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第29話『ラーメン大好きお嫁さん』
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「2度目でしたが、とても楽しかったです!」
「楽しかったな!」
およそ2時間のクリスの上映が終わり、劇場が明るくなる。
観るのは2度目だったけど、殺人事件、女子キャラクターの誘拐、原作でも主人公のクリス君と敵対している悪の組織との全面対決といったスリリングで盛りだくさんな内容だったので凄く楽しめた。
「2時間があっという間だったな」
「あっという間でしたね。とても楽しかったです! 悪の組織との全面対決ですから、2度目でもハラハラしました!」
「展開が分かっていても、あれはハラハラしたよな。同じ作品を劇場で2回観るのもいいもんだな。クリスだったからかもしれないけど」
「そうですね。今後も、とても面白い作品は劇場で何度観てもいいかもしれませんね」
「そうだな」
今年のクリスはとても面白かったから、2度目でも終わるまであっという間だった。劇場ならではの大画面と大音響で迫力もあった。これからも、劇場で何度も観たいと思える作品に出会えるといいな。
「あと……和真君とペアシートで座って、寄り添いながら観るのも良かったです」
優奈はそう言うと、頬をほんのりと赤くしながら笑う。それがとても可愛くて。心なしか、優奈から伝わってくる温もりが強くなった気がする。
上映中は飲み物を飲んだり、ポップコーンを食べたりするとき以外は、優奈と俺は寄り添っていた。
「私が和真君に寄り掛かる形でしたけど、重かったりしませんでしたか?」
「全然そんなことなかったぞ。優奈と寄り添って観ていたから、よりデートらしい感じがしたよ。こういう体勢で観るのもいいなって思った」
「そう言ってもらえて良かったですっ」
えへへっ、と優奈は可愛く笑う。もしかしたら、これからは家でアニメを観るときも、今のように優奈と寄り添うようになるかもしれないな。
「和真君もソファーも気持ち良かったですから、ペアシートにして正解でしたね」
「そうだな。ゆったりと観られて良かったよ。これで追加料金がなくていいのは凄いよな」
「凄いですよね。これからも、ペアシートのある劇場で上映される作品を観るときはペアシートにしましょうか」
「そうだな」
今回のようにゆったりとした環境の中で映画を楽しめるから。しかも、追加料金なしで。
優奈と話していたのもあり、劇場の中にはお客さんがほとんど残っていなかった。なので、俺達も劇場を出ることに。
劇場の出口で空になったドリンクのコップと、ポップコーンのカップをスタッフの男性に渡して、フロントに戻った。
フロントに戻った直後、俺達はそれぞれお手洗いに行くことに。上映中は一度もお手洗いに行かなかったし、アイスコーヒーを飲んだからもよおしていたのだ。
用を足して、俺はお手洗いの近くで優奈を待った。
「お待たせしました、和真君」
少しして、優奈がお手洗いから戻ってきた。
「和真君。今は午後1時過ぎですが……お腹は空いていますか? 上映中はポップコーンを食べましたけど」
「ああ、空いているよ」
「そうですか。私もお腹が空いていますし……お昼ご飯を食べに行きましょうか」
「ああ、そうしよう」
「琴宿には美味しいお店がいっぱいあるのですが……ラーメン屋さんはどうでしょうか? 和真君、麺系全般が好きだと言っていましたし」
「おっ、いいな! ラーメン大好きだよ」
だから、普段よりもテンション高めに反応してしまった。ただ、それが良かったのか優奈は「ふふっ」と楽しそうに笑った。
「では、ラーメン屋さんにしましょう。和真君が行ったことがあるかもしれませんが、この映画館の近くに美味しいラーメン屋さんがあるんです」
「そうなんだ。じゃあ、そこのラーメン屋に行こうか」
「はいっ」
俺もこれまでに映画を観る前後に、映画館近くのラーメン屋さんで食事をしたことが何度もある。もしかしたら、そのお店かもしれない。
俺達は手を繋いで、映画館を後にする。
