを選んでくれたことは嬉しかった。でも、杏子の言うように、私は無理矢理に直人と付き合い始めたの。だからこそ、直人は記憶を失って、杏子は自殺を図るようなことになったと思うの。そして、直人の心が崩れてしまった」
『そこまで自分を責めなくていいんじゃないかな』
「みんな、そう言ってくれた。それに、何よりも……やっぱり、宮原さんや吉岡さんと同じように、直人と両想いになったら、そのときにまた恋人として付き合いたいって思うの」
『そういうことなんだね。分かったよ』
「……うん。でも、今のあたしじゃ直人に選ばれる自信はない。宮原さんや吉岡さんの方がずっと、直人の彼女になるのに相応しい女の子だよ」
『そんなに自分を悪く言わなくていいんじゃないかな。咲ちゃんだって相応しいと思うよ。じゃあ、とりあえず……今はなおくんは誰とも付き合っていないってことなんだね』
「そうだよ。美緒、もしかして……」
『うん。もうすぐで夏休みだしね。夏休みの間はなおくんの家に行って、なおくんと一緒に暮らすよ』
「……そっか。美緒なら安心できる。直人のこと、一番分かっているもんね」
『うん。ゴールデンウィークのときになおくんを振るようなことをしちゃったけど、一度もなおくんが好きな気持ちは消えなかったの。もう、その気持ちを抑えるようなことはしない』
「美緒は強いな」
『当たり前だよ。私はなおくんと一番長く接しているんだもん。なおくんへの想いの強さは誰にも負けないと思う。きっと、唯ちゃんよりも』
「唯よりもか。まあ、直人の幼なじみだからね。もしかしたら、今の直人を救えるのはあなただけかもしれない」
『それは分からないよ。でも、なおくんの側にずっといる。そして、なおくんのことを救って……私がなおくんの恋人になる。なおくんと一緒に幸せになる。私、本気だからね』
第4章 おわり
最終章に続く。
大動脈の損傷による出血は激しかったものの、渚先輩の賢明な応急処置が功を奏し、紅林先輩は一命を取り留めた。緊急手術が終わって、今は病室で安静にしている。
直人先輩は激しい頭痛の末、意識を失ってしまった。命には別状はないけど、先輩も別の部屋で入院することになった。
7月4日、木曜日。
直人先輩の病室には先輩のご家族が来ているので、私、渚先輩、広瀬先輩は紅林先輩の病室にいる。私以外はみんな眠っている。
現在の時刻は午前6時。
紅林先輩は未だに意識は回復していない。広瀬先輩は泣き疲れでこの病室に到着してからずっと、紅林先輩の側で眠っている。
紅林先輩がいつ意識を取り戻しても大丈夫なように、私と渚先輩で彼女のことを見守ることに決めた。私が先に眠って、午前2時過ぎにくらいに交代をした。
「だいぶ明るくなってきたな……」
窓から外の景色を見るけれど、なかなか綺麗。入院していても、こういう景色を見れば少しは元気になれるかも。
「……こ、ここは……」
紅林先輩の声が聞こえたので彼女の方を振り返ると、そこには意識を取り戻した紅林先輩がいた。
「ここは……病院ですよ」
「……私、生きているのね」
「ええ、広瀬先輩と渚先輩のおかげで一命を取り留めることができたんです」
「そう、なの……」
紅林先輩は私とは目を合わせなかった。まあ、昨日……あんなことがあったら、あの場に居合わせた私の目を見ることはできないか。
「……夢を見た」
「えっ?」
「……とても苦しくて、それこそ死にそうで。そんな私に咲が手を差し伸べてくれて。そうしたら凄く心が軽くなって。嬉しくもなって。それから、目が覚めるまでずっと咲の笑顔が映っていたの」
「……それだけ、先輩にとって広瀬先輩は大きな存在なんだと思いますよ」
「……そうね」
すると、紅林先輩は涙を流し始める。
「羨ましかった。離れていても、3年間もずっと思い続ける人がいて。再会したら、恋人になって。そんな咲がとっても羨ましかった。私も直人君のことが好きになってた。彼のことは咲からずっと聞いていたからね。素敵な人だなとは思っていたの」
