10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ

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特別編4

第5話『愛実への誕生日プレゼント』

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「愛実ちゃん。パーティーを始めてから時間が経ちましたし、そろそろプレゼントを渡す時間にしたいと考えています。どうでしょうか?」

 愛実の誕生日パーティーが始まってから1時間ほど。進行役のあおいは愛実の側まで行って、愛実にそう問いかける。そうするのは、俺の誕生日パーティーでもこのくらいのタイミングで俺にプレゼントを渡したからだろう。

「うん。私はかまわないよ」
「分かりました。……みなさん! パーティーも盛り上がってきたので、ここで愛実ちゃんに誕生日プレゼントを渡すのはどうでしょうか?」

 あおいはみんなのことを見ながらそう問いかける。

「いいな。俺は賛成だ」
「あたしもいいわよ」
「あおいさんの提案に賛成よ」

 俺、海老名さん、須藤さん高校生達が賛同の意を示す。
 俺達3人が賛成したのもあってか、真衣さんや宏明さんなど親達6人もみんな誕生日プレゼントを渡すことに賛成した。よって、愛実に誕生日プレゼントを渡す時間に。
 俺を含めたパーティーの参加者の何人かは、愛実への誕生日プレゼントを取りに行く。
 俺の用意した誕生日プレゼントはお泊まりの荷物をまとめたバッグに入っている。なので、愛実の部屋に向かい、バッグから愛実へのプレゼントが入った白い紙の手提げを取り出す。
 リビングに戻ると、あおいがまだ戻ってきていない。準備するときから愛実の家にいたし、自宅にプレゼントが置いてあるのかも。

「お待たせしました。私が最後でしたね」

 俺がリビングに戻ってから少しして、あおいもリビングに戻ってきた。何をプレゼントするのかは分からないけど、ピンクの大きめなラッピング袋を持っている。あとはラッピング袋よりも小さな黒いレジ袋もある。

「では、全員戻ってきましたので、これから愛実ちゃんへプレゼントを渡しましょう!」
「楽しみだな」

 主役である愛実はとても楽しげな様子でそう言う。

「さて、どういう順番で渡しましょうか? 凉我君の誕生日パーティーでは進行役の私から渡しましたが」
「そうだったね。私は賛成だよ」
「愛実がいいなら俺は全然かまわないぞ」

 愛実の次に俺も賛成する。それもあって、あおいから渡すことに全員賛成する。

「では、最初は私にしましょう。その後の順番はどうしましょう? もう決めておきますか? それとも、その都度決めますか?」
「事前に決めておいた方がスムーズに進められそうだね、あおいちゃん」
「愛実の言う通りね。あおいから席順で時計回りか反時計回りならすぐに順番を決められて良さそうだわ」

 確かに、プレゼントを渡す度に「次は誰がプレゼントを渡すのか?」と話すよりも、事前に決めておく方がスムーズに進んで良さそうだ。11人いるし、決め方は海老名さんの言うように席順が簡単でいいか。
 事前に順番を決めることにみんな賛成した。

「あおいさんの近くに座っているのは私と麻丘君だから、時計回りだと私、反時計回りだと麻丘君があおいさんの次になるのね」
「そうだな。あと、最後は時計回りだと俺、反時計回りだと須藤さんになるんだ」
「そうなるわね。……恋人の麻丘君がラストの方がパーティー的には盛り上がりそうな気がするわ」
「美里ちゃんの言うこと分かります」
「ふふっ。じゃあ、時計回りにしようか。リョウ君、最後になるけどいい?」
「ああ、いいぞ」

 最後だと緊張しそうだけど。まあ、愛実の恋人としてプレゼントを渡すトリを務めたいと思う。
 あおいから時計回りの席順で愛実にプレゼントを渡すことが決まった。

「では、私からプレゼントを渡しますね。愛実ちゃん、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう!」

 あおいは愛実にピンクの大きなラッピング袋と、黒い小さなレジ袋を手渡す。

「まずはラッピング袋から。さっきから気になってて」

 そう言い、愛実はラッピング袋を結んでいるリボンを解いていく。なかなかの大きさなので存在感があるもんなぁ。
 リボンを解くと、愛実はラッピング袋から……茶色と白のハチワレ猫のぬいぐるみを取り出した。愛実が抱きしめるのにちょうど良さそうな大きさだ。