お昼過ぎの時間に差し掛かっているのもあり、午前中に映画館に来たときよりも人の数が多くなっている。
「麺類好きなだけあって、美味しいラーメン屋を知っているんだな」
「ええ。ラーメンは大好きですし、実家のある琴宿ですから何件か知っています」
「そうなんだ。ただ、優奈は女子だし、ラーメン屋をいくつも知っているのはちょっと意外にも思うよ」
「中には女の子だけだと入りづらそうな雰囲気のお店がありますもんね。ただ、陽葵や萌音ちゃんや千尋ちゃんもラーメンが好きですし、中学まで一緒だった友達にもラーメン好きの子がいました。なので、色々なラーメン屋さんに行きましたね」
「そうだったんだ」
優奈の周りにはラーメン好きが多いんだ。ラーメン好きな人と一緒なら、お店の雰囲気にあまり関係なく行けるのかもしれない。
優奈とラーメンのことを話しながら歩いていると、前方に見覚えのあるラーメン屋が見えてきた。例の、俺がこれまで何度か行ったことのあるラーメン屋だ。
「着きました。ここです」
例のラーメン屋の前で立ち止まり、優奈はそう言った。
「このお店、和真君は知っていますか?」
「ああ、知ってる。美味しいし、値段も安めだから、これまでに何度も映画を観る前後に食べたことがあるよ」
「そうなんですか! ここのラーメン美味しいですよね! 私も何度も食べに来たことがあります!」
優奈はとても明るい笑顔でそう言ってくる。自分のオススメするお店を旦那さんが褒めたのが嬉しいのだろう。可愛いなぁ、俺のお嫁さん。
友達の影響があるのかもしれないけど、優奈は一般庶民が安いと思うお店も好きなんだな。
「では、入りましょうか」
「ああ」
俺達はラーメン屋の中に入る。
お店に入った瞬間、スープの美味しそうな匂いが香ってきて。そのことでお腹がより空いてきた。
お店の中には多くのお客さんが席に座っている。男性が多いけど、女性のお客さんもそれなりにいるな。
午後1時台となり、お昼過ぎに差し掛かってきたからか、俺達は待つことなく2人用のテーブル席に座ることができた。優奈とは向かい合う形で席に座る。
メニュースタンドからメニューを取り出し、優奈が見やすいように置く。
「どれにしようかな。ここは美味しいラーメンがいっぱいあるからな」
「いっぱいありますよね。何度も来ていると、それで迷っちゃいますよね」
「そうだな。あと、優奈はラーメン屋でも迷うんだな。可愛いな」
俺がそう言うと、優奈は「ふふっ」とはにかんだ。
「美味しいものの中から選ぶときは、迷うことが多いですね」
「その気持ち分かるよ。ちなみに、俺が迷ったときは……自分の一番好きなものにするかな。今回はラーメンだから……一番好きなスープの味とか」
「それはいい選び方ですね! 私はどのスープの味も好きですが、一番好きなのは豚骨です。なので、豚骨ラーメンにしましょう」
「優奈は豚骨が一番好きか」
「ええ。コクのある味わいが好きですね。和真君は何味が一番好きですか?」
「俺は醤油が一番好きだな」
「醤油も美味しいですよね」
「美味いよな。よし、俺は醤油ラーメンにしよう」
以前に食べたことがあるけど、あっさりとした味わいでかなり美味しかったし。
その後、近くにいる男性の店員さんを呼び、優奈は豚骨ラーメン、俺は醤油ラーメンを注文した。
「ラーメンができるのが楽しみですね」
「楽しみだな」
醤油ラーメンはとても美味しいし。それに、店内を見渡すと、みんな美味しそうにラーメンを食べているから。
優奈はおさげの髪型に纏めている桃色のヘアゴムを解き、ストレートヘアになる。
「髪、結び直すのか?」
「ええ。これからラーメンを食べますので、ポニーテールにしようかと。おさげに纏めた部分を背中に持っていけば、スープに髪が入ることはあまりないですが。ポニーテールの方がより良くて」
「そうなんだ。普段はストレートヘアの真央姉さんも、ラーメンとか汁の多いものを食べるときは、ポニーテールの形に髪を纏めているよ」
「そうなんですね。あと、引っ越した日のお風呂上がりに、和真君がストレートヘアを褒めてくれたので、ポニーテール姿も見せたいのもあります」