「紅林先輩も直人先輩の虜になったわけですか」
親友の好きな人を自分も好きになってしまったわけか。まあ、それだけ直人先輩が魅力的だからなんだろうけど。
「でも、好きな気持ちは独占欲や憎しみに変わってた。直人君を独占したくて、咲がとても邪魔になって憎らしく思えた。殺したいほどにね……」
「だから、選ばれなかった人は死ぬって言ったんですか」
「……うん」
直人先輩のことが本当に好きだから、他の人を傷つけても直人先輩のことが欲しくなった。でも、手に入れられないのなら、生きている価値はない。そう思って、紅林先輩は自殺を図ったのかもしれない。
「直人君から咲と付き合う決断を聞いたとき、もう私は独りになってしまったと思った。こんなにひどい私をまともに接してくれる人はもういないと思って。だから、死のうって思ったんだ」
「そんなことありません! 広瀬先輩はあなたが首を切ってから、ずっとあなたの名前を呼んで、泣いていました。広瀬先輩はあなたのことを大切に想っていると思います。それはこれからも変わらないと思います」
広瀬先輩は紅林先輩のことを決して貶したりはしなかった。広瀬先輩はずっと信じていたんだ。紅林先輩の心の奥底にある優しさを。
「……また、咲と笑い合えるかな」
「きっと、笑い合えますよ。正面から本音でぶつかり合えば」
「……そうだといいな。ありがとう、宮原さん」
紅林先輩は声に出して泣き始める。
すると、その声に反応したのか、広瀬先輩の目がゆっくりと開いた。
「紅林先輩の意識が戻りましたよ」
「杏子の?」
その瞬間、虚ろだった広瀬先輩の目がパッチリと開く。
「杏子、良かった……!」
広瀬先輩は嬉しそうな表情をして、紅林先輩のことをそっと抱きしめた。
「生きていて良かった……」
「……ごめんね、咲。本当に、ひどいことをして……」
「……杏子は簡単には許せないことをしたよ。だから、これからは一緒に楽しい思い出を作らないとダメなんだからね」
「……うん」
これで……広瀬先輩と紅林先輩は大丈夫かな。
「……ああ、よく寝た。……あっ、紅林さんの意識が戻ったんだね」
渚先輩も目を覚まし、笑顔で体を伸ばしている。
「良かったよ。紅林さんの命が助かって。誰一人、死ななくて。直人も入院しているけど、いずれは意識を取り戻すだろうって言っていたし」
「そうですね、渚先輩」
それに、直人先輩は記憶を取り戻したと思う。紅林先輩が首筋をカッターナイフで切った直後、直人先輩は「また」人を殺したと言っていたし。きっと、柴崎さんが亡くなったことを覚えているからだろう。ちなみに、自分のことを記憶がなくなる以前と同じように俺と言っていたし。
また、いつもの直人先輩と接することができると思うと嬉しかった。
そう、思っていたんだ。
「みなさん!」
美月ちゃんが慌てた様子で病室にやってきた。
「どうしたの? 美月ちゃん」
「お兄ちゃんの意識が戻ったんですけど、様子がおかしくて。みなさんに来て欲ほしくて」
「うん、分かった」
「……みんな、直人君のところへ行ってあげて。私はもう大丈夫だから」
「分かったわ、杏子。美月ちゃん、直人の病室を案内してくれるかな」
「はい!」
私達は美月ちゃんと一緒に、直人先輩の入院している病室へと向かう。
すると、そこには何かに怯えている表情をして、体を震わせている直人先輩がいた。
「直人、どうしたんだ。何が怖い夢でも見たのか?」
浩一さんがそう訊くと、直人先輩はゆっくりと口を開けて、
「夢じゃない。実際にあったんだ。俺は……また人を殺したんだ。唯のことだけじゃなくて紅林さんのことまで、俺は……」
「紅林さんは一命を取り留めたんだ。お前は誰も殺しちゃいない!」
「そんなことない。俺は、追い詰めちまったんだよ。2人のことを……」