「わぁっ……可愛い!」

 愛実は目を輝かせながらそう言うと、とても嬉しそうな様子で猫のぬいぐるみを抱きしめた。ぬいぐるみも可愛いけど、ぬいぐるみを抱きしめる愛実はもっと可愛い。

「喜んでもらえて良かったです! 調津駅近くのショッピングセンターの中にある雑貨で、このぬいぐるみを見つけまして。愛実ちゃんは猫好きですし、可愛いぬいぐるみだと思ったのでプレゼントにしようと決めました」
「嬉しいよ! 可愛いし、抱き心地がいいし。ありがとう!」
「いえいえ」
「黒いレジ袋は何が入っているかな……」

 そう言うと、愛実は黒いレジ袋から本を取り出す。サイズ的には漫画か。

「漫画だね。タイトルと表紙のイラストからしてBLかな?」
「そうです! 私オススメのBL漫画です。愛実ちゃんもBL作品も読みますから楽しめるかなと思います。1冊で綺麗に完結するので読みやすいですよ」
「そうなんだね。この作品は読んだことはないから楽しみだよ。ありがとう」

 あおいオススメのBL漫画か。俺の誕生日のときにもオススメのラブコメ漫画をプレゼントしてくれたな。もしかしたら、海老名さんや須藤さんなどにも誕生日にはオススメの漫画をプレゼントするかもしれない。

「次は私ね」

 そう言い、須藤さんは持ってきたトートバッグから白い紙の手提げを取り出し、愛実のところへ向かう。須藤さんは愛実にどんなものをプレゼントするんだろう?

「お誕生日おめでとう、愛実さん」
「ありがとう、美里ちゃん」

 愛実は須藤さんから白い手提げを受け取る。手提げから小さくて細めの箱を取り出す。

「これは……リップクリーム?」
「そうよ。これからの季節は乾燥するから。私も使っているのだけど、潤いを保ててオススメよ」
「そうなんだ。これからの時期は油断すると唇が荒れるから嬉しいよ!」

 愛実はとても嬉しそうに言う。確かに、愛実は空気が乾燥する時期になると、リップクリームを付けて唇の保湿をしっかりしている。愛実が嬉しがるのも納得だ。
 須藤さんは「良かったわ」と嬉しそうな笑顔で言った。
 まだプレゼントがあるようだ。愛実は白い紙の手提げから深緑色のレジ袋を取り出す。サイズからして文庫本だろうか。
 愛実はレジ袋から本を取り出す。

「表紙のイラストからして……BL小説かな」
「そうよ! この1年で読んだBL小説の中で一番面白かったの!」

 リップクリームのときよりも興奮して説明する須藤さん。
 そういえば、去年も須藤さんは愛実にBL小説をプレゼントしていたっけ。毎年、この1年間で一番面白かったBL小説をプレゼントするつもりなのかもしれない。

「ありがとう、美里ちゃん」
「楽しんでもらえたら嬉しいわ」
「……じゃあ、次は私達ね。あなた」
「ああ」

 そう言い、須藤さんの隣に座るあおいの母親の麻美さんと父親の聡さんがクッションから立ち上がる。麻美さんは須藤さんのよりも大きめのベージュの紙の手提げを持っている。

「愛実さん、お誕生日おめでとう」
「おめでとう、愛実ちゃん。私達夫婦からのプレゼントよ」
「ありがとうございます!」

 愛実は麻美さんからベージュの紙の手提げを受け取る。

「愛実ちゃんにプレゼントをあげるのは初めてだから何を渡そうか迷ったけど、あおいや凉我君から愛実ちゃんはスイーツが大好きだから喜ぶと思うって教えてくれて。主人と一緒に買いに行ったの」
「スティックケーキとクッキーが数種類ずつ入っているよ」
「そうなんですね! ケーキもクッキーも大好きなので嬉しいですっ! ありがとうございます!」

 愛実はとても嬉しそうにお礼を言った。
 先日、麻美さんから愛実のプレゼントに何がいいかって相談された。愛実は洋菓子和菓子問わずスイーツが大好きなので、スイーツがいいのではないかと言ったのだ。愛実はもちろん、麻美さんと聡さんも嬉しそうなので的確なアドバイスができたようだ。