「なるほどな。ポニーテールは学校で見かけたことはあるけど、間近で見たことはないから楽しみだな」
「ふふっ、そうですか」
優奈は楽しげに言った。もしかしたら、スープ対策よりも俺にポニーテールを見せたい方が強い理由かもしれない。
優奈は外したヘアゴムを一つ口に咥えて、髪をポニーテールの形に纏めていく。
そういえば、優奈が髪を纏めているところを見るのは初めてだな。普段とは違う髪型にするけど、いつも髪を纏めるときはこういう感じなのだろうか。ヘアゴムを咥えているのもあって、普段よりも大人っぽい雰囲気だ。あと、ワンピースの袖がフレンチスリープなのもあり、優奈の綺麗な腋も見えていて。だから、艶っぽさも感じる。いつもとは違う雰囲気の優奈にドキッとして、見入ってしまう。
優奈は鮮やかな長い黒髪をポニーテールの形に纏めると、咥えていたヘアゴムを使って留めた。
「はいっ、ポニーテール完成です」
と、優奈はニッコリとした笑顔でそう言った。ポニーテールなので見た目の雰囲気はちょっと変わるけど、笑顔の可愛らしさはいつもと変わらない。
「ポニーテールも似合っているよ」
「ありがとうございます。嬉しいですっ。あと、髪を纏めているとき、目の前から和真君にじっと見られていたので、ちょっとドキドキしちゃいました」
「優奈が髪を纏めているところを見るのが初めてだったからさ。つい見入っちゃったんだ。髪を纏める姿もいいなって思った」
「そうですか。嬉しいです」
そう言う優奈の顔には笑みがしっかりと浮かんでいる。髪を纏めているところについて正直な感想を言ったけど、どうやらそれで良かったようだ。
「優奈。写真を撮ってもいいか? ポニーテールも可愛いし」
「いいですよ」
「ありがとう」
俺はスマホでポニーテール姿の優奈の写真を撮った。その際、優奈は笑顔でピースサインをしてくれた。だから、とても可愛らしく撮影できた。フレンチスリープのワンピースも写っているから、この写真を見たら今日のデートのことを色々と思い出しそうだ。
「お待たせしました! 醤油ラーメンと豚骨ラーメンになります!」
撮影した直後、男性の店員さんが俺達の注文したラーメンを元気良く運んできた。個人的に笑顔で元気良く運んでくれると気分が良くなる。
男性店員さんが運んでくれたラーメンを見ると……とても美味しそうだ。麺の上にはチャーシュー、メンマ、なると、のり。刻んだネギがちらしてあってオーソドックス。湯気に乗ったスープの香りも凄くいい。食欲をそそられる。
豚骨ラーメンを目の前にしてか、優奈は「美味しそう」と笑顔で声を漏らしている。スマホで写真も撮っていて。可愛いな。……俺も優奈の真似をして、スマホで醤油ラーメンを撮った。
「じゃあ、食べようか」
「そうですね。いただきますっ」
「いただきます」
俺達はラーメンを食べ始める。
まずはレンゲでスープを一口。あっさりとした醤油の味わいと鶏ガラの出汁がよく合っている。以前から変わらず美味しい。
スープを味わったので、次は麺だ。箸で一口分掬い上げ、何回か息を吹きかけて麺をすする。
「……うん、美味しい」
中太麺とスープが合っていてとても美味しい。麺の固さもちょうど良いし、コシがあっていいな。
「豚骨ラーメン美味しいですっ」
その言葉が本当であると示すように、優奈の顔には可愛らしい笑みが浮かんでいて。麺をすすると、優奈は笑顔でモグモグと食べている。結婚した直後から思っているけど、優奈は本当に美味しそうに食べるよなぁ。素敵だと思う。
「良かったな。豚骨、美味しいよな。俺の醤油ラーメンも美味しいよ」
「醤油も美味しいですよね」
「ああ」
そう言って、俺は醤油ラーメンをもう一口。優奈も美味しいと言ったのもあり、一口目よりも美味しくて味わい深く感じられた。
今日観たクリスや、ラーメンの話をしながらお昼ご飯を食べていく。途中、ラー油やコショウをかけて少し味変して。
また、お互いのラーメンを一口交換した。ラーメンなので食べさせることはせず、どんぶりごと交換する形で。豚骨ラーメンも何回か食べたことがあるけど、優奈が一番好きな味だと分かったから、今回が一番美味しく感じられた。