そう言うと、直人先輩の体の震えは激しさを増す。そして、
「そんな俺に生きる価値なんてない。死ねば良かったんだ……!」
直人先輩はそう言うと、昨日、紅林先輩が自分の首を切り裂いたときのように呻き声を上げる。
「うあああっ!」
「母さん! 美月! 先生を呼んできてくれ!」
「分かったわ、お父さん!」
「お兄ちゃん、すぐに呼んでくるからね!」
ひかりさんと美月ちゃんは病室を飛び出す。
「直人、落ち着くんだ! 直人!」
「俺はっ! 俺はああっ!」
浩一さんが両肩を掴んで暴れる直人先輩のことを必死に抑える。私達も直人先輩の気持ちが落ち着くように、先輩に大丈夫だと言い続けた。
その後の診察によって、直人先輩は失った記憶を完全に取り戻したことが分かった。しかし、取り戻すきっかけがショッキングだったこともあり、その代償は大きく――。
直人先輩の心が崩れ去ってしまったのであった。
*****
『……そっか。それじゃ、なおくんの記憶は無事に戻ったんだね、咲ちゃん』
「うん。でも、杏子が自殺を図ったところを実際に見たことで、直人は自分が殺人者だと思い込んじゃっているみたいで。たまに、自分が死ねばいいって思うこともあって……」
『一難去ってまた一難か』
「そんな感じ。でも、やってきた一難が大きすぎる」
『そうだね。なおくんがまた、元気になるのは相当難しいかもね。今度は、今まであったことに対してどう向き合うかだから……』
「うん。だから、あなたに電話をしたの。幼なじみであるあなたなら、直人のことを元気づけられるような気がして。あたしにはその自信が……ないの」
『咲ちゃんはなおくんの恋人でしょう? 少しずつでもいいから頑張ってみようよ』
「ううん、もう……あたしは彼の恋人だって言える資格はない」
『えっ? どういうこと?』
「杏子じゃなくてあたしを選んでくれたことは嬉しかった。でも、杏子の言うように、私は無理矢理に直人と付き合い始めたの。だからこそ、直人は記憶を失って、杏子は自殺を図るようなことになったと思うの。そして、直人の心が崩れてしまった」
『そこまで自分を責めなくていいんじゃないかな』
「みんな、そう言ってくれた。それに、何よりも……やっぱり、宮原さんや吉岡さんと同じように、直人と両想いになったら、そのときにまた恋人として付き合いたいって思うの」
『そういうことなんだね。分かったよ』
「……うん。でも、今のあたしじゃ直人に選ばれる自信はない。宮原さんや吉岡さんの方がずっと、直人の彼女になるのに相応しい女の子だよ」
『そんなに自分を悪く言わなくていいんじゃないかな。咲ちゃんだって相応しいと思うよ。じゃあ、とりあえず……今はなおくんは誰とも付き合っていないってことなんだね』
「そうだよ。美緒、もしかして……」
『うん。もうすぐで夏休みだしね。夏休みの間はなおくんの家に行って、なおくんと一緒に暮らすよ』
「……そっか。美緒なら安心できる。直人のこと、一番分かっているもんね」
『うん。ゴールデンウィークのときになおくんを振るようなことをしちゃったけど、一度もなおくんが好きな気持ちは消えなかったの。もう、その気持ちを抑えるようなことはしない』
「美緒は強いな」
『当たり前だよ。私はなおくんと一番長く接しているんだもん。なおくんへの想いの強さは誰にも負けないと思う。きっと、唯ちゃんよりも』
「唯よりもか。まあ、直人の幼なじみだからね。もしかしたら、今の直人を救えるのはあなただけかもしれない」
『それは分からないよ。でも、なおくんの側にずっといる。そして、なおくんのことを救って……私がなおくんの恋人になる。なおくんと一緒に幸せになる。私、本気だからね』
第4章 おわり
最終章に続く。
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