「では、今後は私達ね」
「そうだね、母さん」

 次は愛実の両親の真衣さんと宏明さんか。今年は何をプレゼントするだろう。
 真衣さんと宏明さんはクッションから立ち上がり、愛実の近くまでやってくる。真衣さんが赤いリボンで結ばれた白い箱を持っている。

「愛実、誕生日おめでとう」
「誕生日プレゼントよ」
「ありがとう、お父さん、お母さん!」

 愛実は真衣さんから誕生日プレゼントを受け取る。
 愛実はリボンを外して、白い箱の蓋を開けると……中には落ち着いたピンク色の長財布が入っていた。長財布だから立派な雰囲気だ。

「わぁっ、お財布だ」
「高校生だし、こういう雰囲気の財布を持つのもいいと思ってさ」
「愛実はピンク色が大好きだから、この財布にしたの」
「そうなんだね。大切に使わせてもらうよ。ありがとう!」

 愛実はとても嬉しそうにお礼を言った。そのことに真衣さんも宏明さんも嬉しそうだ。
 財布は使う場面が多いから、愛実の大好きなピンク色にしたのだろう。あと、愛実は物を大切に使うから物持ちがとてもいい。きっと、大学生、社会人になっても愛実はこの長財布を使っていくことだろう。

「次は私達ね」
「ああ」

 俺の両親はクッションから立ち上がり、愛実のところへ。父さんが紙の手提げを持っている。

「愛実ちゃん、お誕生日おめでとう」
「おめでとう、愛実ちゃん」
「ありがとうございます」

 愛実は父さんから紙の手提げを受け取る。

「愛実ちゃんは紅茶が大好きだから、今年も紅茶のセットをプレゼントするわ」
「アップルティーやピーチティー、マスカットティーとか色々なものが入っているよ」
「色々な紅茶を飲むので嬉しいです! ありがとうございます」

 愛実はニッコリと笑いながらそう言った。
 愛実は紅茶が好きだ。家ではコーヒーと同じくらいによく飲むし、学校の自販機やコンビニなどでペットボトルの紅茶を買うこともある。新商品が出ると必ず一度は試してみて。それもあり、ここ何年かはうちの両親は愛実の誕生日プレゼントに紅茶のティーパックやスティックのセットを贈っている。

「次はあたしね」

 次は海老名さん。海老名さんは愛実の右斜め前に座っているので、クッションから立ち上がることはせずに、淡いピンクのラッピング袋を持って愛実の方を向く。

「愛実。17歳のお誕生日おめでとう!」
「ありがとう、理沙ちゃん!」

 愛実は海老名さんからピンクのラッピング袋を受け取る。海老名さんは愛実にどんなものをプレゼントしたのかな。
 愛実は赤いリボンを解いてラッピング袋を開ける。中からは数センチほどの丸い物がいくつか入っている透明な袋が。

「『Milky Bath』って書いてあるね」
「入浴剤よ。ミルク系だから保湿効果もあるし、ハーブのいい香りがするから癒やし効果もあるの。あたしも気に入っていてたまに使ってるわ。これから寒くなってくるし、愛実はお風呂が好きだから、こういうプレゼントもいいかなって思ったの」
「そうなんだね。素敵なプレゼントをありがとう! さっそく今夜一つ使おうかな。リョウ君、一緒に入ろうね」
「ああ、分かった。楽しみだな」
「ふふっ。麻丘君にも楽しんでもらえたら何よりだわ」

 海老名さんは優しい笑顔でそう言った。
 お泊まりしようって決めてからずっと、一緒にお風呂に入るのを楽しみにしているけど、海老名さんのプレゼントした入浴剤のおかげでより楽しみになったな。

「みんなから素敵な誕生日プレゼントをもらえて良かったな、愛実」
「うんっ」
「素敵なプレゼントばかりだし、いよいよ俺の番だから緊張してきた」
「ふふっ。どんなプレゼントなのか楽しみだな」
「楽しみですよね、愛実ちゃん」
「恋人になってからは初めての誕生日だもんね、愛実」
「きっと、麻丘君からのプレゼントも素敵なものよ」

 あおい、海老名さん、須藤さんがそう言うのもあり、ハードルが上がった感じが。みんなから注目されているしより緊張する。
 深呼吸を一度してから、俺は愛実の方を向く。

「愛実、17歳の誕生日おめでとう」

 祝福の言葉を言って、自分が持っている紙の手提げから、2つ入っている白いケースのうちの1つを愛実に渡す。

「ありがとう。……開けていい?」
「もちろん」

 小学1年生から毎年、愛実に誕生日プレゼントを贈ってきた。ただ、去年までのプレゼントとは違ったタイプのものなので、愛実が喜んでくれるかどうか緊張する。
 愛実が白いケースの蓋を開けると、