優奈と一緒に食べたのもあり、とても満足感のある昼食になった。ごちそうさまでした。
「楽しかったな!」
およそ2時間のクリスの上映が終わり、劇場が明るくなる。
観るのは2度目だったけど、殺人事件、女子キャラクターの誘拐、原作でも主人公のクリス君と敵対している悪の組織との全面対決といったスリリングで盛りだくさんな内容だったので凄く楽しめた。
「2時間があっという間だったな」
「あっという間でしたね。とても楽しかったです! 悪の組織との全面対決ですから、2度目でもハラハラしました!」
「展開が分かっていても、あれはハラハラしたよな。同じ作品を劇場で2回観るのもいいもんだな。クリスだったからかもしれないけど」
「そうですね。今後も、とても面白い作品は劇場で何度観てもいいかもしれませんね」
「そうだな」
今年のクリスはとても面白かったから、2度目でも終わるまであっという間だった。劇場ならではの大画面と大音響で迫力もあった。これからも、劇場で何度も観たいと思える作品に出会えるといいな。
「あと……和真君とペアシートで座って、寄り添いながら観るのも良かったです」
優奈はそう言うと、頬をほんのりと赤くしながら笑う。それがとても可愛くて。心なしか、優奈から伝わってくる温もりが強くなった気がする。
上映中は飲み物を飲んだり、ポップコーンを食べたりするとき以外は、優奈と俺は寄り添っていた。
「私が和真君に寄り掛かる形でしたけど、重かったりしませんでしたか?」
「全然そんなことなかったぞ。優奈と寄り添って観ていたから、よりデートらしい感じがしたよ。こういう体勢で観るのもいいなって思った」
「そう言ってもらえて良かったですっ」
えへへっ、と優奈は可愛く笑う。もしかしたら、これからは家でアニメを観るときも、今のように優奈と寄り添うようになるかもしれないな。
「和真君もソファーも気持ち良かったですから、ペアシートにして正解でしたね」
「そうだな。ゆったりと観られて良かったよ。これで追加料金がなくていいのは凄いよな」
「凄いですよね。これからも、ペアシートのある劇場で上映される作品を観るときはペアシートにしましょうか」
「そうだな」
今回のようにゆったりとした環境の中で映画を楽しめるから。しかも、追加料金なしで。
優奈と話していたのもあり、劇場の中にはお客さんがほとんど残っていなかった。なので、俺達も劇場を出ることに。
劇場の出口で空になったドリンクのコップと、ポップコーンのカップをスタッフの男性に渡して、フロントに戻った。
フロントに戻った直後、俺達はそれぞれお手洗いに行くことに。上映中は一度もお手洗いに行かなかったし、アイスコーヒーを飲んだからもよおしていたのだ。
用を足して、俺はお手洗いの近くで優奈を待った。
「お待たせしました、和真君」
少しして、優奈がお手洗いから戻ってきた。
「和真君。今は午後1時過ぎですが……お腹は空いていますか? 上映中はポップコーンを食べましたけど」
「ああ、空いているよ」
「そうですか。私もお腹が空いていますし……お昼ご飯を食べに行きましょうか」
「ああ、そうしよう」
「琴宿には美味しいお店がいっぱいあるのですが……ラーメン屋さんはどうでしょうか? 和真君、麺系全般が好きだと言っていましたし」
「おっ、いいな! ラーメン大好きだよ」
だから、普段よりもテンション高めに反応してしまった。ただ、それが良かったのか優奈は「ふふっ」と楽しそうに笑った。
「では、ラーメン屋さんにしましょう。和真君が行ったことがあるかもしれませんが、この映画館の近くに美味しいラーメン屋さんがあるんです」
「そうなんだ。じゃあ、そこのラーメン屋に行こうか」
「はいっ」
俺もこれまでに映画を観る前後に、映画館近くのラーメン屋さんで食事をしたことが何度もある。もしかしたら、そのお店かもしれない。
俺達は手を繋いで、映画館を後にする。
お昼過ぎの時間に差し掛かっているのもあり、午前中に映画館に来たときよりも人の数が多くなっている。
「麺類好きなだけあって、美味しいラーメン屋を知っているんだな」
「ええ。ラーメンは大好きですし、実家のある琴宿ですから何件か知っています」
「そうなんだ。ただ、優奈は女子だし、ラーメン屋をいくつも知っているのはちょっと意外にも思うよ」
「中には女の子だけだと入りづらそうな雰囲気のお店がありますもんね。ただ、陽葵や萌音ちゃんや千尋ちゃんもラーメンが好きですし、中学まで一緒だった友達にもラーメン好きの子がいました。なので、色々なラーメン屋さんに行きましたね」
「そうだったんだ」
優奈の周りにはラーメン好きが多いんだ。ラーメン好きな人と一緒なら、お店の雰囲気にあまり関係なく行けるのかもしれない。
優奈とラーメンのことを話しながら歩いていると、前方に見覚えのあるラーメン屋が見えてきた。例の、俺がこれまで何度か行ったことのあるラーメン屋だ。
「着きました。ここです」
例のラーメン屋の前で立ち止まり、優奈はそう言った。
「このお店、和真君は知っていますか?」
「ああ、知ってる。美味しいし、値段も安めだから、これまでに何度も映画を観る前後に食べたことがあるよ」
「そうなんですか! ここのラーメン美味しいですよね! 私も何度も食べに来たことがあります!」
優奈はとても明るい笑顔でそう言ってくる。自分のオススメするお店を旦那さんが褒めたのが嬉しいのだろう。可愛いなぁ、俺のお嫁さん。
友達の影響があるのかもしれないけど、優奈は一般庶民が安いと思うお店も好きなんだな。
「では、入りましょうか」
「ああ」
俺達はラーメン屋の中に入る。
お店に入った瞬間、スープの美味しそうな匂いが香ってきて。そのことでお腹がより空いてきた。
お店の中には多くのお客さんが席に座っている。男性が多いけど、女性のお客さんもそれなりにいるな。
午後1時台となり、お昼過ぎに差し掛かってきたからか、俺達は待つことなく2人用のテーブル席に座ることができた。優奈とは向かい合う形で席に座る。
メニュースタンドからメニューを取り出し、優奈が見やすいように置く。
「どれにしようかな。ここは美味しいラーメンがいっぱいあるからな」
「いっぱいありますよね。何度も来ていると、それで迷っちゃいますよね」
「そうだな。あと、優奈はラーメン屋でも迷うんだな。可愛いな」
俺がそう言うと、優奈は「ふふっ」とはにかんだ。
「美味しいものの中から選ぶときは、迷うことが多いですね」
「その気持ち分かるよ。ちなみに、俺が迷ったときは……自分の一番好きなものにするかな。今回はラーメンだから……一番好きなスープの味とか」
「それはいい選び方ですね! 私はどのスープの味も好きですが、一番好きなのは豚骨です。なので、豚骨ラーメンにしましょう」
「優奈は豚骨が一番好きか」
「ええ。コクのある味わいが好きですね。和真君は何味が一番好きですか?」
「俺は醤油が一番好きだな」
「醤油も美味しいですよね」
「美味いよな。よし、俺は醤油ラーメンにしよう」
以前に食べたことがあるけど、あっさりとした味わいでかなり美味しかったし。
その後、近くにいる男性の店員さんを呼び、優奈は豚骨ラーメン、俺は醤油ラーメンを注文した。
「ラーメンができるのが楽しみですね」
「楽しみだな」
醤油ラーメンはとても美味しいし。それに、店内を見渡すと、みんな美味しそうにラーメンを食べているから。
優奈はおさげの髪型に纏めている桃色のヘアゴムを解き、ストレートヘアになる。
「髪、結び直すのか?」
「ええ。これからラーメンを食べますので、ポニーテールにしようかと。おさげに纏めた部分を背中に持っていけば、スープに髪が入ることはあまりないですが。ポニーテールの方がより良くて」
「そうなんだ。普段はストレートヘアの真央姉さんも、ラーメンとか汁の多いものを食べるときは、ポニーテールの形に髪を纏めているよ」
「そうなんですね。あと、引っ越した日のお風呂上がりに、和真君がストレートヘアを褒めてくれたので、ポニーテール姿も見せたいのもあります」
「なるほどな。ポニーテールは学校で見かけたことはあるけど、間近で見たことはないから楽しみだな」
「ふふっ、そうですか」
優奈は楽しげに言った。もしかしたら、スープ対策よりも俺にポニーテールを見せたい方が強い理由かもしれない。