「わぁっ……ネックレス!」

 ケースの中には、リング付きのシンプルなデザインのシルバーのネックレスが入っている。愛実は目を輝かせてネックレスを見ている。

「シンプルで素敵なネックレスだね!」
「いいネックレスだよな。愛実に似合いそうだし、シンプルなデザインだから色々な服に合うと思って」
「確かにそうだねっ」
「……あと、実はそれ、ペアネックレスでさ。俺の分のネックレスと一緒に買ったんだ。愛実と恋人として付き合い始めたし、同じものがあるといいかなと思って。身につけるものならよりいいかなって。それで、そのネックレスを買いました」
「リョウ君……」

 俺は白い紙の手提げからもう一つのケースを取り出し、蓋を開ける。ペアネックレスなので、愛実に渡したネックレスと同じデザインのネックレスが入っている。

「私にくれたものと同じデザインだ。リョウ君とのペアネックレスだなんて凄く嬉しいよ! ありがとう、リョウ君!」

 愛実はとびっきりの嬉しそうな笑顔でそう言ってくれる。
 ペアネックレスはもちろん、アクセサリー系を愛実にプレゼントするのは初めてだ。だから、愛実がどんな反応をされるか緊張したけど……喜んでくれて良かった。
 何日か前、バイト帰りに一人で駅前のショッピングセンターへプレゼントを買いに行った。ジェリーショップの前を通りかかったとき、ペアネックレスを見つけて「これが良さそうだ」と思ったのだ。その直感を信じて良かったよ。

「ペアのネックレスなんて素敵じゃないですか!」
「とてもいいプレゼントをもらえたわね、愛実」
「恋人と同じものを持てるって嬉しいわよね、愛実さん。気持ち分かるわ。良かったわね」
「うんっ!」

 あおい達の言葉に対して嬉しそうに返事をする愛実。俺にお礼を言ってくれるときと同じくらいに嬉しい気持ちになる。また、4人のことを俺の両親、愛実の御両親、あおいの御両親は優しい眼差しで見ていて。

「デートのときとかお出かけのときとかに付けるね」
「ああ。俺もそうしよう」
「うんっ。……ねえ、リョウ君。ペアネックレスなんだし、一緒に付けて、写真を撮ってもらわない?」
「おぉ、それはいい考えだ」
「では、私が写真を撮りましょう!」
「お願いします、あおいちゃん」

 その後、俺と愛実はペアネックレスを付ける。普段、ネックレスは全然付けないけど、何とか付けることができた。
 俺がネックレスを付け終わったときには、愛実は既に付け終わっていた。愛実はニコニコとした笑顔で俺のことを見ていて。愛実が笑顔なのもあり、ネックレスが本当によく似合っている。

「愛実、凄く似合ってるよ」
「ありがとう! リョウ君も似合ってるよ!」
「ありがとう」
「お揃いのネックレスを付けるのって嬉しいね」
「そうだな」
「2人ともよく似合っているわ」
「よりカップルって感じがするわね」
「お二人とも似合っていて素敵ですよ! では、写真を撮りますよ!」

 愛実と俺はペアネックレスを付けた姿をあおいのスマホで写真を撮ってもらう。その写真はLIMEで俺と愛実のスマホに送ってもらった。
 写真を見ると……同じデザインのペアネックレスが綺麗に写っている。愛実も幸せそうな笑顔で写っていて。俺も……我ながらいい笑顔だ。

「とてもいい写真だ」
「そうだね、リョウ君。あおいちゃん、ありがとう!」
「ありがとう、あおい」
「いえいえ!」

 あおいは持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれた。

「みなさん、素敵なプレゼントをありがとうございました! とても嬉しいです!」

 愛実は今日一番の可愛い笑顔でみんなに向かってそう言った。嬉しそうな様子の愛実を見ていると、俺も嬉しい気持ちになっていくよ。
 俺達は愛実に向かって改めて「おめでとう」と言い、拍手を送った。
 料理や誕生日ケーキがまだまだ残っているので、その後も愛実の誕生日パーティーが続いていくのであった。
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