優奈は外したヘアゴムを一つ口に咥えて、髪をポニーテールの形に纏めていく。
そういえば、優奈が髪を纏めているところを見るのは初めてだな。普段とは違う髪型にするけど、いつも髪を纏めるときはこういう感じなのだろうか。ヘアゴムを咥えているのもあって、普段よりも大人っぽい雰囲気だ。あと、ワンピースの袖がフレンチスリープなのもあり、優奈の綺麗な腋も見えていて。だから、艶っぽさも感じる。いつもとは違う雰囲気の優奈にドキッとして、見入ってしまう。
優奈は鮮やかな長い黒髪をポニーテールの形に纏めると、咥えていたヘアゴムを使って留めた。
「はいっ、ポニーテール完成です」
と、優奈はニッコリとした笑顔でそう言った。ポニーテールなので見た目の雰囲気はちょっと変わるけど、笑顔の可愛らしさはいつもと変わらない。
「ポニーテールも似合っているよ」
「ありがとうございます。嬉しいですっ。あと、髪を纏めているとき、目の前から和真君にじっと見られていたので、ちょっとドキドキしちゃいました」
「優奈が髪を纏めているところを見るのが初めてだったからさ。つい見入っちゃったんだ。髪を纏める姿もいいなって思った」
「そうですか。嬉しいです」
そう言う優奈の顔には笑みがしっかりと浮かんでいる。髪を纏めているところについて正直な感想を言ったけど、どうやらそれで良かったようだ。
「優奈。写真を撮ってもいいか? ポニーテールも可愛いし」
「いいですよ」
「ありがとう」
俺はスマホでポニーテール姿の優奈の写真を撮った。その際、優奈は笑顔でピースサインをしてくれた。だから、とても可愛らしく撮影できた。フレンチスリープのワンピースも写っているから、この写真を見たら今日のデートのことを色々と思い出しそうだ。
「お待たせしました! 醤油ラーメンと豚骨ラーメンになります!」
撮影した直後、男性の店員さんが俺達の注文したラーメンを元気良く運んできた。個人的に笑顔で元気良く運んでくれると気分が良くなる。
男性店員さんが運んでくれたラーメンを見ると……とても美味しそうだ。麺の上にはチャーシュー、メンマ、なると、のり。刻んだネギがちらしてあってオーソドックス。湯気に乗ったスープの香りも凄くいい。食欲をそそられる。
豚骨ラーメンを目の前にしてか、優奈は「美味しそう」と笑顔で声を漏らしている。スマホで写真も撮っていて。可愛いな。……俺も優奈の真似をして、スマホで醤油ラーメンを撮った。
「じゃあ、食べようか」
「そうですね。いただきますっ」
「いただきます」
俺達はラーメンを食べ始める。
まずはレンゲでスープを一口。あっさりとした醤油の味わいと鶏ガラの出汁がよく合っている。以前から変わらず美味しい。
スープを味わったので、次は麺だ。箸で一口分掬い上げ、何回か息を吹きかけて麺をすする。
「……うん、美味しい」
中太麺とスープが合っていてとても美味しい。麺の固さもちょうど良いし、コシがあっていいな。
「豚骨ラーメン美味しいですっ」
その言葉が本当であると示すように、優奈の顔には可愛らしい笑みが浮かんでいて。麺をすすると、優奈は笑顔でモグモグと食べている。結婚した直後から思っているけど、優奈は本当に美味しそうに食べるよなぁ。素敵だと思う。
「良かったな。豚骨、美味しいよな。俺の醤油ラーメンも美味しいよ」
「醤油も美味しいですよね」
「ああ」
そう言って、俺は醤油ラーメンをもう一口。優奈も美味しいと言ったのもあり、一口目よりも美味しくて味わい深く感じられた。
今日観たクリスや、ラーメンの話をしながらお昼ご飯を食べていく。途中、ラー油やコショウをかけて少し味変して。
また、お互いのラーメンを一口交換した。ラーメンなので食べさせることはせず、どんぶりごと交換する形で。豚骨ラーメンも何回か食べたことがあるけど、優奈が一番好きな味だと分かったから、今回が一番美味しく感じられた。
優奈と一緒に食べたのもあり、とても満足感のある昼食になった。ごちそうさまでした。
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